交流

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交流とは

時間的に一定周期で大きさと向きが変わる電流。
波形が正弦波であることから、正弦波交流と呼ばれる。
交流は、電流と電圧で同じ波形でも時間的にずれ(遅れ、進み)が生じる。これを位相θのずれと呼ぶ。

瞬時値

正弦波交流のある時点での値。
位相が進んでいる:+θ、t=0での波形は正の位置にある。
位相が遅れている:-θ、t=0での波形は負の位置にある。

$\displaystyle e=E_msin(ωt+θ) \ [V] $

$E_m$:最大値電圧 [$V$]
$ω$:角周波数 [$rad/s$]
$t$:時間 [$s$]
$θ$:位相 [$rad$]

平均値

瞬時値の和の平均。(電流も同様)

$\displaystyle E_{av}=\frac{2}{π}E_m \ [V] $

$E_{av}$:平均値電圧 [$V$]
$E_m$:最大値電圧 [$V$]

実効値

交流の電圧は刻々変化するので、便宜上、実効値で表現する。電流も同様である。
同じ抵抗の回路において、交流と直流で消費電力が同じになるときの直流値を、その交流の実効値としている。
計算上は、瞬時値の2乗の平均の平方根である。

$\displaystyle E=\frac{E_m}{\sqrt{2}} \ [V] $

$E$:実効値電圧 [$V$]
$E_m$:最大値電圧 [$V$]

波形率

計測器などで平均値から実効値を求める際に使用する。(正弦波であればπ/2√2となる)

$\displaystyle \frac{E}{E_{av}} $

波高率

波高値は、1周期での最大値の実効値に対する比率である。(正弦波であれば√2となる)

$\displaystyle \frac{E_m}{E} $

交流波の表現

電気のベクトル図では、時計回り方向が遅れ、反時計回り方向が進みとなる。

交流の複素数(ベクトル)表現

交流電源に、力率0.6の負荷が接続されたときに流れた電流が10Aだった場合の電流値を考える。

  1. 電流10Aは、10cosθ(有効電流)と10sinθ(無効電流)の合成電流の値と考える。
  2. cosθ=0.6 なので、sinθ2+cosθ2=1 より sinθ=0.8
  3. 有効電流と無効電流を複素数表現すると、I=10(cosθ+jsinθ)=10(0.6+j0.8)=6+j8となる。
  4. I=x+jyの複素数で、実数部分はx軸、虚数部分はy軸に該当する。
  5. ベクトル図で表すと以下のようになる。

$\displaystyle \dot{I}=|\dot{I}|(cosθ+jsinθ)=6+j8 $

$\displaystyle |\dot{I}|=\sqrt{6^2+8^2}=10 \ [A] $

交流正弦波の合成

2つの式の複素数和

以下の電流I1とI2の合成電流Iを求める。

$ \dot{I_1}=8+j20 $
$ \dot{I_2}=12-j5 $
$ \dot{I}=\dot{I_1}+\dot{I_2}=(8+12)+j(20-5)=20+j15 $
$ |\dot{I}|=\sqrt{20^2+15^2}=25 $

2つの式のベクトル和

以下の合成電圧正弦波を求める。
e1=Esin(ωt+θ) [V]
e2=√3Esin(ωt+θ+π/2) [V]
e1を基準とすると、e2は最大値が√3倍で、位相がπ/2進んでいる。
ベクトル図に示すと、横軸にEを取ると、90°進んでいるので、縦軸に√3Eの合成ベクトルとして表現できる。
1:2:√3の三角形として表せるので、最大値の合成電圧は2E、位相差は60度(π/3)進んだ正弦波として表せる。
e=2Esin(ωt+θ+π/3) [V]

すでに加算式の場合

i=6sinωt+2sin3ωt [A]
i1=6sinωt と i2=2sin3ωt の2つの電流の合成と考える。
実効値はそれぞれ I1=6/√2、I2=2/√2 となり、ひずみ波の実効値として加算する。

複数の交流電圧が接続された回路の合成電源

それぞれの電源の位相差を考慮してベクトル図を考え、ベクトル和を求める。
逆向きに接続された電源は、ベクトル方向が逆にして合成する。

ひずみ波

非正弦波交流のこと。
直流成分+基本波成分+基本波の整数倍の周波数の高調波成分が合成されたものとなる。
高調波とは、交流の基本波に対する整数倍の周波数成分をもつ波形で、電源周波数と同期する。
ノイズは、単発的に発生するもので、周波数も数百kHzと高い。

ひずみ波の実効値(電圧・電流)

