熱交換器
熱交換器とは、温かい流体から冷たい流体へ熱を移動させる(熱交換させる)機器であり、水や周囲の空気などが流体として使用される。
全熱交換器
全熱交換器は、主に空気ー空気熱交換器として使用されている。
空気中の顕熱と潜熱(水蒸気)の両方を熱交換し、主に排気熱の回収(外気負荷の削減)に用いられる。
潜熱交換も行うので、顕熱交換器と比べて結露凝縮を生じにくい。
外気との交換を行うので、外気取入用系は必要ない。
全熱交換機の省エネルギー効果が期待できるのは、室温より外気の温度が高くなる夏期と、室温より外気の温度が低くなる冬期である。従って中間期(冷房と暖房の間の時期)の運転は、必ずしも効果的になるとは限らず注意が必要である。
外気負荷の低減で熱回収効率は50~70%となる。
冷房時の効率=(外気温度ー全熱交換器の室内への給気温度)/(外気温度ー室内温度)となる。
空調システムとして十分な温度処理、湿度処理はできないため、二次空調機が必要となる。
熱交換器と完全に接触する空気をコンタクト空気といい、全通過空気との風量の割合をコンタクトファクタという。
逆にまったく触れずに素通りした空気量の割合をバイパスファクタという。
回転型
吸湿性のある円筒形のハニカム状のローターが低速回転して、吸湿と放湿が連続的に切り替わることで給排気間で全熱交換を行う。
シリカゲルやイオン交換樹脂などが吸着材として利用される。
ローターの回転に伴って排気の一部が給気側に移行することがある。
静止型
給排気を隔てる仕切り板が伝熱性と透湿性をもつ材料で構成され、給排気間の全熱交換を行う。
動きの多い回転型よりも静止型のほうがフィルターに粉じんなどが目詰まりしやすい。
ロスナイ
三菱製の静止型全熱交換器。熱交換器によって熱回収しながら換気を行う。
給気と排気が混ざらないようにルートが区切られており、給気は排気の熱をもらいながら室内に入る。排気は給気に熱を与えながら室外へ出る。
顕熱交換器
顕熱交換器は、顕熱のみを交換する。
ちゅう房や温水プールなど水気の多いところは水分の回収を必要としないので、顕熱交換器を使用する。
熱交換器の種類と構造
多管式熱交換器(シェルアンドチューブ式)
太い円柱状の胴体に細い多数の円管を配置し、胴体(シェル)側の流体と円管(チューブ)側の流体間で熱交換を行う方式。
蒸気-水、高温水ー水の熱交換に適している。
設置面積や荷重が大きい。伝熱面積の変更は難しい。
構造的にU字管式・全固定式・フローティングヘッド式(遊動頭式)に分類される。
- U字管式:チューブをU字状に曲げ加工し、一枚の管板に固定する。
- 全固定式:チューブの両端を管板に固定する。
- フローティングヘッド式(遊動頭式):熱応力を逃がすため、チューブ全体をスライドさせる。
プレート式
重ねた伝熱プレート(ステンレス鋼板)の間を、高温と低温の液体が交互に流れて熱交換する方式。
空気調和機に使用する温度帯の水ー水熱交換器として使用されている。
伝導効率を上げるため、液体の流路を狭く、流速を速くしているので、冷温水ヘッダの機器損失水頭よりも損失水頭(摩擦抵抗)が大きくなる。
設置面積や荷重が小さくコンパクトで、容易にプレートを分解洗浄できる。
多管式に比べ伝熱面積も大きく、伝熱板の増減により伝熱面積を設置後に変更できる。
ヒートパイプ
密閉容器内に少量の液体(作動液)を真空密封し、内壁に毛細管構造(ウイック)を備えたもの。
空気ー空気熱交換器として使用されている。
加熱部で作動液が蒸発し、低温部に蒸気が音速で移動、蒸気が低温部で凝縮、凝縮した作動液がウィックの毛細管現象で加熱部に還流するサイクルを自然に繰り返す。
構造・原理が単純で熱輸送能力が高い。
CPUクーラーなどで使用される顕熱交換器である。 全熱交換器ではない。
熱交換コイルの構造
