ボイラーの管理

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ボイラーの運転

取扱い上の危険は、炉内ガス爆発と圧力による破裂の危険である。

使用開始前

使用開始前準備

  • ガラス水面計のコックは滑らかに動くくらいとする。(強く締めすぎないこと)
  • ダンパは滑らかに動くこと。
  • 圧力計は0を示し、コックは開いていること。
  • 安全弁から蒸気が漏れた後がないか確認する。(締めなおさないこと)
  • 主蒸気弁は閉じておく。
  • 管の取り付け状態を確認する。
  • 内部に異物がないか確認し、マンホールは密閉する。
  • 空気抜き弁は白い蒸気が出るまで開いておく。

点火前点検

  1. 水面計の機能試験を行い、験水コックを開き、常用水位であることを確認する。
  2. ボイラー水の吹出しをする。
  3. 圧力計が0を指し、コックは開いていることを確認する。
  4. 給水タンクの貯水量とディフューザポンプの軸パッキンを確認する。
  5. 空気抜き弁は開いていることを確認する。
  6. ガス爆発防止のため、煙道ダンパを全開にしてガスの換気をする。(プレパージ)
  7. 燃料装置、燃料タンク(油量やガス圧など)を確認する。
  8. 自動制御装置の確認をする。

点火

手動点火操作(再点火のときも同じ)

  1. 煙道ダンパの調子を点検し、全開にして燃焼室や煙道を十分に換気する。(プレパージ)
  2. ダンパを点火位置に設定。(通風圧の調整)
  3. バーナ先端のやや前方下側に点火棒を入れる。(バーナが複数ある場合は、下から点火し、安定してから次を点火する。必ず火種を使う)
  4. 燃料弁を開く。(点火制限時間内に着火しないとき、着火後に燃焼が不安定なときは、直ちに燃料弁を閉じ、炉内を換気する)

自動点火操作

  1. ファン運転による点火前換気。(プレパージ)
  2. 点火装置起動。
  3. 燃料遮断弁開。

炊き始め

炊き始め(圧力上昇時)

  • ボイラーの損傷を防ぐため、急激な炊き方(燃焼量を増やす)をしない。低圧ボイラーで最低1~2時間かける。
  • ボイラーをたき始めるとボイラー水の膨張により水位が上昇する。
  • 空気抜き弁は白い蒸気が出るまで開けておく。
  • 吹出し弁の開口部が見えない場合は、時々吹出し弁の先に手を触れて、熱くないか(漏れが無い)を確認する。
  • 水面計の水位は、上下に少し揺れていて、圧力で少し上昇する。
  • 圧力計を注視して燃焼の加減をする。
  • 圧力計に異常がある時は、圧力計の背面を指先で軽くたたいてみる。正常にならない場合はコックを閉めて、予備の圧力計と交換する。
  • 主蒸気弁はまだ開かない。

主蒸気弁(主蒸気止め弁)の開放

  • 主蒸気管の下流にあるドレン弁や蒸気トラップの弁を先に開ける。
  • 蒸気だめや主蒸気弁を少し開けて、配管を暖管する。
  • 最後に主蒸気弁を徐々に開けて全開にしていく。全開にしたら少しハンドルを戻す。

運転中

運転中

  • 常用水位を保つ。(安全低水面以下にならないようにし、給水回数は多くてもよい)
  • 圧力を一定に保つように燃焼を調節する。(最高使用圧力を超えない)
  • 負荷が小さい時に吹出しを行う。(水冷壁、鋳鉄ボイラー、温水ボイラーは使用中には行わない)
  • スートブローを行う。(最大負荷よりやや低いところで行い、燃焼量や通風量を下げないこと)

燃焼調整

  • 蒸気圧力又は温水温度を一定に保つように、負荷の変動に応じて燃焼量を増減する。
  • 燃焼を増やす時は、先に空気を増やして燃料を増やす。減らす時は、燃料を減らしてから空気を減らす。
  • 無理炊きをしない。(ボイラー本体やれんが壁に火炎が触れる状態にしない)
  • 空気量の過不足はガス計測器でCO2、CO、O2の値のほか、炎の色や形で判定できる。
  • 火炎の色はオレンジ色が適量である。赤色の時は空気が少ない。輝白色の時は空気が多い。

