バイポーラ型
電流の増幅や回路のON/OFFスイッチングを行う素子。
入力電流の有無でターンオン、ターンオフが可能である。
ベース(B)、コレクタ(C)、エミッタ(E)の3端子で構成される。
入力電流(ベース電流)で出力電流(コレクタ―エミッタ電流)を制御する電流制御素子である。
キャリアが電子と正孔の両方なので、バイポーラトランジスタと呼ばれる。
バイポーラ型の特徴
- 消費電力:大きい。
- スイッチング動作:遅い。(少数のキャリア蓄積があるため、スイッチングが変わったときに少数キャリアが戻るまでの時間がかかり、スイッチングが遅くなる)
- 温度安定性:弱い。
- 入力インピーダンス:小さい。(電流が入力側の方へ損失してしまい、小さい信号だと伝わらなくなってしまう)
- 耐性:強い。
- オン抵抗(コレクターエミッタ間の電圧降下):小さい。(動作時の電力の損失が小さい)
npn型、pnp型トランジスタ
ダイオードを背中合わせにした構造のバイポーラトランジスタ。
ベース電流を留めることでターンオン→ターンオフが可能である。
p型半導体をn型半導体で挟むnpnトランジスタと、逆のpnpトランジスタが存在する。
図記号の矢印はp型→n型を示している。
npn型
ベースに正電圧を印加するとベースからエミッタへ小さな電流が流れ、コレクタからエミッタへ大きな電流が流れる。
ベース、コレクタには正電圧を印加する。

pnp型
ベースに負電圧を印加するとエミッタからベースへ小さな電流が流れ、エミッタからコレクタへ大きな電流が流れる。
ベース、コレクタには負電圧を印加する。

トランジスタの損失
導通損失
半導体スイッチの抵抗性成分によって、オン状態(電圧降下によって電流が流れている状態)のときに熱によって生じる損失。このときの電気抵抗をオン抵抗と呼ぶ。
トランジスタの場合、コレクターエミッタ間電圧とコレクタ電流の積で求められ、コレクタ損失とも呼ばれる。
ベース電流分はコレクタ電流分に比べて非常に小さいので、コレクタ損失がトランジスタの消費電力である。
スイッチング損失
半導体スイッチがオン・オフに切り換わるときに発生する損失。
容量性成分によるスイッチング時の電流・電圧の切り換わり遅れの時間に電力消費が発生する。
周波数に比例して増加する。
トランジスタの動作領域
トランジスタの動作には、飽和領域、活性領域、遮断領域の動作状態があり、これによってスイッチのON/OFF状態が分かれる。(オンオフデバイス)
- 飽和領域:ベース電流をいくら流しても、コレクタ電流が増えない最大の状態。(スイッチとしてON)
- 能動領域:ベース電流の変化に従ってコレクタ電流が変化する状態。(スイッチでは使用しない)
- 遮断領域:ベース電流を流さなくても、コレクタ遮断電流(小さい漏れ電流)が流れるの状態。(スイッチとしてOFF)
ユニポーラ型(FET)
電界効果トランジスタの略でFETと呼ばれる。
電流の増幅や回路のON/OFFスイッチングを行う素子。
入力電圧(ゲート電圧)で出力電流(ドレインーソース電流)を制御する電圧制御素子である。
ゲート(G)、ドレイン(D)、ソース(S)の3端子で構成される。
キャリアが1つ(電子又は正孔のどちらか)なのでユニポーラ型トランジスタと呼ばれる。
キャリア(電流)の通路をチャネルと呼び、チャネルがn型半導体のものはnチャネル型、p型半導体のものはpチャネル型という。
ゲート(G)とチャネル間が直接繋がっている接合型と、酸化膜(絶縁)があるMOS型がある。
ユニポーラ型の特徴
- 消費電力:小さい。
- スイッチング動作:速い。(キャリアの蓄積が無いため、蓄積時間の遅延が無くスイッチングが速い)
- 温度安定性:高い。
- 入力インピーダンス:大きい。(ゲートに流れる電流はほぼ0である)
- 耐性:弱い。
- オン抵抗(ドレイン・ソース間の抵抗値):大きい。(動作時の電力の損失が大きい)
接合型FET(JFET)
ゲート(G)とチャネル間が直接繋がっているもの。
ゲートに電圧が無ければチャネル(ドレインーソース間)の電流は流れるが、電圧を加えていくと空乏層が大きくなり、チャネル(ドレインーソース間)の電子の通り道が狭くなり電流が減る。
電圧を加えると電流が流れなくなるので、MOS型と動作が異なるので注意する。
nチャネル型
ゲート(G)にp型半導体を接合し、チャネルがn型半導体になるもの。
ゲート電圧に負電圧が印加されると、ドレイン→ソースに電流が流れなくなる。

