自動火災報知設備とは
火災を感知するセンサーである感知器と押しボタン式の発信機からの火災信号を中継器を介して、受信機が受取り、主音響装置や地区音響装置で火災を知らせる設備。
受信機、感知器、中継器、発信機、ベル等の音響装置及び表示灯で構成される。
火災の早期発見、初期消火のため設置される。
受信機
火災表示を行う火災灯と地区表示灯のほかに、ガス漏れ警報、防火戸、防火シャッター、排煙設備などが感知器と連動し、起動・停止を行える装置。
守衛室、中央管理室(防災センター)、管理人室等常時人がいる場所に設置する。
受信機の構造
主電源を監視するための交流電源灯、各種試験装置は前面に設置する。蓄積時間の調整装置は内部に設置する。
受信機は、水滴が浸入しにくく、防食の処置を講じなければならない。
周囲の温度が0℃以上40℃以下で正常に動作すること。
ガラス管ヒューズを受信機内で発信機や感知器との回路に接続し、回路が短絡した場合に機器焼損を防ぐ。
P1型(多回線)以外で設置できる台数は2台までである。
延べ面積は、P2型(1回線)は350m2以内、P3型は150m2以内の制限がある。
受信機のスイッチ
復旧スイッチ、音響停止スイッチは、専用のものを付け、定位置に無い時に点滅するスイッチ注意灯をつける。
操作スイッチの位置は、床面から0.8m(いすの場合0.6m)以上1.5m以下とする。
- 火災確定:停止、遮断したスイッチがすべて解除され、火災確定時の動作を行う。
- 主音響停止:受信機本体のブザーを止める。
- 地区音響停止:地区音響のベルを止める。
- 復旧:発報信号をリセットし、監視状態に戻す。(発報の要因を取り除いてから押す)
- 連動、移報停止:受信機から他の連動機器への信号を遮断する。
- スイッチ注意灯:各スイッチが「定位」位置に無いことを表示する。
- プリンタ停止:操作や情報のプリントアウトを停止する。
受信機の分類
P型
感知器などの端末機器と受信機を警戒区域ごとに共通線を介し、個々に配線される個別配線方式。
警戒区域ごとに回線が必要となり、回線ごとに地区表示灯が存在するため、占有場所が増える。
火災は発生地区で表示される為、感知器の特定ができない。
回線が火災で断線した場合、その断線区域で火災区域が特定ができるので一般電線を使用できる。
R型
感知器と受信機間、中継機と受信機間に共通の電路を使用して伝送する方式。
感知器からの信号は中継器でデジタル信号に変換され、受信機へ送信される。
警戒区域が増えても回線数は変わらない。回線数に制限はない。
一つの表示パネルで、複数の警戒区域表示が可能である。
プリンタの出力機能を持つ。
警戒区域をまたいで共通に回線を使用するため、耐熱電線を使用しなければならない。
GP(GR)型
P型(R型)受信機の機能に、ガス漏れ検知器の信号を受信して、ガス漏れを報知する機能を併せもつ受信機。
級
- 1級:回線数の上限なし。
- 2級:火災表示のみを行う装置。接続できる回線数は5回線以下である。
- 3級:1回線のみ。
アナログ受信機
アナログ感知器に対応し、状態の変化を感知する注意表示の機能を持っている。注意表示は、注意灯+注意音響装置でおこなう。
アナログ感知器が検出した温度や煙濃度等の情報を、火災情報信号と呼ぶ。
火災情報信号の程度に応じて、火災表示をする程度に達した旨の信号を、火災表示信号と呼ぶ。
火災の確定
火災確定
感知器から火災信号・火災表示信号を受信した場合、受信機の火災確定は以下となる。
- 発信機:発信機から手動で押された場合は、即火災確定となる。
- 蓄積式:感知器からの信号を5~60秒間蓄積し、継続した場合火災確定となる。(煙感知器は非蓄積型を使用すること)
- 二信号式:1個目の火災信号で地区表示灯と主音響装置だけを動作させ、2個目の火災信号ではじめて火災確定となる。(煙感知器は非蓄積型を使用すること)
蓄積機能を用いる場合は、感知器+中継器+受信機の合計蓄積時間が、熱感知器で20秒以下、煙感知器で60秒以下となるようにする。
火災表示
- 火災が確定すると、火災灯(赤色)が点灯し、主音響装置が鳴動する。
- 火災が発生した警戒区域を示す、地区表示装置(地区表示灯)が動作する。
- 地区音響装置を使用して警戒区域へ通報をする。
この一連の動作を火災表示といい、火災確定から5秒以内に行う。
火災表示の点灯や鳴動は、自動的に復旧してはいけない。
中継器
感知器と受信機の間で、火災信号を中継する装置。
R型受信機への回線の配線数を減らす目的で、中継器が動作を指示することは無い。
5秒以内の信号伝達が求められる。(蓄積型は5~60秒以下)
外部負荷に給電する場合や、予備電源を使用する場合はブレーカなどを設け、作動した場合は受信機に作動信号を送信する。
-10℃~50℃で正常に動作すること。
主音響装置
受信機に内蔵されているベルやサイレン。
音量は、1m離れて85dB以上。(P3型は70dB以上)
