誘導機の構造
構造が簡単で、安価なため、一般的な電動機として使用されている。
絶縁銅電線にはホルマール銅線やポリエステル銅線、大出力用ではガラス巻線を使用する。
固定子
電機子。
回転子を回転させる回転磁界を作る。
けい素鋼板を円形や扇形にスロットとともに打ち抜いて、必要枚数積み重ねた積層鉄心を構成する。
スロットに巻線を納め、結線して三相巻線を作る。
スロットの導体の本数に応じた多相交流の誘導起電力となる。
回転子
固定子の磁界による渦電流で励磁されるため、外部から電源供給の必要が無い。
かご形と、巻線形がある。
誘導機の特徴
回転子が回転磁界より少し遅い速度(滑り)で回転してトルクを発生する。逆の場合は、発電機となる。
回転方向は電機子の回転磁界に依存するので、端子2本を入れ替えると逆方向に回転する。
無負荷運転で、同期速度で回転している時、滑りが0となりトルクは0である。
負荷が増加すると回転速度が下がり、滑りの増加とともにトルクも比例増加し、最大トルクを超えると減少に転じる。(トルク特性曲線)
最大トルクを超えた回転速度の動作範囲では、滑りは小さくほぼ同期速度で安定し、負荷の増加に対する速度低下が小さいので、定速度電動機と呼ばれる。
負荷速度特性は直流分巻電動機に類似している。
停止状態で電源投入して始動することができる。
一般的に80%以上の負荷で使用すると効率が良い。それ以下の負荷だと効率が悪くなる。
始動時は、電流が小さく大きなトルクを得るために回転子の抵抗(二次抵抗)を大きくして、定格運転時には抵抗を小さくして効率を上げることが望ましい。
誘導機の動作原理
固定子の巻線に三相交流電源をつなげると、固定子巻線に回転磁界が生じる。この回転磁界が回転子のコイルに電磁誘導による起電力を発生させ、渦電流が流れる。渦電流の電磁力によって回転子が回転する。
回転磁界と回転子の回転方向は同じである。
誘導機は電機子と界磁が別れていないため、電機子反作用は起きない。
回転子の電流によって生じる起電力を打ち消すように固定子に電流が流れてバランスをとる。(同期機の電機子反作用と同様の現象が起きる)
アラゴの円板
誘導電動機の回転原理。
銅円板に接近して配置した磁石を回転させると、銅円板も同方向に回転する現象。
銅円板は接近した磁石の磁界により電磁誘導で渦電流が流れ、フレミング左手の法則に基づいて回転する。
渦電流は、磁界中の誘導起電力により鉄心内に渦巻状に流れる電流である。
渦電流は、磁石が右に移動する場合、円板は逆方向の左に移動することになり、フレミング右手の法則に基づいて、磁石の下の電流は円心から磁石方向に流れる。
渦電流はジュール熱を発生し、損失となる。これを渦電流損という。
この損失を低減する為、鉄心の電流が流れにくいように薄い鉄板を積層にする。

かご形誘導電動機
かご形誘導電動機の構造
回転子には端絡環とよばれる輪が両端にあり、その間を数本の銅棒(中小容量はアルミニウム)で接続し、かご状になっている。
二次誘導起電力は、導体の本数に応じた多相交流となる。
構造が簡単で安価である。
回転子内部で閉回路が構成されるため、スリップリングが無く保守性が良い。
運転効率が良い。
二次回路に外部抵抗を接続することができない。

かご形誘導電動機の回転原理
回転子の1本の棒に着目すると、固定子の磁界方向(N→S)、棒の移動方向は回転磁界方向の逆になるので、フレミングの右手の法則より、誘導電流の方向が決まる。
誘導電流の方向と、固定子の磁界方向(N→S)で、フレミングの左手の法則より棒(回転子)が働く力の方向が決まる。
結果的に固定子の回転磁界と同じ方向に回転子が回転する。

