電動機・発電機の基本構成
磁界の発生
励磁
磁性体を磁化すること。電磁石コイルを電流を通じて磁束を発生させること。
界磁
固定の磁界を作るもの。永久磁石や電磁石コイル。(反対語→電機子)
負荷によって磁界が変化しない側。
界磁は固定の磁界を作る為、一般に直流の励磁電流によって磁化される。
電機子
界磁と相互作用させて回転するトルクを得る磁界を作るもの。(反対語→界磁)
一般的に電動機なら電源から電気を供給される部分、発電機なら電気を取り出す部分をいう。
交番磁界
単相交流を流すと生じる磁界。
交流の場合、時間と共に大きさと方向が変化する為、交番磁界が発生する。
交番磁界は、回転方向が正方向と逆方向の回転磁界を合成したもので表すことができる。
停止している状態では始動トルクができないため回転できない。
回転磁界
三相交流を流すと生じる磁界。
三相交流は、3つの相の位相差が120°あることにより、コイルは静止していても磁極が一定速度で回転して移動する。
3線のうち2線を入れ替えると逆回転になる。
回転中に1線が断線すると、回転磁界にはならず単相電圧が供給されるだけで、過電流となり電動機は焼損するおそれがある。
回転の発生
固定子
発電機や電動機の外側の固定されて動かない部分。(反対語→回転子)
- 直流機:界磁
- 同期機:電機子(一般的な回転界磁形の場合)
- 誘導機:電機子
回転子
発電機や電動機の固定子の内側で回転する部分。(反対語→固定子)
- 直流機:電機子(整流子、ブラシで電流を供給する)
- 同期機:界磁(スリップリング、ブラシで電流を供給する)(一般的な回転界磁形の場合)
- 誘導機:なし(固定子の磁界により渦電流が発生する)
がご形は、端絡環による閉回路。巻線形は、二次回路とスリップリング、ブラシで接続されている。
電気角・機械角
電気角は、交流電源で発生する回転磁界の位相で、幾何学的角度(機械角)は、電動機の回転角度である。
交流1周期の電気角は、N→S→Nと一周して360°となる。隣り合う磁極間(NーS)の電気角は180°となる。
幾何学的角度(機械角)は、電気角を極対数(NーS極の対の数)で割ったものである。1周期(N→S→N)の電気角は360°なので、幾何学的角度は、2極機(N→S→N)の場合360/1=360°、4極機(N→S→N→S→N)の場合360/2=180°となる。
隣り合う磁極間(NーS)の電気角は180°なので、隣り合う磁極間の幾何学的角度は4極機の場合、180/2=90°となる。
極数を多くすると、交流1周期での幾何学的角度(電動機の回転角度)は小さくなるので、回転速度は遅くなる。
角速度(ω)
1秒間に回転する角度のこと。角周波数。単位[rad/s]。
※「理論」における角速度ではω=2πfを使用するが、「機械」での角速度は、回転速度N(min-1)を使用してω=2π(N/60)を使用するのが一般的である。
誘導起電力(E)
発電機が生成する電圧、電動機が生成する逆起電力(電動機で供給電流と逆方向に生じる電圧)のこと。
直流機の誘導起電力
直流発電機の誘導起電力。(直流電動機の逆起電力)
並列回路数は、重ね巻a=p、波巻a=2となる。
$\displaystyle E=\frac{pZ}{60a}ΦN \ [V] $
$E$:誘導起電力 [$V$]
$p$:磁極数
$Z$:電機子導体数
$a$:並列回路数
$Φ$:1極の磁束 [$Wb$]
$N$:回転速度 [$min^{-1}$]
同期機の誘導起電力
同期機の誘導起電力。
$\displaystyle E=4.44kfwΦ \ [V] $
$E$:誘導起電力 [$V$]
$k$:巻線係数
$f$:周波数 [$Hz$]
$w$:1相の巻数
$Φ$:1極の磁束 [$Wb$]
誘導機の誘導起電力
誘導機の誘導起電力。
$\displaystyle E=4.44fNΦ \ [V] $
$E$:誘導起電力 [$V$]
$f$:周波数 [$Hz$]
$N$:回転速度 [$min^{-1}$]
$Φ$:1極の磁束 [$Wb$]
電圧変動率
負荷電流を変化させたときに端子電圧がどれだけ変動するかを示す。
この値が小さいほど安定度が高いといえる。
$\displaystyle ε=\frac{E_0-V_n}{V_n}×100 \ [%] $
$ε$:電圧変動率 [$%$]
$E_0$:誘導起電力 [$V$]
$V_n$:定格運転時の端子電圧 [$V$]
電動機の出力(P)
直流機の出力
$\displaystyle P=ωT=2π\frac{N}{60}T=EI_a \ [W] $
$P$:出力 [$W$]
$ω$:角速度 [$rad/s$]
$T$:トルク [$N・m$]
$N$:回転速度 [$min^{-1}$]
$E$:誘導起電力 [$V$]
$I_a$:電機子電流 [$A$]
同期機の出力
