水力発電

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水力発電の特徴

水車の回転速度は比較的低いので、極数を多くするように設計されている。
磁極を多く取れる突極型回転子を使用し、落差を有効利用するため、水車を発電機の下方に直結した立軸形である。
短時間で起動・停止ができる。耐用年数が長い。エネルギー変換効率が高い。
電圧は自動電圧調整器、周波数・出力・回転速度の異常な上昇の防止は調速機で制御する。
発電電圧は昇圧するので、Δ-Y結線の変圧器となる。
現在でも重要な役割を果たしているが、全体としての割合は7%程度である。

水力発電設備の構造

取水口

河川水を導水路へ取り入れる設備。

沈砂池

流速を下げて土砂を沈殿させ、水車への流入を防ぐ。

サージタンク

水撃作用(ウォーターハンマ)を軽減する為、水圧管路に設けて水圧変化を吸収する水槽。
圧力変化を吸収するため、開放構造になっている。
有効電力出力が低下して、発電機の状態に変化がなく、上部水槽(サージタンク)の水位が上昇した場合、水圧管路の不具合が考えれられる。

空気弁

弁のある水圧管で、急に弁を閉じた際に管内の圧力が低下して管が破損するのを防ぐため、外気を取り入れる弁。

余水吐き

放流の際の水勢を下げるため、余分な水量を河川に戻す設備。

水力発電の分類

水力発電の落差取得

水路式

取水口から長い水路を経て、落差のある所で発電する。
ダムを使用する場合に比べ建設費が安い。

ダム式

川幅が狭く落差のある地形のところにダムを作り、水路を経ずに発電する。
ダムを建設することで上流、下流の環境に変化を与えることがある。

ダム水路式

ダム→取水口→導水路→サージタンク→水圧鉄管→水車→放水路を経て水車で発電する。
導水路を使って発電所近くのサージタンクに一時貯水することで、発電所との落差を加える。

水力発電の流量取得

貯水池式

ダムなどに貯めた水を長期間の需要に応じて調整して利用する。

調整池式

池に貯めた水を短期間の需要に応じて調整して利用する。

流れ込み式

川の水を自然の流れでそのまま引き込んで利用する。
小水力発電が多い。

揚水式

夜間に上の池に汲み上げて、その水を利用する。

ダムの種類

コンクリート重力式

コンクリートの重量で水圧を支える。
原理が簡単で、最も多い。

アーチ

両岸の幅の狭い地形を利用して、両側の岩盤にアーチ形に壁を作って水圧を支える。
厚さが薄くでき、コンクリートが少なく建設費を安くできる。

ロックフィル式

岩石(外側)、砂利(中間)、遮水性材料(内側)の3層5重の壁で水圧を支える。
岩石が多く得られる場所に適している。

アースダム

土壌を主材料としたもので、灌漑用の池などに適する。
広い地盤で支えるので、基礎の地質が強固でなくてもよい。

取水ダム

水路に水を導入する為に河川に設けられる。
ダムの高さは低い。

水力発電の流量(Q)

流量の計算

年平均流量

年降水量から年平均流量Qを求める。
河川の流量は、年間の雨量(容積)に流出係数(降った雨に対して河川に流れ込んだ割合)を乗じたものとなる。

$\displaystyle Q=\frac{kSR×10^3}{365×24×60×60} \ [m^3/s] $

$Q$:年平均流量 [$m^3/s$]
$k$:流出係数
$S$:面積 [$km^2$]
$R$:年降水量 [$mm$]

水管の流量

水管の面積と速度から流量Qを求める。
連続の式で、水管では異なる2点の流量は同じなので、流量がわかれば、速度・管径が求まる。

$\displaystyle Q=S_1v_1=S_2v_2 \ [m^3/s] $

$Q$:流量 [$m^3/s$]
$S$:管の面積 [$m^2$]
$v$:速度 [$m/s$]

