問題

方針
三相交流回路に関する計算問題です。(平成16年問16と同じ問題ですが、選択肢の順番が違います)
「三相交流回路の計算」では、中性線を引き、一相回路に分離して考えるのが一般的です。
中性線を引くために「Δ→Y変換」して一相回路を作成します。
(b)では「負荷の力率が1になった」とあるので、図2の回路の合成インピーダンスは抵抗成分のみになることが分かります。
(a)については「誘導性リアクタンス」「RLC直列回路の合成インピーダンス」
(b)については「RLC並列回路の合成インピーダンス」
上記より考えたいと思います。
解法
(a)
「Δ→Y変換」
電源側をΔ→Y変換した場合は、線電圧を相電圧に変換したことになるので、Y結線の相電圧はΔ結線の相電圧(線電圧)の1/√3となり、線電圧に対して位相がπ/6遅れる。
Y結線では相電流=線電流となる。

$\displaystyle E_Y=\frac{1}{\sqrt{3}}E_Δ $
図1の回路の電源側をΔ→Y変換して、一相回路を作ります。
Δ回路の相電圧が200Vなので、一相回路の電圧200/√3のRL直列回路となります。

「誘導性リアクタンス(XL)」の式
$\displaystyle X_L=ωL=2πfL \ [Ω] $
$ω$:角周波数 [$rad/s$]
$L$:インダクタンス [$H$]
$f$:周波数 [$Hz$]
問題文では、インダクタンスL=12.75mH、周波数f=50Hzが与えられているので、誘導性リアクタンスXLを求めます。
$\displaystyle X_L=2πfL=2×3.14×50×12.75×10^{-3}=4.0035 \ [Ω] $
「RLC直列回路の合成インピーダンス」の式
$\displaystyle |\dot{Z}|=\sqrt{R^2+(X_L-X_C)^2} $
コンデンサが無いRL直列回路なので、XCを無くした式から、一相回路の合成インピーダンスZを求めます。
$\displaystyle Z=\sqrt{R^2+{X_L}^2}=\sqrt{3^2+\left(4.0035\right)^2}≒5.003 \ [Ω] $
オームの法則より、一相回路の電流I’を求めます。
$\displaystyle I’=\frac{V}{Z}=\frac{\displaystyle\frac{200}{\sqrt{3}}}{5.003}≒23.1 \ [A] $
Y結線では線電流I=相電流I’なので、負荷電流I=23.1Aとなります。
(b)
「Δ→Y変換」
ZがコンデンサならZ=XC=1/ωCなので、変換後はZy=1/ω3Cとなる。従って合成した1個の静電容量は3Cとなる。

$\displaystyle C_Y=3C_Δ $
図2の回路ではコンデンサ側をΔ→Y変換して、図1で作成した一相回路に接続します。
コンデンサの場合は、Δ→Y変換すると静電容量は3Cとなります。
RL直列回路と3Cの並列回路となります。

「RLC直列回路の合成インピーダンス」の式(虚数)
$\displaystyle \dot{Z}=\dot{Z_R}+\dot{Z_L}+\dot{Z_C}=R+jωL+\frac{1}{jωC}=R+j\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right) $
「RLC並列回路の合成インピーダンス」の式(虚数)
$\displaystyle \dot{Y}=\frac{1}{\dot{Z}}=\frac{1}{\dot{Z_R}}+\frac{1}{\dot{Z_L}}+\frac{1}{\dot{Z_C}}=\frac{1}{R}+\frac{1}{jωL}+jωC=\frac{1}{R}+j\left(ωC-\frac{1}{ωL}\right) $
図2の一相回路のについて、RL直列回路の合成インピーダンスを虚数で表すと以下となります。
$\displaystyle \dot{Z}=R+jωL $
RL直列回路と3Cの並列回路の合成アドミタンスを虚数で表すと以下となります。
$\displaystyle \dot{Y}=\frac{1}{R+jωL}+jω3C=\frac{R-jωL}{R^2+(ωL)^2}+jω3C $
$\displaystyle =\frac{R}{R^2+(ωL)^2}+j\left(3ωC-\frac{ωL}{R^2+(ωL)^2}\right) $
問題文より力率が1なので、インピーダンスは抵抗のみとなり、虚数部分は0となります。
$\displaystyle 3ωC-\frac{ωL}{R^2+(ωL)^2}=0 $
R=3Ω、L=12.75mH、(a)よりωL=2πfL=4.0035Ωより静電容量Cを求めます。
$\displaystyle C=\frac{L}{3(R^2+(ωL)^2)}=\frac{12.75×10^{-3}}{3(3^2+4.0035^2)}≒1.7×10^{-4} \ [F] $
解答
(a)の解答は(2)となります。
(b)の解答は(2)となります。