電子とは
キャリア
電流の元になる、物質の中を自由に移動できる電荷を帯びた粒子のこと。
半導体におけるキャリアは正孔(ホール)または電子で、正孔は正(+)の電荷をもつ粒子として動く。
金属では自由電子、電解液ではイオンに相当する。
電子と電流
電子と電流の流れは逆で、電流Iは単位時間に面Sを通過する電荷の量である。
$\displaystyle I=envS \ [A] $
$I$:電流
$e$:電子1個の電気量
$n$:電子の単位体積(1m2)あたりの個数
$v$:電子の平均速度
$S$:導体の断面積
電気量
電荷の量を電気量といい、電流は電気量(電荷)の移動で表せる。
1[C]=1[A・s]である。
Q=It [C](I:電流、t:時間)
アノード
外部回路から電流の流れ込む(電子が出る)極。
カソード
外部回路へ電流が流れ出す(電子が入る)極。
半導体
導体と絶縁体の中間の電気抵抗率を持つ物質。
半導体を使用した電子部品であるダイオード、サイリスタ、トランジスタなどは、電気回路上で電流のオン・オフ制御を行うことができるため、半導体バルブデバイスと呼ばれる。
高電圧や大電流を取り扱えるものをパワー半導体と呼んでいる。
半導体の種類
真性半導体
キャリアの電子と正孔の数が同じもの。単元素の半導体。
シリコン(ケイ素)やゲルマニウムなど。
真性半導体に不純物(ドナー・アクセプタ)を加えて電気伝導度を大きくしたものが不純物半導体である。
電子を与える不純物でn形半導体を作るものをドナー、電子をもらう不純物でp形半導体を作るものをアクセプタという。
n形半導体
真性半導体シリコン(4価)にドナーとしてリン、アンモチン、ヒ素(5価)を混ぜて、余った自由電子で電気伝導させるもの。
多数キャリアは電子で負電荷(ー)なので、電流と逆方向に移動する。
p形半導体
真性半導体シリコン(4価)にアクセプタとしてインジウム、ガリウム、ホウ素(3価)を混ぜて、正孔(ホール)をつくり電気伝導させるもの。
多数キャリアは正孔で正電荷(+)なので、電流と同じ方向に移動する。
化合物半導体
真性半導体のように単元素ではなく、2種類以上の元素からなる半導体。
SiC(シリコンカーバイト)は、シリコンと炭素で構成される化合物半導体材料。
インジウム・リンやガリウム・ひ素などもある。
高耐圧、高耐熱、低オン抵抗、高速性に優れるため、MOSFETなどで採用が増えている。
半導体の特性
キャリア密度(N)
半導体の電気伝導に寄与するキャリアの密度をいう。単位は[個/m3]。
不純物が無視できる真性半導体では、電子と正孔は同数であるから、キャリア密度=電子の密度=正孔の密度となる。
p形半導体は正孔の密度>>電子の密度、n形半導体は電子の密度>>正孔の密度である。
半導体の抵抗と導電率
熱を加えると抵抗が低くなる。電気伝導度は大きくなる。
微量の不純物(ドナー・アクセプタ)で抵抗は大きく変わる。量が増えると抵抗は小さくなり、導電率は大きくなる。
導電率は金属より小さい。
抵抗率はおよそ10-4~106[Ω・m]である。
ドリフト電流と拡散電流
半導体中のキャリア(電子や正孔)の移動によって発生する電流には、ドリフト電流と拡散電流がある。
- ドリフト電流:電界によってキャリアに働いた力によるキャリアの動きによる電流。方向は電界の方向で、大きさは電界の大きさに比例する。
- 拡散電流:半導体中のキャリア濃度の不均一性のために起こるキャリアの移動による電流。方向はキャリア濃度の勾配に依存し、大きさはそのキャリア濃度の勾配に比例する。
電子の運動
電界中の電子エネルギー
電界から受けたエネルギー(電荷と電圧)と、運動エネルギー(質量と速度)の間にはエネルギー保存の法則が成り立つ。
$\displaystyle W=eV=\frac{1}{2}mv^2 \ [J] $
$W$:電子エネルギー [$J$]
$e$:電荷 [$C$]
$V$:電圧 [$V$]
$m$:質量 [$kg$]
$v$:速度 [$m/s$]
電界中の電子の運動
電界中に電子を置くと、電子は電界と逆方向に加速度が一定の等加速度運動をする。
電界中に電子が斜めに突入したとき、電子は電界の逆方向に力を受けて、放物線の軌跡を描いて移動する。
電子ではなく正電荷の場合は、電界と同方向に同様の等加速度運動をする。
加速度の運動方程式は「運動方程式」を参照。

