問題


方針
コンデンサに関する計算問題です。(平成28年問17と同じ問題です)
図の2つのコンデンサは、金属板を通した「コンデンサの並列接続」と考えることができます。
コンデンサの各計算には、「静電容量」「コンデンサの電気量」の式を使用します。
また、「電荷保存則と合成電荷」より、電源を切り離した後の孤立した極板(電源と接続されていないコンデンサ極板部分)の電荷の総量は変わりません。
解法
(a)
「コンデンサの並列接続」
各コンデンサの電圧は等しい。
各コンデンサの電荷量は、静電容量の比率に等しくなる。
合成静電容量は、各静電容量の和で求めることができる。

$\displaystyle V=V_1=V_2 $
$\displaystyle Q_1=C_1V Q_2=C_2V $
$\displaystyle C=C_1+C_2 $
$\displaystyle I=I_1+I_2 I_1=\frac{C_1}{C_1+C_2}I I_2=\frac{C_2}{C_1+C_2}I $
$Q$:電荷 [$C$]
$V$:電圧 [$V$]
$C$:静電容量 [$F$]
$I$:電流 [$A$]
図の2つのコンデンサは、金属板を通したコンデンサの並列接続と考えることができます。

「静電容量(C)」の式
$\displaystyle C=\frac{εA}{d} \ [F] $
$C$:静電容量 [$F$]
$ε$:誘電率 [$F/m$]
$A$:板の面積 [$m^2$]
$d$:板の距離 [$m$]
上記の「静電容量」の式より、それぞれの静電容量C1、C2を求めます。
二つのコンデンサは、同じ空気の誘電率ε=8.85×10-12F/m、板の面積はそれぞれA1=10-3m2、A2=10-2m2、板の距離はどちらもx=d=10-3mとなります。
$\displaystyle C_1=\frac{εA_1}{d}=\frac{8.85×10^{-12}×10^{-3}}{10^{-3}}=8.85×10^{-12} \ [F] $
$\displaystyle C_2=\frac{εA_2}{x}=\frac{8.85×10^{-12}×10^{-2}}{10^{-3}}=88.5×10^{-12} \ [F] $
「コンデンサの電気量(Q)」の式
$\displaystyle Q=CV \ [C] $
$Q$:電荷 [$C$]
$C$:静電容量 [$F$]
$V$:電圧 [$V$]
まずスイッチSを閉じてV0=1000Vの電圧を加えて電荷を蓄えるので、上記の「コンデンサの電気量」の式より、それぞれの電気量Q1、Q2を求めます。
$\displaystyle Q_1=C_1V_0=8.85×10^{-12}×1000=8850×10^{-12} \ [C] $
$\displaystyle Q_2=C_2V_0=88.5×10^{-12}×1000=88500×10^{-12} \ [C] $
「電荷保存則と合成電荷」
電荷保存則より、孤立した極板(電源と接続されていないコンデンサ極板部分)の電荷の総量は変わらないので、コンデンサ間を移動しても合計の電荷量は変わらない。(Q=Q1+Q2)
上記の通り、スイッチSを閉じて電源と接続しコンデンサに電荷を蓄えた後、スイッチSを開いて電源を切り離しても電荷の総量は変わらないので、蓄えられる合計電荷Qは、電源接続時の二つのコンデンサの電気量の合計となる。
$\displaystyle Q=Q_1+Q_2=8850×10^{-12}+88500×10^{-12}=97350×10^{-12}≒9.7×10^{-8} \ [C] $
(b)
二つのコンデンサは並列接続なので電圧は同じですが、徐々にxを増やしていくとコンデンサC2の静電容量は小さくなり、二つのコンデンサ間で電荷の移動が起こります。
ただし電源の無い閉回路なので、「電荷保存則」より合計の電気量は変わりません。
合計の電気量Qを使用して、x=3.0×10-3mの時の電圧Vを求めます。
まず、板の距離がx=3.0×10-3mの時のコンデンサC2‘の静電容量を求めます。
$\displaystyle {C_2}’=\frac{εA_2}{x}=\frac{8.85×10^{-12}×10^{-2}}{3.0×10^{-3}}=29.5×10^{-12} \ [F] $
静電容量C1は変わらないので、並列回路の合成静電容量Cを求めます。
$\displaystyle C=C_1+{C_2}’=8.85×10^{-12}+29.5×10^{-12}=38.35×10^{-12} \ [F] $
合計の電気量Qは変わらないので、「コンデンサの電気量」の式より電圧Vを求めます。
$\displaystyle V=\frac{Q}{C}=\frac{9.7×10^{-8}}{38.35×10^{-12}}≒2.5×10^3 \ [V] $
解答
(a)の解答は(3)となります。
(b)の解答は(2)となります。