ボイラーの分類

スポンサーリンク

ボイラーの指標

伝熱

熱の移動

燃焼室を放射伝熱面、通路を接触伝熱面、蒸気の存在する部分を蒸気部、水の部分を水部といい、水面の位置を水位という。
金属棒などの固体内部の熱移動は熱伝導、固体壁に接触する流体などの固体-液体間の熱移動は熱伝達、ボイラーの燃焼室からの空間の熱移動は放射伝熱である。
過熱蒸気は、ボイラーの飽和蒸気を過熱器で加熱して生成するが、この過熱蒸気温度と飽和蒸気温度の差を過熱度という。(乾き飽和蒸気ではない)
蒸気の発生に要する熱量は、蒸気圧力、蒸気温度及び給水温度によって異なる。

水の循環

ボイラー内で、温度が上昇した水及び気泡を含んだ水は上昇し、その後に温度の低い水が下降して水の循環流ができる。
水循環が良いと、熱が水に十分に伝わるので、伝熱面温度は水温と近くなる。
水循環が悪いと、伝熱面の焼損、膨出などの原因となる。

容量と効率

容量

1時間に発生する蒸気量[kg/h]で表す。

換算蒸気量

圧力・温度の異なるボイラーの容量を同じ基準で比較するための指標。
実際に給水から所要蒸気を発生させるために要した熱量を、蒸発潜熱2257kJ/kgで除したものである。

$\displaystyle G_e=\frac{G(h_2-h_1)}{2257} \ [kg/h] $

$G_e$:換算蒸気量 [$kg/h$]
$G$:実際蒸気量 [$kg/h$]
$h_1$:給水の比エンタルピー [$kJ/kg$]
$h_2$:蒸気の比エンタルピー [$kJ/kg$]
$2257$:水の蒸発潜熱 [$kJ/kg$]

ボイラー効率(ηB)

全供給熱量に対する発生蒸気の吸収熱量の割合をいう。
ボイラー効率=発生蒸気熱量/燃料発熱量
燃料の発熱量は、一般に低発熱量(水蒸気の蒸発潜熱を含めない熱量)を用いる。

配管

蒸気配管

蒸気配管の圧力は高圧で0.1~1MPa、低圧で0.01~0.05MPaである。

丸ボイラー

大きい径の胴を有し、内部に炉筒、燃焼室、煙管などを有する。伝熱面は水部にある。

利点

構造が簡単で取り扱いやすい。
安価である。
負荷変動による圧力変動は少ない。
水の対流が容易で、特別な水循環の系路を構成する必要がない。

欠点

伝熱面積が制限されるので高圧や大容量にはできない。
保有水量が多いので蒸気発生まで時間がかかり、破裂の際に被害が大きい。

立てボイラー

胴が直立し、燃焼部が底部にあり、水面の上部に鏡板があるボイラー。
煙管の無い横管式と、煙管のある多管式がある。

  • 利点:狭い場所に設置でき、据付が簡単である。小容量にむいている。
  • 欠点:伝熱面積は少なく、効率は悪い。水面が狭いので、蒸気に水分が多い。小型なので掃除、点検が不便である。

炉筒ボイラー

横に置いた直径の大きなドラムに、軸方向に貫く大きな炉筒を設けたもの。
炉筒1本のものをコルニッシュボイラーといい、2本のものをランカシャボイラーという。
効率がよくないので,最近では新造されることは少ない。

煙管ボイラー

横に置いたドラムの水面下に、燃焼ガスの通る煙管を多数設けて伝熱面積を大きくしているもの。
炉筒ボイラーより伝熱面積が大きく効率が良い。
炉が胴内にあるものを内だき式、外にあるものを外だき式といい、外だき式は、燃焼室の設計が自由にできる特徴がある。

