電験三種(令和6年度上期) 理論 問10

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問題

方針

RL直列回路」「RC直列回路」の過渡現象に関する問題です。(令和4年下期問10を改良した問題です)
問題のRLC直列回路の定常状態からスイッチSを閉じたときの、「RL直列回路」「RC直列回路」の過渡現象の電流の波形をそれぞれ作成し、それを合成することで電流isの波形を考えたいと思います。

解法

「RL直列回路」の過渡現象
コイルの特性として、最初は電流は流れないが、しだいに流れ始め、最終的(定常状態)にはコイル部分は短絡状態となる。
コイルの電圧は、最初は開放状態なので電源電圧が加わるが、徐々に電流が流れ始めて電位差は0(短絡状態)となる。
定常状態で電源を開放した閉回路にすると、コイルは今まで流れていた電流を流し続けようと、コイル自身が磁気エネルギーによって逆起電力を発生して電流が流れる。電流は定常状態までと逆の線を描きながら減っていく。

「RC直列回路」の過渡現象
コンデンサの特性として、最初はコンデンサ部分は短絡状態となり全電流が流れるが、しだいに飽和状態となり、最終的(定常状態)には、コンデンサが充電された時点で電流は流れなくなる。
コンデンサの電圧は、最初は短絡状態なので電位差0だが、徐々に電流が溜まり始めて電源電圧まで蓄積されて飽和する。(開放状態)
定常状態で電源を開放した閉回路にすると、コンデンサが電源となり、充電された電流が充電時と逆方向に流れ出す。電流は定常状態までと逆の線を描きながら減っていく。

「時定数」
電気回路に電流を流しはじめてから、定常電流になるまでの変化速度を表す定数。
立ち上がりの良さ、応答性の良さを表す。
具体的には、過渡現象の立ち上がり時は定常値の63%、立ち下がり時は定常値の37%に達するまでの時間で、時定数が小さければ小さいほど、反応が早くなる。
RL回路とRC回路の時定数は、以下の式で表される。

$\displaystyle τ=\frac{L}{R} τ=CR $

$τ$:時定数
$R$:抵抗
$L$:インダクタンス
$C$:静電容量

まず、問題の回路のスイッチSが開いた状態での定常状態を考えます。
コイルは、最初は電流はを流しませんが、しだいに流れ始め、最終的(定常状態)ではコイル部分は短絡状態となります。
コンデンサは、最初は短絡状態となり全電流が流れますが、しだいに飽和状態となり、最終的(定常状態)には、コンデンサが充電された時点で電流は流れなくなり、開放状態となります。
従って最初の定常状態では、コンデンサが充電されて開放状態になり、回路には電流が流れていないことがわかります。

次に、スイッチSが閉じた時のRL直列回路の電流iLの波形を考えます。
電流が流れていない状態から、スイッチSが閉じたことで電源電圧が加わり、コイルには徐々に電流が流れ始めて短絡状態となる過渡現象の波形になります。
最初の電流値はiL=0で、定常状態ではiL=E/R=1/1=1Aとなります。
時定数は、τ=L/R=1/1=1となります。

次に、スイッチSが閉じた時のRC直列回路の電流iCの波形を考えます。
電流が流れていない状態から、スイッチSが閉じたことで、コンデンサが電源となる閉回路となり、充電された電流が充電時と逆方向に流れ出す過渡現象の波形となります。
最初の電流値はiC=E/R=1/1=1Aで、定常状態ではiC=0となります。
時定数は、τ=CR=2×1=2となります。

スイッチSの電流は、iS=iL+iCで求まります。
RL直列回路の電流iLの波形と、RC直列回路の電流iCの波形は対称の形をしています。時定数τがどちらも同じ値であればカーブも対称となるので、iSの波形は直線となります。
この問題では、RL直列回路ではτ=1で、RC直列回路ではτ=2なので、減っていく電流iCのほうが緩やかなカーブを描くことになり、iL+iCが1Aを超える状態が最初に発生します。
これを満たしている波形は(3)となります。

解答

解答は(3)となります。

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