コンバータ・インバータ

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コンバータ(整流回路)

交流から直流を得る回路。
ダイオードやサイリスタを使用して、ブリッジ回路を作り、交流の入力を直流波形にする。
サイリスタのターンオン制御を利用すると、入力波形の位相をずらして直流電圧を可変制御できる。
この位相差を制御角(点弧角)という。

出力電圧の算出

電圧の大きさは、電圧波形vdの上側の部分の曲線で囲まれた面積となる。
正弦波の場合、正弦波の0~πの範囲を積分することで求まる。
実際の直流出力電圧Vdは、1周期での平均電圧なので、先に求めた面積を1周期の2πで割ったものとなる。
出力交流の正弦波の最大値Em、実効値Vの場合、vd=Emsinωtより面積Sは以下のようになる。

$\displaystyle S=\int_{0}^{π}E_msinωt d(ωt)=\int_{0}^{π}\sqrt{2}Vsinωt d(ωt)=2\sqrt{2}V $

$\displaystyle V_d=\frac{S}{2π}=\frac{2\sqrt{2}V}{2π}=0.45V $

半波整流回路

ダイオードまたはサイリスタ1個によって正弦波の上の波だけを通過させるもの。
最大値Emのとき、実効値はEm/2、平均値はEm/πで表される。
電流が流れない部分があるので脈動が大きい。

抵抗性負荷の出力電圧
出力電圧Vdは、実効値Vの電圧波形vdの制御角α~πまでの面積を1周期の2πで割ったものとなる。

$\displaystyle V_d=0.45V \left( \frac{1+cosα}{2} \right) $

誘導性負荷の出力電圧
負荷にリアクタンスがある場合は、入力電圧が0になってもリアクタンスにより位相βまで電流が流れる。
出力電圧Vdは、実効値Vの電圧波形vdの制御角α~π+βまでの面積を1周期の2πで割ったものとなる。

$\displaystyle V_d=0.45V \left( \frac{cosα+cosβ}{2} \right) $

半波整流回路(フリーホイリングダイオード付き)

リアクタンスに蓄えた電流をダイオードで還流させて、出力電流の脈動を小さくする。

スイッチSは開
スイッチSは閉

動作の流れ

  1. スイッチSを開いた状態では、ダイオードD1で上の波が通過する。上の波が終了した後も、リアクタンスが少しの間電流を流すので、電圧・電流の波形は、上の波終了後やや続く。(誘導性負荷)
  2. スイッチを閉じた状態では、ダイオードD1で上の波が通過するのは同じだが、下の波(電圧が逆)の時は、リアクタンスの微電流はダイオードD2と負荷との閉回路で循環する。これは微電流なので、負荷電流Iの流れる時間は長くなるが、電圧の波形としては、ダイオードD2間は電位差は無いので、上の波が終了した後はすぐに0となる。スイッチを閉じた回路の方が電流の継続は長くなる。

全波整流回路

ダイオードまたはサイリスタ4個を使用して、対角線上のデバイスのオンオフによって正弦波の下の波を反転させ、コンデンサ・コイル(リアクトル)によって波を平滑にするもの。
負荷が大きく、位相制御角αが小さければ直流電流は平滑になり、電圧は大きくなる。(交流電力調整装置)
最大値Emのとき、実効値はEm/√2、平均値は2/πEmで表される。(交流と同じ)
出力電圧の脈動周波数は、入力周波数の2倍のとなる。
電源交流電圧vsからの電流iの波形は、パルス状になる。交流電源から整流回路の間にリアクトルを挿入して、電流の波形を改善している。
平滑コンデンサは充放電により。出力電圧の脈動を平坦化する役割して、直流電圧源となる。
コンデンサの容量が大きく、抵抗の負荷が小さいほど、脈動は小さくなる。充分な充電が無いと過度な充電電流が流入する。