1時間当たりの降水量の流量

1時間当たりの降水量から流量Qを求める。
面積1km2の場所に1時間で60mmの降水量の場合、1時間で溜まる体積を求め、1秒間の流量Qを求める。
面積1[km2]=1×106[m2]、1時間=3600[s]、降水量(高さ)60[mm]=0.06[m]より、
流量Q=(1×106×0.06)/3600=16.66[m3/s]

流況曲線

河川で利用できる1日の流量を、年間を通して多いものから順番に配列して描いたもの。

  • 高水量:毎年1~2回。
  • 豊水量:1年で95日はこれより下らない。
  • 平水量:1年で185日はこれより下らない。
  • 低水量:1年で275日はこれより下らない。
  • 渇水量:1年で355日はこれより下らない。

流況曲線と発電流量

流況曲線は、流量Qを日数dの式で表わせる。(例:Q=ー0.05d+25)
1年間の水力発電の電力量を算出する場合、365日のうち最大使用水量の日数の電力量+それ以外の日数の電力量となる。
最大使用水量の日数の電力量を求める場合は、最大使用水量をQMに流量曲線の式に代入し、発電所が最大使用水量で発電できる日数dMを求めて電力量を算出する。
それ以外の日数の電力量を求める場合は、平均使用水量QTを求めて、それ以外の日数dT=365ーdMから電力量を算出する。
平均使用水量QTは、(最大使用流量QM+流況曲線の示す最低流量)/2となる。

調整池と発電流量

発電停止中に調整池を満水にし、発電ですべての調整池の水を使い切る場合の水量計算。
調整池の全体水量=(発電停止時間×河川流量)+(発電運転時間×河川流量で使用しなかた流量)
発電時の使用水量=発電運転時間×(河川流量+調整池からの流量)
発電出力は、施設条件(落差H)が変わらないので、使用水量に比例して変化する。
(出力Aの時の流量Aが分かれば、比例の式から出力Bのときの流量Bは求まる)

水力発電の出力

水力発電機出力

水力発電の出力は流量と有効落差で求まるが、実際の発電機出力は理論出力に対して、水車効率、発電機効率を考慮して、少ないものとなる。

理論出力=$9.8QH \ [kW] $

水車出力=$9.8QHη_t \ [kW] $

発電機出力=$9.8QHη_tη_g \ [kW] $

$Q$:流量 [$m^3/s$]
$H$:有効落差 [$m$]
$η_t$:水車効率
$η_g$:発電機効率

落差(H

実際の出力計算で使用する落差は、物理的な落差から損失分を引いたものとなる。

  • 総落差:取水の静止面と放水地点の水面との差。
  • 有効落差:総落差-損失水頭(導水の摩擦などの損失分を高さで表したもの)

有効落差の関係

水車の回転速度N:有効落差Hの1/2乗に比例して変化する。
水圧管の流量Q:有効落差Hの1/2乗に比例して変化する。
発電機の出力P:有効落差Hの3/2乗に比例して変化する。

$\displaystyle \frac{N_1}{N_2}=\sqrt{\frac{H_1}{H_2}} \frac{Q_1}{Q_2}=\sqrt{\frac{H_1}{H_2}} \frac{P_1}{P_2}=\left(\frac{H_1}{H_2}\right)^{\frac{3}{2}} $

$N$:回転速度 [$min^{-1}$]
$H$:有効落差 [$m$]
$Q$:流量 [$m^3/s$]
$P$:出力 [$W$]

発電機の速度調整率

調速機の設定を変えずに、水車やタービンの出力負荷を変化させた時、水車やタービンの回転速度がどの程度変化するかを表す率。
一般に2~4%程度である。負荷が減ると回転速度は上昇し、増えると低下する。

$\displaystyle SR=\frac{\displaystyle \frac{N_2-N_1}{N_n}}{\displaystyle \frac{P_1-P_2}{P_n}}×100=\frac{\displaystyle \frac{f_2-f_1}{f_n}}{\displaystyle \frac{P_1-P_2}{P_n}}×100 $

