エレベーターの設置
設置の規定
エレベーター・エスカレーター・小荷物用専用昇降機を設置する場合。
- 着工前に設置確認の申請を建築主事に行う。申請が受理されると着工できる。
- 完成したら検査を受ける。
- 検査に合格すると検査済証が発行され、使用可能となる。
建築基準法の規定により、高さ31mを越える建築物には、非常用の昇降機の設置が義務付けられている。
輸送能力
最大積載荷重
建築基準法により、カゴの中の床面積に応じて3段階の計算法が定められている。
定員
最大積載荷重を1人65kgとして割る。
最大積載荷重900kgなら900kg÷65kg=13.84…で13人となる。
台数
居住人口やピーク時の5分間の利用人口、出発間隔などから算出する。
エレベーターの種類
エレベーターは、大きく分けて、ロープ式と油圧式に分かれる。
ロープ式エレベーター
かごと釣合おもりをロープで結び、かごをロープと綱車間の摩擦力によって昇降させる。
かごと釣合おもりの重量をバランスさせ、巻上げ機によって駆動する構造になっている。
かごと釣合おもりを釣り合わせることにより、電動機にかかる負荷を軽減し、電動機の容量を小さくしている。
汎用性が高く、走行機の速度制御が広範囲にわたって可能である。
中高層、超高層建築物に多用されている。
機械室ありタイプ
上部に取り付けた巻上げ機で駆動する基本的なタイプ。
高速化、長行程対応が容易である。
機械室なしタイプ
巻上げ機や制御盤を昇降路内に設置したタイプ。
最上階の機械室が不要なので、レイアウトに自由度がある。
規格型のエレベーターでは標準的な仕様である。
油圧式エレベーター
電動ポンプで油圧を制御し、油圧の力でプランジャー(上下する部分)を駆動してかごを昇降させる。
機械室の配置が自由なので、レイアウトに自由度がある。
行程や速度に限界があり、消費電力が大きいため、需要は減少している。
低層建築物の使用に限定される。
- 直接式:油圧シリンダー内のプランジャーにかごを直結している。
- 間接式:プランジャーの動きをロープを介してかごを昇降させる。
- パンタグラフ式:アームと油圧ジャッキで、アーム上部に付けたかごを昇降させる。
ロープ式エレベーターの構造

<画像出典:日本エレベーター協会>
- 制御盤:運行管理を制御する装置。
- 巻上機:ロープを駆動し、かごを昇降させる装置。交流式、直流式がある。
- 調速機:遠心力を利用し、一定の回転速度になるように昇降速度を監視・調整する装置。
- ガイドレール:かごをレールに沿って昇降させる装置。
- 釣合おもり:主ロープの両端にかごと錘をぶら下げてバランスを取り、巻上機と滑車に掛かる摩擦力によって、かごと錘を昇降させる。
- かご:人や荷物を乗せる箱。
- インジケーター:エレベーターの走行または停止している階名を表示する装置。
エレベーターの安全装置
エレベーターが故障時に安全に停止させる制動装置や、停電・地震等が発生した場合の安全装置を設置する義務がある。(建築基準法)
機械室の安全装置
電磁ブレーキ
巻上機で、動力が切れた場合や、ドアスイッチが開いたときに作動する。
全ての出入り口の戸が閉じる前にかごが昇降した場合に、かごを制止させる。
昇降路の安全装置
リミットスイッチ
かごが終端階を行き過ぎたことを検知して、かごを停止する。
緩衝器
かごや釣合いおもりが、最上階または最下階の非常止めスイッチを通過して、天井や床面に衝突した場合の衝撃を緩和する装置。
かごの昇降速度が60m/分以下の場合はバネ式、それ以外は油圧式となる。
かごの安全装置
かごドアースイッチ
かご扉と各階乗り場扉が連動して動き、両方が閉じなければ動かない。
セフティシュー
人や物が当たると反転して戸が開く。
かご非常止め装置
ロープが切断した場合、調速機が異常を検知すると、かごがレールを把持(はじ)してかごの降下を止める。
重量超過検知
過重を検知し、扉を開放して過重をブザーなどで知らせる。
外部連絡装置
閉じ込めが起きた場合、外部に連絡できるインターホンが設置されている。
乗り場の安全装置
扉ロック装置
乗り場の扉が閉まっている時はロックが掛かっており、かごの到着でインターロックが機械的に解除される。
災害時の管制運転
停電時
停電した場合、一旦バッテリー運転に切り替わり、最寄階に着床させ扉が開く。
かごの外へ出るようアナウンスが流れ、一定時間(15秒程度)経過後扉が閉まる。
停電時に非常用発電機による給電が再開すると、運転を再開する機能をつけることも可能である。
火災時
火災受信器との火災連動、エレベーター制御盤のスイッチ操作などにより、避難階に直行し扉が開く。
かごの外へ出るようアナウンスが流れ、一定時間(15秒程度)経過後扉が閉まる。
非常用エレベーター
地震時
機械室に設置されたセンサーが地震の初期微動(P波)を感知すると、最寄階に着床させ扉が開く。
一定時間経過後に運転を再開する。
ただし、移動中に安全装置が作動した場合は、途中で運転を止め、安全が確認されてから運転を再開する。
エレベーターの保守
検査と点検
エレベーター・エスカレーター・小荷物用専用昇降機を管理する場合。
- 1年に1回以上、昇降機検査資格者等に検査を行わせ、その結果を特定行政庁に報告すること。
- おおむね1月以内ごとに、点検・整備を行わせること。
- 点検を行った場合は、記録を3年以上保存すること。
保守契約
- FM契約:フルメンテナンス契約。経年劣化部品の取替えや修繕費を含んだ契約で予防保全を行う。
- POG契約:消耗品の交換などのみで、経年劣化部品の取替えや修繕費は含まない。
- 遠隔監視:保守会社の監視センターで24時間365日、遠隔監視を行う。
その他の昇降機
小荷物専用昇降機
建築基準法で以下のように定義される。
物を運搬する為の昇降機で、かごの水平投影面積が1m2以下で、かつ天井の高さが1.2m以下のもの。
簡易リフト
労働安全衛生法で以下のように定義される。簡易リフトのほうが範囲が広い。
物を運搬する為の昇降機で、かごの水平投影面積が1m2以下、または天井の高さが1.2m以下のもの。
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