電流の流れ

電流の流れを見る時は電源(+)から電源(-)へのルートでサイリスタ導通方向で考える。

出力の波形と電圧

制御角αの実際の電圧波形は、下図のような余弦波の波形を描く。
負荷の前に平滑リアクトルが接続されている場合は、誘導性負荷となる。制御角が小さく、誘導性インダクタンスが大きいと電流は平滑になる。
誘導性ではリアクトルの影響でed、idともに0以降も流れ続ける。

抵抗性負荷
誘導性負荷

抵抗性負荷の出力電圧
全波回路では下の波形を反転させるため、出力電圧Vdは、実効値Vの電圧波形edの制御角α~πまでの面積の2倍を1周期2πで割ったものとなる。

$\displaystyle V_d=0.9V \left( \frac{1+cosα}{2} \right) $

誘導性負荷の出力電圧
全波回路では下の波形を反転させるため、出力電圧Vdは、実効値Vの電圧波形edの制御角α~π+αまでの面積の2倍を1周期2πで割ったものとなる。

$\displaystyle V_d=0.9V \left( \frac{cosα+cosα}{2} \right) =0.9Vcosα $

三相整流回路

三相半波整流回路

三相交流を各相ごとにダイオード(またはサイリスタ)1個を使用して正弦波の上の波だけを通過させて直流を作る回路。

$\displaystyle V_d=1.17Vcosα $

三相全波整流回路

三相交流を各相ごとにダイオード(またはサイリスタ)2個を使用して合計6個で正弦波の上と下の波を通過させて直流を作る回路。

$\displaystyle V_d=1.35Vcosα $

インバータ(逆変換回路)

直流から交流を得る回路。
トランジスタやサイリスタなどの半導体バルブデバイスをスイッチングすることで、パルス列を出力し、交流波形を作る。
半導体バルブデバイスの断続によってつくられる交流出力は方形波(二つの値しかない四角形の波)であり、出力電圧の制御とともに交流の波形を正弦波に近づけるための制御も必要となる。
PWM制御などで方形波のパルスの幅を変えることで、作成した波形の電圧の大きさを調整し、正弦波に近づける。

パルス幅変調(PWM)

入力信号の振幅を矩形波の長さに変換してスイッチング素子を動作させる方式で、インバータで交流波形を作成する方法である。

交流波形の作成方法

入力波形を信号波といい、変調のタイミングを生成する信号を搬送波(キャリア)という。
交流を出力する場合、正弦波を信号波とし、搬送波(キャリア)は周波数の高い三角波とする。(三角波比較方式)
正弦波の信号波(電圧指令値)と三角波の搬送波(キャリア)の比較により、スイッチング素子のON/OFFを制御するゲート信号(矩形波)を生成する。
信号波(電圧指令値)>三角波(キャリア値)のとき、対角に位置するトランジスタにオン信号を入れ、他方の対のトランジスタには反転信号が入る。(三相交流の三相変調では、上側のトランジスタにオン信号、下側のトランジスタには反転信号が入る)
このトランジスタのスイッチングによって、パルス幅が入力波形に比例した矩形波が出力され、その平均電圧が正弦波状となる。
出力される矩形波をローパスフィルタ回路に通すことで、高調波成分を取り除き、平滑された正弦波に近づける。

波形の調整

電圧は、パルスの幅(オンの時間)を調整することで変更する。
周波数は、オンオフの間隔を調整することで変更する。
搬送波(キャリア)の周波数が高いほど、インバータ出力の電流波形が正弦波により近づくので、モーター騒音を小さくできる。IGBTインバータでは15kHzが可能である。
電圧指令値と搬送波(キャリア)のピーク値の比率(電圧指令値/キャリア値)を変調率と呼ぶ。

他励式インバータ

全波整流回路を反対向きにして(回路の負荷の部分を直流電源にして)、インバータ(直流→交流)変換を行う回路。
他励式は、出力交流の周波数が交流電源の周波数に依存する。これは転流(ターンオフ制御のこと)に必要な電圧を交流電源からもらっている為である。

