電験三種(令和5年度上期) 電力 問17

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問題

方針

三相3線式の電線の電圧降下に関する問題です。
(a)は、合成電流を求める問題ですが、交流で力率もそれぞれ違うので単純に加算することはできません。ここでは「交流の複素数表現」を使用して合成電流を求めたいと思います。
(b)は、「送配電線の電圧降下の近似式」を使って、各地点の電圧降下から「電圧降下率」を求めたいと思います。

解法

(a)

「交流の複素数表現」
力率0.6の負荷が接続されたときに流れた電流が10Aだった場合の電流値を考える。
電流10Aは、10cosθ(有効電流)と10sinθ(無効電流)の合成電流の値と考える。

$\displaystyle \dot{I}=|\dot{I}|(cosθ+jsinθ)=10(0.6+j0.8)=6+j8 $

$\displaystyle |\dot{I}|=\sqrt{6^2+8^2}=10 \ [A] $

S-A間を流れる電流Iは、A点、B点、C点の電流を合成したものとなります。
A点は、負荷電流200Aで力率0.8なのでcosθ=0.8、sinθ=0.6
B点は、負荷電流100Aで力率0.6なのでcosθ=0.6、sinθ=0.8
C点は、負荷電流200Aで力率1.0なのでcosθ=1.0、sinθ=0
これらの電流を複素数表現すると以下のようになります。

$\displaystyle \dot{I_A}=200(0.8+j0.6)=160+j120 $

$\displaystyle \dot{I_B}=100(0.6+j0.8)=60+j80 $

$\displaystyle \dot{I_C}=200(1.0+j0)=200 $

A点、B点、C点の電流を合成して、電流Iを求めます。

$\displaystyle \dot{I}=\dot{I_A}+\dot{I_B}+\dot{I_C}=(160+60+200)+j(120+80+0)=420+j200 $

$\displaystyle |\dot{I}|=\sqrt{420^2+200^2}=465.19≒465 \ [A] $

(b)

「電圧降下率」
配線中に発生する電圧降下の受電電圧に対する割合。

AーB間の電圧降下率を求めるため、B点の電圧を求めます。
問題文で与えられているのはS点の電圧6600Vだけなので、SーA間とAーB間の電圧降下を求めればB点の電圧が分かります。

「送配電線の電圧降下の近似式」三相3線式の式

$\displaystyle v=\sqrt{3}I(Rcosθ+Xsinθ) \ [V] $

$I$:線電流 [$A$]
$R$:抵抗(電線1線あたり) [$Ω$]
$X$:リアクタンス(電線1線あたり) [$Ω$]
$Rcosθ+Xsinθ$:等価抵抗 [$Ω$]

まずSーA間の電圧降下を求めます。
「送配電線の電圧降下の近似式」を使用するためには、SーA間の電流Iとcosθ、sinθ、線間の抵抗RSA、リアクタンスXSAを求める必要があります。
(a)より、SーA間の電流Iは求めているので、そこからcosθとsinθを求めます。

$\displaystyle \dot{I}=420+j200=465(cosθ+jsinθ) $

$\displaystyle 420=465×cosθ cosθ≒0.9 $

$\displaystyle 200=465×sinθ sinθ≒0.43 $

1線当たりの抵抗およびリアクタンスは0.3Ω/kmで、SーA間は2kmなので、抵抗RSA、リアクタンスXSAを求めます。

$\displaystyle R_{SA}=0.3×2=0.6 \ [Ω] $

$\displaystyle X_{SA}=0.3×2=0.6 \ [Ω] $

「送配電線の電圧降下の近似式」に代入して、SーA間の電圧降下vSAを求めます。

$\displaystyle v_{SA}=\sqrt{3}I(Rcosθ+Xsinθ)=\sqrt{3}×465×(0.6×0.9+0.6×0.43)=641.95 \ [V] $

次にAーB間の電圧降下を求めます。
AーB間の電流IB、cosθ、sinθは問題文より、IB=100A、cosθ=0.6、sinθ=0.8となります。
AーB間は4kmなので、線間の抵抗RAB、リアクタンスXABは以下になります。

$\displaystyle R_{AB}=0.3×4=1.2 \ [Ω] $

$\displaystyle X_{AB}=0.3×4=1.2 \ [Ω] $

「送配電線の電圧降下の近似式」に代入して、AーB間の電圧降下vABを求めます。

$\displaystyle v_{AB}=\sqrt{3}I(Rcosθ+Xsinθ)=\sqrt{3}×100×(1.2×0.6+1.2×0.8)=290.64 \ [V] $

S点の電圧が6600Vなので、SーA間とAーB間の電圧降下より、B点の電圧VBを求めます。

$\displaystyle V_B=6600-v_{SA}-v_{AB}=6600-641.95-290.64=5667.41 \ [V] $

B点の電圧に対するAーB間の電圧降下より、AーB間の電圧降下率を求めます。

$\displaystyle \frac{v_{AB}}{V_B}×100=\frac{290.64}{5667.41}×100≒5.1 \ [\%] $

解答

(a)の解答は(5)となります。
(b)の解答は(2)となります。
(b)に関しては手順も多く、難しい問題ではないかと思います。

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