圧力容器の分類
圧力容器とは、内部の圧力が大気圧を超える容器(オートクレーブ)であって、ボイラーを除くものである。
第一種圧力容器
大気圧における沸点を超える温度の液体(蒸気)を保有する容器。
最高使用圧力(MPa)と内容積(m3)の積の値が大きいもの。
圧力をかけて容器内で気体が発生するもの。(原子炉圧力容器、アキュムレータ、熱交換器など)
1カ月以内に1回定期自主検査と、1年以内に1回労働基準監督署の性能検査を行う
第二種圧力容器
ゲージ圧力0.2MPa以上の気体を保有する容器。
内容積が0.04m3以上の容器。
胴の内径が200mm以上で、かつ、その長さが1000mm以上の容器。
圧力をかけるが容器内で気体が発生しないもの。(中にガスをいれるボンベ、ガスタンクなど)
1年以内に1回、定期自主検査を行う。
小型圧力容器
第一種圧力容器と同じで、サイズが小さいもの。
最高使用圧力(MPa)と内容積(m3)の積が0.02以下の容器。
1年以内に1回、定期自主検査を行う。
圧力容器の力学
円筒胴容器の応力
円筒胴では、胴板には引張応力が生じ、鏡板(両端の板)には圧縮応力が生じる。
一般に圧力容器で強度が問題になるのは引張応力で、圧力と内径に比例し、板厚に反比例する。(円筒胴の長さは関係ない)
円筒胴の引張応力には、接線・周方向(縦)の引張応力と、長手・軸方向(横)の引張応力の2種類がある。
周・接線(縦)の引張応力は、長手・軸方向(横)の2倍となる。
周継手には、長手方向の力がかかり、長手継手には、周方向(縦)の力がかかるので、長手継手の強さは、周継手の強さの2倍以上必要である。
掃除用のマンホールは、だ円(短径275mm以上、長径375mm以上)が望ましく、引張応力を考え、短径を長手・軸方向(横)とする。

長手・軸方向(横)の引張応力
$\displaystyle σ_z=\frac{PD}{4t} \ [N/mm^2] $
接線・周方向(縦)の引張応力
$\displaystyle σ_θ=2σ_z=\frac{PD}{2t} \ [N/mm^2] $
$σ$:引張応力 [$N/mm^2$]
$P$:内圧 [$MPa$]
$D$:内径 [$mm$]
$t$:厚さ [$mm$]
圧力容器の設計
圧力容器の圧力
最高使用圧力
構造上使用可能な最高のゲージ圧力。
温水ボイラーは、常用圧力。
設計圧力
耐圧試験や気密試験の試験圧力の基準。ゲージ圧力が使用される。
高圧部は、圧縮機の吐出しから膨張弁の入口までの部分である。
低圧部は、膨張弁の出口から圧縮機の吸込みまでの部分である。
二段圧縮の冷凍設備では、高圧段の圧縮機の吐出し圧力以上の圧力を受ける部分を高圧部とし、その他を低圧部として取り扱う。
R22の基準凝縮温度43℃(水冷凝縮)での高圧部設計圧力は1.6MPa、低圧部設計圧力は1.3MPaである。
- 高圧:通常の運転状態で起こり得る最高の圧力。(冷媒と基準凝縮温度で決まる)
- 低圧:停止中に周囲温度の高い夏季に冷媒が38~40℃まで上昇したときの飽和温度に基づいて規定する。
許容圧力
安全装置の作動圧力の基準。ゲージ圧力が使用される。
設計圧力または腐れしろを除いた肉厚に対応する圧力のうち、低いほうの圧力をいう。
設計圧力を元に板厚が作られたものならば、設計圧力に等しい。ただし、他からの転用の場合は、板厚から腐れしろを除いた厚さをもとに計算しなければならない。
板
板厚
圧力容器の円筒胴の設計板厚は、設計圧力・円筒胴内径・材料の許容引張応力・溶接継手の効率・腐れしろから求める。
円筒胴の直径が大きく、内圧が高いほど、円筒胴の必要とする板厚は厚くなる。
