建築部材による構造
木造
構造用部分に木材を用いる構造。
木造住宅の法定耐用年数は、22年である。
在来工法、プレハブ工法、枠組壁工法(ツーバイ方式)等がある。
在来工法
柱や梁、筋交を組み合わせて骨組みを作り、建物を支える工法。
プレハブ工法
工場で製作された部材を現場に搬入して組み立てる工法。
枠組壁工法(ツーバイ方式)
枠に合板を緊結させ壁をつくり、その壁を組み合わせて壁・屋根・床を形成する工法。
鉄骨構造(S)
構造用鋼材を部材とし、アーク溶接やボルトで構成する構造。
接合材間の摩擦抵抗で力を伝達する。
鋼材は強度・剛性に優れ、粘りも高いので耐震性に優れる。
鉄骨は耐食性に劣る。高温に弱いので耐火性に劣る。
超高層建築物や、大空間を作る場合に採用される。
部材の接合によりラーメン構造、トラス構造等に大別できる。
床には、鉄筋コンクリート床板やデッキプレートが用いられる。
梁部材には、形鋼や鋼板の組立て材などが用いられる。
部材は工場で加工され、現場で組み立てるので工期も短く施行しやすい。
鋼材の耐火被覆工法には、吹付け工法、巻付け工法、成形板張り工法等があるが、吹き付けアスベストの使用は、現在禁止されている。耐火被覆の厚さは、部位と耐火時間によって決まる。
鉄骨構造の解体は、一般の鉄筋コンクリート構造より容易である。
事務所建築の法定耐用年数は、骨格材の肉厚によって異なる。
鉄筋コンクリート構造(RC)
引っ張る力に強い鉄筋と、圧縮に強いコンクリートを組み合わせた構造。
鉄筋とコンクリートの線膨張係数(熱膨張係数)がほぼ同じであることを利用している。
鉄骨構造の耐火性や耐食性の問題を補うことができる。
壁式鉄筋コンクリート構造は、低層の集合住宅によく用いられる。
鉄筋コンクリート構造の強度は、材料の管理や養生などに影響されやすい。
コンクリートはアルカリ性なので、鉄筋の防錆効果がある。鉄筋の腐食により経年で中性化して、構造体の寿命に影響を与える。中性化している部分のコンクリート表面からの距離を中性化深さという。
コンクリートのひび割れは、隅角部や開口部に集中して発生する傾向がある。ひび割れ幅が0.1〜0.2mm以上になると鉄筋の腐食が著しくなる。
事務所建築の法定耐用年数は50年、店舗・ホテルは39年である。
鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC)
鉄骨ラーメン構造を鉄筋コンクリートで被覆した構造。
耐震性・耐火性に優れている。
大規模建築や7階建て以上の建築物は、ほとんどこの構造である。
プレストレストコンクリート構造(PC構造)
緊張材と呼ばれる鋼材を利用して圧縮応力を人工的に加えて、引張強度を上げたプレストレストコンクリート(PC)を使用したもの。
大スパン構造に適している。
鋼材
H形鋼
Hの字の形状断面をしている鋼材。
- フランジ:曲げモーメントに対して抵抗する。
- ウェブ:せん断力に対して抵抗する。
- スチフナ:鉄骨プレート梁の上下を補強する部材。
アングル
Lの字の形状断面をしている鋼材。山形の鋼材。
主に外壁の開口補強材、外壁を留める金具として使用される。
チャンネル
コの字の形状断面をしている鋼材。
異形鉄筋
でこぼこの突起をつけた棒状の鋼材。
鉄筋コンクリート造の構造用鉄筋として使用されることが多い。
表面積を増やすことでコンクリートやモルタルの付着力を強め、引き抜き力への抵抗力を強める。
丸鋼(普通棒鋼)と異形棒鋼があり、丸鋼はSR、異形棒鋼はSDの記号で表される。
SD294Aの記号中の数値は降伏点強度(降伏応力)を示す。
(鋼材の記号はSNXXXで表記されるが、この記号中の数値は引張強さで、降伏点強度ではない)
「材料力学の基礎」「応力ーひずみ線図」参照。
鉄筋工事
鉄筋の名称
主筋
柱や梁のコンクリートの中にある太い鉄筋。
曲げモーメントに抵抗する役割をする。
鉄筋コンクリート構造では、柱の主筋は、4本以上とする。
帯筋(おびきん)
