水面計
ボイラーの水面の位置が適切かを監視するために、胴内からパイプを引き出してガラス管に水位を表示する。
常用水位と現在水位が容易に比較できるように表示する。
貫流ボイラーを除く蒸気ボイラーには、原則として、2個以上のガラス水面計を見やすい位置に取り付ける。
内径750mm以下の小型ボイラーは1個でよい。
ガラス水面計の設置
パイプ詰まりによる事故を防ぐため、2個以上設置する。
最下部が安全低水面と同じ高さとなるように取り付ける。
安全低水面は、炉筒煙管ボイラーで炉筒と煙管の高いほうで、煙管の時は75mm以上、炉筒の時は100mm以上とする。
水側の連絡管は、水面計の最低水位より上であってはならない。
蒸気側の連絡管は、水面計の最高水位より下であってはならない。
連絡管は、水柱管にスラッジがたまらないように、水柱管方向へ上り勾配とする。
ガラス管の内径は10mm以上とし、毛管現象による水位の誤差をなくす。
ガラス水面計の種類
丸型、平形反射式、平形透視式、二色、遠方などの種類がある。
- 丸型:丸形ガラスを使用している一般的な水面計。高圧のボイラー(1MPa超)には適さない。
- 平形反射式:平形ガラスを使用しており、水部が黒色、蒸気部が白(銀)色で表示される。
- 平面透視式:裏側から電灯の光を通すことにより、水面を見分ける。高圧ボイラーに用いられる。
- 二色:光の屈折を利用しており、水部が緑色、蒸気部が赤色で表示される。
- マルチポート:金属製の箱に小さな丸い窓を配列し、円形透視式ガラスをはめ込んだもの。使用できる圧力が平形透視式水面計より高い。
機能試験と維持管理
機能試験
水面計の機能試験は毎日行う。ボイラーに残圧がある場合は、炊き始め前に行い、残圧が無い場合は、炊き始め後の圧力が上がり始めたときに行う。
二個の水面計に差異がある時、水位の動きが鈍い時などにも実施する。
機能試験は以下の順番で行う。
吹き出し作業中は水面計を使用しているので、機能試験は行えない。
ガラス管の水抜き→水の吹き出し確認→蒸気の吹き出し確認→コックを元に戻す
維持管理
水柱管は、スラッジ排出のため1日1回吹出しを行う。
水面計の蒸気コック、水コックを開くときは、ハンドルを水面計の管軸に対し直角方向にする。
水柱管の連絡管の途中にある止め弁は、誤操作を防ぐため、全開にしてハンドルを取り外しておく。
ガラス水面計のパッキンの押さえナットは、強く締め付けると故障の原因である。
ガラス管の破損原因としては、腐食や熱による衝撃があるが、スケールの付着は考えられない。
ガラス水面計は、随時、清掃および点検ができる構造とする。また、コックは漏れやすくなるので、6カ月ごとに分解整備する。
験水コック
ガラス水面計に代わるのもで、ボイラーの胴や水柱管内に上・中・下(安全低水面)で3個以上とりつける。
これらの開閉により水位を知ることができ、水面計が正常に機能しているかをチェックできる。
内径750mm以下の小型ボイラーは2個でよい。
ボイラーの計器
圧力計
圧力計の最大指度は、最高使用圧力(安全に使用できる圧力の上限値)の1.5~3倍で、通常は2倍が多い。
設置
原則として、胴又は蒸気ドラムの一番高い位置に取り付ける。
最高使用圧力を示す位置に、見やすい表示をする。
圧力計のコックは、ハンドルが管軸と直角方向になったときに閉じるように取り付け、開閉状況を容易に知ることができるようにする。
使用中その機能を害するような振動を受けることがないようにする。
サイホン管とよばれるS字の管に水をいれて、ブルドン管が80℃以上にならないように直接蒸気が当たらないようにしている。
維持管理
寒冷期に休止する場合は、凍結しないようにサイホン管を空にしておく。
試験は1年に1回おこない、一定の使用期間後は交換する。
