冷凍機の配管・安全装置と保守

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冷媒配管

空冷式では、一般にコンプレッサー(圧縮機)1台につき2本の銅配管(冷媒管)で室外機と繋がっている。
液管(細管)は、液化された冷媒が流れ、ガス管(太管)は、気化された冷媒が流れる。

冷媒配管の材料

使用してはいけない材質

  • アンモニア:銅
  • フルオロカーボン:2%を超えるマグネシウムを含んだアルミ合金(継目無銅管がよく使用される)

冷媒配管の施工

  • 圧力降下を最小限にする。
  • 圧縮機の吐出しガス配管・吸込み配管の管径は、冷媒ガス中に混在している油が確実に運ばれるガス速度が確保できるように決定する。
  • 横走り管は、配管内の液や油が逆流しないよう下り勾配にする。
  • 装置が冷媒の流れに対して上にある場合は、主管の上側から接続するか、立ち上がりを設けて下り勾配にする。
  • 高圧液管は、冷媒液がブラッシング(気化)するのを防ぐために、流速はできるだけ小さくなるような管径とする。
  • 管表面の結露あるいは着霜を防止し、圧縮機の吸込み蒸気の温度が上昇して吐き出しガス温度が高く成りすぎるのを防ぐために防熱を施す。
  • 横走り吸込み管にUトラップがあると、軽負荷運転時や停止時に油や冷媒液がたまり、液圧縮の危険がある。不必要なUトラップは付けない。
  • 吸込み立ち上がり管が10mを超すときは、油戻りを容易にするため、10m毎に中間トラップを設ける。
  • 銅管は、フレア継手、ろう付け継手で接合する。最近は冷媒配管用継手を使用して圧着する火気を使用しない接合方法も出ている。

冷媒配管の弁

四方弁

冷房と暖房の冷媒ガスの流れを切り替えるために使われる。

        冷房時
        暖房時

エアコン室外機のバルブ

  • 二方弁:液管(細管)。
  • 三方弁:ガス管(太管)にサービスポート(ガス圧測定や冷媒の充てん作業時に使用する)が付いている。

三方弁が「全開」の場合は、室内機+室内側配管が開状態となる。(通常の使用状態)
三方弁が「全閉」の場合は、サービスポート+室内機配管が開状態となる。
三方弁が「中間」の場合は、サービスポート+室内機+室外機配管が開状態となる。

サービスバルブ

パックレスバルブ

止弁。配管の途中で冷媒をコントロールするのに使用する。

冷媒配管中の機器

ドライヤ(乾燥器)

フルオロカーボン冷媒に水分が混入すると装置に悪影響があるため、冷媒液中の水分を除去する装置。
化学反応を起こさない乾燥剤(シリカゲルなど)を利用して、フィルタで水分を吸着させる。
冷媒液管の途中に設置する。

リキッドフィルタ・ サンクションストレーナ

冷媒中のごみや金属粉を取り除く装置。
膨張弁手前の液管に取り付ける。

冷媒・潤滑油の現象

オイルフォーミング

潤滑油に冷媒が溶け込んだ状態で圧縮機を始動すると、冷媒が気化し、油が沸騰したような泡立ちが発生する現象。

油上がり

圧縮機の潤滑油が冷媒ガスと共に圧縮機外の冷媒系統に漏れること。

液圧縮

油または液冷媒が圧縮機のシリンダーに吸入され 圧縮されること。
液体は非圧縮性であるから、シリンダ内圧力は急激に上昇し、圧縮機の破壊につながる。

液戻り

冷媒液が蒸発器内で完全に蒸発しきれずに圧縮機に吸い込まれる状態。
冷凍負荷が急激に増大すると、蒸発器での冷媒の沸騰が激しくなり、蒸気とともに液滴が圧縮機に吸い込まれ、液戻り運転となることがある。

フラッシュガス

冷凍装置の高圧液配管中で、圧力降下や熱の侵入があって液の一部が気化して液中に気泡が発生すること。
このガスの影響で液のみで流れるよりも配管内の流れの抵抗が大きくなり、膨張弁の能力を著しく低下させる。
過冷却度を大きくする、配管を断熱処理するなどの対策を行う。