かご形誘導電動機の始動方法
始動電流が大きいので、始動方法は容量によって異なる。
一次回路を調整して、始動電流を抑制する。
- 5kW以下:全電圧始動。(直入れ始動)
- 小容量:スターデルタ始動。
- 大容量:リアクトル始動、コンドルファ始動。
全電圧始動(直入れ始動)
直接電源電圧を印加する方法。
電源系統への影響が小さいので、5kW以下の電動機で採用される。
始動電流は定格電流の4~8倍程度と大きくなる。
始動電流の無効分が大きいため、始動トルクが定格の1~2倍と小さくなる。
スターデルタ始動
始動時は結線をY結線にして低電圧にし、始動後にΔ結線にする方法。
始動時には一次側巻線(固定子)をY結線にして低い電圧(V/√3)にし、運転時はΔ結線にして全電圧(V)にすることで、始動時の負荷側の相電流を1/3にする。
この場合、始動電流は1/3にできるが、始動トルクも1/3になるので始動時間は長くなる。
始動後はトルクを戻す為にΔ結線にする。
直入始動のモータは3端子(U、V、W)を結線(R、S、T)するが、スターデルタ始動のモータは6端子(U、V、W、X、Y、Z)を結線する。
結線の端子は、Y結線(RーU、SーV、TーW、XーYーZをMC1で接続)→Δ結線(RーU、SーV、TーW、UーZ、VーX、WーYをMC2で接続)となる。
スターデルタ始動回路には、コンタクタ(電磁接触器)を2個使う方式と3個使う方式がある。
2個(2コン)の場合は常にモータに電圧がかかり、絶縁低下での相間短絡が起きる可能性がある。
3個(3コン)の場合は遮断器ーモータ間にコンタクタがあるので、停止中は電圧はかからない。
長時間停止しているモータ(消防設備のモータなど)では、3コンを使用する。




リアクトル始動
始動時はリアクトルを介して低電圧にし、始動後に直接電源に接続する方法。
始動電流を全電圧始動の場合の1/aに抑えた場合に、始動トルクは全電圧の1/a2となり、始動電流の減り方より始動トルクの減り方のほうが著しいのが欠点である。
コンドルファ始動
始動時は始動補償器という単巻変圧器を介して低電圧にし、始動後に直接電源に接続する方法。
かご形誘導電動機の種類
二重かご形誘導電動機
回転子巻線が上部(外側)と下部(内側)とに二重に巻かれていて、上部の抵抗を大きくしたもの。
始動電流は二次側(回転子)の周波数が高いので、下部の漏れインダクタンスが大きく、ほとんどの電流が黄銅(固有抵抗は銅の4倍)で作られた上部巻線を流れる。従って、始動電流を制限され二次抵抗が増加したことになり、高始動トルクが得られる。
定格運転中は銅で作られた下部巻線にも電流が流れる。
通常より大きな容量まで全電圧始動法を使用できる。
深溝かご形誘導電動機
回転子巻線の溝を深くして、表皮効果を利用して導体の電流密度を内側と外側で変えるもの。
始動電流は二次側(回転子)の周波数が高いので、回転子内側の漏れインダクタンスが大きく、ほとんどの電流が表皮効果により回転子表面(外側)に流れる。従って、始動電流が制限され二次抵抗が増加したことになり、高始動トルクが得られる。
定格運転中は回転子内側にも電流が流れる。
運転特性(効率、力率)は、深溝かご形の方が二重かご形よりやや優れている。
巻線形誘導電動機
巻線形誘導電動機の構造
回転子の構造が鉄心にコイルを巻きつけた形式になっている。
三相分の回転子巻線はスリップリングとブラシを介して外部(二次回路)の可変抵抗に接続されている。
二次回路の可変抵抗により、始動電流を小さくして始動トルクを大きくする。(比例推移)
二次回路の抵抗を変化させることにより、速度制御(二次抵抗制御)を行え、定格運転時の銅損を減らすことで効率的な運転が可能である。
構造が複雑で高価である。
頻繁に起動停止を繰り返すクレーンや、大きな始動トルクが必要な場合に使用される。

