圧縮機

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圧縮機の種類

0.1MPa以上に圧縮する場合に圧縮機(コンプレッサ)と呼ぶ。
圧縮機の内部構造の分類として、以下の3種類がある。

  • 開放形:圧縮機と電動機が別である。軸からの冷媒漏れ止めに、シャフトシールが必要である。
  • 密閉形:電動機を圧縮機のケーシング内に格納する。溶接されているので分解できない。
  • 半密閉形:電動機を圧縮機のケーシング内に格納する。ボルトを外して分解できる。

圧縮の方式として、容積式と遠心式に分けられる。

  • 容積式:容積を変化させることで圧縮する。
  • 遠心式:回転によって遠心力により圧縮する。

往復圧縮機(レシプロ)

容積式の圧縮機。
モータからの回転でシリンダ内部を往復するピストンの作用で、圧縮室の空間容積を変化させることにより圧縮する。
中小冷凍機で使用され、安価で信頼性も高い。
騒音・振動が大きい。

回転圧縮機(ローター)

容積式の圧縮機。
ケーシング内の回転するローターにより、ケーシングとローター間の容積を変化させることで圧縮する。
圧縮機本体の小型化・低振動化が進み、主流になりつつある。

スクリュー式

オス・メス一対二本のスクリューローターのネジ溝にできる容積変化で圧縮する。
高圧力比ができ、騒音が小さい。
中容量大容量向きである。

スクロール式

渦巻き状の固定スクロールと、渦巻き状の旋回スクロールの旋回により、両ラップに仕切られた空間の容積変化により圧縮する。
コンパクトで騒音・振動がほとんど無い。
小容量向きである。

クロー式

オス・メスのローターが互いに非接触で回転し、両ローターとハウジング間に閉じ込められた空間の容積変化により圧縮する。
家庭用エアコンなどで使用する。

ターボ圧縮機(遠心式)

遠心式の圧縮機。
モータにより羽根車を高速回転させ、遠心力を利用して圧縮する。
空気に運動エネルギーを与え、出口で減速して圧力エネルギーに変換する。(ベルヌーイの定理)
容積式圧縮機と比較して、高圧力比には不向きだが、吸込み圧縮できるガス量が大きく大容量向きである。
羽根車の高速回転が可能であり、大容量でもコンパクトになっている。
この圧縮機を使用した冷凍機を、遠心型冷凍機、ターボ冷凍機と呼んでいる。
中・大規模建築物の空気調和用や、ホテルや病院で蒸気ボイラと併用して多く採用されている。

圧縮機の構成

吸入圧力調節弁

圧縮機入口配管に取り付けて、弁の出口側の圧縮機吸込み圧力が設定値よりも高くならないようにし、過負荷を防止する。
(本来は高いほうが効率は良いが、高すぎると過負荷となる)

クランクケースヒーター

空調・冷凍機器の停止時にクランクケース(レシプロの枠)を加温し、圧縮機の潤滑油を周囲温度以上に維持するヒーター。
圧縮機が低温になると、下部に溜まっている冷えた潤滑油の中に冷媒が溶け込み、油の粘度が低くなり潤滑効果が薄れる。
潤滑効果が薄れると、コンプレッサーの摩耗・焼き付きがおきる。
圧縮機が冷媒とともに油を吸い込むため油上がりが多くなる。
オイルフォーミングの原因となる。
ブレーカ投入から空調機の起動には、ヒーターによって圧縮機が温まるまで6~12時間ほど開けなければならない。

ピストンリング

ピストン外周の溝に装着される円環状の部品。

  • コンプレッションリング:ピストンの上部に2~3本あり、ガス漏れ防止の役割をする。
  • オイルリング:ピストンの下部に1~2本あり、油上がり防止の役割をする。

油分離器(オイルセパレータ)

圧縮機の吐出し口に設置し、冷媒ガスと共に吐き出される潤滑油を分離する装置。
圧縮機の油が不足すると潤滑不良を起こす。
分離した油は容器の下部に貯められ、フルオロカーボン冷媒では自動的に戻される。
アンモニア冷媒は高温の為、油が劣化するので、返油せずに抜き取る。
フルオロカーボンの小型の冷凍装置には設けないこともある。

