建築の力学要素

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応力

外力の作用する部材の内部に生じる抵抗力。
構造物の構成部材に生じる応力には、曲げモーメントせん断力軸方向力がある。

曲げモーメント

部材のある点において部材を湾曲させようとする力。
軸を中心に回転方向に変位させる力。

せん断力

部材内の任意の面に作用して、面をずれさせるように作用する力。
面の両側に反対方向の力が加わり、材軸をずれさせようとする力。

軸方向力

部材の長さ方向に平行に生じる力。
圧縮軸力と引張軸力がある。

荷重

水平荷重

住宅などの建築物の柱や梁などに、横方向(柱に対しては直角方向)からかかる力。
水平荷重には、風圧力地震力等がある。

風圧力

風により物体にかかる力。
速度圧に風力係数を乗じて計算され、時間で変化する動的なものだが、構造計算では静的荷重で扱う。

地震力

地震の際に、建築物が振動することで生じる慣性力。
構造設計では横(水平方向)にゆれた事として計算する。

鉛直荷重

建物に重力と同じ方向に働く力。

固定荷重

構造体や仕上げ材料など建築物自体の荷重。

積載荷重

人間家具物品の荷重。
積載荷重の最低基準は、床用・架構(大梁・柱・基礎)用・地震用の3つの基準があり、大きさは架構地震と順なる。
部屋の種類によっても決められており、大きさは教室事務所住居の順となる。但し、床の積載荷重に関しては事務所>教室>住居の順となる。

積雪荷重

積雪の荷重が建築物に対して外力として鉛直方向に作用する荷重。
地域や作用時間よって異なり、屋根こう配に影響される。
作用時間により常時荷重(長期)と非常時荷重(短期)に分類される。
積雪の単位荷重と建築物が建築される地域の積雪量を考慮して求められる。
一般区域における積雪荷重は、積雪量1cmごと1m2につき20N以上として計算される。

その他の荷重

常時荷重

構造物に常時作用している荷重で、固定荷重、積載荷重、土圧(地盤下の土が建物を押す力)水圧(地下水が建物を押す力)が該当する。

移動荷重

梁や床の上を移動する荷重。車両やクレーンなどが該当する。

構造計算

建築基準法では、建物の安全性を確かめるため、構造計算が義務づけられている。
但し、延べ面積500m2以下で2階建て以下の木造建築物は、構造計算が義務化されていない。
構造設計に用いる計算法には、保有水平耐力計算、限界耐力計算、許容応力度等計算、時刻歴応答解析がある。

許容応力度

構造体の各部材に生じる、抵抗する応力の限界点のこと。
大きいほど頑丈である。
構造設計に用いる鋼材の許容応力度は、各応力(圧縮、引張、曲げ、せん断)を基準にして算出される。
「材料力学の基礎」「応力ーひずみ線図」参照。

剛性率

水平荷重の作用による上下階の剛性の立面的なバランスで、せん断力による変形のしにくさを表す。
1よりも小さければ変形しやすく、1よりも大きければ変形しにくい。

偏心率

建物の質量の中心となる重心が、強度の中心となる剛心から離れていることを「偏心」と呼び、その離れ具合を示した割合で、平面的なバランスである。
建物の重心と剛心が一致している場合は0となり、重心が剛心から離れていればいるほど偏心率が高くなる。

層間変形角

地震などの横揺れによって建築物が変形する時、各階の床と真上または真下の床との、水平方向における変形の角度。
各階の層間変位その層の高さで除した値である。

支点と支持方式

接合部(支点)

構造物と地盤あるいは構造物と構造物を結合し、構造物を静止させ安定させる支持点のこと。
固定端(剛接合)、回転端(ピン)、移動端(ローラ)の3種類がある。

剛接合(固定端)

剛接合とは部材同士を一体化するように接合する方法。
外力が加えられても接合部は変形しない。
柱や梁には曲げモーメント、せん断力、軸方向力を伝達する。
剛接合で構築された建築物は非常に強い耐震力を持っているというメリットがあり、主にラーメン構造の構造物に採用されている。

ピン接合(回転端)

柱と梁を一体化させず、接合部が蝶番のように回転する方法。記号では△や○で表記する。
曲げモーメントは伝達されない。
構造も簡単な設計が可能で、トラス構造などに採用されている。

ローラ接合(移動端)

軸が回転し、かつ水平方向に移動ができる。記号では△の下に―で表記する。
垂直方向の反力しか生じない。曲げモーメント、せん断力は伝達されない。

支持方式

単純支持(単純梁)

一端がピン(回転端)で、他端がローラ(移動端)のものをいう。(固定端ではない)
両端に曲げモーメントが生じない構造となる。

片持ち支持(片持ち梁)

一端が固定端とし、他端を自由としている。

3ピン支持

2つのピン(回転端)で支持され、その中間にもう一つのピン節点をもつ。

曲げモーメント図

支持方式によって、部材に生じる曲げモーメントの値を図示したもの。
基本的に荷重のかけられた方向にへこむ。(片持ち支持は注意)

せん断力図

支持方式によって、部材に生じるせん断力の値を図示したもの。

荷重による力

反力

物体にかかる外力(荷重)に抗して、支点に発生する力のこと。

塑性(そせい)

部材などに荷重を作用させたときに生じる変形が、荷重を取り除いた後に、元の状態に戻らない性質のこと。
弾性の反対語。

建築構造の種類

ラーメン構造

柱と梁との接合部を剛接合した構造。
応力として、曲げモーメント、せん断力、軸方向力が生じる。
水平力に対する変形が大きい。

トラス構造(ブレース構造)

柱と梁との接合部をピン接合し、ブレース(斜め材)を入れた構造。
応力として、軸方向力が生じる。
構造体が三角形を構成するため、変形し難い。

壁式構造(面構造)

壁面で柱や梁のない空間を作る構造。
変形しにくいが、壁により建物を支えるため、開口部に制約がある。
組積式には、れんが造、補強コンクリートブロック造がある。
低層の集合住宅によく用いられる。

シェル構造

曲板の持つ力学的特性を利用した板で構成された構造。
応力として、面内力が生じる。
大スパン構造に適している。

アーチ構造

アーチ状の曲線を描く構造。
応力として、曲げモーメント、せん断力、軸方向力が生じる。
橋などに利用される。

空気膜構造

構造物の内部と外部の空気圧の差により、膜面に張力と剛性を与える構造。
ドームの屋根などで利用される。

木造大断面集成材構造

断面の形状と寸法を自由に作ることができる木の構造。
酸や塩分に強く耐久性に優れている。
大スパン構造に適している。

折板構造

板を折り曲げることで剛性、耐力を高めた構造。
応力として、面内力が生じる。

吊り構造

構造物の主な部分を支点から吊る構造。

ハイブリット構造

異なった構造を組み合わせたもの。

SI(スケルトン・インフィル)建築物

建築構造駆体(柱や梁など)内装・設備を分離して、建築物自体の耐用年数を伸ばすことを考えた工法。
マンションなどで使用する。

シェル構造
アーチ構造
空気膜構造
木造大断面集成材構造


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