電界と磁界

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電荷と磁荷

電荷(Q)

物体の帯びている電気。電荷の量を電気量とよぶ。単位は[C]。
正電荷(+)と負電荷(-)がある。
原子の構成は原子核(陽子(+)と中性子(中性))の周辺を電子(-)が回っている。安定した原子は、陽子と電子の電気量は等しいので、電気的に中性である。物質同士の衝突などにより電子の移動が起こり、正負に帯電する。
電荷は導体の表面に分布する。
導体球に帯電できる電気量は、電界の強さが空気の絶縁耐力と等しくなるときに最大となる。

磁荷(m)

磁極が帯びている磁気の量。単位は[Wb]。
N極とS極があるが、単体で発見されたものは無く、N極とS極がペアになっている。

電界と磁界

電界

帯電した物体(電荷)の周りに存在する、力の影響する勢力範囲。
電荷から遠ざかるほど弱くなる。
電界の方向は正の電荷(+)から負の電荷(-)へ向かう。
帯電した導体Aを導体Bで包むと、導体Bも誘導され、導体Bの外部に電界ができる。(静電誘導)
導体内部には電界は存在しない。導体内部は等電位である。(静電遮へい)

電界の強さ(E)

電界範囲内での電荷に働く力の大きさ。(クーロン力の片側Q2=1)
単位距離あたりの電位差で表す。単位は[V/m]。
電気力線の密度。

$\displaystyle E=\frac{1}{4πε_0}・\frac{Q}{r^2} \ [V/m] $

$E$:電界の強さ [$V/m$]
$ε_0$:真空の誘電率(真空中の場合)
$Q$:電荷 [$C$]
$r$:電荷からの距離 [$m$]

$\displaystyle E=\frac{V}{d} \ [V/m] $

$E$:電界の強さ [$V/m$]
$V$:電圧 [$V$]
$d$:電極間の距離 [$m$]

磁界

磁石などの磁荷の周りに存在する、力の影響する勢力範囲。
磁界の方向はN極からS極へ向かう。

磁界の強さ(H)

磁界範囲内での磁荷に働く力の大きさ。(クーロン力の片側m2=1)
単位距離あたりの電流差で表す。単位は[A/m]。
磁力線の密度。

$\displaystyle H=\frac{1}{4πμ_0}・\frac{m}{r^2} \ [A/m] $

$H$:磁界の強さ [$A/m$]
$μ_0$:真空の透磁率(真空中の場合)
$m$:磁荷 [$Wb$]
$r$:磁荷からの距離 [$m$]

$\displaystyle H=\frac{NI}{l} \ [A/m] $

$H$:磁界の強さ [$A/m$]
$N$:巻数
$I$:電流 [$A$]
$l$:磁極間の距離 [$m$]

電束と磁束

電束(Q)

電束は一定面積の電気力線の束である。単位は[C]。
電荷と同じ数となる。誘電率に影響されない。(電気力線はQ/ε本)
+Q[C]の電荷からはQ[C]の電束が出て、ーQ[C]に入っていく。

電束密度(D)

単位面積当たりの電束の数。単位は[C/m2]。
(電荷Qを半径rの球の表面積で割る)

$\displaystyle D=\frac{Q}{4πr^2}=εE \ [C/m^2] $

$D$:電束密度 [$C/m^2$]
$Q$:電荷 [$C$]
$r$:電荷からの距離 [$m$]
$ε$:誘電率
$E$:電界の強さ [$V/m$]

電気力線(N

電界の方向を視覚的に表現した仮想の線。単位は[本]。
導体表面に垂直に出入りし、正の電荷(+)から負の電荷(ー)へ向かう。
同じ向きの電気力線は反発し、交差することは無い。
+Q[C]の電荷からはQ/ε[本]の電気力線が出て、ーQ[C]に入っていく。(εは媒体の誘電率)
数が多く間隔が狭いところは電界が強く、数が少なく間隔が広いところは電界が弱い。(電束密度ではない)
電気力線は等電位線に直交する。