炉筒煙管ボイラー

直径の大きな横型ドラムを本体とし、燃焼室煙管群で構成される内だき式ボイラー。
横型鋼板製の胴内(円筒形)に、炉筒(円筒の中央部分)と多数の直管煙管があり、本体内の水を炉筒と煙管で燃焼ガスを3パスしている。
圧力1Mpa、伝熱面積が20~200m2、蒸気量10t/h程度である。
完成状態で運搬できるコンパクトなパッケージ形式となっていて、自動制御が主流である。
加圧燃焼方式(炉内の圧力を高くする)を用い、煙管にはスパイラル管を使用するなど、燃焼効率が高い。
戻り燃焼方式(後端の閉じられた炉筒を用い、燃焼火炎が炉筒後部で反転して前方に戻る)が採用されているものもある。
炉筒は燃焼室として使用し、平形の場合は接続部は伸縮継手とする。波形(モリソン形など)は、伸縮が自由で伝熱面積が広く、強度が高い。
構造上、清掃が困難なので、給水管理が重要である。

水管ボイラー

下側の水ドラムと上側の蒸気ドラムを複数の細い水管で繋いだボイラー。
燃焼室で水管が暖められ、蒸気ドラム内の気水分離器で蒸気と水が分離される。
蒸気を熱媒としている。
水管の外径は50mm前後である。
水循環を良くするため、水と気泡の混合体が上昇する管と、水が下降する管を区別して設けているものが多い。
水管は、ドラムに垂直になるように曲げた曲管を千鳥配置しているものが多い。
水管ボイラーの鏡板は、皿形(低圧)、半だ円体形(高圧)が多く用いられる。
管寄せとは、水管ボイラーで水ドラムの変わりに設置するもので、鋳鉄製もある。

利点

短時間で高圧蒸気が作れる。
高圧大容量に適している。
伝熱面積を大きくとれるので効率が良く、様々な燃料に対応できる。

欠点

負荷変動により圧力や水位が変動しやすい。
水の不純物を除去する水処理が必要である。

自然循環式水管ボイラー

熱による自然対流で水が循環するもの。
蒸発水管と下降管中の水の密度差(比重差)によってボイラー水が循環する。
高圧になると蒸気と水との密度差が小さくなり、循環力が弱くなる。

立て水管式

内側の燃焼室内部にある受熱の大きい管を上昇管、外側の燃焼室外部にある受熱の小さい管を下降管にした構造のもの。
小型・低圧ボイラーに多い。

曲管式

水冷壁と水管群をもち、水管がドラムに対して直角に繋がれているもの。
曲管なので直管より熱膨張に強い。
蒸気ドラムと水ドラムを1個ずつ持つ2胴形が一般的である。
中小容量で多く使用されている。

強制循環式水管ボイラー

ポンプなどの動力で水を循環させるもの。
水管を自由に配置でき、チューブ径を小さく、ボイラーの高さを低くできる。
高圧用に適している。急速起動に適する。

貫流ボイラー

長い水管の端から給水し、臨界圧力で水が直ちに蒸気になる水管ボイラー。
蒸気ドラムが無く、水管壁に囲まれた燃焼室水管群で構成される。
管内で予熱、蒸発、過熱され、水の循環が無い。

利点

熱効率が良く、水量が少ないので瞬時に蒸気を取り出せる。
構成がコンパクトである。
蒸気ドラムを使用しないので高圧ボイラーに適している。超臨界圧力ボイラーはすべて貫流式である。

欠点

水量が少ないので負荷変動に弱い。
圧力変動の応答に速い自動制御装置が必要である。
ボイラー水が不足した場合に、自動的に燃料の供給を遮断する装置を設ける必要がある。

水冷壁

燃焼室の内側周囲に水管を配置し、火炎の放射熱を吸収して、壁を保護するもの。
水冷壁は丸ボイラーには設置しにくい。

  • タンゼントチューブ壁:裸水管そのまま。
  • フィンチューブ壁:管の両側にひれを溶接した物。
  • メンブレンウォール:ひれを介して管を溶接して板にしたもの。
  • スタッドチューブ壁:管に突起物を溶接し耐火剤をつけたもの。

