電気機器のエネルギー

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回転体のエネルギー

回転体の運動エネルギー

運動エネルギーの単位は[J]なので、[W]の場合は[J]=[W・s]で換算する。

$\displaystyle W=\frac{1}{2}mv^2=\frac{1}{2}m(rω)^2=\frac{1}{2}Jω^2 \ [J] $

$W$:運動エネルギー [$J$]
$m$:質量 [$kg$]
$v$:速度 [$m/s$]
$r$:半径 [$m$]
$ω$:角速度 [$rad/s$]
$J$:慣性モーメント [$kg・m^2$]

慣性モーメント

回転しにくさを示す物理量。単位は、[kg・m2]

$\displaystyle J=mr^2 \ [kg・m^2] $

$J$:慣性モーメント [$kg・m^2$]
$m$:質量 [$kg$]
$r$:半径 [$m$]

はずみ車効果

はずみ車とは、電動機と負荷の間に取り付ける鉄製の重い車(フライホイール)で、負荷のトルク変動を吸収して電動機の定速運転を維持するもの。
この効果を数値化したものをはずみ車効果という。

$\displaystyle GD^2=4J \ [kg・m^2] $

$G$:回転体の質量 [$kg$]
$D$:回転体の直径 [$m$]
$J$:慣性モーメント [$kg・m^2$]

減速比と合成はずみ車効果

減速比は、歯車比の逆数で、負荷を1回転させるために必要な電動機の回転数の倍率である。
減速比a=電動機側の歯車の回転数N1/負荷側の歯車の回転数N2
   (=負荷側の歯車の数n2/電動機側の歯車の数n1)
(2つの歯車が組み合わされていて、出力側歯車n2の歯数が入力側歯車n1の歯数の2倍であるとき、歯車n2が1回転するのに歯車n1は2回転必要となる。このとき減速比は2となる)
減速比(N1/N2)で連結された電動機と負荷がある場合、電動機側の合成はずみ車効果は以下となる。

$\displaystyle GD^2=G_1{D_1}^2+\left(\frac{N_2}{N_1}\right)^2G_2{D_2}^2 \ [kg・m^2] $

$G$:回転体の質量 [$kg$]
$D$:回転体の直径 [$m$]
$N_1$:電動機側の歯車の回転数
$N_2$:負荷側の歯車の回転数

減速比aと回転数、角速度、トルクの関係は以下となる。

$\displaystyle a=\frac{N_1}{N_2}=\frac{ω_1}{ω_2}=\frac{T_2}{T_1} $

$N_1$:電動機側の回転数
$N_2$:負荷側の回転数
$ω_1$:電動機側の角速度 [$rad/s$]
$ω_2$:負荷側の角速度 [$rad/s$]
$T_1$:電動機側のトルク [$N・m$]
$T_2$:負荷側のトルク [$N・m$]

はずみ車(減速機)の効率ηがある場合は、T2=aηT1となる。

各種機器の電力

電動機の余裕係数

電動機の容量を決める場合に、安全性を考慮して乗ずる係数。
一般に余裕係数K=1.1~1.2である。(特に提示が無い場合はK=1とする)

エレベータの電力

エレベータの質量[kg]=かごの質量+積載質量-おもりの質量
おもりの質量=かごの質量+α定格積載質量(αは1/3~1/2程度)
おもりの質量は、電動機トルクが小さくなるように設計する。
おもりの質量は、かごの質量+α積載質量なので、空のエレベータを上昇させる時や、α積載質量より多い人数で下降する時は重力で動くので回生運転となる。
その他の場合は、動力を使用するカ行運転となる。
エレベータの電力は、以下の式となる。

$\displaystyle P=K\frac{gmv}{η} \ [W] $

$P$:電力 [$W$]
$K$:余裕係数
$g$:重力加速度(9.8) [$m/s^2$]
$m$:エレベータの質量 [$kg$]
$v$:速度 [$m/s$]
$η$:効率

揚水ポンプの電力

揚水ポンプの電力は、以下の式となる。

$\displaystyle P=K\frac{gQH}{η} \ [kW] $

$P$:電力 [$kW$]
$K$:余裕係数
$g$:重力加速度(9.8) [$m/s^2$]
$Q$:揚水流量 [$m^3/s$]
$H$:揚程 [$m$]
$η$:効率

送風機の電力

送風機の電力は、以下の式となる。

$\displaystyle P=K\frac{QH}{η} \ [W] $

$P$:電力 [$W$]
$K$:余裕係数
$Q$:風量 [$m^3/s$]
$H$:風圧 [$Pa$]
$η$:効率

換気扇の電力

換気扇による排気容量と、室外へ換気される熱量との関係式は以下となる。

$\displaystyle P=mcV(t_2-t_1) \ [W] $

$P$:電力 [$W$]
$m$:空気密度 [$kg/m^3$]
$c$:比熱 [$J/kg・K$]
$V$:換気容量 [$m^3/s$]
$t$:温度 [$K$]

移動する物体のエネルギー

水平移動の等価速度運動

電動機で動作する機器が、下記のような速度曲線を描いて水平移動する場合を考える。

運動方程式」「運動エネルギー」の各式を使用して各区間の値を求めることができる。
m:重量[kg]、FM:機械力[N]、FR:抵抗力[N]、FB:回生力[N]