巻線形誘導電動機の始動方法
二次回路に始動抵抗器を接続し、始動時は定格運転時の抵抗よりも大きくする。トルクの比例推移を利用することで、始動電流を小さく、始動トルクを大きくして始動する。
回転子の二次回路の抵抗値が大きいほど始動トルクは大きくなる。しかし、抵抗が大きいと損失も大きくなる。
比例推移
誘導電動機のトルクを一定とした場合、滑りが二次抵抗に比例する性質を比例推移という。
トルク-回転速度曲線は、電源電圧及び電源周波数が一定の時、発生するトルクと回転速度(滑り)の関係を表す。
横軸は、回転速度0~同期速度Ns(滑り1~0)を表す。
ある滑りの値で、トルクが最大となる。このトルクを停動トルクといい、これを超えるトルクの負荷がかかると電動機は停止する。
トルク-回転速度曲線は、二次回路の抵抗がm倍になると、最大トルクを発生する滑りがm倍のところ(左側に)に移動する。
巻線形誘導電動機の場合、この現象を利用して二次回路に外部抵抗Rを追加し、二次回路の抵抗を変更して曲線を左へ移動させ、始動トルクを大きくしている。
最大トルクの値は、二次回路の抵抗には無関係である。(位置が変わるだけである)
トルクを一定に保ち、回転速度(滑り)を変えるには以下の式から外部抵抗Rを決定する。
始動時に最大にするにはms=1(滑り1)とする

$\displaystyle \frac{r_2}{s}=\frac{r_2+R}{ms}=一定 $
$r_2$:二次回路の抵抗 [$Ω$]
$R$:外部抵抗 [$Ω$]
$s$:変化前の滑り
$ms$:変化後の滑り
誘導機の速度制御
回転速度の公式より、回転速度は、極数p、滑りs、周波数fによって変化する。
モータ出力は回転速度の3乗に比例するので、回転速度を下げることは大きな省エネとなる。
誘導機の極数による制御
固定子巻線の接続を切り替えて極数を変化させ、速度を段階的に変える。
誘導機の滑りによる制御
一次電圧制御(かご形)
かご形誘導機で使用される滑り制御。
固定子(一次側)の電圧を変化させてトルクを変化させる。電動機トルク(始動トルク)特性曲線と負荷トルク特性曲線の安定点を移動させ、滑りを変化させる。
滑りの範囲を広くするために、あらかじめ二次抵抗を大きく設計するので、損失が大きくなり非効率である。
トルクは一次電圧の2乗に比例する。
二次抵抗制御(巻線形)
巻線形電動機で使用される滑り制御。
巻線形誘導電動機の回転子(二次側)に抵抗を接続して、抵抗値を変えて滑りを変化させる。(比例推移を利用する)
二次抵抗を大きくすると滑りは大きくなり、回転速度は小さくなる。
抵抗を大きくすると、二次回路の電力損失は大きくなる。
二次励磁制御(巻線形)
巻線形電動機の回転子(二次側)に可変周波数と可変電圧を加えて、滑りを変化させる。
二次抵抗を使用せず、電力変換装置で二次抵抗損失を電源に返還する。
- クレーマ式:誘導電動機の軸に直流電動機が接続されており、二次巻線の電流を利用して直流電動機を回転させることで制御する方式。
- セルビウス式:二次巻線の電流を、変圧器等を介して直接、誘導電動機の電源側に返送して制御する方式。
誘導機の周波数による制御
V/f 制御(インバータ制御)
一次周波数を変化させる。(VVVF)
励磁電流I、励磁巻線のインダクタンスL、電圧Vのとき、I=V/2πfLより周波数と励磁電流(磁束)は反比例の関係となる。仮に電圧一定のまま周波数を減少させると、励磁電流(磁束)が増加し、磁気飽和となるとモータは破損する。(誘導機の等価回路参照)
そこで、磁束を一定に保つ為、周波数と電圧の比(V/f)が一定になるように、周波数と同時に電圧も変動させる。
滑り周波数制御(インバータ制御)
インバータ制御の方式で一次周波数を変化させる。
電動機の回転速度と、滑り周波数の和をインバータの一次周波数とする。
滑り周波数が正(加速)、負(減速)となる。
電動機の速度検出を行うので、クローズドループ制御(出力を入力にフィードバックする制御)である。
ベクトル制御(インバータ制御)
インバータ制御の方式で一次電流を変化させる。
運転状況を見ながら、モータ電流の位相をベクトル演算し、励磁電流とトルク分電流に分けて励磁とトルクを直接制御する。
細かな速度制御が可能である。
電動機の速度検出を行うので、クローズドループ制御(出力を入力にフィードバックする制御)である。
インバータ制御装置の保護機能
- トルクブースト:周波数が低くなると、巻線電圧降下の影響が大きくなりトルクが低下するので、負荷特性に応じて出力電圧をパターン化して、一次巻線電圧降下の補償量を設定してトルクを確保する。
- ストール防止:加速時に周波数を急激に増加させると回転速度と同期速度の差が大きくなりすぎてストール(回転磁界に追従できなくなった状態)を起こすので、加速率を下げて電流を下げて運転を行う。
- 過電圧防止:減速時の回生エネルギーによるインバータの破損を防ぐため、減速率を低減したり、外部回路にエネルギーを放出する。最近は直流リンクに回生エネルギーを電源側に戻す方式もある。
誘導電動機の等価回路
誘導電動機と変圧器の等価回路
誘導電動機の等価回路は変圧器と同様で、変圧器の一次巻線が電動機の固定子側、二次巻線が回転子側に相当する。ただし、回転子側は滑りを考慮した回路となる。
変圧器と同様に漏れインピーダンスが存在する。漏れインピーダンスは、巻線の抵抗+漏れリアクタンスである。(一次巻線と二次巻線で漏れる磁束をリアクタンスとして表したもの)
電機子反作用は無いので同期機のような電機子反作用リアクタンスはない。

