問題

方針
ひずみ波交流の電力に関する問題です。(平成8年問11と同じ問題です)
問題文には交流の電圧と電流が瞬時値で与えられています。
基本波+第3高調波が合成されたひずみ波なので、基本波と第3高調波でそれぞれ電力を求めて加算したいと思います。
「瞬時値」から「実効値と位相差」を求め「単相の有効電力」を使います。
解法
「瞬時値」
正弦波交流のある時点での値。
位相が進んでいる:+θ、t=0での波形は正の位置にある。
位相が遅れている:-θ、t=0での波形は負の位置にある。
$\displaystyle e=E_msin(ωt+θ) \ [V] $
$E_m$:最大値電圧 [$V$]
$ω$:角周波数 [$rad/s$]
$t$:時間 [$s$]
$θ$:位相 [$rad$]
「実効値」
交流の電圧は刻々変化するので、便宜上、実効値で表現する。電流も同様である。
$\displaystyle E=\frac{E_m}{\sqrt{2}} \ [V] $
$E$:実効値電圧 [$V$]
$E_m$:最大値電圧 [$V$]
「有効電力」
負荷(R)が消費する電力。電力計の示す値。単位は[W]。
$\displaystyle P=VIcosθ \ [W] $
$P$:有効電力 [$W$]
$V$:抵抗の電圧 [$V$]
$I$:抵抗の電流 [$A$]
$θ$:電圧と電流の位相差 [$rad$]
上記の「有効電力」の式より交流の電力Pを求めるには、電圧の実効値V、電流の実効値I、電圧と電流の位相差θが分かれば求まります。
問題の交流の瞬時値は、基本波+第3高調波で表現されているので、まず基本波を取り出して電圧と電流の実効値を求めます。
基本波の電圧 $\displaystyle e_1=100sinωt \ [V]$
基本波の電流 $\displaystyle i_1=20sin\left(ωt-\frac{π}{6}\right) \ [A]$
上記の式より、電圧の最大値Em=100V、電流の最大値Im=20Aより実効値を求めます。
基本波の電圧実効値 $\displaystyle V_1=\frac{100}{\sqrt{2}} \ [V]$
基本波の電流実効値 $\displaystyle I_1=\frac{20}{\sqrt{2}} \ [A]$
電圧e1と電流i1はπ/6位相がずれているので、基本波の電圧と電流の位相差θ1=π/6となります。
「有効電力」の式より、基本波の電力P1を求めます。
$\displaystyle P_1=V_1I_1cosθ_1=\frac{100}{\sqrt{2}}×\frac{20}{\sqrt{2}}×cos\frac{π}{6}=865 \ [W] $
同様に第3高調波の電力も求めます。
第3高調波の電圧 $\displaystyle e_3=50sin\left(3ωt-\frac{π}{6}\right) \ [V]$
第3高調波の電流 $\displaystyle i_3=10\sqrt{3}sin\left(3ωt+\frac{π}{6}\right) \ [A]$
上記の式より、電圧の最大値Em=50V、電流の最大値Im=10√3Aより実効値を求めます。
第3高調波の電圧実効値 $\displaystyle V_3=\frac{50}{\sqrt{2}} \ [V]$
第3高調波の電流実効値 $\displaystyle I_3=\frac{10\sqrt{3}}{\sqrt{2}} \ [A]$
電圧e3と電流i3はπ/6+π/6=π/3位相がずれているので、第3高調波の電圧と電流の位相差θ3=π/3となります。
「有効電力」の式より、第3高調波の電力P3を求めます。
$\displaystyle P_3=V_3I_3cosθ_3=\frac{50}{\sqrt{2}}×\frac{10\sqrt{3}}{\sqrt{2}}×cos\frac{π}{3}=216.25 \ [W] $
基本波の電力P1と第3高調波の電力P3を合計します。
$\displaystyle P_1+P_3=865+216.25=1081.25 \ [W]=1.08 \ [kW] $
解答
解答は(2)となります。