電験三種(令和5年度下期) 機械 問10

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問題

方針

スイッチング素子に関する範囲の広い問題です。(平成29年問10と同じ問題です)
(1)については「ダイオードの原理
(2)については「サイリスタの原理
(3)については「ボディダイオード(寄生ダイオード)
(4)については「絶縁ゲート型・バイポーラトランジスタ(IGBT)
(5)については「環流ダイオード(フリーホイリングダイオード)
上記より考えたいと思います。

解法

(1)

「ダイオードの原理」
p形半導体とn形半導体をpn接合したもので、一方向にしか電流が流れない方向性を持つ素子。
順方向に電圧をかけると、空乏層では内部電界を弱める方向にキャリアが動き、p形半導体の正孔はn形半導体の方へ移動し、n形半導体の電子はp形半導体の方へ移動する。接合面付近ではそれぞれのキャリアが結合して電流が流れる
逆方向に電圧をかけると、順方向とは逆に内部電界を強める方向にキャリアが動き、空乏層は広がり、電界が強くなり電位差が大きくなることで、キャリアが移動できず電流が流れない

上記の通り、ダイオードは順方向に電圧をかけると順電流が流れ、逆方向に電圧をかけると電流が流れない素子です。従ってとなります。

(2)

「サイリスタの原理」
一方向の電流のみを流す整流素子。
A(アノード)、K(カソード)、G(ゲート)の3端子を持つ。
ダイオードとの違いはG(ゲート)の信号によってターンオン制御できる。
アノード→カソードへの電流をアノードーカソード間の電圧とゲートからの電流によって制御する。
ゲートがONになるまで電流は流れない。ゲートの信号あくまでトリガなので、継続して電流を流す必要は無い。
ターンオフの制御はできない(電圧が0になるとOFFになる)ため、オン制御デバイスと呼ばれる。

上記の図のようにサイリスタは、ゲート電流を取り去っても順方向の電流は流れ続けますが、ダイオードと同様に一方向の電流を流す素子なので、逆方向の電流は流れません。従ってとなります。

(3)

「ボディダイオード(寄生ダイオード)」
MOSFETの構造上、内部のソースードレイン間にPN接合があるため、ダイオードが形成される。
nチャネル型の場合、ソース→ドレイン方向にダイオードが形成される。
pチャネル型の場合、ドレイン→ソース方向にダイオードが形成される。
そのため、逆電圧をかけるとボディダイオードに電流が流れる。これを還流ダイオードとして利用する場合もある。

上記よりとなります。

(4)

「絶縁ゲート型・バイポーラトランジスタ(IGBT)」
入力部がMOSFET構造のゲート、出力部がバイポーラトランジスタ構造の複合デバイス。
(pnpトランジスタとnチャネル型MOSFETを接続したもの)
ゲート-エミッタの電圧でON/OFF制御を行う電圧制御素子である
ゲート(G)、コレクタ(C)、エミッタ(E)の3端子で構成される。

上記の通り、IGBTはゲート電圧によって順電流をON/OFFする素子なのでとなります。

(5)

「環流ダイオード(フリーホイリングダイオード)」
インバータ回路の負荷としてコイル(誘導性負荷)を考えると、コイルの電流は急には方向転換できないため、インバータのスイッチを切り替えた直後では印加電圧と逆の電流が流れることになる。このとき還流ダイオードがあると、この逆流電流はトランジスタではなく還流ダイオードの方を通って回生してくれる。つまり、図の丸い点線で囲った2つのダイオードを経由して、コイルに蓄えられたエネルギーが直流電源へと返還され、直流電圧の低下を抑制できる。もし還流ダイオードがないとトランジスタそのものに逆電流が流れ込むのでトランジスタが破壊される恐れがある。
還流ダイオードは、印加している電圧と逆向きの電流の逃げ道として機能する

上記のようにインバータ回路などで、還流ダイオードをIGBT(トランジスタなど)と逆並列に接続すると、逆電流はIGBTのON/OFFに関わらず還流ダイオードを通って流れます。従ってとなります。

解答

誤りは(2)となります。

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