二重立ち上がり管

圧縮機の吸込み管で、アンロード(低負荷)運転で蒸気速度が落ちた場合でも、速度を適切な範囲に保ち、蒸発器内に油が溜まらないよう油戻しのために設置する。(液戻りでなない)
蒸気速度が落ちるとトラップ部分に油が溜まり、L管は塞がれるため蒸気はS管を通る。
全負荷時は両方の管を通ることで蒸気量の調節を行う。

液分離器(アキュムレータ)

圧縮機の手前に設置し、蒸発器で蒸発されなかった冷媒液を分離し、圧縮機にガスのみを送る装置。
蒸気速度を1m/s以下に落として、液体を重力で分離して容器の下に貯め、フロートスイッチで受液器に戻す。
気体の流れを変える構造を作ると、気体は流れの急変に対応できるが、液体は慣性力によって対応できずに落下することを利用している。
小型のものは、U字管の下部の小穴から少量ずつ圧縮機に吸込ませるものもある。

二段圧縮冷凍装置

蒸発器と凝縮器との間に圧縮機を2台配置し、蒸発器側の冷媒ガスを低圧側圧縮機で中間圧力まで圧縮し、中間で冷却した後、高圧側圧縮機で所定の圧力にする冷凍装置。
冷却温度を-30℃以下にする冷凍装置では、圧縮機の吐出しガス温度が高くなりすぎたり、圧力比の増大により機械効率が低下したりするため、二段圧縮方式を使用する。
高圧段の圧縮機の吐出し圧力以上の圧力を受ける部分を高圧部とし、その他は低圧部として取り扱う。

圧縮機の保守

  • 頻繁な始動・停止を行うと、電動機巻線の温度上昇を招き、焼損のおそれがある。
  • 吸込み弁・吐出し弁の漏れは、体積効率が悪化し、冷凍能力が低下する。
  • ピストンリングの漏れは、体積効率の悪化や、潤滑油が多く漏れて(油上がり)油分離器で取り除けなくなる。
  • 潤滑油の給油圧不足は、圧縮機の潤滑不良を起こす。
  • 吸込み蒸気の過熱度が高いと、圧縮機の吐出しガス温度が高くなり、潤滑油の変質、パッキン材料の損傷などの不具合が生じる。
  • 吐出し弁の漏れでも吐出しガス温度が高くなり、同様の不具合が生じる。

圧縮機の容量制御

多気筒圧縮機

アンローダー(圧縮機で圧縮が行われないようにする装置)を使用して、作動気筒数を滅らすことにより、段階的に圧縮機の容量を調節する。
始動時には電動機負荷を減らし、運転時には負荷が大きく減少した場合に圧縮機の容量を調整する。
シリンダの各々に、吸込み弁を開放して空運転(アイドリング)する機構を取り付けて、圧縮作用を無くしてシリンダの機能を休止させる。
始動時は油圧が低いためアンロード状態になっていて、油圧上昇とともにロード状態になる。

スクリュー圧縮機

スライド弁により、ある範囲内で無段階に容量を制御できる。

インバーター制御

圧縮機駆動用電動機への供給電源の周波数を変化させるもので、圧縮機回転速度を限定された範囲内で無段階に近い調節を行うことができる。

圧縮機の潤滑油

回転部分や摺動部分の潤滑を行うため油を使用する。
潤滑油として、低温用には流動点が低い(粘度の低い)ものを選定する。
クランクケース内の油をかき上げる飛沫方式と、ポンプを使用する強制給油がある。
ポンプ式は、クランクシャフトから動力を得るため、圧縮機の回転数が低速になると十分な油圧を得ることができない。
給油圧力は、油圧調整弁で調整する。給油ポンプによる強制給油式の多気筒圧縮機の給油圧力は以下となる。
給油圧力=(油圧計指示圧力)-(クランクケース圧力)=0.15~0.4Mpa



Ver.1.2.0

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