電力

スポンサーリンク

電力(P)

単位時間あたりの電気エネルギーこと。仕事率。単位は[W]。
電力[W]=エネルギー[J/s]=トルク[N・m/s]である。

ジュールの法則

$\displaystyle P=VI=I^2R=\frac{V^2}{R} \ [W][J/s][N・m/s] $

$P$:電力 [$W$]
$V$:電圧 [$V$]
$I$:電流 [$A$]
$R$:抵抗 [$Ω$]

コイルとコンデンサの電力

コイルやコンデンサはエネルギーを蓄えたり放出したりするが、消費はしない。エネルギー(電力)が消費されるのは抵抗だけである。
回路内の電力消費は全て抵抗で、ジュール熱として使用される。

最大供給電力の定理

内部抵抗r、起電力Eの電圧源と抵抗Rを接続した回路で、抵抗Rの電力が最大となるのはR=rの時で、電力の最大値はE2/4rとなる。

電力量(W)

t秒間に流れる電流のする仕事量。電力×時間。単位は[J]。
電力量[W・s]=エネルギー量[J]=仕事量[N・m]である。

$\displaystyle W=Pt \ [W・s][J][N・m] $

$W$:電力量 [$W・s$]
$P$:電力 [$W$]
$t$:時間 [$s$]

ワット時

1時間にする電力の仕事量として電力×時間[Wh]で表す。
電力量計などで電力量を表記する場合に使用する。
1kWhとは、1kWの機器を1時間使用した場合の消費電力量を示している。

  • 50kWの電力の機器を1時間使用したとき、50kWhの電力量となる。
  • 120kWの電力の機器を10分使用したとき、120kW×(10/60)h=20kWhの電力量となる。
  • 6時間で180kWhの電力量の場合、1時間当たりの電力量は180/6=30kWhとなり、機器の電力は30kWとなる。
  • 1kWhを熱量に変換する場合は秒が基準になるので、1kWh=3600kWs=3600kJとなる。

ジュール熱(H)

電力P[W](抵抗Rに電流Iを流した時の電力)を時間t[s]使用した時の発熱量(ジュール熱)Hは、電力量W[J]と等しい。

$\displaystyle H=Pt=RI^2t \ [J] $

$P$:電力 [$W$]
$t$:時間 [$s$]
$I$:電流 [$A$]
$R$:抵抗 [$Ω$]

単相電力と力率

有効電力(P)

負荷(R)が消費する電力。電力計の示す値。単位は[W]。
電気を消費するモータは機械的出力として、ランプなどは消費電力として、これを定格出力として示す。

$\displaystyle P=VIcosθ=I^2R=\frac{V^2}{R} \ [W] $

$P$:有効電力 [$W$]
$V$:抵抗の電圧 [$V$]
$I$:抵抗の電流 [$A$]
$R$:抵抗 [$Ω$]
$θ$:電圧と電流の位相差 [$rad$]

無効電力(Q)

コイル(L)やコンデンサ(C)のリアクタンス(X)が蓄積できる電力。単位は[var]。
コイルの遅れ無効電力と、コンデンサの進み無効電力がある。
エネルギーに変換されず、電源に戻る。

$\displaystyle Q=VIsinθ=I^2X=\frac{V^2}{X} \ [var] $

$Q$:無効電力 [$var$]
$V$:リアクタンスの電圧 [$V$]
$I$:リアクタンスの電流 [$A$]
$X$:リアクタンス [$Ω$]
$θ$:電圧と電流の位相差 [$rad$]

皮相電力(S)

電源が供給する電力容量。単位は[VA]。
皮相電力Sは、有効電力P、無効電力Qのベクトル和で表せる。力率が角度cosθとなる。
電気を送り出す発電機や変圧器はこれを定格出力として示す。

$\displaystyle S=VI=\sqrt{P^2+Q^2}=I^2Z=\frac{V^2}{Z} \ [VA] $

$S$:皮相電力 [$VA$]
$V$:電圧 [$V$]
$I$:電流 [$A$]
$P$:有効電力 [$W$]
$Q$:無効電力 [$var$]
$Z$:インピーダンス [$Ω$]

力率(cosθ)

電圧と電流の位相差θで表され、受電した皮相電力に対して実際に使用する有効電力の割合を表している。

$\displaystyle cosθ=\frac{P}{S} $

$cosθ$:力率
$P$:有効電力 [$W$]
$S$:皮相電力 [$VA$]

力率が1(100%)のとき、最も効率が良く、小さくなると悪くなる。
RLC回路で力率が1となるのは、無効電力が0となる場合、つまりコイルの無効電力=コンデンサの無効電力となり打ち消されるときである。
虚数の式では、合成インピーダンスの虚数部分が0となることを意味する。
ベクトル図では、電圧と電流のベクトルが同方向となり、コイルとコンデンサのベクトルが相殺されることを意味する。

