電動機・変圧器の損失と出力

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無負荷損(Pi)

負荷とは関係ない損失。

鉄損

鉄心による損失で、磁束の変化で発生する。

ヒステリシス損

鉄心の磁区が交番磁界によって磁界の向きを変えるときの熱損失。
ヒステリシスループの面積に相当する。
電磁鋼板(透磁率が大きく保持力が小さい軟磁性材料)を使用することで損失を低減できる。
ヒステリシス損を求めるスタインメッツの実験式は以下のようになる。(実際の式は最大磁束密度の1.6乗だが、最近は精度向上のため2乗で計算している)
磁束密度Bの2乗と周波数fに比例し、周波数が一定なら一次電圧の2乗に比例する。

$\displaystyle P_h=k_hf{B_m}^2={k_h}’\frac{V^2}{f} $

$P_h$:ヒステリシス損
$k_h$:比例定数
$f$:周波数
$B_m$:最大磁束密度
$V$:電圧

渦電流損

鉄心の中に生じる渦電流によって生じる熱損失。
表面を絶縁膜で覆った薄い鉄板を積層した積層鉄板にして、渦電流回路を遮断することで低減できる。
磁束密度B、周波数fの2乗に比例し、一次電圧の2乗に比例する。

$\displaystyle P_e=k_e\frac{(tfB_m)^2}{ρ}={k_e}’\frac{(tV)^2}{ρ} $

$P_e$:渦電流損
$k_e$:比例定数
$t$:鉄板の厚さ
$f$:周波数
$B_m$:最大磁束密度
$ρ$:磁性体の抵抗率
$V$:電圧

機械損

機械的部分の損失。変圧器には存在しない。

風損

回転部分と空気などとの摩擦抵抗による損失。
回転数Nの3乗に比例する。

摩擦損

軸受、ブラシなどの摩擦抵抗による損失。

励磁損

励磁電流による損失。
直流機の分巻または他巻界磁巻線の銅損(他巻・分巻の界磁電流は変化しないと考える)
変圧器では、励磁電流による巻線抵抗でのジュール損。(小さい)

誘電損

誘電体に交流電源による交番電界を加えると発生する熱による損失。
変圧器で、絶縁物における損失。(高圧用の場合のみで小さい)

負荷損(Pc)

負荷に関係する損失。

銅損

負荷電流による抵抗の損失。
抵抗のジュール熱なので、I2Rから、電流の実効値の2乗に比例する。
電動機の電機子巻線の抵抗損や、ブラシの電気損も含まれる。
変圧器巻線の負荷電流による抵抗損。

浮遊負荷損

漏れ磁束により導線や鉄心内部に渦電流が流れることによる損失。
ほぼ0である。

電動機・発電機の効率

効率は、定格入力に対する定格出力(機械的出力)の比を百分率%で表したもの。
全損失は、負荷損+無負荷損で、一般的には鉄損Pi+銅損Pcとなる。

$\displaystyle η=\frac{定格出力}{定格出力+損失}×100=\frac{定格入力-損失}{定格入力}×100 \ [\%] $

効率は損失よりも負荷出力の影響が大きい。
銅損は負荷の2乗に比例する。軽負荷運転で銅損が小さくなっても、鉄損は変わらないので、比率が悪ければ、必ずしも効率が向上するとは限らない。
最大効率となるのは、負荷損(銅損)=無負荷損(鉄損)となる時である。
電動機の負荷が低下すると力率も効率も低下する。
標準的な電動機の場合、効率の最高値は75~90%前後で、大容量になるほど効率が高くなり、小容量になるほど低下する。
電動機の力率は定格負荷では一般的に0.7~0.9程度である。

直流電動機の効率

$\displaystyle η=\frac{出力}{入力}×100=\frac{逆起電力E×電機子電流I_a}{端子電圧V×負荷電流I}×100 \ [\%] $

端子電圧Vは電動機回路に入力する電圧で、逆起電力Eは電動機に加わる電圧である。

直流発電機の効率

$\displaystyle η=\frac{出力}{入力}×100=\frac{端子電圧V×負荷電流I}{誘導起電力E×電機子電流I_a}×100 \ [\%] $

端子電圧Vは発電機回路から出力される電圧で、誘導起電力Eは発電機が発電する電圧である。

誘導電動機の効率

定格出力(機械的出力)Pmで効率85%の電動機の場合、端子入力(一次入力)をP1とすると、Pm=0.85P1と表せる。

機械的出力 $P_m=ηP_1 \ [W] $

$P_m$:機械的出力 [$W$]
$η$:効率
$P_1$:一次入力 [$W$]

変圧器の効率

変圧器の規約効率」参照

定格出力と電力

定格とは、安全に継続的に使用できる状態での最大値を表す。
三相の場合、定格電圧・定格電流は一般に線間電圧・線電流を表す。
電動機などは始動時に、瞬間的に定格電流を超える場合もある。

電動機の定格入力

実際に消費する電力(有効電力)のこと。
電動機の効率分があるので、定格出力よりも大きい。

$\displaystyle P_i=V_nI_n \ [W] $

$\displaystyle P_{i3}=\sqrt{3}V_nI_ncosθ \ [W] $

$P_i$:定格入力(直流) [$W$]
$P_{i3}$:定格入力(三相交流) [$W$]
$V_n$:定格電圧 [$V$]
$I_n$:定格電流 [$A$]
$cosθ$:力率

電動機の定格出力

実際の電動機出力のこと。(定格入力に効率を掛けたもの)
電動機の効率分があるので、定格入力(消費電力)よりも小さい。

$\displaystyle P_o=P_i×η \ [W] $

$\displaystyle P_{o3}=P_{i3}×η \ [W] $

$P_o$:定格出力(直流) [$W$]
$P_{o3}$:定格出力(三相) [$W$]
$P_i$:定格入力(直流) [$W$]
$P_{i3}$:定格入力(三相) [$W$]
$η$:効率

発電機・変圧器の定格出力

発電機・変圧器の定格出力は皮相電力で表される。

$\displaystyle P=VI \ [W] $

$\displaystyle S=\sqrt{3}VI \ [VA] $

$P$:発電機出力(直流) [$W$]
$V$:端子電圧 [$V$]
$I$:負荷電流 [$A$]
$S$:発電機出力(三相交流) [$VA$]


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