$P_1$:変化前の負荷 [$kW$]
$P_2$:変化後の負荷 [$kW$]
$P_n$:基準出力の負荷 [$kW$]
$N_1$:変化前の回転速度 [$min^{-1}$]
$N_2$:変化後の回転速度 [$min^{-1}$]
$N_n$:定格回転速度 [$min^{-1}$]
$f_1$:変化前の周波数 [$Hz$]
$f_2$:変化後の周波数 [$Hz$]
$f_n$:定格回転速度の周波数 [$Hz$]

水車発電機の特徴

タービン発電機(水車発電機との違い)」参照。

揚水発電

揚水発電は、深夜などの余剰電力を利用してポンプ(水車)で上池に揚水し、ピーク時に下池へ水を落として水車で発電するものである。
ピーク時の発電に使われ、ベース負荷では使用されない。

揚水発電の方式

別置式

発電設備(水車・発電機)と揚水設備(ポンプ・電動機)とを分けて設置する方式。
コストが高い。

タンデム式

発電電動機(発電機と電動機を共用したもの)と水車、ポンプを同一軸上に直結した方式。
最も使用されている。

ポンプ水車式

発電電動機とポンプ水車(水車とポンプを兼用させたもの)で構成される方式。
安価である。

可変速揚水発電システム

従来の揚水発電では、発電電動機は一定の回転速度で運転するため、入力電力は一定であった。
発電電動機の回転速度を可変にし、揚水量を変化させることで細かい入力電力の調整が可能となる。
回転速度が任意に変更できるので、運転時の系統への並入所要時間が短縮できる。

揚水所要電力

揚水の使用電力は流量と揚程で求まるが、実際の使用電力は理論電力に対して、ポンプ効率、電動機効率を考慮したものとなる。
揚水で使用する電力の揚程Hは総落差+損失分となる。(発電時の有効落差とは逆となる)

$\displaystyle P_0=\frac{9.8QH}{η_pη_m} \ [kW] $

$P_0$:揚水所要電力 [$kW$]
$Q$:流量 [$m^3/s$]
$H$:有効揚水高 [$m$]
$η_p$:ポンプ効率
$η_m$:モータ効率

揚水発電の総合効率

総合効率=発電電力/揚水所要電力

$\displaystyle η=\left(\frac{H-h}{H+h}\right)×η_tη_gη_mη_p $

$η$:総合効率
$H$:落差 [$m$]
$h$:損失水頭 [$m$]
$η_t$:水車効率
$η_g$:発電機効率
$η_p$:ポンプ効率
$η_m$:モータ効率

水車

水車の分類

  • 衝動水車:位置水頭を速度水頭に変えて水車に作用させる。衝撃でランナ(羽根車)を回転させる。
  • 反動水車:位置水頭を圧力水頭に変えて水車に作用させる。水圧でランナ(羽根車)を回転させる。
  • 立軸形水車:水車軸が鉛直。大容量低速で用いる水車。スラスト軸受が上部の発電機回転部の重量とスラスト(ランナを下部に押す水力)を支える。
  • 横軸形水車:水車軸が水平。

ペルトン水車

衝動水車。
ノズルから出た水がバケットに当たる衝撃でランナ(羽根車)が回転する。
ランナ部で圧力水頭を用いないので、水流が空気中を通過する。
ニードル弁によって水量を調整する。
比速度が小さいので高落差が必要である。
流量が変化しても効率が落ちないので、負荷変動の激しいところに適している。

フランシス水車

反動水車。
ケーシングからの横方向の水流でランナ(羽根車)を回転させ、軸方向に出る。
ガイドベーン(案内羽根)によって水量を調整する。
比速度が小さく、中・高落差に適している。適用できる落差が最も広い。
高落差ほど比速度は小さくなり、ペルトン水車より小型で経済的である。
構造が簡単で価格が安い
負荷変動の少ないところに適している。

プロペラ水車、カプラン水車

反動水車。
フランシス水車と構造は同じだが、ランナ(羽根車)がプロペラ羽根の形をした水車。
軸方向の水流で羽根を回す。
プロペラ羽根は固定式と可動式のタイプに分かれ、可動式を「カプラン水車」と呼ぶ。
羽根の角度を調整することで効率の低下が少なくなる。
比速度が大きく、低落差に適している。
流量が大きいところに適している。
構造は簡単で分解もできる。