腐れしろ
腐食の厚みのこと。
設計時に材料に応じた腐れしろ(0.2~1mm)をプラスして板厚を決める。
鏡板(かがみいた)
圧力容器の両端につく半球形状の物。
鏡板の強度の順番は、全半球>半だ円>皿>平となるが、平形はあまり使用しない。
応力集中は、形状や板厚が急変する部分に起こるので、隅の丸みが大きくなる(球体)ほど応力が小さくなり、薄くできる。
平鏡板は、圧力に対して強度が弱く変形しやすいので、大径のものや高い圧力を受けるものはステーによって補強する。
皿形鏡板は、球面・環状・円筒の3つの殻部から成り、すみの丸みは環状殻部に属する。

ステー
鏡板・管板の補強部品。
管ステー
煙管群内につけて前後の管板を支える肉厚の管。煙管の役目もする。
端部は燃損防止のため、ころ広げと縁曲げをして角を突起させないようにする。
管板に溶接又はねじ込みによって取り付ける。
ガゼットステー
平鋼板を用いて鏡板を胴で支える。
炉筒煙管ボイラーで広く用いられている。
溶接によって取り付ける。
炉筒との間はすきま(ブリージングスペース)をとる。
棒ステー
鋼製の棒で鏡板を支える。
胴の長手方向(両鏡板の間)に設けたものを長手ステー、斜め方向(鏡板と胴板の間)に設けたものを斜めステーという。
圧力容器の材料
SM400B(溶接構造用圧延鋼材)
圧力容器で使用される鋼材。
最小引張強さは400N/mm2である。
許容引張応力は400×1/4=100N/mm2となる。
溶接
溶接は主にアーク溶接で、突合せ両側でおこなう。
低温脆性
一般の鋼材は、氷点下のある温度以下で急激に脆くなること。
低温脆性による破壊は、衝撃荷重などが引き金になって、降伏点以下の低荷重のもとでも突発的に発生する。
圧力容器の試験
耐圧試験
静的圧力に安全に耐えられる強度を有することを確認する試験。
配管以外の部分について行う。
水や油を用いて液圧を使って確認する。
耐圧試験圧力は、設計圧力または許容圧力のいずれか低いほうの圧力の1.5倍以上の圧力とする。
やむを得ない場合は、空気・窒素などの気体を使用するが、この場合は1.25倍以上の圧力とする。
気密試験
使用状態において気体等が漏れ出ないことを確認する試験。
耐圧試験の後に行う。
配管部分についても行う。(プレートフィンコイルは配管の扱いとなる)
ガス圧を使い、気密試験圧力は、設計圧力または許容圧力のいずれか低いほうの圧力よりも高い圧力で行う。
気密試験に用いるガスは、空気または不燃性ガスとし、酸素(空気は良い)や可燃性ガスを用いてはならない。
アンモニア冷凍装置は、二酸化炭素(炭酸ガス)は使用できない。
圧縮空気を使用する場合は、油が劣化しないように空気温度は140℃以下とする。
被試験品内のガス圧力を気密試験圧力に保った後に、水中に入れるか、外部に発泡液を塗布して、泡の発生がないことなどを確認して合格とする。
空気を使用すると水分が混入するので、試験後は真空乾燥を充分行う。
真空試験
法には定められていないが、水分を嫌うフルオロカーボン冷凍装置や冷凍設備内の微量の漏れの発見のために行う。
気密試験の後に行う。
配管内を絶対圧力8kPa程度の真空にし、数時間から一昼夜程度放置する。
真空計(大気圧以下の圧力を測るための圧力計)を用いて行う。
漏れの箇所を特定することはできない。
装置内に残留水分があると真空になりにくいので、乾燥のために水分の残留しやすい場所を、120℃を超えない範囲で加熱するとよい。
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