磁束(Φ)

磁束は一定面積の磁力線の束である。単位は[Wb]。
磁荷と同じ数となる。透磁率に影響されない。
m[Wb]のN極の磁極からはm[Wb]の磁束が出て、S極に入っていく。

磁束密度(B)

単位面積当たりの磁束の数。単位は[Wb/m2][T]。
(磁荷mを半径rの球の表面積で割る)

$\displaystyle B=\frac{m}{4πr^2}=μH \ [Wb/m^2] $

$B$:磁束密度 [$Wb/m^2$]
$m$:磁荷 [$Wb$]
$r$:磁荷からの距離 [$m$]
$μ$:透磁率
$H$:磁界の強さ [$A/m$]

磁力線(N)

磁界の方向を視覚的に表現した仮想の線。単位は[本]。
N極からS極へ向かう。
同じ向きの磁力線は反発し、交差することは無い。
m[Wb]のN極の磁極からはm/μ[本]の磁力線が出て、S極に入っていく。(μは媒体の透磁率)
数が多く間隔が狭いところは磁界が強く、数が少なく間隔が広いところは磁界が弱い。(磁束密度ではない)

誘電率と透磁率

誘電率(ε)

電荷を蓄える度合いを表す係数。単位は[F/m]。
物質によって固有の値を持つ。
真空の誘電率(ε0)=8.855×10-12[F/m](空気もほぼ同じである)
誘電率と電位差は反比例する。(電束密度は変わらないので D=εE=εV/d)
比誘電率(εS)は、真空の誘電率(ε0)に対する媒質の誘電率(ε)である。εS=ε/ε0

透磁率(μ)

磁化のしやすさを表す係数。単位は[H/m]。
物質によって固有の値を持つ。
真空の透磁率(μ0)=4π×10-7[H/m](空気もほぼ同じである)
比透磁率(μS)は、真空の透磁率(μ0)に対する媒質の透磁率(μ)である。μS=μ/μ0

クーロン力

電荷・電界のクーロン力

二つの点電荷の間で相互に働く力(静電力)を表す。
同符号の電荷は反発力で、異符号は吸引力となる。
クーロン力は電界の方向(電気力線の方向)に働く。

$\displaystyle F=\frac{1}{4πε_0}・\frac{Q_1Q_2}{r^2}=9・10^9・\frac{Q_1Q_2}{r^2} \ [N] $

$F$:クーロン力 [$N$]
$ε_0$:真空の誘電率(真空中の場合)
$Q$:電荷 [$C$]
$r$:電荷間の距離 [$m$]

$\displaystyle F=qE \ [N] $

$F$:クーロン力 [$N$]
$q$:電荷 [$C$]
$E$:電界の強さ [$V/m$]

磁荷・磁界のクーロン力

二つの磁荷の間で相互に働く力を表す。
同符号の磁荷は反発力で、異符号は吸引力となる。

$\displaystyle F=\frac{1}{4πμ_0}・\frac{m_1m_2}{r^2}=6.33・10^4・\frac{m_1m_2}{r^2} \ [N] $

$F$:クーロン力 [$N$]
$μ_0$:真空の透磁率(真空中の場合)
$m$:磁荷 [$Wb$]
$r$:磁荷間の距離 [$m$]

$\displaystyle F=mH \ [N] $

$F$:クーロン力 [$N$]
$m$:磁荷 [$Wb$]
$H$:磁界の強さ [$A/m$]

クーロン力と重力

糸に吊るされた電荷のクーロン力と重力の関係は糸の張力と釣り合う。

$\displaystyle tanθ=\frac{F}{mg} $

$T$:糸の張力 [$N$]
$F$:クーロン力 [$N$]
$m$:質量 [$g$]
$g$:重力加速度 [$m/s^2$]

電気回路と磁気回路

オームの法則と磁気回路

電気回路の電流Iは、磁気回路では磁束φに相当する。
電気回路の起電力Eは、磁気回路の起磁力NIに相当する。
電気回路の抵抗Rは、磁気回路の磁気抵抗Rmに相当する。