斜流水車

反動水車。
フランシス水車とカプラン水車を組み合わせた構造の水車。
比速度が大きく、低落差に適している。フランシス水車とプロペラ水車の中間落差で使用される。
比速度が大きいので、回転速度を高くできる。
発電機が小形になる。土木工事費が高い。
フランシス水車のほうが使い勝手が良いので、あまり多くは使われない。

クロスフロー水車

衝動水車と反動水車の特性を併せ持つ水車。
少水量、低落差で使用する。

<画像出典:中部電力>

水車の比速度

水車の形と運転状態を相似に保ったまま大きさを変えたときに、単位落差1mで単位出力1kWの出力をする水車の1分あたりの回転速度。
比速度は以下の順となる。ペルトン(12~23)<フランシス(60~300)<斜流(120~350)<プロペラ(250~850) 。
有効落差(m)は以下の順となる。ペルトン(250以上)>フランシス(50~600)>斜流(40~200)>プロペラ(5~80) 。
比速度と落差の関係はおおよそ反比例になる。(比速度が大きい→低落差でも早く回転する)
比速度によって水車の選定を行うが、誤ると効率の低下、振動やキャビテーションの原因となる。
ペルトン水車の比速度はノズル1個、反動水車はランナ1個あたりの出力で算出する。

$\displaystyle N_s=N×\frac{\sqrt{P}}{H^{\frac{5}{4}}} $

$N_s$:比速度 [$mkW$]
$N$:水車の回転速度 [$min^{-1}$]
$P$:水車の出力 [$kW$]
$H$:有効落差 [$m$]

水車で生じる現象

キャビテーション

水車近辺の急激な流速(圧力)の変化によって気泡が生じる現象。
流速が増加すると圧力が低下し、飽和水蒸気圧以下になると水が蒸発して気泡が発生する。
この気泡が圧力の高い所に到達すると押しつぶされる。これにより、壊食・振動・騒音などが起こる。
防止するには負荷を一定にしたり、吹出し高さを低くする。

水撃作用(ウォーターハンマ)

水車に流入する水を急に遮断すると、流水のもつ運動エネルギーのために水圧管路内に高い圧力が発生する。この圧力が水圧管の両端で往復伝搬して衝撃を与えてしまう現象。
水車入口弁の急閉などで流速変化が急激なときや、水圧管路が長いほど大きくなる。
防止するには、水車入口弁の閉鎖時間を長くしたり、衝撃を吸収するサージタンクを設ける。
ぺルトン水車には、そらせ板(デフラクタ)をつけ、負荷急減などの非常時に水の方向をそらせてバケットに当たらないようにしてから、ニードルを徐々に閉めて水撃作用を緩和する。
反動水車には、水の圧力を逃がす制圧機を設けて水撃作用を緩和する。

水車の構成

吸出し管

反動水車(フランシス水車など)のランナ出口と放水面の間に設置した管で、この管の長さを吸出し高さとよぶ。
流水を満水に溜めてから放流することで、ランナの圧力を下げ、流水の運動エネルギーを位置エネルギーとして回収して、水車効率を高める。
理論上は10mまでとることができるが、キャビテーションを避けるため6~7mとする。
鋼板やコンクリートで作られる。円錐形、エルボ形がある。

水車入口弁

水車の入口(水圧管の出口)にあり、事故や点検時に流水をとめるもので、流量を調整するものではない。
最近は入口弁を省いた発電所もある。

  • ちょう型弁:円形の弁体を回転させて開閉する。中低落差に向き、構造が簡単である。
  • スルース弁:管の上部から板状の弁体を上げ下げして開閉する。高落差に向き損失水頭が少ない。
  • ロータリー弁:管状の弁体が回転させて開閉する。高落差に向き損失水頭が少ない。

調速機(ガバナ)

出力負荷が減少すると水車の回転速度が上昇して発電機周波数が変化するので、周波数を規程値に保つ為に回転速度の調整を行う装置。


Ver1.0.4

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