電験三種(令和5年度下期) 電力 問16

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問題

方針

変圧器線路の短絡電流」「過電流継電器(OCR)の整定」に関する問題です。(平成18年問17と同じ問題です)
(a)では、「短絡比とパーセントインピーダンス」の式を使用しますが、求めるパーセントインピーダンスは基準容量10MVAとした時なので、基準容量換算で変換する必要があります。
(b)では、設定されたレバー位置からレバー10の時の動作時間を逆算し、動作してほしい短絡電流からタップ値を求めます。

解法

(a)

「短絡比とパーセントインピーダンス」の式

$\displaystyle \%Z=\frac{I_n}{I_s}×100 \ [\%] $

$\%Z$:パーセントインピーダンス [$Ω$]
$I_n$:定格電流 [$A$]
$I_s$:短絡電流 [$A$]

短絡点から見た線路全体のパーセントインピーダンス%Z、短絡側の定格電流In、短絡電流Isには上記の関係があります。
問題文より、短絡電流Is=1800A、変圧器の容量30MVA、変圧比11kV/33kVが分かっているので、短絡側の定格電流Inを求めれば、「短絡比とパーセントインピーダンス」の式より短絡点から見た線路全体のパーセントインピーダンス%Zが求まります。
変圧器の容量S=30MVA、短絡側の電圧Vn=33000Vより短絡側の定格電流Inを求めます。

$\displaystyle S=\sqrt{3}V_nI_n \ [VA] $

$\displaystyle 30×10^6=\sqrt{3}×33000×I_n $

$\displaystyle I_n≒525.49 \ [A] $

「短絡比とパーセントインピーダンス」の式より、短絡点から見た電源側の線路全体のパーセントインピーダンス%Zを求めます。

$\displaystyle \%Z=\frac{I_n}{I_s}×100=\frac{525.49}{1800}×100≒29.19 \ [\%] $

求めたパーセントインピーダンス%Zは、基準容量を変圧器側(30MVA)に統一したものとなります。
問題では基準容量を10MVAとしたときなので、%Zを10MVAで基準容量換算したパーセントインピ―ダンス%Z’を求めます。

$\displaystyle 30:29.19=10:\%Z’ $

$\displaystyle \%Z’≒9.7 \ [\%] $

(b)

「限時要素の設定」
大きな電流が流れるほど早く遮断するという特性がある。
タップ(電流値)とレバー(動作時間)を設定し、保護協調曲線を作成する。
「限時電流整定値(タップ)」
限時動作させる電流値の設定を行う。
「限時時間設定(レバー)」
限時電流整定値~瞬時電流整定値の間で、動作確定するまでの時間設定を行う。
OCRの銘板表示には通常、レバー10(最大値)設定時の電流(横軸)と動作時間(縦軸)が記されている。
例えば、横軸500%で縦軸が0.5秒の場合、整定値の5倍の電流の時、0.5秒で動作する。
動作時間を短くしたい場合は、レバーを10より減らす。レバーを5にすると動作時間は0.5×5/10=0.25秒となる。

OCRのタップ値(限時電流整定値)を求める問題です。
問題文より、タイムレバー位置を3にして、動作時間を0.09sに短縮しています。
問題の限時特性図は、タイムレバー位置10の時のグラフなので、タイムレバー位置10の時の動作時間をTとすると、以下の関係が成り立ちます。

$\displaystyle T×\frac{3}{10}=0.09 \ [s] $

$\displaystyle T=0.3 \ [s] $

限時特性図より、動作時間0.3sで動作するタップ整定電流の倍数は5となります。
従って、タップ値の5倍の電流が流れた時に0.3s(実際には0.09s)で動作することになります。
動作してほしい電流値は、短絡電流Is=1800Aが流れた時なので、CT比400A/5AよりOCR側の電流値Is‘を求めます。

$\displaystyle I_s’=\frac{5}{400}×1800=22.5 \ [A] $

タップ値(限時電流整定値)Iの5倍の電流が、短絡時のOCR側の電流値Is‘となればよいので、タップ値(限時電流整定値)Iは以下となります。

$I×5=22.5 \ [A]$
$I=4.5 \ [A]$

解答

(a)の解答は(2)となります。
(b)の解答は(4)となります。
正直OCRの設定はややこしいですね。今の主流は静止型OCRで、レバーではなくダイヤルで設定します。

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