$\displaystyle P=3\left(\frac{EV}{X}\right)sinδ \ [W] $
$P$:出力 [$W$]
$E$:誘導起電力(相電圧) [$V$]
$V$:端子電圧(相電圧) [$V$]
$X$:リアクタンス [$Ω$]
$δ$:EとVの位相差(負荷角)
誘導機の出力
定格出力=機械的出力=軸出力。
$\displaystyle P_m=3{I_2}^2\left(\frac{1-s}{s}\right)r_2=P_2(1-s) \ [W] $
$P_m$:機械的出力 [$W$]
$I_2$:二次電流 [$A$]
$r_2$:二次抵抗 [$Ω$]
$s$:すべり
$P_2$:二次入力 [$W$]
トルク(T)
物体を回転させるための力。
トルクは出力が一定の条件下で、回転速度に反比例する。
※角速度ωの変換は、周波数fと極数pより回転速度Nを求めて代入する。ω=2πfは使わない。
直流機のトルク
トルクが一定なら、界磁電流と電機子電流は反比例の関係にある。
$\displaystyle T=\frac{P}{ω}=\frac{60}{2πN}×EI_a \ [N・m] $
$\displaystyle =\frac{60}{2πN}×\frac{pZ}{60a}ΦN×I_a=\frac{pZ}{2πa}ΦI_a \ [N・m] $
$\displaystyle =kΦI_a \ [N・m] $
$T$:トルク [$N・m$]
$P$:出力 [$W$]
$ω$:角速度 [$rad/s$]
$N$:回転速度 [$min^{-1}$]
$E$:誘導起電力(相電圧) [$V$]
$Φ$:界磁 [$Wb$]
$I_a$:電機子電流 [$A$]
$k$:トルク係数
同期機のトルク
$\displaystyle T=\frac{P}{ω}=\frac{60}{2πN_s}×3\left(\frac{EV}{X}\right)sinδ \ [N・m] $
$T$:トルク [$N・m$]
$P$:出力 [$W$]
$ω$:角速度 [$rad/s$]
$N_s$:同期速度 [$min^{-1}$]
$E$:誘導起電力(相電圧) [$V$]
$V$:端子電圧(相電圧) [$V$]
$X$:リアクタンス [$Ω$]
$δ$:EとVの位相差(負荷角)
誘導機のトルク
Pmは機械的出力となる。誘導機の「二次側の等価回路」参照。
トルクと出力は電圧、電流の2乗に比例する。
$\displaystyle T=\frac{P_m}{ω}=\frac{60}{2πN}×3{I_2}^2\left(\frac{1-s}{s}\right)r_2 \ [N・m] $
$\displaystyle \left(=\frac{60}{2πN}×3{V_2}^2\left(\frac{s}{(1-s)r_2}\right)\right) $
$T$:トルク [$N・m$]
$P_m$:機械的出力 [$W$]
$ω$:角速度 [$rad/s$]
$N$:回転速度 [$min^{-1}$]
$I_2$:二次電流 [$A$]
$V_2$:二次電圧 [$V$]
$r_2$:二次抵抗 [$Ω$]
$s$:すべり
トルクと同期速度Ns(回転磁界の速度)・二次入力P2の関係は以下のようになる。
トルクと滑りs(回転速度)の関係は比例推移となる。
この場合の二次入力P2を同期ワットと呼ぶ。
$\displaystyle T=\frac{P_m}{ω}=\frac{P_2(1-s)}{ω_s(1-s)}=\frac{P_2}{ω_s} \ [N・m] $
$\displaystyle ω_s=2π\frac{N_s}{60} N_s=\frac{120f}{p} $
$T$:トルク [$N・m$]
$P_m$:機械的出力 [$W$]
$ω$:角速度 [$rad/s$]
$s$:すべり
$P_2$:二次入力[$W$]
$ω_s$:同期角速度 [$rad/s$]
$N_s$:同期速度(回転磁界の速度) [$min^{-1}$]
$p$:磁極数
$f$:周波数 [$Hz$]
トルク特性
負荷トルク特性
負荷トルクの特性には、低域トルク、定トルク、低出力の種類がある。
- 低減トルク特性:ポンプ、ファン等の特性で、トルクは回転数の2乗に比例し、出力は回転数の3乗に比例する。
- 定トルク特性:クレーン、コンベア等の特性で、トルクは回転数に対して一定で、出力は回転数に比例する。
- 定出力特性:巻取機・工作機械等の特性で、トルクは回転数の2乗に反比例し、出力は回転数に対して一定である。



始動トルクと負荷トルク(トルクー回転速度特性曲線)
電動機は、負荷トルク<電動機トルク(始動トルク)で加速し、負荷トルク>電動機トルク(始動トルク)になると減速し停止する。
