消防法
消防法の目的
火災を予防し、警戒しおよび鎮圧し、国民の生命、身体および財産を火災から保護するとともに、火災または地震等の災害に因る被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。
消防の組織
消防法を所管するのは総務省である。
消防機関には、市町村ごとに消防本部とその傘下に消防署があり、私設の消防団がある。
消防本部の長を消防長、消防署の長を消防署長といい、職員を消防吏員という。
消防本部の無い市町村は、消防長の代わりを市町村長が行う。
火災予防上の命令
火災予防上必要な場合、命令等をおこなうことができる。
消防長・消防署長は、関係者に報告・資料提出を命令することができる。
消防長・消防署長は、消防職員に立入検査を行わせることができる。
立入検査を行う場合は、個人の住宅は承諾が必要で、期日等の指定が必要となる。
消防長・消防署長は、防火対象物の権原のある関係者に対し、改修・移転・除去・工事の停止または中止を命じることができる。
消防長・消防署長・消防吏員は、行為者・物件の所有者等に対して以下を命令することができる。
- 火遊び、喫煙、焚き火の禁止、制限。
- 残火、取灰、火粉の始末。
- 危険物の除去。
- 放置された物件の整理、除去(改修ではない)。
消防同意
建築物を新築・改築するときの建築確認を求められた建築主事は、消防法上問題がないことについて所轄の消防長・消防署長の同意を得なければならない。
消防同意は、一般建築物で3日以内、その他は7日以内に通知される。
火災関連の用語
防火の性能
耐火
耐火性能とは、通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊、延焼を防止するために必要な性能のこと。
耐火構造は、主要構造部(壁や床など)が一定の耐火性能を備えた構造のこと。
最長3時間の火災に耐える高い性能が求められる。
主要構造部が耐火構造でない建築物でも、建築基準法令に定められている耐火性能検証法で技術的基準に適合する場合は、耐火建築物として認められる。
準耐火
通常の火災による延焼を抑制するために必要な性能。
最長1時間、火災で部材の強度が弱まり建物が崩壊し、あるいはほかに火災が広がらないことが求められる。
防火
防火性能とは、建築物の周囲において発生する通常の火災による、周囲への延焼を抑制するための外壁・軒裏に必要な性能である。
防火構造は、外壁と軒裏に防火性のある材料を使用し、30分間の加熱でも支障のある変形や破壊を生じることがなく、またその裏面が出火に至る危険温度とならないことが要件となっている。
防炎規制
延焼の原因となる防炎対象物品(カーテン、じゅうたん、展示用の合板など)は、防炎性能をもたせること。(防炎製品とは、消防法に基づく防炎物品以外の物をいう)
防炎とは、薬剤処理を施し、着火、展炎しにくくしたものである。
防炎規制を受ける防火対象物は、以下の通り。
特定防火対象物、31mを超える高層建築物、工事中の建築物、テレビスタジオ・映画スタジオなど。
避難安全検証法
建築基準法令に定められている建築物の避難安全に関する性能規定。
避難安全性能を有していることが確認できれば、建築基準法の避難関係規定の一部を適用除外することができる。
火災に関する区域
警戒区域
火災の発生した区域を他の区域と区別できる最小単位。
面積は、600m2以下。(出入口から見通せる場合は1000m2以下)
一辺は、50m以下。(光電式分離型感知器を設置の場合は100m以下)
2以上の階をわたらないこと。(合計面積が500m2以下の場合を除く)
たて穴区画(階段やエレベータ昇降路)は、原則一つとする。
水平距離が50m以下にある複数のたて穴区画は、一つにしてよい。
たて穴区画で、地下1階までは地上とまとめてよい。地下2階以上は地下と地上を分ける。階数が多い場合は45m毎に分ける。
屋根裏は下の階に加算する。
防火区画
火災の拡大防止のため、特定防火設備で区画化して防火区画を作る。
特定防火設備とは、シャッターや防火扉等、火災を閉じ込めることができる設備のことである。
消防に関する用語
- 舟車(しゅうしゃ):舟と車のこと。
- 関係者:防火対象物または消防対象物の所有者、管理者、占有者をいう。
- 無窓階:避難上または消火活動上有効な開口部を有しない階。
- 展炎性:材料の燃え広がりのしやすさである。
- 着火性:火のつきやすさである。
- 難燃性:炎を当てても燃え広がらない性質。(合成ゴムなど)
- 自消性:炎を除くと自然に消える性質。(塩化ビニルなど)
- 不燃性:炎を当てても燃えない性質。(ガラス、鉄など)
- 耐火性:炎で加熱されても著しく変形や破損しない性質。(コンクリートなど)
- 延焼ライン(延焼のおそれのある部分):隣地や道路で火災が発生したときに、火が燃え移るおそれのある範囲のこと。