pチャネル型
ゲート(G)にn型半導体を接合し、チャネルがp型半導体になるもの。
ゲート電圧に正電圧が印加されると、ソース→ドレインに電流が流れなくなる。

MOS型FET
ゲート(G)に薄いシリコン酸化被膜を挟んで絶縁したもの。
ゲート(G)はドレイン(D)、ソース(S)と絶縁されているので電流は流れない。(ゲート電流は0と考える)
ゲートに電圧を加えることで、チャネル(ドレイン―ソース間)が導通、非導通状態になる。
ドレイン-ソースの間にボディダイオードと呼ばれるダイオードが付いていて、逆電圧になった時、ソース→ドレイン方向にダイオードを通して電流が流れることで、MOSFETの破壊を防いでいる。
チャネルがn型半導体のものはnチャネル型、p型半導体のものはpチャネル型という。
チャネルの形成方法により、デプレッション型とエンハンスメント型がある。
nチャネル型
ソース、ドレインがn型で、ゲートがp型。
ゲートに正電圧を加えるとnチャネルが型成され、ドレイン→ソースに電流が流れる。
(大半がnチャネル型である)
pチャネル型
ソース、ドレインがp型で、ゲートがn型。
ゲートに負電圧を加えるとpチャネルが型成され、ソース→ドレインに電流が流れる。
デプレッション型
ゲート電極の直下にあらかじめチャネルを型成しておくもの。
ゲート電圧が0でも、チャネルがあるので電流は流れる。


エンハンスメント型
ゲート電極の直下にあらかじめチャネルを型成しないもの。
ゲートにしきい値電圧以上の電圧を加えると、絶縁膜が逆の半導体に変わり、チャネルが型成される。これによってソースとドレインが接続され、電流が流れる。


パワーMOSFET
大電流に対応できるMOS型FET。
耐圧に耐えるようドリフト層(空乏層)が厚いため、オン抵抗(動作時の電力損失)が大きくなる。
ボディダイオード(寄生ダイオード)
MOSFETの構造上、内部のソースードレイン間にPN接合があるため、ダイオードが形成される。
nチャネル型の場合、ソース→ドレイン方向にダイオードが形成される。
pチャネル型の場合、ドレイン→ソース方向にダイオードが形成される。
そのため、逆電圧をかけるとボディダイオードに電流が流れる。これを還流ダイオードとして利用する場合もある。
絶縁ゲート型・バイポーラトランジスタ(IGBT)
入力部がMOSFET構造のゲート、出力部がバイポーラトランジスタ構造の複合デバイス。
(pnpトランジスタとnチャネル型MOSFETを接続したもの)
ゲート-エミッタの電圧でON/OFF制御を行う電圧制御素子である。
ゲート(G)、コレクタ(C)、エミッタ(E)の3端子で構成される。
ゲートはMOSFETなのでターンオン、オフ時の駆動ゲート電力はほぼ0である。
入力インピーダンスが高く、高耐電圧、高電流が可能である。
複合デバイスなので、バイポーラトランジスタよりはスイッチング速度は速いが、MOSFETよりは遅い。
並列接続が可能である。
ターンオフ時には、バイポーラトランジスタの特徴である少数のキャリア蓄積を戻すため、テール電流と呼ばれる電流が流れ、ターンオフ時間は長くなる。

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