停止

停止操作

  1. 燃料を停止する。
  2. ダンパを全開にして換気する。(ポストパージ)
  3. 給水して圧力を下げ、給水弁を閉じる。
  4. 蒸気弁を閉じる。ドレン弁は開く。
  5. ダンパを閉じる。(非常停止の場合は、ダンパは開いたままにする)

ボイラーの異常

水位の低下

水位が低下したら、燃焼を停止し、換気して冷却する。蒸気弁は閉じる。
給水は行わない。(鋳鉄製ボイラーは絶対に給水しないこと)

異常低水位の原因

  • 水位の監視不良。
  • 不純物などによる水面計の不良。(ボイラー水の過多過少、プライミング、フォーミングの発生)
  • 吹出し口などからの水漏れ。
  • 蒸気の大量消費。
  • 給水温度の過上昇などによる給水不能。
  • 掃気量の急増による水位制御の遅れ。

キャリーオーバ(蒸気の異常)

水滴や不純物が蒸気に混じって出て行くことで、プライミング、フォーミング、ウォーターハンマがある。
キャリーオーバが発生すると、水面計の水位が確認しにくくなる。また水位検出器は水位が上がったと誤検出する。
キャリーオーバが頻発する場合は、ボイラー水を入れ替える。

プライミング

負荷が変動してボイラの内圧が低下し、ドラム水位が上昇してボイラ水が蒸気側へそのまま送り出される現象。
蒸気出口に設けられる気水分離器、沸水防止管・アンチプライミングパイプで対応する。
原因として以下のようなものがある。

  • 水面と蒸気取出し口が近い。(高水位)
  • 蒸気負荷が過大になっている。(燃焼過大)

フォーミング

ボイラの不純物でドラム水面に泡が発生し、その泡やボイラ水が蒸気に混入する現象。
原因として以下のようなものがある。

  • ボイラー水(気体ではない)に不純物(油脂や全蒸発残留物)が多い。

ウォーターハンマ

弁などの急開閉による圧力の変動を要因とする水撃作用。
原因として以下のようなものがある。

  • 主蒸気弁を急開した。

燃焼の異常

逆火(バックファイア)

燃料が燃えずに残ってしまい、空気のある入口に向かって引火すること。
原因として以下のようなものがある。

  • 燃料弁の急開などで空気より先に燃料を供給した。
  • 着火の遅れ。
  • バーナの燃料圧力不足。
  • 火種を使用していない着火。
  • ダンパの絞りすぎによる空気不足。

異常消火

原因として以下のようなものがある。

  • 燃焼系の問題。(燃焼安全装置の燃焼停止の作動、油の温度が低い、バーナの圧力が高い、給油系の弁の詰まりなど)
  • 停電や電気系の異常。
  • 低水位の検出によるインタロック。

煙道内ガス爆発(二次燃焼)

未燃ガス(燃料が燃えずに残っている)が空気と混合し、煙道内で再び燃焼するもの。

火炎中の火花

原因として以下のようなものがある。

  • バーナの不良。
  • 圧力の不適切。
  • 通風の強すぎ。(通風不足ではない)

ボイラーの保守

ボイラーの停止

ボイラーの冷却手順

  1. 常用水位を保つため、給水を続ける。
  2. 蒸気の送出を徐々に減らす。
  3. 燃料を止める。
  4. 押込みファンを止めて、ダンパを半開きにして冷却する。
  5. 圧力が無くなったら、給水弁、蒸気弁を閉じて、ボイラー内部が負圧にならないように空気抜き弁を開く。
  6. ボイラー水が90℃以下になったら、吹出し弁から水を排出する。(急冷しない)

埋火

石炭だきボイラーを一時停止する際、次の点火の手数を省くために少量の火種を残すもの。
ダンパは少し開いておく。

ボイラーの清掃

性能検査の準備として完全清掃をする。
燃焼ガス側は外面清掃、水側は内面清掃である。
給水処理の無い低圧ボイラーは、1年に2回以上の内面清掃をおこなう。
酸洗浄は、塩酸でスケールを溶解除去する。(防食の目的ではない)
シリカ分の多い硬質スケールを酸洗浄するときは、所要の薬液で前処理を行い、スケールを膨潤させる。
腐食防止で抑制剤が添加される。
外面清掃では、灰を除去するが、水は掛けない。