水高計
温水ボイラーの圧力と温度を計るもの。
ボイラーから膨張タンク内の水面の高さを表す。
流量計
流量計は水や油の消費量を計測するもので、瞬時値と積算値を計るものがある。
面積式
テーパ管内のフロートが流量の変化に応じて上下に可動し、テーパ管とフロートの間の環状面積が流量に比例することを利用している。
容積式
ケーシングの中で、だ円形歯車を2個組み合わせ、これを回転させると、流量が歯車の回転数に比例することを利用している。
差圧式
ベンチェリ管とオリフィス管を使用し、流体が流れている管の中に絞りを挿入すると、入口と出口との間に流量の二乗に比例する圧力差が生じることを利用している。
通風計
ダクトなどで、大気圧とガス圧の差から風力を計測する。
U字ガラス管式では、計測する場所の空気、又はガスの圧力と大気圧との差圧を水柱で示す。
ボイラーの燃焼装置
燃料油タンク
燃料タンクには、貯蔵タンクとサービスタンクがある。
貯蔵タンクは、1週間~1カ月の使用量を貯蔵する。
サービスタンクは、最大燃焼量の2時間程度を貯蔵し、自動油面調整装置を設ける。
油送入管はタンク上部に位置し、油逃がし管は底部から20cm~30cm上に設ける。
油ストレーナは、油中の土砂、鉄さび、ごみなどの固形物を除去するものである。
油加熱器には、蒸気式と電気式がある。
バーナ
燃料油を微粒化して、表面積を大きくし、空気と接触させて、燃焼反応を速くするもの。
バーナで噴霧された油は、バーナタイル及び炉内の放射熱で予熱され、徐々に気化する。ここで油が着火温度に達すれば火炎を形成する。
ターンダウン比とは、バーナの燃料量調整範囲のことである。
液体燃料では、ロータリーバーナ、圧力噴霧式バーナ、ガンタイプバーナなどがある。
気体燃料では、拡散型バーナ、予混合型バーナなどがある。
圧力噴霧式バーナ
高圧力(バーナの中では最高)でノズルチップから油を噴霧する。
ターンダウン比が狭い。
噴油量の調整には、バーナの数や種類を変更するしかない。
戻り油式やプランジャ式はターンダウン比が広くなる。
高圧蒸気噴霧式バーナ
蒸気と空気の霧化媒体を送風し、油を送出して霧化する。
ターンダウン比が広い。
低圧気流噴霧式バーナ
4~10kPaの低圧空気を霧化媒体として使用する。
回転式バーナ
回転軸の先端にあるカップの内面から燃料を出し、回転の遠心力で微粒化する。
中小容量で使用する。
ガンタイプバーナ
空気噴霧式バーナ、ファン、点火装置、燃焼安全装置、負荷制御装置などを一体としたもの。
中・小容量ボイラーに用いられる。
ターンダウン比が狭いので、オンオフ自動制御を行っている。
センタータイプガスバーナ
空気流の中心にガスノズルがあり、先端からガスを放射状に噴射する。
リングタイプガスバーナ
リング状の管の内側に多数のガス噴射孔があり、ガスを空気流の外側から内側に向かって噴射する。
マルチスパッドガスバーナ
空気流中に数本のガスノズルがあり、ガスノズルを分割することによりガスと空気の混合を促進する。
拡散燃焼方式ガスバーナ
ガスと空気を別々にバーナに供給して、燃焼室内で混合気体を作り燃焼させる方式。
逆火が少なく大容量バーナ向きで、火炎調整が楽なのでほとんどのボイラーで利用している。
空気の流速・旋回強さ、ガスの分散・噴射方法、保炎器の形状などにより、火炎の形状やガスと空気の混合速度を調節する。
予混合燃焼方式ガスバーナ
バーナ内で予め燃料と空気を混合した混合気体を供給して燃焼させる方式。
一次空気のみの完全予混合形と、二次空気を使用する部分予混合形がある。
安定な火炎を作りやすいが、逆火の危険があるため小容量のパイロットバーナで利用されている。
気体燃料に特有な燃焼方式である。
点火装置
