問題

方針
「三相交流回路の計算」では、中性線を引き、一相回路に分離して考えるのが一般的です。
中性線を引くために電源側を「Δ→Y変換」して一相回路を作成します。
解答の表記が極座標表示なので、負荷の表記も極座標表示にして計算したいと思います。
結線の特徴として「Y結線」「Δ結線」、極座標表示の計算として「複素数」「極形式の複素数計算」を使います。
解法
(a)
「Δ→Y変換」
電源側をΔ→Y変換した場合は、線電圧を相電圧に変換したことになるので、Y結線の相電圧はΔ結線の相電圧(線電圧)の1/√3となり、線電圧に対して位相がπ/6遅れる。
問題の回路の電源側a-bをΔ→Y変換して、一相回路を作成します。
一相回路の電源は線電圧の1/√3となり、位相がπ/6遅れるので以下のようになります。
$\displaystyle \dot{E_a}’=\frac{200}{\sqrt{3}}\angle-\frac{π}{6} $
「複素数」

$\displaystyle \dot{z}=x+jy=z(cosθ+jsinθ) $
負荷の複素数表現を極座標表示にします。

$\displaystyle |\dot{Z}|=\sqrt{(5\sqrt{3})^2+5^2}=10 $
$\displaystyle \dot{Z}=5\sqrt{3}+j5=10\left(\frac{\sqrt{3}}{2}+j\frac{1}{2}\right)=10\left(cos\frac{π}{6}+jsin\frac{π}{6}\right)=10\angle\frac{π}{6} $
オームの法則より一相回路の電流を求めます。
$\displaystyle \dot{I_1}’=\frac{\dot{E_a}’}{\dot{Z}}=\frac{\displaystyle\frac{200}{\sqrt{3}}\angle-\frac{π}{6}}{\displaystyle10\angle\frac{π}{6}} $
「極形式の複素数計算」
$\displaystyle \dot{z_1}=r_1(cosθ_1+jsinθ_1) \dot{z_2}=r_2(cosθ_2+jsinθ_2) $
$\displaystyle \frac{\dot{z_1}}{\dot{z_2}}=\frac{r_1}{r_2}(cos(θ_1-θ_2)+jsin(θ_1-θ_2)) $
上記のように極座標表示の割り算では、位相部分は引き算となります。
$\displaystyle \dot{I_1}’=\frac{\displaystyle\frac{200}{\sqrt{3}}\angle-\frac{π}{6}}{\displaystyle10\angle\frac{π}{6}}=\frac{\displaystyle\frac{200}{\sqrt{3}}}{10}\angle\left(-\frac{π}{6}-\frac{π}{6}\right)≒11.55\angle-\frac{π}{3} $
Y回路では相電流=線電流なので、電流I1の値も同じとなります。
(b)
Y結線時の線電流を(a)で求めたので、Δ結線に戻した時の相電流を求めます。
「Δ結線」
電圧:線間電圧=相電圧
電流:線電流=√3相電流(線電流は相電流よりπ/6位相が遅れる)
上記より、相電流Iabは線電流I1の1/√3となり、位相はπ/6進むのことになるので以下となります。
$\displaystyle \dot{I_ab}=\frac{11.55}{\sqrt{3}}\angle\left(-\frac{π}{3}+\frac{π}{6}\right)≒6.67\angle-\frac{π}{6} $
解答
(a)の解答は(2)となります。
(b)の解答は(2)となります。
Y結線・Δ結線の特徴や、極座標表示の計算を知らないと初見で解くのは難しそうです。