磁界中の電子の運動(ローレンツ力)
磁界において、ある速度で移動する電荷(正電荷または負電荷)に生じる力。(ブラウン管のしくみ)
方向はフレミング左手の法則に従う。(電荷が電子の場合は、電流の方向とは逆となる)
磁界に対して電荷が垂直に入射した場合、ローレンツ力(円の中心方向)と遠心力(円の中心と逆方向)が等しくなるように等速円運動をする。
磁界に対して電荷が斜めに入射した場合、ローレンツ力(円の中心方向)と遠心力(円の中心と逆方向)が等しくなるようにらせん運動をする。
磁界に対して電荷が平行に入射した場合、ローレンツ力は受けないので、等速直線運動となる。

$\displaystyle F=Bevsinθ=\frac{mv^2}{r} \ [N] $
$F$:ローレンツ力 [$N$]
$B$:磁束密度 [$T$]
$e$:電荷 [$C$]
$v$:速度 [$m/s$]
$θ$:磁界と電荷の方向の角度 [$rad$]
$m$:質量 [$kg$]
$r$:半径 [$m$]
電子放出
エネルギーバンド
半導体などの物質中の電子がもつエネルギー領域を3つのバンド帯に分けて考えるもの。
エネルギーが高い伝導帯と低い価電子帯の間の空間のことを禁制帯と呼び、この空間には電子が留まることができない。禁制帯の広さによって電気の通りやすさが決まる。
禁制帯が広い→絶縁体、狭い→半導体、無い→導体となる。
- 伝導帯:電子が満たされて無く、電子が自由に動ける高エネルギー帯。
- 禁制帯:価電子帯と伝導帯のあいだにあるギャップ。電子が通り抜けるエネルギー帯。
- 価電子帯:電子で満たされた低エネルギー帯。

フェルミ準位
電子のいる確率が50%になるエネルギー準位の位置をフェルミ準位という。
エネルギーバンド上では、伝導帯と価電子帯の間に存在し、半導体・絶縁体では禁制帯に位置する。
電子の放出現象
金属などの表面から真空中に電子が放出される現象。
金属(導体)は禁制体が無いので、フェルミ準位は伝導帯と価電子帯の境界の位置となる。フェルミ準位にある電子に仕事関数(1個の電子を外部へ取り出すために必要な最小のエネルギー)が加えられると、電子は伝導帯に移行し、固体の表面から電子を放出できる。
熱電子放出
金属などの固体が加熱されて高温になると、固体内の自由電子の運動は激しくなり、表面のエネルギー障壁を越えて外へ飛出す。
電界放出
金属表面の電界強度を十分に大きくすると、電位障壁の幅が薄くなり、電子が障壁を超えて放出する。
二次電子放出
高いエネルギーを持った一次電子を金属に衝突させると、フェルミ準位にある電子にエネルギーを与え、仕事関数以上となった電子が放出される。
光電子放出
物質に光を当てたとき、物質内の電子が外部に放出される現象。
波長が長すぎても短すぎてもダメで、丁度よい紫外線を照射すると放出する。
飛び出てくる電子の数は、光の強さに比例している。
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