電験三種(令和6年度上期) 電力 問16

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問題

方針

変圧器線路の短絡電流」「変圧器の並列運転時の負荷分担」を求める問題です。(令和4年上期問16と同じ問題です)
(a)電源および変圧器のパーセントインピーダンスから、変圧器二次側から見た線路全体の「合成パーセントインピーダンス」を求め、線路全体のパーセントインピーダンスから「短絡比とパーセントインピーダンス」の式より変圧器二次側の短絡電流を求め、その短絡電流を遮断できる定格遮断電流を求めます。
(b)変圧器の「基準容量換算」を行い「変圧器の並列運転時の負荷分担」の式より、それぞれの負荷分担を求めます。

解法

(a)

問題文を図にすると以下のようになります。

「合成パーセントインピーダンス」の式

直列接続:$\%Z=\%Z_A+\%Z_B$

並列接続:$\displaystyle \%Z=\frac{\%Z_A\%Z_B}{\%Z_A+\%Z_B}$

変圧器の百分率インピーダンスは定格容量80MVAベースで、電源の百分率インピーダンスも変圧器と同じ80MVAなので、基準容量換算をする必要はありません。
変圧器二次側から見た線路全体のインピーダンス%Zは、直列接続として単純に加算して求めます。

$\%Z=1.5+18.3=19.8\%$

定格遮断電流を求めるために短絡電流を求めます。

「短絡比とパーセントインピーダンス」の式

$\displaystyle \%Z=\frac{I_n}{I_s}×100 \ [\%] $

$%Z$:パーセントインピーダンス
$I_n$:定格電流 [$A$]
$I_s$:短絡電流 [$A$]

上記の関係式より、変圧器二次側の定格電流Inとパーセントインピーダンス%Zが分かれば、短絡電流Isが分かります。
変圧器二次側から見たパーセントインピーダンス%Z=19.8%です。
変圧比が33/11kVなので二次側の定格電圧はVn=11000Vとなります。
変圧器の容量S=80MVAより、二次側の定格電流Inを求めます。

$\displaystyle S=\sqrt{3}V_nI_n $
$\displaystyle 80×10^6=\sqrt{3}×11000×I_n $
$\displaystyle I_n≒4203.89 \ [A] $

「短絡比とパーセントインピーダンス」の式に代入して、短絡電流ISを求めます。

$\displaystyle I_s=\frac{I_n}{\%Z}×100=\frac{4203.89}{19.8}×100≒21231.77 \ [A]≒21.2 \ [kA] $

短絡電流を遮断できる定格遮断電流は、短絡電流より大きくなければならないので、問題の選択肢より「25kA」となります。

(b)

「変圧器の並列運転時の負荷分担」
2台以上の変圧器を並列接続して運転すると、大きな負荷に電力を供給できる。
基準容量が同じ場合は、パーセントインピーダンスが等しければ、負荷は変圧器の定格容量の比で分担される。パーセントインピーダンスが異なる場合は、小さい変圧器が先に過負荷になる。
基準容量が異なる場合は、変圧器A、変圧器Bのパーセントインピーダンスを基準容量を合わせて求めなおす。並列接続した場合の負荷分担は、パーセントインピーダンスの基準容量を合わせると、パーセントインピーダンスの比の逆比となる

$\displaystyle S_A=\frac{\%Z_B}{\%Z_A+\%Z_B}S \ [VA] $

$S_A$:変圧器Aの分担容量 [VA]
$\%Z_A$:変圧器Aのパーセントインピーダンス
$\%Z_B$:変圧器Bのパーセントインピーダンス
$S$:全体の容量 [VA]

上記の通り、変圧器の並列運転での負荷分担は、百分率インピーダンスの基準容量が同じであれば百分率インピーダンスの比の逆比となります。
問題の変圧器TA、TBの百分率インピーダンスはそれぞれ以下となります。
変圧器TA:%ZA=18.3%(基準容量80MVA)
変圧器TB:%ZB=12.0%(基準容量50MVA)
それぞれ基準容量が異なるので「基準容量換算」を行います。

「基準容量換算」
定格容量が異なる変圧器が接続される場合、基準となる変圧器の容量を基準容量と仮定して、基準容量に合わせて各変圧器のパーセントインピーダンスを求める。
基準容量:電力系統の計算を行う時に、全構成機器の基準となる容量。[VA]
定格容量:ある機器の固有の容量。[VA]
例:容量SAのパーセントインピーダンス%ZA、容量SBのパーセントインピーダンス%ZBのとき、基準容量をSAとした場合、基準容量換算後のSBのパーセントインピーダンス%ZB’は、以下の比例式より求める。
  SB:%ZB=SA:%ZB’ (比例式)

ここでは、基準容量を80MVAとして、変圧器TBの百分率インピーダンス%ZB‘を求め直します。

$\displaystyle 50MVA:12.0\%=80MVA:\%Z_B’ $

$\displaystyle \%Z_B’=19.2\% $

負荷S=40MWの負荷分担は百分率インピーダンスの逆比となるので「変圧器の並列運転時の負荷分担」の式より、変圧器TAの負荷SAを求めます。

$\displaystyle S_A=\frac{\%Z_B’}{\%Z_A+\%Z_B’}S=\frac{19.2}{18.3+19.2}×40≒20.5 \ [MW] $

解答

(a)の解答は(5)となります。
(b)の解答は(3)となります。

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