スパーク式点火装置は、点火用変圧器(トランス)を使って7000~15000Vのスパークを発生する装置である。
点火バーナ(パイロットバーナ)は、メーンバーナに先立って点火させるもので、大型の燃焼装置で使用し、LPGガスを使用して点火する。
点火時に圧力が高いと、炎がノズルから離れてしまい、低いと短炎や逆火となる。
バーナ点火は、着火時のショックを軽減するため、低燃焼域でおこなう。
不着火の原因には、油の温度が低すぎるなどがあるが、判定は安全スイッチがおこない、5秒間である。
燃焼室
条件
燃焼室の形状は、燃料や装置によって変わる。
炉壁には、れんが壁、不定形耐火壁、水冷壁(メンブレンウォール)などがある。最近は空冷れんが壁は使われない。
燃焼室の条件は、高温での完全燃焼、着火性の良さ、燃焼速度が速い、燃料と空気の相対速度を適正(速める)にする、放射損失が少ないなどがある。
速やかな着火には、バーナタイル・着火アーチを設けるなどが必要である。
バーナの火炎が伝熱面や炉壁を直射しないようにする。
燃焼と熱量
油・ガスだき燃焼における一次空気は、燃焼装置にて燃料の周辺に供給され、初期燃焼を安定させる。
二次空気は、旋回又は交差流によって燃料と空気の混合を良好に保ち、燃焼を完結させる。
炉内滞留時間は燃焼完結時間より長くなくてはならない。
燃焼室の熱負荷は、1時間あたりの単位容積の発生熱量で示される。これが小さい物ほど燃焼室の容積は大きくなる。
炉筒煙管ボイラーでは、400~1200kw/m3である。(水管ボイラーの石炭使用では200kw)
ボイラーの熱損失で最大のものは排ガス熱によるものである。
通風装置
燃焼室での正常な燃焼を実現するための装置。
自然通風
炉・煙道を通じて起こる空気・燃焼ガスの流れで、密度の低い高温ガスは上昇することを利用したものである。
温度が高いほど通風力は大きくなり、煙突が高いほど、通風力は大きくなる。
煙突の通風力は、密度の差×煙突の高さで表され、単位は[Pa]である。
押込通風
燃焼用空気をファンで圧力を高くして炉内に押込むもの。
空気を扱うので体積が小さく所要動力は最も小さい。
空気流と燃料噴霧流が有効に混合するため、燃焼効率が高まる。
気密が不十分だと燃焼ガスが外部へ漏れ出す。
誘引通風
炉内圧力を低くして、燃焼ガスをファンで炉内から煙突へ誘引するもの。
ガスを扱うので体積が大きく所要動力は大きい。
腐食に強いファンが必要である。
ガスの外部への漏れ出しがほとんどない。
平衡通風
押込ファンと誘引ファンを併用したものである。
炉内圧力はわずかに低い。
強い通風力が得られる。
動力は押込通風より大きく、誘引通風より小さい。
ファン
風圧・風量にあわせて選択するが、ボイラー用には、風圧が低く、送風量が多いものが必要である。
ファンには、多翼形、後向き形、ラジアル形がある。
- 多翼形:羽根車の外周近くに、前向きの羽根を多数設けたもので、風圧が小さく効率は悪い。小型・軽量・安価である。
- 後向き形:羽根車の主板及び側板の間に、後向きの羽根を多数設けたもので、効率がよく風圧が高くいため、高温・高圧・大容量に向いている。
- ラジアル形:中央の回転軸から放射状に複数の羽根を設けたもので、形状が簡単で強くて丈夫である。
燃焼安全装置
燃焼安全装置は、主安全制御器、火炎検出器、燃料遮断弁、制限器から構成される。
低水位、蒸気圧力の過昇、不着火、異常消火などで燃焼停止が作動する。
燃料遮断弁はバーナの近くに設置する。
火炎検出器は、火炎の有無や強弱を検出し電気信号に変換する装置で、燃料やバーナの構造に合ったものを選ぶ必要があり、清掃も欠かせない。
点検では、疑似火炎を検出しないように感度を調整する。
種類は、フォトダイオードセル、硫化鉛セル、整流式光電管、紫外線光電管、フレームロッドがある。(硫化カドミウムセル×)
