導電材料
導電材料に適しているのは、導電率が大きい、引張強さが大きい、加工が容易である、耐食性に優れている、質量・線膨張率が小さいなどがある。
導電率の順位は高いものから、銀>銅>金>アルミニウム>鉄>水銀である。
導電率は、20℃での標準軟銅を100%として比較した百分率で表される。
導体は、温度が高くなるほど抵抗が大きくなり、導電率は小さくなる。
銅
電線などの導電材料として、電気精錬によって得られる高純度の電気銅が最も広く使用されている。
銅はそのままでは強度が低いので、電気抵抗率があまり上昇しない程度に少量の合金元素を添加して使用する。
硬銅と軟銅があり、軟銅は、硬銅を300~600℃で焼きなますことにより得られる。
硬銅は強度が高いので、整流子片や送配電線に使用される。
軟銅は強度が低いが可とう性が高く導電率も高いので、CVケーブルや電機子巻線などに使用される。
アルミニウム
アルミニウムは銅の2/3の導電率だが、比重は1/3と軽い。
抵抗と長さが同じ電線であれば、質量は銅の1/2となる。
超伝導現象
導体を極低温(臨界温度)まで温度を下げると、電気抵抗が0になる現象。
抵抗がないので熱を発生することもなく、エネルギーの損失も起こらない。
絶縁材料
直流でも交流でも電気をほとんど通さない物質。
絶縁材料に適しているのは、比熱が大きい、熱膨張率が小さい、粘度が低い、誘電正接・誘電率が小さいなどがある。
温度が高い、水分が多いほど絶縁強度は低下する。
絶縁材料は熱(化学変化)、電気(放電)、機械的(変形)原因で劣化する。
劣化すると、絶縁物表面や内部の空げきで部分放電が起きる。
耐熱性によって耐熱クラス(最高許容温度)が以下のように決められている。
YAEBFHNR種(90、105、120、130、155、180、200、220℃)
気体絶縁材料
真空、SF6ガスなど。
液体、固体絶縁材料に比べて、誘電率は低く、抵抗率は高い。
固体や液体に比べると絶縁耐力が劣るが、圧力を高めるか真空にすると絶縁耐力が増す。
六ふっ化硫黄(SF6)ガス
絶縁破壊電圧、アーク消弧能力が空気よりも高い。
無色、無臭で化学的に安定している。可燃性がない。
温室効果ガス(オゾン破壊ではない)であり、削減や回収が求められる。
比重が空気より5倍大きい。0.3MPaの圧力で絶縁油と同等の絶縁性能となる。
固体絶縁材料
けい酸を主体にした無機化合物の磁器(がいし)、架橋ポリエチレン(ケーブル)、エポキシ樹脂(変圧器)などが使用される。
液体、気体絶縁材料に比べて、絶縁耐力が高い。
温度変化による膨張や収縮で劣化する。
内部にボイド(空洞)ができると、ボイド内部の気体で部分放電が生じる。これが長期に渡ると絶縁破壊に至る。
液体絶縁材料
油。
主に鉱油系(天然の油)が用いられ、絶縁および、冷却のために使用する。
熱伝導率が高い方が熱が伝わりやすく、熱劣化しない。
圧力による絶縁耐力の変化は大きくない。
絶縁破壊電圧が高く、誘電正接が小さいことが望ましいが、温度や油中の水分によって低下する。
OFケーブルなど、信頼性が求められる場合は、重合炭化水素油(合成油)を用いる。
誘電体
絶縁体に分類され、直流の電気を通さないが、交流の電気を通す性質をもつ。
誘電分極というメカニズムによって、電気を蓄えたり、交流回路ではインピーダンス(抵抗)となる。
セラミックスなどのコンデンサ材料で使用される。
誘電正接(tanδ)
絶縁体は交流電圧の印加によって荷電体の移動による分極が起こり、この電界の変化に追従する双極子が振動することにより熱エネルギーで損失がおこる。
その損失度合いを示すもので、値が大きいほど熱損失が大きくなる。
誘電体(コンデンサなど)に交流電圧を印加した場合、電圧に対し電流の位相は90°進むため本来は電力消費は0となる。実際には位相差は90°からずれており、この90°からずれた分の角度をδとして表現している。
従って変圧器・ケーブル・コンデンサなど、誘電正接の小さいものを選ぶと損失が少ない。
磁性体
磁性体の種類
強磁性体
磁界中で磁化され、磁界が無くなっても保持されるもの。
透磁率が大きい。