加速区間①

停止状態から抵抗力より大きい機械力を与えて、さらに物体を加速させる区間。

力:$\displaystyle F_1=F_{M1}-F_R=ma_1 \ [N]$

加速度:$\displaystyle a_1=\frac{v_1-v_0}{t_1}=\frac{F_1}{m} \ [m/s^2]$

距離:$\displaystyle x_1=0+\frac{1}{2}a_1{t_1}^2=\frac{1}{2}v_1t_1(①の面積) \ [m]$

与えるエネルギー:$\displaystyle W_1=F_{M1}x_1=F_1x_1+F_Rx_1 \ [J]$

定速区間②

抵抗力と等しい機械力を与えて、定速を保つ区間。

力:$\displaystyle F_2=F_{M2}=F_R \ [N]$

加速度:$\displaystyle a_2=0 \ [m/s^2]$

距離:$\displaystyle x_2=v_1t_2=v_1t_2(②の面積) \ [m]$

与えるエネルギー:$\displaystyle W_2=F_2x_2 \ [J]$

惰性区間③

機械力を与えず、抵抗力によって減速していく区間。

力(逆方向):$\displaystyle F_3=F_R=ma_3 \ [N]$

加速度:$\displaystyle a_3=\frac{|v_2-v_1|}{t_3}=\frac{F_3}{m} \ [m/s^2]$

距離:$\displaystyle x_3=v_1t_3+\frac{1}{2}a_3{t_3}^2=v_2t_3+\frac{1}{2}(v_1-v_2)t_3(③の面積) \ [m]$

消費するエネルギー:$\displaystyle W_3=F_3x_3 \ [J]$

減速区間④

抵抗力に加えて回生力や機械力を与えて、減速させて停止させる区間。

力(逆方向):$\displaystyle F_4=F_B+F_R+F_{M4}=ma_4 \ [N]$

加速度:$\displaystyle a_4=\frac{|v_0-v_2|}{t_4}=\frac{F_4}{m} \ [m/s^2]$

距離:$\displaystyle x_4=\frac{1}{2}a_4{t_4}^2=\frac{1}{2}v_2t_4(④の面積) \ [m]$

消費するエネルギー:$\displaystyle W_4=F_4x_4 \ [J]$

エネルギー収支

区間全体を通したエネルギー収支は以下のようになる。
 W1+W2ーW3ーW4
 W1:加速区間①で与えたエネルギー(機械力)
 W2:定速区間②で与えたエネルギー(機械力)
 W3:惰性区間③で消費したエネルギー(抵抗力)
 W4:減速区間④で消費したエネルギー(回生力+抵抗力+機械力)
減速区間の消費エネルギーで、機械力を使わずに回生力や抵抗力だけで減速できればエネルギー収支は増えて省エネとなる。また、回生エネルギーとして回収できれば省エネとなる。

A点の値

運動エネルギー:$\displaystyle W_A=\frac{1}{2}m{v_1}^2 \ [J]$

電力:$\displaystyle P_A=F_1v_1 \ [kW]$

エレベータの運動

エレベータ内の物体の力

エレベータのかご内の物体の力の釣合は、エレベータの外から見た場合(静止座標系)と、エレベータの中から見た場合(運動座標系)で力の釣合の式の作成方法が異なる。
エレベータの外から見た場合(静止座標系)では、かご内の物体の運動方程式を作る。
エレベータの中から見た場合(運動座標系)では、物体は静止している状態に見えるので、慣性力を使用した釣合の式を作る。
慣性力は、物体の加速度と同じ加速度で動いている人から見ると、同じ加速度の逆向きの力が働いて見える見かけ上の力である。
どちらも同じ式となるが、上方向と下方向に加わる力の観点でみると意味は異なる。

エレベータの力

エレベータに加わる力、各エネルギーの関係は以下のようになる。

M:かごの質量[kg]、L:積載質量[kg]、m:おもりの質量[kg]
v:エレベータの速度[m/s]、α:エレベータの加速度[m/s2]、ω:綱車の角速度[rad/s]
Fα:加速度αの力[N]、Fg:重力加速度gの力[N]、F:綱車の力[N]

運動方程式:$\displaystyle F_α=F-F_g \ [N]$

加速度αの力:$\displaystyle F_α=(M+L+m)α \ [N]$

重力加速度gの力:$\displaystyle F_α=(M+L-m)g \ [N]$

エレベータのエネルギー

上下の運動エネルギー:$\displaystyle \frac{1}{2}(M+L)v^2+\frac{1}{2}mv^2 \ [J]$

回転の運動エネルギー:$\displaystyle \frac{1}{2}Jω^2 \ [J]$

全体の位置エネルギー:$\displaystyle (M+L)gh-mgh \ [J]$

作業量(電力):$\displaystyle P=Fv=(F_α+F_g)v=ωT \ [W]$

綱車の運動

r:綱車の半径[m]、F:網車の力[N]、J:慣性モーメント[kg・m2]、
α:加速度[m/s2]、ω:角速度[rad/s]、β:角加速度[rad/s2]

綱車のトルク:$\displaystyle T=Fr=\frac{P}{ω}=Jβ \ [N・m]$

綱車の速度:$\displaystyle v=rω \ [m/s]$

綱車の加速度:$\displaystyle α=rβ \ [m/s^2]$


Ver1.0.3

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