巻線比(誘導起電力の比)a=E1/E2とすると、二次側の回路は変圧器と同様に以下で表せる。

巻数比:$\displaystyle a=\frac{E_1}{E_2} {E_2}’=aE_2 I_1’=\frac{I_2}{a}$
$\displaystyle {r_2}’=a^2r_2 {x_2}’=a^2x_2 R’=a^2R=a^2r_2\left(\frac{1-s}{s}\right)={r_2}’\left(\frac{1-s}{s}\right) $
滑りと一次側・二次側の関係
滑りと周波数の関係
固定子(一次側)の供給電圧の周波数をf1とすると、回転子(二次側)の周波数(滑り周波数)f2は、以下の関係となる。
二次周波数(滑り周波数)は、回転子が停止している始動時は(s=1)で一次周波数と同じとなり、定常運転時は滑りがあるので低くなる。始動電流の二次周波数は運転時より高くなる。
$f_2=sf_1 [Hz]$
滑りと誘導起電力の関係
回転子が停止している時は、二次周波数は一次周波数と同じとなり、回転時は滑りを乗じた周波数となる。
回転子が停止している時の二次巻線の誘導起電力をE20とすると、回転時の二次巻線の誘導起電力E2は以下となる。
$\displaystyle E_{20}=4.44f_1NΦ E_2=4.44sf_1NΦ $
$E_2=sE_{20} [V]$
誘導電動機のパワーフロー
誘導電動機の電力の流れを示すと以下のように分類できる。
一次入力(P1)=鉄損(Pi)+一次銅損(Pc1)+二次入力(P2)
- 一次入力(P1):一次側から供給する電力。
- 鉄損(Pi):電動機内部の固定損失。
- 一次銅損(Pc1):一次側(固定子)抵抗の損失。
- 二次入力(P2):回転子の二次側回路の入力。
回転子の二次側回路の二次入力(P2)は、二次銅損と機械的出力になる。
二次入力(P2)=二次銅損(Pc2)+機械的出力(Pm)
- 二次入力(P2):回転子の二次側回路の入力。
- 二次銅損(Pc2):二次側(回転子)抵抗の損失。
- 機械的出力(Pm):電動機の出力。
二次側の出力には、滑りsに関して以下の関係が成り立つ。
二次入力(P2):二次銅損(Pc2):機械的出力(Pm)=1:s:1-s
一次回路には同期速度の回転磁界、二次回路にはs倍の同期速度の回転磁界が加わる。
巻線比が1の場合、二次側の誘導起電力、周波数は一次側のs倍となる。
一次と二次の銅損と巻線抵抗の比率は等しい。(銅損=I2Rより)
- s=1のとき誘導電動機は停止状態で、機械的出力は0となる。
- s=0のとき誘導電動機は同期回転状態で、二次入力=機械的出力となり、同期ワットと呼ぶ。
- s<0のとき機械的出力は負となり、発電機となる。
- s>1のとき回転磁界と反対方向に回転し、トルクは正方向だが機械的出力は負となり、誘導ブレーキがかかる制動機となる。制動機は、重量物の巻き下ろしなどに利用され、入力される動力は二次抵抗の熱として消費される。
誘導電動機の等価回路の種類
二次側の等価回路
二次側(回転子)の部分を抜き出した回路は以下となる。