ボイラーの蒸気装置
蒸気管
ボイラーで発生した蒸気を使用先へ送るもの。
曲がり部は十分な半径をとり、蒸気トラップを設け、長い管には伸縮継手を用いる。
蒸気止め弁
蒸気が胴へ逆流するのを防ぐ弁。
ボイラーの最高蒸気温度、最高使用圧力に耐えるもので、ドレンが溜まる位置に設置する場合は、ドレン抜きを備える。
蒸気トラップ(スチームトラップ)
蒸気使用設備の中に溜まるドレン(凝縮水)を自動的に排出し、ウォーターハンマ(スチームハンマ)を防止する。
機械的構造で排出する下向きバケットやフロート、温度差を利用して金属変形で排出するベローズやバイメタルを使用したもの、熱の圧力を利用するディスクなどの種類がある。
気液分離装置
ボイラーの胴の蒸気室の頂部に主蒸気管を直接開口させると、水滴を含んだ蒸気が送気されやすいため、蒸気だけを取り出す装置を付ける。
プライミングやフォーミングの対処である。
高圧ボイラーでは気水分離器、丸ボイラー・低圧ボイラーでは沸水防止管(アンチプライミングパイプ)が使用される。
気水分離器
蒸気ボイラーで、蒸発管から送られてくる蒸気と水を遠心力などを利用して分離し、乾き度の高い飽和蒸気を得る装置。
沸水防止管(アンチプライミングパイプ)
大径のパイプの上面の多数の穴から蒸気を取り入れ、蒸気流の方向を変えて、胴内に水滴を流して分離する。
スチームドーム
供給前の蒸気を溜める所で、蒸気内の水分を落として、蒸気の乾き度を高めるために使用する。
減圧装置
発生蒸気の圧力(一次側圧力)と使用先の圧力(二次側圧力)の差が大きい時に、減圧弁で減圧し、使用先の圧力を一定に保つ装置。
これは蒸気量を減らすものではない。
ボイラーの給水装置
給水装置は、ボイラーの最大蒸気量以上のものとする。
給水装置の最小能力は、最大蒸発量の25%以上かつ、他の給水装置の大きいほうを基準とする。
固体燃料など燃料供給を遮断しても、しばらく燃える場合は給水装置は2個設置して、それぞれ別動力とする。
使用前の給水では、ボイラーの種類によってはマンホールを開けたままおこなってもよい。
給水ポンプ
ボイラーに水を送給する。
負荷変動に対応でき、低負荷でも効率が良いものとする。
動作が確実で操作が簡単であり、高温高圧に耐えられ、高速回転でも安全であるものとする。
並列運転に支障がないものとする。
渦巻ポンプは低圧・小容量の蒸気ボイラーで使用する。
ディフューザポンプ(タービンポンプ)は高圧ボイラーで使用する。
凝縮水給水ポンプは、重力環水式の暖房用蒸気ボイラーで、凝縮水をボイラーに押し込むために用いられる。
ポンプの運転
ポンプ起動前には、ポンプ内及びポンプ前後の配管の空気抜きを行う。
起動順番は以下となる。
吸い込み弁を全開にする→電動機を動かす→吐出し弁を徐々に開く→電流計を見て異常が無いことを確認する
停止順番は以下となる。
吐出し弁を閉じる→電動機を止める→吸い込み弁を閉じる
インゼクタ
予備給水用のポンプで、ボイラーで発生した蒸気をノズルから噴出させ、その勢いで給水する。
インゼクタの起動方法は以下となる。
水の吸い込み弁を開く→蒸気管の止め弁を開く→インゼクタの蒸気弁を開く
給水管
給水管の構造は、給水逆止め弁→給水弁→ボイラーの順番である。
給水逆止め弁は、0.1MPa未満の蒸気ボイラーと貫流ボイラーには必要ない。
給水内管
長い鋼管に多数の穴を設け、穴から水を散水する。
胴又は蒸気ドラム内の安全低水面よりやや下方に取り付ける。
取り外しができる構造とする。
燃焼ガスに触れる給水管、吹出管及び水面測定装置の連絡管は、耐熱材料で防護する。
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