換気

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換気の目的

換気の目的の一つには、室内空気と新鮮空気の入れ換えによる汚染物質の室内からの除去がある。室内空気の清浄化にとって、換気は重要な役割を果たす。
室面積の1/20以上の外気に向かった換気の開口部の面積が必要である。(事務所衛生基準規則)
換気の方法には、自然換気と機械換気がある。
自然換気機械換気を併用するものをハイブリット換気という。

自然換気

自然換気は、風力室内外の温度差が原動力となる。
風圧や内外の空気の密度差に頼るもので、安定した換気は難しい。

風力換気

風力換気では、空気が圧力の高い方から低い方に流れることを利用する。
風上側の正圧(+)に吸気口、風下側の負圧(ー)に排気口を設置する。
その地方の卓越風(最も多く吹く風向)を考慮する。

風力換気量

風力による換気量は、外部風速窓面積(流量係数×開口部面積)に比例し、風圧係数の差(開口部前後の圧力差)平方根に比例して増加する。
(差に関するものは平方根に比例し、その他は比例する)

風圧係数

建物が風力を受ける度合いを表す係数で、開口部前後の圧力差に定数を掛けたもの。
風向きや建築物の形状、風上・風下などで変わる。
風圧係数は正負の値をとる。風下側に位置する開口部の風圧係数は、一般的に負の値となる。

風力換気力

風力による換気力P(風圧)は、風圧係数Cと外気密度ρに比例し、外部風速v2乗に比例する。(換気量ではない)

$\displaystyle P=\frac{1}{2}Cρv^2 $

流量係数

開口面積を、空気の粘性や摩擦抵抗等を考慮して、実効面積(相当開口面積)に換算する係数である。
1.0より小さい値で、普通の窓は0.6程度である。
流量係数が最も大きい開口部形状はベルマウス(ラッパの先端のような形状)であり、約1.0となる。

ベンチュリー効果

屋根にベンチレーター(通風機)を設けて、ベンチレーターを通り抜ける風の吸引作用によって、室内の空気を排出する。

温度差換気

温度差換気では、室内外の空気温度(空気密度)の差による風を利用する。
温度の低い床に給気口、温度の高い天井に排気口を設ける。(煙突効果)

温度差換気量

温度差による換気量は、窓面積に比例し、給気口と排気口の高低差平方根と、室内外の空気の密度差(温度差)平方根に比例する。
(差に関するものは平方根に比例し、その他は比例する)

温度差換気力

温度差による換気力ΔP(室内外圧力差)は、室内外の空気の密度差Δρ(温度差ΔT)開口部の高さの差hに比例する。(換気量ではない)

$\displaystyle ΔP=Δρgh=\frac{ρ_0ΔTgh}{T_i} $

機械換気

送風機排風機などの機械力を利用して、安定的に室内の空気の入れ替えを行う。

第1種機械換気

機械給気機械排気との併用による換気もので、室内を正圧にも負圧にもできる。

第2種機械換気

機械給気自然排気による換気で、室内は正圧となる。
新鮮な燃焼空気が必要なボイラ室や、汚染空気の流入を許さない手術室、クリーンルームや電気室で用いる。

第3種機械換気

機械排気自然給気による換気で、室内は負圧となる。
工場・駐車場・便所・浴室・感染症室など、汚染空気排気口のみから排出したい場所で用いる。

換気の種類

空間による換気

局所換気

汚染物質が室内に拡散するのを防ぐため、汚染物質が発生する場所を希釈換気はしないで局部的な排気を行う。
汚染物質を発生源の近くで捕集するため捕集効率が高く、換気量も比較的少ない。
機械換気が望ましい。
湯沸器やコンロなどの燃焼器具の換気、トイレ、喫煙場所などで用いる。排気フードなどを使用する。
厨房、倉庫、各種機械室等では、換気設備が単独で設置されることが多い。
分煙による喫煙場所の局所換気では、たばこ煙が非喫煙場所へ流れないように、0.2m/s以上の空気の流れを作る必要がある。

全般換気

建物全体を一つの空間として換気する。
リビングなど人のいる時間が長い場所から新鮮空気を給気し、戸にガラリやアンダーカットを設けて換気経路を作り、トイレや浴室から排気する。

