問題


方針
「異なる誘電率の合体コンデンサ」関する計算問題です。(令和3年問17と同じ問題です)
・「コンデンサの直列接続」「コンデンサの並列接続」
・「電界の強さ」の式
・「コンデンサの電気量」の式
・「静電容量」の式
・「静電エネルギー」の式
上記より考えたいと思います。
解法
(a)
「異なる誘電率の合体コンデンサ」
誘電率が異なる誘電体や、極板が挿入された場合は、直列・並列接続の二つのコンデンサに分解して考える。
「コンデンサの直列接続」
各コンデンサに溜まる電荷量は等しい。
コンデンサAは、3つのコンデンサの直列接続と考えることができます。
直列接続なので、3つのコンデンサの電荷量Qは等しくなります。
「電界の強さ」の式
$\displaystyle E=\frac{V}{d} \ [V/m] $
$E$:電界の強さ [$V/m$]
$V$:電圧 [$V$]
$d$:電極間の距離 [$m$]
「コンデンサの電気量」の式
$\displaystyle Q=CV \ [C] $
$Q$:電荷 [$C$]
$C$:静電容量 [$F$]
$V$:電圧 [$V$]
「静電容量」の式
$\displaystyle C=\frac{εA}{d} \ [F] $
$C$:静電容量 [$F$]
$ε$:誘電率 [$F/m$]
$A$:板の面積 [$m^2$]
$d$:板の距離 [$m$]
3つのコンデンサの誘電率、面積、厚さが分かっているので、まず「静電容量」の式から静電容量CA1、CA2、CA3を求めます。
$\displaystyle C_{A1}=\frac{2ε_0S}{\displaystyle\frac{d}{6}}=12\frac{ε_0S}{d}=12C’ \left(C’=\frac{ε_0S}{d}\right) $
$\displaystyle C_{A2}=\frac{3ε_0S}{\displaystyle\frac{d}{3}}=9\frac{ε_0S}{d}=9C’ $
$\displaystyle C_{A3}=\frac{6ε_0S}{\displaystyle\frac{d}{2}}=12\frac{ε_0S}{d}=12C’ $
3つのコンデンサの電荷量Qは等しいので、「コンデンサの電気量」の式から電圧VA1、VA2、VA3を求めます。
$\displaystyle V_{A1}=\frac{Q}{C_{A1}}=\frac{Q}{12C’} $
$\displaystyle V_{A2}=\frac{Q}{C_{A2}}=\frac{Q}{9C’} $
$\displaystyle V_{A3}=\frac{Q}{C_{A3}}=\frac{Q}{12C’} $
電圧が分かったので、「電界の強さ」の式から電界の強さEA1、EA2、EA3を求めます。
$\displaystyle E_{A1}=\frac{V_{A1}}{\displaystyle\frac{d}{6}}=\frac{\displaystyle\frac{Q}{12C’}}{\displaystyle\frac{d}{6}}=\frac{Q}{2dC’} $
$\displaystyle E_{A2}=\frac{V_{A2}}{\displaystyle\frac{d}{3}}=\frac{\displaystyle\frac{Q}{9C’}}{\displaystyle\frac{d}{3}}=\frac{Q}{3dC’} $
$\displaystyle E_{A3}=\frac{V_{A3}}{\displaystyle\frac{d}{2}}=\frac{\displaystyle\frac{Q}{12C’}}{\displaystyle\frac{d}{2}}=\frac{Q}{6dC’} $
電界の強さEA1、EA2、EA3を比較すると大小関係は以下となります。
$\displaystyle E_{A1}>E_{A2}>E_{A3} $
最大値はEA1となりますが、問題の選択肢はVとdの値になっているので、電荷量Q、静電容量C’を変換する必要があります。
電荷量Qを求めるためにコンデンサA全体の静電容量CAを求めます。
「コンデンサの直列接続」
合成静電容量は、合成静電容量の逆数が各静電容量の逆数の和となる。
3つのコンデンサの直列接続なので、コンデンサA全体の静電容量CAの逆数は、各静電容量CA1、CA2、CA3の逆数の和となります。
$\displaystyle \frac{1}{C_A}=\frac{1}{C_{A1}}+\frac{1}{C_{A2}}+\frac{1}{C_{A3}}=\frac{1}{12C’}+\frac{1}{9C’}+\frac{1}{12C’} $
$\displaystyle C_A=\frac{36}{10}C’ $
「コンデンサの電気量」の式より、電荷量Qを求めます。
$\displaystyle Q=C_AV=\frac{36}{10}C’V $
電界の強さの最大値EA1に代入します。
$\displaystyle E_{A1}=\frac{Q}{2dC’}=\frac{1}{2dC’}×\frac{36}{10}C’V=\frac{9V}{5d} $
解答の選択肢と一致するのは(4)となります。
(b)
「静電エネルギー」の式
$\displaystyle W=\frac{1}{2}QV=\frac{1}{2}CV^2 \ [J] $
$W$:静電エネルギー [$J$]
$Q$:電荷 [$C$]
$V$:電圧 [$V$]
$C$:静電容量 [$F$]
コンデンサAの静電容量CAは(a)で求めているので、蓄積エネルギーWAは以下となります。
$\displaystyle W_A=\frac{1}{2}C_AV^2=\frac{1}{2}×\frac{36}{10}C’×V^2=\frac{9}{5}C’V^2 $
コンデンサBの蓄積エネルギーを求めるために、コンデンサBの静電容量CBを求めます。
コンデンサBは、3つのコンデンサの並列接続と考えることができます。
「コンデンサの並列接続」
合成静電容量は、各静電容量の和で求めることができる。
3つのコンデンサの誘電率、面積、厚さが分かっているので、「静電容量」の式から静電容量CB1、CB2、CB3を求めます。
$\displaystyle C_{B1}=2ε_0\frac{\displaystyle\frac{S}{6}}{d}=\frac{1}{3}\frac{ε_0S}{d}=\frac{1}{3}C’ \left(C’=\frac{ε_0S}{d}\right) $
$\displaystyle C_{B2}=3ε_0\frac{\displaystyle\frac{S}{3}}{d}=\frac{ε_0S}{d}=C’ $
$\displaystyle C_{B3}=6ε_0\frac{\displaystyle\frac{S}{2}}{d}=3\frac{ε_0S}{d}=3C’ $
3つのコンデンサの並列接続なので、コンデンサB全体の静電容量CBは、各静電容量CB1、CB2、CB3の和となります。
$\displaystyle C_B=C_{B1}+C_{B2}+C_{B3}=\frac{1}{3}C’+C’+3C’=\frac{13}{3}C’ $
「静電エネルギー」の式より、コンデンサBの蓄積エネルギーWBは以下となります。
$\displaystyle W_B=\frac{1}{2}C_BV^2=\frac{1}{2}×\frac{13}{3}C’×V^2=\frac{13}{6}C’V^2 $
コンデンサAの蓄積エネルギーWAとコンデンサBの蓄積エネルギーWBの倍率を求めます。
$\displaystyle \frac{W_A}{W_B}=\frac{\displaystyle\frac{9}{5}C’V^2}{\displaystyle\frac{13}{6}C’V^2}=\frac{54}{65}≒0.83 $
解答
(a)の解答は(4)となります。
(b)の解答は(2)となります。