- 火災荷重:建物内の可燃物の発熱量を木材の発熱量で換算した、単位床面積当たりの可燃物重量のこと。
災害全般の用語
Jアラート
緊急の気象関係情報、有事関係情報を国から住民などへ伝達するシステム。
ライフライン
電気・ガス・水道・通信などの生活を維持するための施設。
消防法における建築物
消防対象物
「山林または舟車、船きょもしくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物または物件」で、防火対象物よりも範囲が広い。
防火対象物
「山林または舟車、船きょもしくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物もしくはこれらに属する物」で、一戸建て住宅を除くほとんどの建築物である。
特定防火対象物
多数の者が出入りする防火対象物で、不特定多数の人が出入りしたり、避難が難しい人のいる施設が指定されている。
百貨店、病院、ホテル、保育園・幼稚園は含まれるが、工場、事務所、共同住宅、小学校以上の学校は含まれない。
消防法の遡及(そきゅう)が適用される。
(遡及とは、過去の建物であっても現行の基準が適用されること)
複合用途防火対象物
防火対象物で2つ以上の用途に使われている雑居ビルなど。
特定防火対象物の用途(特定用途)が含まれている場合は、全体が特定防火対象物となる。
消防設備等の設置単位は、用途ごとに1つとなるが、自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備の設置時は、1つの単位として基準を適用する。
防火・防災管理制度
防火管理者
防火管理業務の推進責任者。
防火対象物の権原をもつ者が選任する。選任・解任した時は遅滞無く所轄消防長・消防署長に届出が必要である。
業務は、消防計画の作成、避難訓練等の実施、消防用設備の点検、火気の使用の監督(危険物ではない)、収用人員の管理などである。
防火管理者が必要な建物においては、すべてのテナントで防火管理者の選任が必要となる。
防火管理者は国家資格であり、講習を受講するか、学歴その他各種経験または資格によって取得が可能である。
防火管理者が必要な建築物
要介護福祉施設(10人以上)、特定防火対象物(30人以上)、非特定防火対象物(50人以上)。
統括防火管理者
複数の管理権原者がいる建築物では、全ての管理権限者が協議して統括防火管理者を選任し、建物全体での一括した防火管理を行う。(共同防火管理)
以下の防火対象物で管理権限が分かれているもの。
地階を除く階数が3階以上の施設で、要介護福祉施設(10人以上)、特定防火対象物(30人以上)。
地階を除く階数が5階以上の施設で、非特定防火対象物(50人以上)。
地下街、31mを超える高層建築物。
防災管理者
防災管理対象物において「火災以外の災害」による被害を軽減するため、防災管理上必要な業務を計画的に行う責任者。
大規模事業所においては、従来の防火管理者、自衛消防組織に加えて、大地震などに備えた防災管理者を置くことが必要である。
基本的に防災管理者と防火管理者は同じ人が選任される。
建築物について地震の被害軽減のための自主検査業務も行う。
防災センター
東京都では、一定規模以上の防火対象物の消防設備は防災センターで集中管理しなければならない。
防災センターで監視・操作に従事する者は、防災センター要員講習の受講が必要である。
消防設備士
消防設備士は、その免状の種類に応じて消防庁長官が告示により定める種類の消防設備等に限って、定期点検を行うことができる。
消防設備士の区分
業務の分類
- 甲種:特殊、1類~5類の点検・整備・工事ができる。
- 乙種:1類~7類の点検・整備ができる。
設備の分類
- 特殊:特殊消防用設備。
- 1類:水消火設備。
- 2類:泡消火設備。
- 3類:不活性ガス消火設備。
- 4類:警報設備。
- 5類:避難設備。
- 6類:消火器。
- 7類:漏電火災警報器。
消火器と漏電火災警報器は、設置に資格は必要ないが、点検には乙種が必要である。
火災報知設備の配線の交換は、消防設備士でないと行えない。
消火栓設備の水源・電源・配管、動力消防ポンプ設備、箱の補修、電源ヒューズ・表示灯・ホースの交換などは消防設備士でなくても行える。
消防設備士の免状
免状は、消防設備士試験に合格したものに対し、都道府県知事が交付する。
10年経過時、氏名・本籍地に変更があった場合は、交付、居住地、勤務地の都道府県知事に書換えを申請する。
紛失時の再交付は、交付、書換えの都道府県知事に申請する。
免状は携帯すること。
交付から2年以内、その後は5年以内ごとに、都道府県知事の行う講習を受けなければならない。(受講場所はどこでもよい)
講習を受講しなかった場合、返納を命令される場合がある。
返納から1年、刑の執行から2年は交付されない。
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