問題


方針
各種電動機や変圧器についての範囲の広い問題です。(平成29年問6と同じ問題ですが、選択肢の順番が違います)
(a)については「トルク」
(b)については「誘導電動機と変圧器の等価回路」
(c)については「誘導機の動作原理」
上記より考えたいと思います。
解法
(a)
「直流機のトルク」の式
$\displaystyle T=\frac{P}{ω}=\frac{60}{2πN}×EI_a \ [N・m] $
$\displaystyle =\frac{60}{2πN}×\frac{pZ}{60a}ΦN×I_a=\frac{pZ}{2πa}ΦI_a \ [N・m] $
$\displaystyle =kΦI_a \ [N・m] $
$T$:トルク [$N・m$]
$P$:出力 [$W$]
$ω$:角速度 [$rad/s$]
$N$:回転速度 [$min^{-1}$]
$E$:誘導起電力(相電圧) [$V$]
$Φ$:界磁 [$Wb$]
$I_a$:電機子電流 [$A$]
$k$:トルク係数
「同期機のトルク」の式
$\displaystyle T=\frac{P}{ω}=\frac{60}{2πN_s}×3\left(\frac{EV}{X}\right)sinδ \ [N・m] $
$T$:トルク [$N・m$]
$P$:出力 [$W$]
$ω$:角速度 [$rad/s$]
$N_s$:同期速度 [$min^{-1}$]
$E$:誘導起電力(相電圧) [$V$]
$V$:端子電圧(相電圧) [$V$]
$X$:リアクタンス [$Ω$]
$δ$:EとVの位相差(負荷角)
「誘導機のトルク」の式
$\displaystyle T=\frac{P_m}{ω}=\frac{60}{2πN}×3{I_2}^2\left(\frac{1-s}{s}\right)r_2 \ [N・m] $
$\displaystyle \left(=\frac{60}{2πN}×3{V_2}^2\left(\frac{s}{(1-s)r_2}\right)\right) $
$T$:トルク [$N・m$]
$P_m$:機械的出力 [$W$]
$ω$:角速度 [$rad/s$]
$N$:回転速度 [$min^{-1}$]
$I_2$:二次電流 [$A$]
$V_2$:二次電圧 [$V$]
$r_2$:二次抵抗 [$Ω$]
$s$:すべり
トルクの文章なので選択肢は、直流機・同期機・誘導機のどれかになります。
上記の式からも分かるように同期機は同期速度と同じ回転速度で動作するので、電源周波数が同じなら回転速度が変化することはなく、トルクも変化しません。
従って(ア)(イ)の選択肢は「直流機」「誘導機」のどちらかとなります。
(b)
「誘導電動機と変圧器の等価回路」
誘導電動機の等価回路は変圧器と同様で、変圧器の一次巻線が電動機の固定子側、二次巻線が回転子側に相当する。ただし、回転子側は滑りを考慮した回路となる。
変圧器と同様に漏れインピーダンスが存在する。漏れインピーダンスは、巻線の抵抗+漏れリアクタンスである。(一次巻線と二次巻線で漏れる磁束をリアクタンスとして表したもの)
電機子反作用は無いので同期機のような電機子反作用リアクタンスはない。

上記のように、誘導機の等価回路は変圧器と同様な形となります。
従って(イ)(ウ)の選択肢は「誘導機」「変圧器」のどちらかとなります。
この時点で解答は(5)となります。
ここで(a)の選択肢より、(ア)は「直流機」(イ)は「誘導機」(ウ)は「変圧器」となります。
(c)
「誘導機の動作原理」
固定子の巻線に三相交流電源をつなげると、固定子巻線に回転磁界が生じる。この回転磁界が回転子のコイルに電磁誘導による起電力を発生させ、渦電流が流れる。渦電流の電磁力によって回転子が回転する。
回転磁界と回転子の回転方向は同じである。
誘導機は電機子と界磁が別れていないため、電機子反作用は起きない。
回転子の電流によって生じる起電力を打ち消すように固定子に電流が流れてバランスをとる。(同期機の電機子反作用と同様の現象が起きる)
電機子巻線の文章なので選択肢は、直流機・同期機・誘導機のどれかになります。
「誘導電動機と変圧器の等価回路」でもわかるように、誘導機の負荷電流は電機子巻線(固定子)に流れません。また、誘導機は電機子と界磁が別れていないため、電機子反作用は起きません。
従って(ア)(エ)の選択肢は「直流機」「同期機」のどちらかとなります。
(エ)は「同期機」となります。
解答
(ア)~(エ)すべてを満たすのは(5)となります。
誘導機の等価回路が変圧器と同様であることを知っていれば、解答を選択できる問題です。