定格電圧の90%(予備電源で85%)の電圧で動作すること。定格電圧で連続8時間使用できなければならない。
地区音響装置
感知器又は発信機の作動と連動して防火警戒区域又は全区域に火災の発生を報知するもの。
べルは消火栓内に設置されている場合が多い。
音量は、1m離れた位置で90dB以上。(音声は92dB以上)、感知器作動警報は女声で、火災警報は男声とする。
水平距離25m以下に1台設置する。
非常放送装置で代用することができる。また、非常放送中は、地区音響装置の鳴動は停止する。
鳴動の機能
再鳴動機能
地区音響停止スイッチが停止状態にあっても、再び火災信号が受信されるとスイッチを自動的に鳴動状態に戻す機能。
特定1階段等特定防火対象物や個室ビデオ店は、再鳴動機能を設ける。
区分鳴動
地階を除く5階建て以上、または延べ面積3000m2以上の場合、鳴動区域を分けることができる。
鳴動は出火階+直上階となる。但し出火階が1階または地階の場合は、地階全部を鳴動させる。
鳴動は、階段やエレベータの感知器と連動させないこと。
一定時間経過後には、全館鳴動になること。
発信機
押しボタンを押して手動で火災を知らせる装置。
P型1級(電話ジャック付き)、P型2級(電話ジャック無し)、受話器を上げると火災信号を発信するT型がある。
発信機、表示灯、地区音響装置を収容したものを、機器収容箱という。
押しボタンの保護板は透明の有機ガラス(無機ガラスはダメ)で、赤色の表示灯を設け、外箱は赤色とする。
歩行距離50m以下に1台設置する。
取付位置は、床面から0.8m以上1.5m以下とする。
1回線のみで使用するP2型、P3型の受信機には、発信機はなくてもよい。
発信機の構成
表示灯
発信機のある場所を示すための赤いランプ。
各種表示灯は、130%の電圧で20時間点灯しても正常に動作しなければならない。
電球の時は2個以上を並列に接続し、300ルクスの周囲で3mの地点から確認できる明るさとする。
確認ランプ
信号が受信機に届いたことを知らせる確認ランプ。1級のみ。
電話ジャック
送受話器を接続して受信機と通話できる。1級のみ。
受信機との配線
受信機ー非常電源・中継器(予備電源なし)は耐火配線とする。
受信機ー中継器(予備電源あり)・地区音響装置・アナログ感知器・他の消防設備の操作回路は耐熱配線とする。
中継器ー感知器・発信機は一般配線とする。
耐火配線とは、600V二種ビニル絶縁電線(HIV線)を金属管に収めて埋設するか、MIケーブル又は耐火ケーブルの露出で構成される配線である。
耐熱配線は、600V二種ビニル絶縁電線(HIV線)を金属管に収めて埋設無しか、MIケーブル又は耐火ケーブルの露出で構成される配線である。
一般配線は、600Vビニル絶縁電線(IV線)を使用し、他の電線と一緒に収用してはいけない。
感知器の送り配線
感知器を数珠つなぎに配線していく方式。4芯の電線を使用することが多い。
末端は発信機、終端抵抗、回路試験器などを接続する。
常時微弱電流が流れており、1か所断線するとすぐに検出できる。
自動試験機能を有する受信機の場合は、送り配線、終端器は必要ない。
電路の抵抗値は50Ω以下とする。

感知器配線の共通線
受信機からの配線の片側(マイナスの戻り線)を1本にして、7回線までまとめることができる。
自動火災報知設備の電源
電源は、常用電源、非常電源、予備電源の3種類がある。
定格電圧60Vを超えるときは、接地端子を設け、主電源の両極を同時に開閉するスイッチを用いる。
主電源は定格電圧の90%以上110%以下、予備電源で85%以上110%以下で正常に動作しなければならない。
電源の種類
常用電源
通常運用時の電源。交流の低圧屋内幹線。
他の電源経路と分離し、蓄電池または幹線から分岐させずにとり、分電盤には自動火災報知設備用であることを明記する。
非常電源
停電などの非常時に使用する電源。
非常電源専用受電設備、自家発電設備、蓄電池設備、燃料電池設備を設ける。
非常電源専用受電設備とは、消防用設備等専用の変圧器によって受電するか又は主変成器の2次側から直接専用の開閉器によって受電するもので、他の回路 によって遮断されないものをいう。1000m2以上の特定防火対象物については非常電源として認められない。
蓄電池設備は、自動火災報知設備が10分間動作する容量とし、予備電源の容量が非常電源を超える場合は、非常電源を省略できる。
蓄電池設備は、過充電防止装置は必要だが、過放電防止装置は無い。また、常用電源として使用しても良い。
予備電源
常用電源および非常電源が使用できない場合に使用する密閉型蓄電池の電源。
電源復旧時に自動的に切り替わること。
口出し線は誤接続防止のため色分けすること。
電源容量は、監視状態60分で、2回線の火災表示と10分間の地区音響装置の鳴動ができる容量とする。
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