交流電力のベクトル図

一般的な負荷は、抵抗(ヒーターなどの熱)と誘導性リアクタンス(コイルを使用したモーター)の回路で表すことができる。
電圧を基準にした場合、誘導性リアクタンスは遅れ電流となるので、無効電力も誘導性(遅れ)の電力となる。
皮相電力(S)、有効電力(P)、無効電力(Q)、力率(cosθ)をベクトル図で表すと以下のようになる。

$\displaystyle cosθ=\frac{P}{S}  Q=Ptanθ=P\frac{sinθ}{cosθ} \ [var] $

$cosθ$:力率
$P$:有効電力 [$W$]
$Q$:無効電力 [$var$]
$S$:皮相電力 [$VA$]

複素電力(交流電力の複素数計算)

交流の電力(皮相電力)Sを複素数で計算する場合は、単純に電圧Vと電流Iを乗じるのではなく、電圧Vまたは電流Iのどちらかを共役複素数(複素数部分を-jとする)にして乗じる点に注意する。
電圧Vの実部からの位相差θ1と電流Iの実部からの位相差θ2をそのまま使用すると、電力計算時の位相差はθ1+θ2となってしまい、電圧Vと電流Iの位相差にならない。

$\displaystyle S=\dot{V}×\overline{\dot{I}}=VIcos(θ_1-θ_2)+jVIsin(θ_1-θ_2)=P+jQ $

$S$:皮相電力 [$VA$]
$P$:有効電力 [$W$]
$Q$:無効電力 [$var$]
$\dot{V}=V(cosθ_1+jsinθ_1)$:電圧
$\dot{I}=I(cosθ_2+jsinθ_2)$:電流
$\overline{\dot{I}}=I(cosθ_2-jsinθ_2)$:電流(共役複素数)

電流Iを共役複素数とした場合は、無効電力Qは遅れ無効電力が正の値となり、進み無効電力は負の値となる。(電圧Vを共役複素数とした場合は、逆に進み無効電力が正の値となり、遅れ無効電力が負の値となる)

計算例

電圧V、電流Iの複素数が与えられたときの電力計算を行う。

電圧$\dot{V}=30+j40 \ [V]$
電流$\dot{I}=20+j10 \ [A]$
電流の共役複素数$\overline{\dot{I}}=20-j10 \ [A]$
皮相電力$\dot{S}=\dot{V}×\overline{\dot{I}}=(30+j40)×(20-j10)=1000+j500$
$\dot{S}=P+jQ$より
有効電力$P=1000 \ [W]$
無効電力$Q=500 \ [var]$
無効電力$S=\sqrt{(1000)^2+(500)^2}≒1100 \ [VA]$
力率$cosθ=\displaystyle\frac{P}{S}=\frac{1000}{1100}=0.91$

三相電力と力率

三相有効電力(P)

三相で考える場合、線間では結線により電流または電圧が√3倍となる。
一相で考える場合、一相の有効電力の3倍と考える。

$\displaystyle P=\sqrt{3}VIcosθ=3V_pI_pcosθ \ [W] $

$\displaystyle \left( 直列の場合:P=3{I_p}^2R \ [W] 並列の場合:P=3\frac{{V_p}^2}{R}\ [W] \right) $

$P$:有効電力 [$W$]
$V$:線電圧 [$V$]
$I$:線電流 [$A$]
$V_p$:相電圧 [$V$]
$I_p$:相電流 [$A$]
$θ$:相電圧と相電流の位相差 [$rad$]
$R$:一相の抵抗 [$Ω$]

三相無効電力(Q)

三相で考える場合、線間では結線により電流または電圧が√3倍となる。
一相で考える場合、一相の無効電力の3倍と考える。

$\displaystyle Q=\sqrt{3}VIsinθ=3V_pI_psinθ \ [var] $

$\displaystyle \left( 直列の場合:Q=3{I_p}^2X \ [var] 並列の場合:Q=3\frac{{V_p}^2}{X}\ [var] \right) $

$Q$:無効電力 [$var$]
$V$:線電圧 [$V$]
$I$:線電流 [$A$]
$V_p$:相電圧 [$V$]
$I_p$:相電流 [$A$]
$θ$:相電圧と相電流の位相差 [$rad$]
$X$:一相のリアクタンス [$Ω$]

三相皮相電力(S)

三相で考える場合、線間では結線により電流または電圧が√3倍となる。
一相で考える場合、一相の皮相電力の3倍と考える。

$\displaystyle S=\sqrt{3}VI=3V_pI_p \ [VA] $

$\displaystyle \left( S=3{I_p}^2Z \ [VA] S=3\frac{{V_p}^2}{Z}\ [VA] \right) $

$S$:皮相電力 [$VA$]
$V$:線電圧 [$V$]
$I$:線電流 [$A$]
$V_p$:相電圧 [$V$]
$I_p$:相電流 [$A$]
$Z$:一相のインピーダンス [$Ω$]

力率(cosθ)

相電圧と相電流の位相差θで表される。

$\displaystyle cosθ=\frac{P}{S} $

$cosθ$:力率
$P$:有効電力 [$W$]
$S$:皮相電力 [$VA$]


Ver1.0.3

タイトルとURLをコピーしました