$\displaystyle V=RI \ [V] $

$V$:電圧 [$V$]
$R$:抵抗 [$Ω$]
$I$:電流 [$A$]

$\displaystyle NI=R_mΦ \ [A] $

$NI$:起磁力 [$A$]
$R_m$:磁気抵抗 [$A/Wb$][$H^{-1}$]
$Φ$:磁束 [$Wb$]

電気抵抗と磁気抵抗

電気抵抗

$\displaystyle R=ρ\frac{l}{A} \ [Ω] $

$R$:抵抗 [$Ω$]
$ρ$:抵抗率 [$Ω・m$]
$l$:導体の長さ [$m$]
$A$:面積 [$m^2$]

磁気抵抗

$\displaystyle R_m=\frac{l}{μA} \ [A/Wb] $

$R_m$:磁気抵抗 [$A/Wb$][$H^{-1}$]
$μ$:透磁率 [$H/m$]
$l$:導体の長さ [$m$]
$A$:面積 [$m^2$]

電位

電位とは、電荷+1Cの位置エネルギーのことである。
(無限遠の地点からその電位の点に運ぶのに必要なエネルギー)
電位差1Vは、その電位差間で点電荷+1Cを移動させる仕事量1Jに等しい。
力学の移動に必要なエネルギー(仕事量)は、W[J]=F[N]×d[m]となる。
電位差Vは、点電荷+1Cを移動させる仕事量Wに等しいので、クーロン力Fの変わらない空間での電位差Vは移動距離dに比例する。

点電荷Qからr離れた地点の電位

$\displaystyle V=\frac{1}{4πε_0}・\frac{Q}{r} \ [V] $

$V$:電位 [$V$]
$ε_0$:真空の誘電率
$Q$:電荷 [$C$]
$r$:電荷からの距離 [$m$]

複数点電荷のつくる電位

ある点Pと点電荷Q1、Q2・・が距離r1、r2・・離れている場合の、P点の電位VPは以下の式で表す。

$\displaystyle V_p=\frac{1}{4πε}・\left(\frac{Q_1}{r_1}+\frac{Q_2}{r_2}+…\right) \ [V] $

$V_p$:電位 [$V$]
$ε$:誘電率
$Q$:電荷 [$C$]
$r$:電荷間の距離 [$m$]

等電位線(等電位面)

電位の等しい点を結んだ線。(地図の等高線に相当する)
等電位線の間隔の狭いところは、電界の強さが大きく、電位の傾き(電位差)も大きい。
等電位線は電気力線に直交する。
等電位線に沿って電荷を移動させても静電エネルギーの増減は無い。

静電誘導・磁気誘導

静電誘導

帯電した導体Aと導体Bを近づけると、異符号の電荷が近くに移動し、同符号の電荷が遠くに移動すること。

静電遮へい

導体で空間を囲むことで、外部の電界を遮ること。
電界中に導体を置いた場合、導体表面は静電誘導により異符号の電荷が分布するが、この電荷による電界は外部の電界を打ち消すため、導体内部は外部の電界の影響を受けず、電界は0となる。
中空の導体の場合も同様に、内部の空間の電界は0となる。
帯電した導体Aと導体Bをの静電誘導を防ぐには、導体Aを導体Cで囲み、導体Cの表面を接地する。接地することで導体Cの+電荷は大地に流れて導体表面に現れず、導体Bは静電誘導を受けない。

磁気誘導

磁界中に物質を置くと、その物質に磁極が現れる現象。

磁気遮へい

磁極N、Sの間に中空球体鉄心(真ん中が空洞の鉄心)置くと、磁束の大部分は鉄心(強磁性体)の中を通り抜ける。空洞の中心部分には磁束が入らずに、磁束密度が極端に低くなる。これを磁気遮へいという。
医療装置のMRIなどに使用されている。


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