柱の主筋に直角となるように配筋される細い鉄筋(補強筋)。
せん断力に抵抗する役割をする。
建築基準法により、帯筋比(コンクリート柱の断面に対する帯筋量の割合)を0.2%以上、帯筋の径は6mm以上、間隔は10cm以下と決められている。
肋筋(あばらきん)
梁の主筋に直角となるように配筋される細い鉄筋(補強筋)。
せん断力に抵抗する役割をする。
間隔は20cm以下とする。一般に135°以上に曲げて主筋に定着させる。
結束線
鉄筋を結束する細くて柔らかい針金。
コンクリートの打設を完了させるまで、鉄筋を所定の位置に保持するために使用する。
かぶり厚さ
コンクリート表面から鉄筋の表面までの距離。
鉄筋の防食・防錆等の耐久性には、一定の厚さのコンクリートが必要であり、かぶり厚さが部位によって規定されている。
直接土に接しない耐力壁、柱、梁において鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、3cm以上にしなければならない。
直接土に接する壁、柱、床において、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、4cm以上としなければならない。
鉄骨の接合
鉄骨の接合方法として、高力ボルト接合、溶接接合がある。
高力ボルト接合
一般的な接合方法で、高い強度を持つ高力ボルトを用いて接合する。
締付け長さは、接合される鋼板の板厚の総和をいう。締め付け時の余長は、ねじ山3以上とする。
接合材を締付けた際に生じる材間圧縮力によって応力を伝達する。
溶接接合
溶接断面の形式には、突合せ溶接、すみ肉溶接、部分溶込み溶接等がある。
- 突合せ溶接:突合せ継手で、2つの母材を同一平面で接合する方法。完全溶け込み溶接、部分溶込み溶接がある。
- すみ肉溶接:重ね継手で母材同士を重ねる、またはT継手で直角に配置して溶着する方法。
- 部分溶込み溶接:突合わせ溶接で、母材に不溶着部分が残る方法。
コンクリート工事
コンクリートの使用
コンクリートの厚さ
鉄筋コンクリート造の一般の壁の厚さは、10~15cm程度で、耐震壁の厚さは20cm程度である。
床のコンクリート厚さは13~20cm程度である。
捨てコンクリート
コンクリートの基礎や土間を作る際、底面を平らにするために、前処理として敷きならしたコンクリート。
厚さは5~15cm程度で、構造的な機能はない。
混和材料
コンクリートの性質を改良するためのもの。
フライアッシュ(流動性の向上)、高炉スラグ(水硬性を持たせる)、シリカヒューム(強度の向上)等がある。
AE剤は、モルタルやコンクリートの中に多数の微小な空気泡を均一に分布させるために用いる。
空気泡を作ると軟らかくなり、打ち込み作業の効率が上がる。また、水の量を減らすことができるため、水分の凍結によるコンクリートの劣化を防ぐ効果もある。
プレキャスト化
あらかじめ工場でコンクリート部材を製造し、現地に運搬してこれを組み立てること。工期を短縮できる。
コンクリートに関する指標
- スランプ値:硬化前のコンクリートの軟らかさを表し、大きいほど軟らかく流動性が高い。スランプ試験で求める。
- コンシステンシー:流動に対する抵抗性の程度で表されるフレッシュコンクリート(硬化前のコンクリート)の性質。
コンクリートに関する現象
ブリージング
コンクリート打設後に、ペースト中のセメントや骨材が沈降して、分離した水が表面に浮かび上がって来る現象。
レイタンス
コンクリート打設後に、石灰岩や骨材の微粒粉が表面に層状になったものである。
コールドジョイント
先に打ち込んだコンクリートと、後から打ち込んだコンクリートとの間が完全に一体化していない継目。
コールドジョイントが生じると付着性が低下し、構造上の欠陥になりやすい。
コンクリートの打設時間の間隔が長くなると、発生しやすい。
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