廃棄物処理法
廃棄物処理法の目的
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の目的は、廃棄物の排出を抑制し、及び適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることである。(地球環境の保全ではない)
1970年に制定された廃棄物処理法では、衛生面から規定していた汚物に加えて、新たに不要物の概念を導入して廃棄物を定義し産業廃棄物と一般廃棄物に分類するとともに、生活環境の保全が新たに法の目的に追加された。
監督官庁は、環境省である。
廃棄物の排出抑制
事業活動に伴って生じた廃棄物の再生利用等を行うことにより、その減量に努めなければならない。
事業者は、廃棄物の減量その他その適正な処理の確保等に関し、国及び地方公共団体の施策に協力しなければならない。
国・地方公共団体は、廃棄物の分別・再利用・再資源化の普及・啓発に努める。
市町村長は、その区域内において事業活動に伴い多量の一般廃棄物を生ずる土地又は建物の占有者に対し、当該一般廃棄物の減量に関する計画の作成、当該一般廃棄物を運搬すべき場所及びその運搬の方法その他必要な事項を指示することができる。
ごみの排出量削減に向けて、収集袋の有料化、粗大ごみの有料化などの対策が実施されている。
年間のごみ処理事業経費は、し尿処理事業経費より多い。
廃棄物の処理責任
廃棄物は、原則は排出事業者ができる限り自ら処理することが望ましい。自ら処理を行う場合、処理基準に従うことが必要である。(排出者責任)
一般廃棄物および産業廃棄物ともに、収集、運搬、処分等が適正に行われるよう、処理基準が定められている。
一般廃棄物および産業廃棄物ともに、事業者自らが処理するか、処理業者に委託して処理しなければならない。処理を委託する場合には、委託基準に従わなければならない。
一般廃棄物の処理
家庭用一般廃棄物について市町村は、一般廃棄物処理計画に従い清掃事業として処理を行う。
一般廃棄物処理の委託
市町村が一般廃棄物の収集、運搬、処理等を業者に委託する場合は、委託基準に従わなければならない。
事業系一般廃棄物の排出事業者が処理を委託する場合、市町村長の許可を受けた処理業者に委託しなければならない。
産業廃棄物の処理
都道府県は、都道府県が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行うことができる。
産業廃棄物処理の委託
事業者は、産業廃棄物の処理を委託する場合には、都道府県知事の許可を受けた業者に委託しなければならない。
委託業者の選定に当たっては、都道府県知事の許可の有無、許可の期限、事業の範囲等を調べて選ぶ。都道府県や環境省のホームページ等から選ぶ方法がある。
収集運搬業者の選定に当たっては、排出場所と運搬先の両方の自治体の許可を取得していることを確認する。
処理業者との契約に当たっては、収集運搬業者と処分業者とそれぞれ契約を締結しなければならない。
委託業者の管理に当たっては、最新の許可業者リストの確認、契約書のチェック、マニフェストの確認を定期的に行う。
産業廃棄物の処理の委託基準に違反して運搬又は処分を委託した場合には、懲役若しくは罰金に処し、又はこれを併科される。
産業廃棄物のマニフェスト制度
産業廃棄物のマニフェスト制度は、廃棄物の移動管理に関するもので、不法投棄の防止や特別管理産業廃棄物の管理などを規定する。
排出事業者は、廃棄物が最終処分まで適正に処理されたことを確認する義務がある。
排出事業者が産業廃棄物の処理を他人に委託する場合には、マニフェスト票(産業廃棄物管理票)を交付して、産業廃棄物と一緒に流通させ、適正に処理されていることを自ら把握する必要がある。
排出事業者は、マニフェストを5年間保存する。
電子マニフェストは、紙マニフェストに代えて、通信ネットワークを使用して、廃棄物の流れを管理する仕組みである。
電子マニフェストでも、やり取りの流れは同様だが、センターで管理・保存されるため、マニフェストを保存する義務はない。
マニフェスト票(産業廃棄物管理票)
排出事業者はA~E票を作成し、収集運搬業者に引き渡す際に交付する。
- A票:収集運搬業者が署名し、排出事業者に返却。
- B1票:処分業者が署名し、収集運搬業者に返却。
- B2票:処分業者の署名し、収集運搬業者より排出事業者に返却。
- C1票:処分業者が保存。
- C2票:処分作業が終了後、処分業者より収集運搬業者に返却。
- D票:処分作業が終了後、処分業者より排出事業者に返却。
- E票:最終処分地での処分が完了後、処分業者より排出事業者に返却。
排出事業者が保管:A、B2、D、E
収集運搬業者が保管:B1、C2
処分業者が保管:C1
依頼から90日経過してマニフェストのB2票及びD票が返却されない場合は、委託業者に対して処分の状態を問い合わせる。
依頼から180日を経過してもE票が返却されない場合は、委託業者に対して処分の状態を問い合わせる。
バーゼル条約
バーゼル条約により、国境を越えた特定有害廃棄物等の輸出入が規制されている。
国内において生じた廃棄物は、なるべく国内において適正に処理されなければならない。
廃棄物処理法では、産業廃棄物の輸出には環境大臣の確認が必要となる。
廃棄物処理業者
廃棄物収集運搬・処分業者は、契約に基づき、排出された廃棄物の収集・運搬・処分を実施する。
一般廃棄物処理業者
一般廃棄物は、市町村が責任を持ち、処理業者は専ら再生利用の目的となる一般廃棄物を扱う者などを除き、市町村長の許可を受けなければならない。
産業廃棄物処理業者
産業廃棄物は、都道府県が責任を持ち、処理業者は専ら再生利用の目的となる産業廃棄物を扱う場合を除き、都道府県知事の許可を受けなければならない。
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