二次入力:$\displaystyle P_2=3V_2I_2=3{I_2}^2\left(r_2+\frac{1-s}{s}r_2\right)=3{I_2}^2\frac{r_2}{s}$
二次銅損:$P_{c2}=3{I_2}^2r_2=sP_2$
機械的出力:$\displaystyle P_m=3{I_2}^2\left(\frac{1-s}{s}\right)r_2=(1-s)P_2$
T形等価回路
二次側を一次側に変換した一相分の等価回路で、励磁回路が二次抵抗の右側にあるもの。
誤差が小さく始動時の変化も考慮できるが計算が複雑である。
T形等価回路をみると、始動時はs=1なので、二次側の抵抗r2’+R’=r2’/sの値は小さく、一次抵抗r1の電圧降下が大きくなり、励磁回路の電圧が低くなるので、励磁磁束は減少する。従って始動時のトルクは減少することが分かる。

L形等価回路
二次側を一次側に変換した一相分の等価回路で、励磁回路を電源側に移した簡易等価回路。
一次側の抵抗と漏れリアクタンスの電圧降下の影響は小さいと仮定して、取り扱いを簡単にしている。
L形等価回路より、以下の値を求めることができる。

一次入力:$\displaystyle P_1=P_i+P_{c1}+P_{c2}+P_m$
鉄損:$\displaystyle P_i=3{V_1}^2g_0$
一次銅損:$P_{c1}=3{{I_1}’}^2r_1$
二次入力:$\displaystyle P_2=3{{I_1}’}^2\left({r_2}’+\frac{1-s}{s}{r_2}’\right)=3{{I_1}’}^2\frac{r_2’}{s}$
二次銅損:$P_{c2}=3{{I_1}’}^2r_2’=sP_2$
機械的出力:$\displaystyle P_m=3{{I_1}’}^2\left(\frac{1-s}{s}\right)r_2’=(1-s)P_2$
励磁電流:$\displaystyle I_0=gV_1-j\frac{V_1}{2πfL}$
円線図
誘導電動機の電動機特性を求める為、一次電流のベクトルを半円で描いたもの。