圧縮式冷凍機の安全装置

圧力スイッチ

圧縮機の吸込み圧力(低圧)、吐出し圧力(高圧)の異常を検知し、停止するスイッチ。
高圧圧力スイッチは、安全弁の吹き始め圧力以下、高圧部の許容圧力以下にする。
油圧保護圧力スイッチは、圧縮機に給油ポンプがある場合に油圧の異常を検知する。
保安上、高圧は手動復帰式を用いる。(10冷凍トン未満のR22ユニット式冷凍装置を除く)

安全弁

内部の飽和圧力が設計圧力よりも上昇することを防止しなければならない。
安全弁の作動圧力とは、吹始め圧力と吹出し圧力のことで、許容圧力を元にして定められる。
吹始め圧力で微量のガスを吹出し始め、吹出し圧力に達すると激しくガスを吹出す動作をする。
1年以内ごとに安全弁の作動の検査を行い、検査記録を残すこと。
安全弁にはそれの検査のために止め弁を設けることができるが、検査時を除き、止め弁を開にしておき「常時開」の表示をする。

安全弁の設置と口径

安全弁に要求される最小口径を求める式は、圧縮機用と圧力容器用とでは異なる。
・圧縮機用:冷凍能力20トン以上。口径=$c\sqrt{V_p}$($c$:冷媒の定数、$V_p$:ピストン押しのけ量)
・圧力容器用:内容積500ℓ以上。口径=$c\sqrt{DL}$($c$:冷媒の定数、$D$:容器の外径、$L$:容器の長さ)
冷媒の定数cは、高圧部、低圧部に分けて定められており、低圧部の方が大きい。
(同じガス量を吐き出すの為には、大気との圧力差が小さい方は、口径を大きくしないと吐き出せない)

溶栓

容器の中の冷媒温度が上昇すると、圧力上昇となる前に温度(75℃以下)で溶栓が溶けて内部の冷媒が放出されて、安全を保つ。
凝縮器や受液器などの容器の中に設置する。
温度で動作するので、加熱や冷却を行う部分には取り付けない。
溶栓の口径は、圧力容器に取り付けるべき安全弁の口径の1/2以上でなければならない。
溶栓は溶けると冷媒の放出は止まらないので、アンモニアなどの可燃性や毒性の冷媒では使用できない。
液封には使用できない。

破裂板

安全弁と同様に圧力によって破裂し、内部のガス圧が大気圧になるまで、ガスを噴出する。
破裂圧力は、耐圧試験圧力以下、安全弁の作動圧力以上にする。(圧力の高い装置には使用しない)
使用期間が長いと、破裂板の破裂圧力が低下するので注意が必要である。
破裂板は破れると冷媒の放出は止まらないので、アンモニアなどの可燃性や毒性の冷媒では使用できない。

液封防止装置

液封は、容器又は配管が完全に液体で満たされた状態をいう。温度変化によって、液が膨張して破裂等の事故の危険性がある。
運転中に周囲温度より温度の低い、低圧液配管において発生することが多い。
液封が起こる恐れのある部分には、安全弁や破裂板などの圧力逃がし装置を取り付ける

断水リレー

水冷凝縮器の断水、水量低下を検知して圧縮機を停止する。

圧縮式冷凍機の設置と点検

冷凍機の設置

耐圧試験、気密試験、真空試験(義務ではない)を行う。(「圧力容器」「圧力容器の試験」参照)
試験終了後、真空乾燥して水分が混入しないようにし、潤滑油充てん、冷媒の充てんの順で行う。
小型の装置では、低圧・高圧の操作弁から蒸気状の冷媒を充てんする。
中大型の装置では、受液器の冷媒液出口弁を閉じ、その先の冷媒チャージ弁から圧縮機を運転しながら液状の冷媒を入れる。

冷凍機の運転と休止

運転状態の変化による平衡化

  • 負荷の増加:庫内温度上昇→蒸発温度上昇→膨張弁で冷媒流量を増やして冷凍能力は増加→圧縮機吸い込み圧力増加→蒸発器出入口の温度差が増加→凝縮圧力が上昇。
  • 負荷の減少:庫内温度低下→蒸発温度低下→膨張弁で冷媒流量を減らして冷凍能力は減少→圧縮機吸い込み圧力低下→蒸発器出入口の温度差が減少→凝縮圧力が低下。
  • 蒸発器の着霜:蒸発器の能力(熱通過率)低下→蒸発圧力低下→圧縮機吸い込み圧力低下→膨張弁で冷媒流量を減らして冷凍能力は減少→庫内温度上昇。