冷水コイルは、二方弁を用いて温度によって流量調節すると省エネルギーにつながる。
加熱コイルでは、熱膨張に対して工夫が凝らされている場合が多い。
フィンチューブ
伝熱面積を増やすため、金属の管(チューブ)にフィンを取り付けた構造になっている。
冷却コイルで多く使用され、空調機では最も一般的な方式である。
プレートフィン
プレート形状のフィンをチューブに圧入しユニット加工したもの。
代表的な空気冷却用熱交換器として使用されている。
フィンの隙間に粉じんが付着し、目詰まりを生じるので、空気流入側を洗浄する。
エリミネータ
水滴飛散防止材。ジグザグの形の鉄板で、冷却コイルの凝縮水や、噴霧加湿での水滴が下流側に飛散するのを防ぐ。
空気調和機や冷却塔の熱交換器(充てん剤)と送風機(冷却ファン)の間に設置される。
コイルの保守
管内のスケールの付着などの熱交換エレメントの詰まりで、熱交換性能の低下を起こす。
温水コイル管内でカルシウムがスケールやスラッジとなり、温水入口と出口の温度差が小さくなるので、酸で洗ったり交換をする。
冬季に停止したコイル管内の残留水が凍結してコイルを破損するこどがあるので、外気のダンパを閉じて冷気を止める。
外気処理ユニット
空気をそのまま吸排気するのではなく、室外と室内の熱を交換して、温度変化を少なくするものである。
冷媒直膨コイル、全熱交換器、加湿器、フィルタ等を組み込んだユニットである。
全熱交換器だけでなく、冷媒直膨コイルによる温度調節が可能である。
直膨コイルは、コイルに冷媒を流して空気を冷却(暖める)する熱交換器で、冷房時は除湿も行う。
取り込んだ外気をフィルタ・全熱交換器・送風機・直膨コイル・加湿器を通したのちに給気として室内に送る。
室内から戻ってきた還気を再び全熱交換器を通して排風機から排気する。
送風や排風の量によっては熱交換が間に合わないなど、バランスが取りにくい。
外気処理空調機
主の空調機が外気を取り入れる前に、空調機の負荷を減らすため、外気をある程度の状態まで冷暖房や加湿などの処理を行う。
器内に外気のみが通過する構造なので、外気単独で温度や湿度の調整を行うことができ、給排気のバランスが取りやすい。
ラジエーター
エンジンなどの冷却に使用される熱交換器。
エンジン内にはラジエーター液(水やクーラント不凍液を用いる)の通路があり、ここをラジエーター液が流れてエンジンの熱を奪う。
熱を吸収し熱くなったラジエーター液は、ラジエーターで冷却ファンによる送風と走行風によって冷やされ、ポンプ内でエンジン内に戻される。
オイルを冷却する用途のものはオイルクーラー、過給された吸入空気を冷却するものはインタークーラーとして、区別して呼ばれる場合が多い。
チラー
水をはじめとした液体の温度をコントロールするための装置。
冷凍機を使用して、循環液の温度を一定に保ち、この循環液を使用して対象物を冷却する。
空調では、ファンコイルユニットで使用する冷温水を作る装置として使用されている。
再熱器(レヒーター)
空調機に取り入れた空気を冷却コイルで温度を下げて除湿させ、過度に冷却された空気を適温に再熱(レヒート)する装置。
再熱するためにエネルギーを使用するため、過度なレヒートが働かないよう、温度設定を考慮する必要がある。
冷媒レヒート方式
省エネの方式として、電気ヒーターを使用して加熱するのではなく、冷媒レヒート方式がある。
冷媒レヒートでは、従来の凝縮器に加えて冷却コイル(蒸発器)側に再熱器(凝縮器)を設け、空調機の設定温度とセンサの温度を比較して開度を変える流量制御弁(比例式冷媒流量制御弁)によって、設定温度より低い場合は凝縮器への冷媒量を減らし、再熱器(凝縮器)側に流すことで空気を温めて冷却温度を調整する。
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