$N$:無負荷状態の点
$P$:出力の点
$S$:回転子を固定した拘束状態s=1の点
$T$:一次抵抗r1:二次抵抗r2‘の比率で分割した点
$\dot{I_0}$:無負荷電流(励磁電流)
$\dot{I_1}$:一次負荷電流
$OP$:一次電流
$cosθ$:力率
誘導電動機の試験
誘導電動機の抵抗測定
一次巻線(固定子)の抵抗を求める。
測定は静止状態において直流で行い、測定した抵抗値の平均値を、温度による変化を考慮した基準巻線温度における換算式を用いて計算する。
抵抗値を換算するための基準巻線温度は、絶縁材料の耐熱クラスによって定められている。
誘導電動機の無負荷試験
励磁コンダクタンス・励磁サセプタンス(無負荷損)を求める。
負荷を開放して、無負荷状態(滑りs=0)で一次側に定格電圧を掛けることで電動機を回転させ、一次側の電圧・電流・電力を計測する。
L形等価回路では、負荷回路部分が開放となり、励磁回路だけに電流が流れるので、励磁コンダクタンス・励磁サセプタンスを求めることができる。
誘導電動機の拘束試験
一次二次の合成漏れリアクタンス・一次二次の合成抵抗を求める。
電動機の回転子を回転しないように拘束(滑りs=1)して、一次側に定格電流が流れる程度の低電圧を掛け、一次側の電圧・電流・電力を計測する。
L形等価回路では、負荷回路部分が短絡となり、励磁回路にはほとんど電流が流れないので、一次二次の合成漏れリアクタンス・一次二次の合成抵抗がわかる。
単相誘導電動機
単相誘導電動機は、単相での交番磁界なので三相のように回転磁界が作れない。始動トルクがなく自力で回転できないため、始動時に回転磁界を作る始動装置を用いて始動させる。
回転後は、固定子による主磁界と回転子による磁界が電気的に90°の位相差となるため、二相交流による回転磁界と同じ状態になり回転を続けることができる。
くま取りコイル形モータ
固定子の磁極に溝を作り、端絡環のくま取りコイルを配置したもの。
磁極の磁束が、通常の部分とくま取りコイルで短絡電流が流れる部分で位相差が発生して回転磁界を作る。
構造は簡単だが、始動トルクは小さい。
扇風機などの小型機に使用される。
分相始動形モータ
主巻線と補助巻線で構成され、始動時に補助巻線回路で回転磁界を作り、同期速度80%程度で遠心力スイッチが切れて、補助巻線の回路が切り離される。
始動トルクは小さく、始動電流は大きいので高頻度使用には適さない。
価格が安いため、家庭用で使用される。
コンデンサ始動形モータ
始動時に補助巻線+始動コンデンサ回路で回転磁界を作り、同期速度80%程度で遠心力スイッチが切れて、補助巻線の回路が切り離される。
分相始動形より始動トルクは大きく、始動電流は小さいが、効率・力率は低い。コンデンサは短時間定格のものでよい。
重負荷機械用で使用される。
コンデンサモータ
主巻線に対して位相のずれた補助巻線を固定子のスロットに巻き、主磁束に対して位相の進んだ交差磁界を発生させて回転磁界を作るモータ。
始動時に補助巻線+コンデンサ回路で回転磁界を作り、遠心力スイッチは無く、運転中も補助巻線の回路は切り離されない。
始動トルクは小さいが、運転効率・力率が良い。連続使用に耐えるコンデンサが必要である。
小容量の幅広い用途で使用される。
コンデンサ始動コンデンサモータ
補助巻線+コンデンサのコンデンサ回路に、並列に始動コンデンサ+遠心力スイッチを持ち、始動時は始動コンデンサ回路で始動し、運転時は始動コンデンサは切り離され、コンデンサ回路で運転される。
始動時はコンデンサ始動形モータの特性で、運転時はコンデンサモータの特性となる。
誘導発電機
誘導電動機の回転子に外力を加え回転速度を同期速度以上(滑り<0)にすると、回転子導体には電動機と逆向きの電流が流れる。このとき、固定子巻線に誘導起電力が生じて、発電機として電源に電流を供給する回生制動となる。トルクは反対方向の制動トルクとなる。
回転子は、励磁装置が不要なので、建設・保守コストが安い。
始動・並列運転操作が簡単であるが、大きな突入電流が流れる。
単独では始動できないので、固定子の回転磁界を作る励磁電源(コンデンサで電源供給する自励式もある)が必要となる。
接続した他の電力系統の励磁電流で動くので、電圧や周波数、遅れ無効電力の調整はできない。
外力がある中小水力発電や風力発電に使用されている。
Ver1.0.3