停止

手動停止では、受液器の液出口弁を閉じて、液封が生じないようにしばらく圧縮機を運転する。その直後に圧縮機吸込み側止め弁を閉じる。
多気筒圧縮機の停止直後に吸込み止め弁を全閉とし、吸込み圧力を大気圧以下としない。

休止

長期間休止させる場合には、ポンプダウンして低圧側の冷媒を受液器に回収し、低圧側と圧縮機内を大気圧よりも少し高い圧力(10kPa程度)に保持して空気が侵入しないようにしておく。
安全弁の元弁は閉じない。

冷凍機の点検と異常

圧力異常と考えられる要因

  • 高圧、低圧が低い:冷媒充填量不足、ガス漏れ。
  • 高圧、低圧が高い:コンデンサー冷却不良。
  • 高圧が低い・低圧が高い:圧縮機不良。
  • 低圧が低い:冷媒の詰まり、吸入口のフィルタ詰まりや霜付き、膨張弁のガス漏れ。
  • 高圧が高い:熱交換(凝縮器)冷却不良、室外機(凝縮器)の不具合、冷媒充填量過多。

冷媒量不足(ガス漏れ)

冷媒量が不足すると、蒸発圧力が低下し、早く蒸発してしまうため蒸気過熱度は大きくなり、吐出し圧力は低下するが、吐出しガス温度は上昇する。
(p-h線図では、蒸発線が下に移動し、圧縮線が右に移動する)
密閉フルオロカーボン圧縮機では、吸込み蒸気による電動機の冷却が不十分になり、電動機を焼損するおそれがある。

ゲージマニホールドの使用

ゲージマニホールド

冷凍機の冷媒圧力の計測や、冷媒の充填、点検作業に使用する工具。
冷媒の圧力を測る高圧・低圧用の2つの連成計(負圧が計れる圧力計)とバルブ、ポートが付いており、ポートと冷凍機のサービスポートをチャージホースで接続する。
中央のポートは、真空引きの際は真空ポンプ、冷媒の充填の際は冷媒ボンベをチャージホースで接続する。

ゲージマニホールド

真空引き

  1. 液管(細管)、ガス管(太管)のバルブは「閉」とする。
  2. 3方弁のサービスポートにゲージマニホールドの低圧ポートをチャージホースで接続する。(高圧側がある場合は同様に接続する)
  3. ゲージマニホールドの中央ポートに真空ポンプをチャージホースで接続する。
  4. ゲージマニホールドの低圧バルブを開け、圧力が-0.1MPaになるまで真空ポンプを運転する。
  5. ゲージマニホールドの低圧バルブを閉めて、5~10分ほど放置して圧力が変化しなければ、漏れがないことが分かる。
  6. 液管(細管)、ガス管(太管)のバルブを「開」にして、3方弁のサービスポートのチャージホースを外す。

冷媒の充填

  1. 液管(細管)、ガス管(太管)のバルブは「開」とする。
  2. 3方弁のサービスポートとゲージマニホールドの低圧ポートをチャージホースで接続する。
  3. ゲージマニホールドの中央ポートに冷媒ボンベをチャージホースで接続する。
  4. ゲージマニホールドの中央ポートのムシ押しで、チャージホース内のエア抜きをする。
  5. 冷媒ボンベをデジタルスケール(冷媒計量器)にセットして、目盛を0にする。
  6. ゲージマニホールドの低圧バルブ、冷媒ボンベのバルブを開けて、スケールの値と圧力を見ながら規定量までガスを充填する。
  7. ゲージマニホールドのバルブを閉じて、冷媒ボンベのバルブを閉じる。
  8. 3方弁のサービスポートのチャージホースを外す。

ポンプダウン

受液器出口弁を閉じてしばらく装置を冷房運転し、低圧側の冷媒を高圧側の凝縮器ないし受液器に冷媒液として回収すること。
エアコンの取り外しの際などに、室内機や配管内に残った冷媒ガスを室外機に回収する。

  1. 液管(細管)、ガス管(太管)のバルブは「開」とする。
  2. 3方弁のサービスポートにゲージマニホールドの低圧ポートをチャージンホースで接続する。(ゲージマニホールドの低圧バルブは閉のまま)
  3. 液管(細管)のバルブを閉め、強制冷房運転を行って、ゲージマニホールドの圧力が0になったら、ガス管(太管)のバルブを閉める。
  4. 冷房運転を停止して、チャージンホースを外す。

Ver.1.1.0

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