最大トルクは電動機が出しうる最大のトルクである。停動トルクとも呼ばれ、最大トルク以上の負荷が加わると減速し停止する。
トルクー回転速度特性曲線では、最大トルク後の電動機トルク(始動トルク)と負荷トルクの交点で安定動作する。(最大トルク前の段階で負荷トルクが大きくなると、滑りが大きくなり始動トルクが減少して停止してしまう)
電動機の動作範囲は、最大トルクの滑り~同期速度となる。


回転速度(N)
直流機の回転速度
直流機の回転速度は電機子誘導起電力に比例する。界磁磁束(界磁電流)に反比例する。
速度を制御するには、界磁電流か誘導起電力(端子電圧)を変化させればよい。
界磁磁束kΦは、他励・分巻の時は一定と考えてよい。
$\displaystyle N=\frac{E}{kΦ}=\frac{V-r_aI_a}{kΦ} \ [min^{-1}] $
$N$:回転速度 [$min^{-1}$]
$E$:逆起電力 [$V$]
$k$:係数
$Φ$:磁束 [$Wb$]
$V$:端子電圧 [$V$]
$r_a$:電機子抵抗 [$Ω$]
$I_a$:電機子電流 [$A$]
同期機の回転速度
回転速度は同期速度Nsと等しくなる。
同期速度Nsは、回転磁界の回転速度である。
$\displaystyle N_s=\frac{120f}{p} \ [min^{-1}] $
$N_s$:回転速度 [$min^{-1}$]
$f$:周波数 [$Hz$]
$p$:磁極数
誘導機の回転速度
回転速度は回転磁界の速度からやや遅い速度(滑り)となる。
$\displaystyle N=\frac{120f}{p}(1-s)=N_s(1-s) \ [min^{-1}] $
$N$:回転速度 [$min^{-1}$]
$f$:周波数 [$Hz$]
$p$:磁極数
$s$:滑り(0<s<1)
$N_s$:同期速度(回転磁界の速度) [$min^{-1}$]
滑り(s)
同期速度と、同期速度と回転速度(回転子の速度)の相対速度の比を滑り(s)という。
誘導電動機の一次回路には同期速度(Ns)の回転磁界、二次回路には同期速度のs倍(sNs)の回転磁界が加わる。
誘導電動機は回転磁界の速度Nsからやや遅い速度(1ーs)で回転子が回転する。
滑りsは停止時に最大値1、無負荷時(同期速度運転)に0、運転時は0.03~0.05程度である。
s<0となると発電機になる。
負荷が減り、滑りsが小さくなると回転速度は大きくなる。
$\displaystyle s=\frac{N_s-N}{N_s} $
$s$:滑り(0<s<1)
$N_s$:同期速度(一次側回転磁界の速度) [$min^{-1}$]
$N$:回転速度(回転子の速度) [$min^{-1}$]
$N_s-N$:二次側回転磁界の速度 [$min^{-1}$]
速度変動率
負荷電流を変化させたときに回転速度がどれだけ変動するかを示す。
この値が小さいほど安定度が高いといえる。
$\displaystyle ζ=\frac{N_0-N_n}{N_0}×100 \ [%] $
$ζ$:速度変動率 [%]
$N_0$:無負荷時の回転速度 [$min^{-1}$]
$N_n$:定格負荷時の回転速度 [$min^{-1}$]
ファンやポンプの回転速度
流量は、回転数に比例する。(流量=速度×面積)
全圧(静圧+動圧)は、回転数の2乗に比例する。(全圧=静圧+1/2×ρv2)
軸動力は、回転数の3乗に比例する。(軸動力=風量×全圧)
トルクは、回転数の2乗に比例する。(トルク=軸動力/角速度)
「送風機の特性」「風量の制御」参照。
電動機の運転
電動機の制動
発電制動
慣性モーメントの大きい負荷を停止するとき、慣性エネルギー分が電動機から発電される。
発電による電圧上昇を放電用の制動抵抗で、熱として消費させることを発電制動という。
回生制動
電気ブレーキのこと。
エレベーターや車両の下り坂などの負荷によって、電動機の誘導起電力(逆起電力)が電源電圧より高くなると、電動機は発電機となり発生電力が電源側に送り返されて、電力の回生とともに制動が加わる。
電源電圧と誘導起電力(逆起電力)の大きさは逆転するが、電圧方向は同じである。
トルク、電流の方向は逆転する。
直流機の他励式や分巻式では、発電機と電動機で界磁電流の方向は同じになるので、回転方向も変わらず、結線を変えずに回生制動が可能である。
電動機の運転状態と回路
無負荷状態
- 直流機:端子が開放されている状態。
他励・分巻は、逆起電力=電源電圧となり、電機子電流=0となる。
直巻は、励磁、電機子電流が同じなので負荷が無いと起動できない。励磁、電機子電流が小さいと、回転速度が急上昇してしまう。 - 同期機:内部相差角(負荷角)δが0となる。
- 誘導機:滑り0で同期速度回転となる。
停止状態
誘導起電力(逆起電力)E=0となる。
誘導機の滑りは1となる。
Ver.1.0.2