自励式インバータ(電圧形)

4個のパワートランジスタを対角線上でオンオフすることで、交流の波形を作る。
自励式は、出力交流の周波数を自由に作成できる。これは転流(ターンオフ制御のこと)をコイルやリアクトル、GTO、IGBTなどを使用して自律で発生させる為である。
IGBTなどのバルブデバイス(オンオフする機能を有する素子)と環流ダイオードで直流電圧を変えることで、波高値を変えて電圧を調整する。オンオフの幅で周波数を調整する。
出力の方形波電圧は、平均値・実効値ともに入力直流電圧と等しくなる。
パワートランジスタには還流ダイオードが並列接続され、逆方向の電流はパワートランジスタを通さずに直流電源に戻す。転流に使用してはいない。

スイッチングと波形生成

上記インバータ回路において、パワートランジスタ(S1~S4)と、それぞれに還流ダイオード(D1~D4)があり、コイルの誘導性負荷が接続されている。
パワートランジスタ(S1・S4)と(S2・S3)を交互にオンオフする。オンオフによる電流の流れは以下のようになる。

  • 負荷を通る電流ioは、正負の積分回路の波形となる。
    ①S1→負荷→S4(電源から正方向に負荷に電流が流れ、コイルに充電されるルート)
    ②D2→負荷→D3(コイルから正方向に電流が放電され、還流ダイオードに流れるルート)
    ③S3→負荷→S2(電源から逆方向に負荷に電流が流れ、コイルに充電されるルート)
    ④D4→負荷→D1(コイルから逆方向に電流が放電され、還流ダイオードに流れるルート)
  • 電源電流idは、基本は正の波形だが、オンオフ切換時に負荷のコイルのエネルギーが電流の方向を保とうとして放電するため、少しの間還流ダイオードより逆流して負の値となる。
  • コイルは電流でエネルギーを蓄積し(1/2×LI2)、コンデンサは電圧でエネルギーを蓄積する(1/2×CV2)。
  • 負荷力率が悪くなり、コイルのインダクタンスが大きくなるとエネルギー蓄積も増えるので、環流ダイオードに流れる時間は長くなる。

電圧形・電流形

インバータの種類には、電圧源として使用する電圧形と、電流源として使用する電流形がある。
電圧形の方が電圧調整などの制御がしやすいため主流となっている。電流形は大型のインバータ装置などに限られる。

  • 電圧形:回路の電源と並列にコンデンサを接続している。インバータ回路のインピーダンスを小さくし、電圧変動を抑えて安定させている。(オームの法則より電圧はインピーダンスに比例する)
  • 電流形:回路の電源と直列にコイルを接続している。インバータ回路のインピーダンスを大きくし、電流変動を抑えて安定させている。(オームの法則より電流はインピーダンスに反比例する)

スイッチングノイズ(リンキング)

電子回路のスイッチング素子がスイッチングを行う際に発生する高周波のノイズ成分のこと。
トランジスタ同士がスイッチングを行うデジタル回路などで発生しやすい。
ノイズによる電源電圧の変動を抑制するため、電源用のバイパスコンデンサの接続などで、高周波での電源インピーダンスを下げている。

汎用インバータ(VVVF)

可変電圧・可変周波数電源装置(VVVF電源装置)の主要部分の構成は以下のようになる。

  • コンバータ部:交流の入力電源をダイオードによって直流に変換する整流回路。
  • 直流リアクトル(DCL):電源側のコンバータ回路で発生する高調波の抑制をする。インバータへの波形を良くする事で力率を改善する。
  • 平滑コンデンサ:コンバータ部の直流の波形を平滑化する。
  • インバータ部:自己消弧素子のオン、オフによってパルス状の電圧を作り、可変周波数の交流に変換する。インバータ部にIGBTを使用した電圧形インバータが一般的である。(PWM制御)

Ver.1.0.4

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