鉄など。μ>>1(μは比透磁率)
常磁性体
磁界中で磁化しにくいもの。外部磁界と同じ方向に磁極が現れる。
アルミニウムなど。μ>1(μは比透磁率)
反磁性体
磁界中で反発する方向に磁化するもの。外部磁界と逆方向に磁極が現れる。
亜鉛など。μ<1(μは比透磁率)
ヒステリシスループ
物質の磁化特性を表す。
磁性体に外部から磁界を与えたとき、縦軸に磁性体の磁束密度(B)、横軸に外部の磁界の強さ(H)で関係を表す曲線。
この図形の面積がヒステリシス損(熱エネルギー)となる。
- 磁化していない磁性体を磁界の中に置き、外部の磁界を強くすると、磁気を帯びていくが、やがて磁気飽和する。(飽和磁束密度)
- 外部の磁界を減少させていくと、磁界の強さ0でも磁性体の磁束密度は0にはならない。(残留磁気)
- さらに逆向きの磁界をかけていくと、やがて磁性体の磁束密度は0となる。(保磁力)
- さらに逆向きの磁界をかけていくと、逆向きの磁気を帯びていくがやがて飽和する。
- 同様に続けると、直線とはならず、重ならないカーブを描く。
コイルの鉄損に値するヒステリシスループは、コイルに流れる電流によって発生する磁界に影響する。
コイルの電流Iが大きくなれば、磁束密度B、磁界の強さHは大きくなり、ヒステリシス損も増える。
ヒステリシス損の計算式は、「ヒステリシス損」を参照。
鉄心・磁心材料(回転機、変圧器)
変圧器や電動機などの鉄心などに使用する磁石にする材料。
磁束の通過を大きくするため、透磁率や飽和磁束密度が大きいものが良い。
鉄心の損失である鉄損は、ヒステリシス損(ヒステリシスループの面積)と渦電流損がある。
ヒステリシス損(ヒステリシスループの面積)が小さくなるように、残留磁気は大きく、保磁力は小さい材料を選択する。
渦電流損が小さくなるように抵抗率の大きい材料を選択したり、表面を絶縁膜で覆った薄い鉄板を積層した積層鉄板で低減する。
鉄は炭素量が減ると保磁力が小さくなるが、純鉄や低炭素鉄は抵抗が小さいので交流用途に適さない。
ケイ素鋼板
鉄にけい素を含有させ、透磁率、飽和磁束密度、抵抗率が大きく、残留磁束密度および保磁力が小さい電磁鋼板である。
ケイ素の含有量が増えると磁気的特性は良くなるが、強度の問題から含有率は最大5%程度である。
アモルファス鉄心
ケイ素鋼板より透磁率と抵抗率が大きい。
抵抗率が大きいので渦電流が小さく、鉄損が1/3~1/4に低減できる。
非結晶構造のため硬く加工が難しい。
飽和磁束密度が低いので、鉄心寸法が大きく重くなり高価である。
柱上変圧器などに使用されている。
永久磁石材料
永久磁石材料は、保磁力・残留磁気が大きい。
ヒステリシスループの磁束密度(縦軸)が大きく、外部磁界(横軸)が大きく、面積が大きいほど適した材料である。
ヒステリシス損は大きくなる。
放電
電極間にかかる電位差を高くすると、電極間に存在する気体(空気など)がイオン化して絶縁破壊されて、電流が流れる現象のこと。
コロナ放電
先の尖った電極(針電極)の先端の電界の強さが局部的に高くなることにより起こる、持続的な放電の現象。火花放電になる前の状態。
コロナ放電によって流れる電流は小さく、数μA程度である。
電気集塵機などで使用している。
電線路のコロナ放電は、「コロナ放電」を参照。
火花放電
電極間に印加する電圧がある限界を超えると、火花を伴った放電が生じる現象。
火花放電は不連続な放電であり、一般的には短時間に消滅する。
雷など。
グロー放電
低圧気体中(数Pa)で生じる持続的な放電の現象。
高電圧、小電流である。
ネオン・蛍光灯の原理。
アーク放電
グロー放電の状態からさらに印加する電圧を高くして(または、抵抗を小さくして)、電流を増加させるとアーク放電となる。
アーク放電は激しい光と熱を発する。その温度は5000℃以上となる。
低電圧、大電流である。
低圧のアークは空気の絶縁によって消失するが、高圧以上になると消えない為、遮断器がアークの消弧機能を持っている。
アーク溶接、蛍光灯、遮断器の遮断時などで発生する。
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