直流電圧E0、基本波の実効値E1、二次高調波の実効値E2…とした場合
直流、基本波、高調波の実効値をそれぞれ2乗し、加算したものの平方根となる。

$\displaystyle E=\sqrt{{E_0}^2+{E_1}^2+{E_2}^2+\cdots+{E_n}^2} $

ひずみ波の電力

直流の電力、基本波の電力、高調波の電力をそれぞれ求め、加算したものとなる。

ひずみ率

$\displaystyle THD[\%]=\frac{\sqrt{{E_2}^2+{E_3}^2+{E_4}^2+\cdots}}{E_1}×100 $

直流と交流の合成

直流成分と交流成分を含む回路の実効値は、直流と交流の直交性より、合成ベクトルで考える。
電圧も同様である。

$\displaystyle 合成電流実効値=\sqrt{直流電流^2+交流電流実効値^2} $

高調波

高調波は、商用周波数の整数倍の周波数の波形で、奇数次高調波は、半周期ごとに同じ波形が正負対象に交互に繰り返される対称波形で、偶数次高調波は非対称波形となる。
一般的な電源高調波電流は対称波形であり、直流成分と偶数次高調波成分は含まれず奇数次高調波成分だけが含まれる。そのため奇数次高調波が問題となる。
高調波電流では、奇数倍の数が大きいほど少なくなるが、実際の電力系統の高調波は、第5調波が最も大きく、次いで第7の順になっている。第3高調波は変圧器のΔ回路に還流したり、コンデンサ等に流れ込むなどによって、結果的に少なくなっている。
周波数の低い成分(第3~7高調波)は信号の波形を維持するのに重要だが、周波数の高い成分は重要度が低いためノイズとして除去できる。

第3高調波を含んだ波形
複数の高調波を含んだ波形

第3高調波

周波数が商用周波数の3倍の正弦波。
三相交流と同じサイクルとなるため、高圧側にはあまり現れない。

第5高調波

周波数が商用周波数の5倍の正弦波。
原則として、高調波対策の計算は第5高調波で行う。
コンデンサは、周波数が高い電流を吸収しやすい為(I=2πfC×V)、高調波の抑制対策が必要である。

高調波の問題

  • 配電線・変圧器のインピーダンスで電圧降下を発生させ、電源電圧を歪ませる。
  • コンデンサは周波数が高いほどインピーダンスが小さくなるので、進相コンデンサに高調波電流が流れることによる燃損を起こす。
  • 変圧器・電動機などの鉄損である渦電流損は周波数の2乗に比例するため、高周波による鉄損が増えると、過熱・うなり・振動などを起こす。
  • 電源電圧の歪みによって、電気機器の誤動作、通信機器のノイズや乱れが起こる。
  • コイルとコンデンサの直列共振回路が形成されることで、大きな共振電流が流れ、コンデンサ・コイルに発熱がおこる。

高調波の発生原因

電源側から見て、正弦波電流が流れる機器を「線形負荷」そうでないものを「非線形負荷」と呼び、「非線形負荷」を使用すると高調波を発生する。

  • 整流装置・インバータなどの半導体を使用した電力変換器。
  • 鉄心を有して、非線形磁化特性(ヒステリシス曲線)を持つ変圧器・電動機。
  • 使用する交流電流を整流装置とインバータで作る、アーク炉などの電気炉。

高調波対策

高調波流出抑制対策では、受動フィルタ(共振回路を作って吸収させる)と能動フィルタ(高周波電流と逆位相の電流を注入する)がある。
発生源では、リアクトルの接続やPWMコンバータの採用などがある。
受電側では、直列リアクトルの設置などがある。
「高調波抑制対策ガイドライン」では、高調波電流流出を抑制するため、総合電圧歪率を6kV配電系統で5%、特別高圧系統で3%を目標値として求められている。

交流における素子の特性

抵抗の特性(交流)

直流と同様である。
周波数によって値は変化しない。
抵抗のみの回路の場合、電圧と電流の間に遅れや進みの位相差は発生しない。

コイルの特性(交流)

電圧を基準にすると電流はπ/2遅れる。ベクトル表現では↓。
(電流を基準にすると電圧はπ/2進む。ベクトル表現では↑)

誘導性リアクタンス(XL

コイルの抵抗成分。単位は[Ω]。
周波数が高いとリアクタンスも大きくなる。
直流(周波数0の交流)には短絡(XL=0)となる。

$\displaystyle X_L=ωL=2πfL \ [Ω] $

$ω$:角周波数 [$rad/s$]
$L$:インダクタンス [$H$]
$f$:周波数 [$Hz$]

コンデンサの特性(交流)

電圧を基準にすると電流はπ/2進む。ベクトル表現では↑。
(電流を基準にすると電圧はπ/2遅れる。ベクトル表現では↓)

容量性リアクタンス(XC

コンデンサの抵抗成分。単位は[Ω]。
周波数が高いとリアクタンスは小さくなる。
直流(周波数0の交流)には開放(XC=∞)となる。

$\displaystyle X_C=\frac{1}{ωC}=\frac{1}{2πfC} \ [Ω] $

$ω$:角周波数 [$rad/s$]
$C$:静電容量 [$F$]
$f$:周波数 [$Hz$]

