電験三種(令和5年度上期) 機械 問16

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問題

方針

トランジスタと還流ダイオードを使用した「自励式インバータ(電圧形)」に関する問題です。(平成24年問15と同じ問題です)
(a)の4つのトランジスタのオンオフ信号と、負荷電流ioと電源電流idの関係は「スイッチングと波形生成」より考えます。
(b)ー(1)については「スイッチングノイズ(リンキング)」から考えます。

解法

(a)

問題のインバータ回路は、パワートランジスタ(S1~S4)と、それぞれに還流ダイオード(D1~D4)があり、コイルの誘導性負荷が接続されています。
パワートランジスタ(S1・S4)と(S2・S3)を交互にオンオフすると、オンオフによる電流の流れは以下のようになります。

  • 負荷を通る電流ioは、正負の積分回路の波形となる。
    ①S1→負荷→S4(電源から正方向に負荷に電流が流れ、コイルに充電されるルート)
    ②D2→負荷→D3(コイルから正方向に電流が放電され、還流ダイオードに流れるルート)
    ③S3→負荷→S2(電源から逆方向に負荷に電流が流れ、コイルに充電されるルート)
    ④D4→負荷→D1(コイルから逆方向に電流が放電され、還流ダイオードに流れるルート)
  • 電源電流idは、基本は正の波形だが、オンオフ切換時に負荷のコイルのエネルギーが電流の方向を保とうとして放電するため、少しの間還流ダイオードより逆流して負の値となる。

負荷電流ioと直流電流idは、上記のような動作により波形が形成されます。
従って、負荷電流ioの波形は(ア)、直流電流idの波形は(エ)となります。

(b)ー(1)

「スイッチングノイズ(リンキング)」
電子回路のスイッチング素子がスイッチングを行う際に発生する高周波のノイズ成分のこと。
トランジスタ同士がスイッチングを行うデジタル回路などで発生しやすい。
ノイズによる電源電圧の変動を抑制するため、電源用のバイパスコンデンサの接続などで、高周波での電源インピーダンスを下げている

電圧形インバータ回路では直流電源によって交流波形を作りますが、正確な出力を得るためには直流電源は定電圧源となることが望ましいです。従って電源インピーダンスは全体的に低くする必要があります。
上記のスイッチングノイズの対策として、高周波に対してもインピーダンスが低いことが要求されます。よってとなります。

(b)ー(2)

「自励式インバータ(電圧形)」
IGBTなどのバルブデバイスと環流ダイオードで直流電圧を変えることで、波高値を変えて電圧を調整するオンオフの幅で周波数を調整する

上記よりとなります。

(b)ー(3)

問題文の通り、バルブデバイス(オンオフする機能を有する素子)として、パワートランジスタのほかにIGBT、MOSFETなどを使用することもできます。
従ってとなります。

(b)ー(4)

「自励式インバータ(電圧形)」
パワートランジスタには還流ダイオードが並列接続され、逆方向の電流はパワートランジスタを通さずに直流電源に戻す。転流に使用してはいない

問題文の最初の部分は上記の通り正しいです。
「転流」は素子をターンオフする制御のことですが、還流ダイオードを使用した回路でトランジスタをターンオフしているわけではありません。
従ってとなります。

(b)ー(5)

「スイッチングと波形生成」
負荷力率が悪くなり、コイルのインダクタンスが大きくなるとエネルギー蓄積も増えるので、環流ダイオードに流れる時間は長くなる

上記よりとなります。

解答

(a)の解答は(1)となります。
(b)の解答は(4)となります。

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