鋳鉄製セクショナルボイラー

複数の鋳鉄製のセクション(煙道・燃焼室・水管)を連結させて1つボイラーを作る。
ビルで暖房用や温水用の低圧蒸気ボイラー、温水ボイラーで使用される。

利点

セクションの増減で能力が決まるので、能力の増減が容易で、分割搬入が可能である。
鋼板に比べて腐食に強く寿命が長い。

欠点

鋳鉄は強度が弱いので、高温高圧大容量のものの製作は難しい。
最高圧力は蒸気で0.1Mpa、温水で0.5Mpa・120℃以下に制限される。
セクション内部の掃除・検査が難しく、スケール防止のため、装置系を密閉で設計・使用する。

セクションの構造

セクションをニップルで結合して組み立てる。(最大20個)
セクションの上部は蒸気部連絡口で、下部は水部連絡口である。

  • ウェットボトム式:底部にもボイラー水を循環させ、効率を上げている。
  • ドライボトム式:底部がレンガ積みで、ガスが漏れやすく加圧燃焼ができない。

ハートフォード式連結法

暖房用鋳鉄製蒸気ボイラーの低水位事故を防ぐための配管法。
暖房用の蒸気ボイラーとして使用する場合、放熱器で蒸気が冷やされて水(復水)になる。この水をボイラーに戻す役割をするのが、返り管である。
返り管に給水を接続したものを、安全低水位面の15cm以内の下まで立ち上げてボイラーに接続する。
返り管が空の状態になっても、ボイラー水が安全低水位面まで残るようにする。
水道水から給水する場合は、ボイラー水の逆流を防ぐため、返り管に接続する。

温水ボイラー

蒸気ではなく温水をつくるボイラー。
水面計は使用せず、ボイラー水が最高温度となる出口付近に温度計を設置し、水高計と同時に見れるようにする。
圧力計は使用せず、水高計を用いる。(圧力計を設けても良い)
水高計は、ボイラーから膨張タンクの水面までの高さから圧力を求めるものである。
圧力が0.3MPa超えの温水ボイラーは、温水温度自動制御装置を設置し、ボイラー水を120℃以下に制御する。

逃がし弁・逃がし管

逃がし弁・逃がし管は、温水ボイラーの安全弁に相当する。
温度上昇での水の膨張による高圧での配管破損などを防ぐ。
120℃以下の温水ボイラーは、安全弁の変わりに、逃がし管、逃がし弁を使って膨張した水を膨張タンクに逃がす。
逃がし管・返り管は、凍結しないようにする。

逃がし弁

設定した圧力を超えると、弁体を押し上げ、水を逃がす。
逃がし弁は、逃がし管を設けない場合、又は密閉型膨張タンクとした場合に用いられる。

逃がし管

ボイラーと高所に設けた開放型膨張タンクとを接続する管。
逃がし管に、弁をつけてはならない。
逃がし管は、伝熱面積に応じて最小径が定められている。

特殊ボイラー

廃熱ボイラー

排気ガスを熱源に、蒸気を作り出すボイラー。
廃ガスの熱を利用するので、ダストや腐食性ガスの処理が必要である。

特殊燃料ボイラー

燃料として、パルプ工場の廃液(黒液)を利用するソーダ回収ボイラーや、製糖工場のカスであるバカス、パルプ工場の樹皮であるバーク、木くずを利用するものもある。

流動層燃焼ボイラー

流動層燃焼(石炭などの固形燃料と石灰石などの粒子を、下から吹き上げて流動化して燃焼させる)を利用したボイラー。
低質燃料でも燃焼可能である。

熱媒ボイラー

水より高い飽和温度(200℃~400℃)を持つ有機熱媒(ダウサム)を利用したボイラー。
常圧で高温度が得られる。低圧なので、工場内の加熱・乾燥などに利用する。



Ver.1.2.0

タイトルとURLをコピーしました