清掃上の注意

内部が冷却したら、ダンパを開けて通風しておこなう。
マンホールを外すときは内部の圧力、真空に注意する。
照明の電灯は感電防止のため、安全ガード付きのもの、電線は絶縁効力の高いものを使う。(ビニルコードはダメ)
清掃後、マンホールは平均的に締め付け、運転し始めて昇圧したときに増し締めを行う。ガスケットは薄いものを使用する。

休止中の保存

燃焼側は、すすなどを除去して、防せい油・防せい剤を塗布する。
水側は、3ヶ月程度で凍結のおそれが無い場合は満水保存法、その他は乾燥保存法を使う。

満水保存法

ボイラーの中を水を満水に充満させて保存する方法。
月に1、2回、pHや水の濃度をチェックして汚れてきたら入れ替える。

乾燥保存法

清掃後に少量の燃料を燃焼させて乾燥させて保存する方法。
吸湿剤(シリカゲル、活性アルミナ)は1~2週間で取り替える。

ボイラー水の管理

ボイラー水による障害

水に含まれる硬度成分が管壁などの伝熱面に固着するものをスケール、筒の底に沈殿する物をスラッジと呼ぶ。
スラッジやスケールは、伝熱面を過熱させ熱の伝達を妨げる。管・コックなどを詰まらせ、水の循環を悪くして効率を低下させる。
全蒸発残留物は、スラッジやスケールの原因となり、キャリーオーバの誘発や、腐食の原因ともなる。
腐食には全面腐食と局部腐食(孔食ピッチング、グルーピング)がある。
腐食は、鉄がイオン化することで生じ、溶存気体が主な原因だが、水酸化ナトリウムとの反応によるアルカリ腐食もある。
スラッジやスケール、腐食を防止するため、ボイラー水は以下の注意が必要である。

  • 腐食の原因となる溶存気体(酸素・二酸化炭素)を除去する。
  • pHを中性に近くにする。(腐食の防止には弱アリカリ性がよい)
  • スラッジやスケールの原因となる全蒸発残留物(硬度成分のカルシウム・マグネシウム)を除去する。
  • 水道水はスケールとなる硬度成分が含まれているため、水処理が必要である。地下水は地表水より溶解物質が多い。

溶存気体の除去

溶存気体を取り除く脱気法には、化学的脱気法と物理的脱気法がある。

化学的脱気法

給水の酸素を除去するために脱酸素剤(タンニン、亜硫酸ナトリウム(中低圧ボイラー)、ヒトラジン(高圧ボイラー))を入れる方法。
ボイラー水を新しくした時に、腐食防止を目的として多量の清缶剤を投入する。清缶剤としては、脱酸素剤や軟化剤を利用する。

物理的脱気法

  • 加熱脱気法:水を100℃以上に一旦加熱し、溶存気体の溶解度を下げることにより、溶存気体を除去する方法。
  • 真空脱気法:水を真空雰囲気にさらすことによって、溶存気体を除去する方法。
  • 膜脱気法:高分子気体透過膜の片側に水を供給し、反対側を真空にして溶存気体を除去する方法。

pHの調整

ボイラー水はpH5~9の水を使用するが、低圧ボイラーはややアルカリ性がよい。
pHの調節として、酸消費量付与剤や酸消費量上昇抑制剤が使用される。
酸消費量付与剤には、水酸化ナトリウム(か性ソーダ)や炭酸ナトリウムが使用される。

硬度成分の除去

単純軟化法

軟化剤は、ボイラー水を軟化して、硬度成分(カルシウム、マグネシウム)を沈殿させ、軟質沈殿物のスラッジとして吹出しで排出させるものである。
軟化装置は、水中のカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を樹脂のナトリウム(炭酸ナトリウム、りん酸ナトリウム)と置換させるをものである。
軟化装置による処理水の残留硬度は、貫流点(樹脂の能力限界)を超えると著しく増加する。
軟化装置の強酸性陽イオン交換樹脂の交換能力が低下した場合は、一般に食塩水で再生を行う。
軟化装置の強酸性陽イオン交換樹脂は、1年に1回程度、鉄分による汚染などを調査し、樹脂の洗浄及び補充を行う。
高圧ボイラーには不十分である。


Ver.1.1.0

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