インピーダンス(Z)

インピーダンスは、交流回路における電気抵抗で、抵抗やコイルとコンデンサのリアクタンスを統合したものである。単位は[Ω]。
インピーダンス=抵抗(R)+誘導性リアクタンス(XL)+容量性リアクタンス(XC)のベクトル和として示される。
RLC直列回路とRLC並列回路では求め方が異なる。
ベクトル図の位相差θは、力率cosθとなる。

RLC直列回路
RLC並列回路

インピーダンスの虚数表現

抵抗のインピーダンス

$\displaystyle \dot{Z_R}=R $

コイルのインピーダンス

$\displaystyle \dot{Z_L}=jX_L=jωL $

コンデンサのインピーダンス

$\displaystyle \dot{Z_C}=-jX_C=-j\frac{1}{ωC}=\frac{1}{jωC} $

逆数の表現

アドミタンス(Y)

インピーダンスZの逆数。単位は[S]。

コンダクタンス(G)

抵抗Rの逆数。単位は[S]。

サセプタンス(B)

リアクタンスXの逆数。単位は[S]。

交流回路

オームの法則(交流)

抵抗(R)、リアクタンス(X)、合成インピーダンス(Z)が求まる場合、その回路部分では、交流回路でも直流回路同様に以下のオームの法則が使用できる。

$\displaystyle V=ZI \ [V] (V=X_LI、V=X_CI、V=RI)(I=YV) $

$V$:電圧 [$V$]
$Z$:合成インピーダンス [$Ω$]
$I$:電流 [$A$]

RLC直列回路

電流と電圧

直列回路なので電流は同じ。
電流を基準にすると、電圧は、抵抗は電流と同じ方向、コイルはπ/2進み方向、コンデンサはπ/2遅れ方向となる。
(コイルの電流は電圧に対してπ/2遅れる→電圧は電流に対してπ/2進む)
合成電圧は抵抗・コイル・コンデンサの各電圧のベクトル和となる。
合成電圧はベクトル表現で、右方向に電流および抵抗の電圧VR、上方向にコイルの電圧VL、下方向にコンデンサの電圧VCとなる。

$\displaystyle \dot{V}=V_R+j(V_L-V_C) $

合成インピーダンス(Z)

直列回路の合成インピーダンスは、直流回路と同様に各素子のインピーダンスを加算する。
抵抗・コイル・コンデンサの各素子の位相差をベクトル図で表現すると、合成インピーダンスは各インピーダンスのベクトル和となる。
ベクトル図は、合成電圧と同様に、右方向に抵抗R、上方向にコイルXL(進み)、下方向にコンデンサXC(遅れ)となる。
ベクトル図の位相差θは、力率cosθとなる。
虚数部分が十分小さい場合は、合成インピーダンスは抵抗のみとして計算してよい。

$\displaystyle \dot{Z}=\dot{Z_R}+\dot{Z_L}+\dot{Z_C}=R+jωL+\frac{1}{jωC}=R+j\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right) $

$\displaystyle |\dot{Z}|=\sqrt{R^2+(X_L-X_C)^2}=\sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2} $

RLC並列回路

電流と電圧

並列回路なので電圧は同じ。
電圧を基準にすると、電流は、抵抗は電圧と同じ方向、コイルはπ/2遅れ方向、コンデンサはπ/2進み方向となる。
合成電流はベクトル表現で、右方向に電圧および抵抗の電流IR、上方向にコンデンサの電流IC、下方向にコイルの電流ILとなる。

$\displaystyle \dot{I}=I_R+j(I_C-I_L) $

合成インピーダンス(Z)

並列回路の合成インピーダンスは、直流回路と同様に合成インピーダンスの逆数(合成アドミタンス)が各素子のインピーダンスの逆数の和となる。
抵抗・コイル・コンデンサの各素子の位相差をベクトル図で表現すると、合成アドミタンスは各アドミタンスのベクトル和となる。
合成アドミタンスは、合成電流と同様に、右方向に抵抗1/R、上方向にコンデンサ1/XC(進み)、下方向にコイル1/XL(遅れ)となる。
ベクトル図の位相差θは、力率cosθとなる。

$\displaystyle \dot{Y}=\frac{1}{\dot{Z}}=\frac{1}{\dot{Z_R}}+\frac{1}{\dot{Z_L}}+\frac{1}{\dot{Z_C}}=\frac{1}{R}+\frac{1}{jωL}+jωC=\frac{1}{R}+j\left(ωC-\frac{1}{ωL}\right) $

$\displaystyle |\dot{Y}|=\left|\frac{1}{\dot{Z}}\right|=\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2+\left(\frac{1}{X_C}-\frac{1}{X_L}\right)^2}=\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2+\left(ωC-\frac{1}{ωL}\right)^2} $


Ver1.0.3

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