気流性状から見た換気

気流性状から見た換気方式は、混合方式と一方向方式(整流方式)の二つに大別される。

混合方式

室内に供給する清浄空気室内の空気を混合・希釈する方式。

一方向方式(整流方式)

空気をピストンのように、一方向の流れとなるように室内に供給し、そのまま排気口へ押し出す方式。
クリーンルームなどで用いる。

誘引誘導式

少量の空気を高速ノズルで吹き出す方式。
駐車場などに用いる。

置換換気方式

やや低温の新鮮空気を床面より供給して、天井面付近から排出する方式。
空気の温度差によって生じる密度差を利用して、拡散させることなく排出する。

換気の効率利用

寒冷地の換気再利用

寒冷地において、居室の余剰排気をアトリウム(吹抜空間)に排出し、駐車場の空気が逆流しないようにして、その排気を駐車場の給気に用いることがある。

省エネ対策

冬季の予熱時に、外気の取り入れを停止して換気する。
加湿負荷を減らす為、取り入れ外気の下限温度を設定する。
還気の二酸化炭素濃度に基づいて、外気取り入れを制御すると負荷が低減する。

換気量の計算

必要換気量

単位時間当たりに室内の入れ替わる新鮮空気(外気)量を換気量という。
必要換気量は、汚染物質を基準値の濃度まで希釈するために取り入れる換気量のことである。
必要換気量は、人体への影響、燃焼器具への影響、空気汚染物質・水蒸気発生の影響等から決定される。
1人当たりの必要換気量は、二酸化炭素排出量より求める。1人当たりに必要な換気量は30m3/h以上である。

1人当たりの専有面積より求める方法

必要換気量[m3/h]=30[m3/h・人]×(居室の床面積[m2]/1人当たりの専有面積[m2/人])

二酸化炭素排出量より求める方法

必要換気量[m3/h]=CO2発生量[m3/h](室内のCO2許容濃度-外気のCO2濃度)(濃度[%]は、小数点に直すこと)

燃焼器具の必要換気量

建築基準法では、開放型燃焼器具で理論廃ガス量の40倍以上、密閉型燃焼器具で理論廃ガス量の2倍以上と定めている。
理論廃ガス量は、燃料が完全燃焼した場合の廃ガス量のことである。

換気回数

1時間当たりの全空気の入れ替わる回数。
換気回数[回/h]=1時間の換気量室容積
住宅で2~3回、厨房などは30~60回必要である。
住宅等の居室のシックハウス対策として機械換気設備を用いる場合の必要換気量は、換気回数で0.5回/h以上と規定されている。

換気効率

1回分の給気をするのに必要な時間/室内の空気がすべて外気に置き換えられるのに要する時間。
空気交換効率は、室内にある空気が新鮮空気と入れ替わるかを示す尺度で、室全体の換気効率を表すものである。

局所平均空気齢

新鮮空気の給気口から任意の点に移動するのにかかる平均時間のこと。
空気齢は、換気効率の指標で利用される。

室内汚染濃度の計算

室内汚染濃度は、汚染発生量が同一のとき、室容積にかかわらず同一である。
室内の汚染物質の量は、以下のようになる。
(室内の汚染物質)=(外気からの汚染物質)+(室内で発生する汚染物質)ー(室外に排出される汚染物質)
これを微分方程式として汚染濃度を求める式としたものが、ザイデルの式である。
(ビル管試験では、以下の式は問題文に提示されるため覚える必要はない)

$\displaystyle C=C_0+(C_S-C_0)\frac{1}{e^{nt}}+\frac{M}{Q}\left(1-\frac{1}{e^{nt}}\right) \ [mg/m^3] $

$C$:室内濃度 [$mg/m^3$]
$C_S$:初期濃度 [$mg/m^3$]
$C_0$:外気濃度 [$mg/m^3$]
$M$:室内物質汚染量 [$mg/h$]
$Q$:換気量 [$m^3/h$]
$n$:換気回数 [$回/h$]
$t$:時間 [$h$]

換気量の測定

放出したガスの濃度の時間変化を計測するトレーサガス減衰法によって換気量(換気回数)を求めることができる。



Ver.1.2.1

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