継電器
制御量を監視し、電流を流すことで遮断器等のスイッチ接点のON/OFFを制御する。
引き出し信号を送信して遮断器を操作するので、引き出し装置とも呼ばれる。
- 保護継電器(保護リレー):制御量の異常を監視し、故障した電路を切り離す信号を送出する。
- 制御継電器:正常時の特定の入力を監視し、他の装置を制御する信号を送出する。
- 調整継電器:制御量の標準値との差を監視し、規定範囲内に収まるように制御する。
- 補助継電器:上記継電器の不足を補うもの。接点数の追加や、タイマーでの信号送出など。
電流監視
過電流継電器(OCR)(51)
電路の短絡や負荷の過負荷による過電流を計器用変流器(CT)で検出し、遮断器を開放する。
過電流継電器の設定方法は「過電流継電器(OCR)の整定」を参照。
CT内蔵なので、タップを変更する場合は、変更したいタップ穴にネジを差し込んだ後に前のタップを抜かないと、二次側開放となる。
誘導形:内蔵された誘導円板やコイルなどに生じる渦電流が相互作用して動作する。
静止形:動作要素としてトランジスタが採用されている。
不足電流継電器(UCR)(37)
整定値以下の電流を検出する。発電機の界磁電流不足の監視などで利用する。
電圧監視
過電圧継電器(OVR)(59)
整定値以上の電圧を検出する。
不足電圧継電器(UVR)(27)
整定値以下の電圧を検出する。
停電や短絡事故を検出する。
受電VCBの遮断、自家発起動のトリガとなる。
地絡監視
地絡継電器(GR)
地絡を零相変流器(ZCT)で検出し、遮断器を開放する。(整定値と時間を設定する)
地絡過電流継電器(OCGR)(51G)
零相電流が設定値以上になると動作する継電器。地絡事故の検出に用いる。
対地静電容量が小さい場所で用いる。
地絡過電圧継電器(OVGR)(64)
大地と電路との間の絶縁が極度に低下して、アークもしくは導体によって繋がる、いわゆる地絡事故時に発生する零相電圧を検出して動作する。
6.6kV母線に設置されている。
地絡方向継電器(DGR)(67G)
零相電圧(ZPD)と零相電流(ZCT)で地絡方向を検出する。地絡事故の判定で使用する。
他の需要家の地絡電流が逆流して零相電流となった場合の、もらい事故の不必要動作(誤動作)を防ぐことができる。
地絡電流の大きさだけでなく、零相電圧と零相電流の位相(方向)を検出して、自構内の事故かどうかを判断して動作する。
自構内の地絡事故の場合、事故電流は電源側→地絡地点への地絡電流(電圧と同位相)+対地静電容量の電流(電圧に対して90°進む)の合成電流となり、零相電圧を基準とすると零相電流の位相は進んだものとなる。
もらい事故の場合、地絡電流は無く、対地静電容量の充電電流が他の需要家の地絡地点へと流れる。(電圧に対して90°遅れる逆位相となる)
従って、事故回線では事故電流が電源側→負荷側に流れ、健全回線では事故電流が負荷側→電源側に流れる。
動作域の設定では、基準の零相電圧に対して事故零相電流の位相を進み30°とすると、零相電流が遅れ60°~進み120°(180°の範囲)の場合が継電器の動作域となり、自構内の事故と判断して動作する。
需要家の構内のケーブルが極めて小さい場合は、対地静電容量が小さいので不必要動作の発生は少ない。
変圧器監視
比率差動継電器(RDR)(87)
一次側と二次側の電流の変化を検出し、変圧器の内部故障の検出に使用する。
発電機の固定子巻線の短絡検出にも使用される。
差電流の大きさではなく、差電流の通過電流に対する比率が設定値以上になると動作する。
差動継電器により、タップ切換時などの誤作動を防ぐことができ、故障検出感度および動作速度を高くできる。
変圧器一次側のCTの一次電流+二次側のCTの二次電流が流れる位置に動作コイルがあり、正常時は大きさと位相が同じ逆電流の和となり、動作コイルの電流値は0となる。
変圧器・発電機の巻線の短絡や層間短絡によって、大きな差電流が動作コイルに流れると動作する。
誤差電流の誤動作防止の為、抑制コイルが一次、二次側回路にそれぞれ存在する。
三相変圧器の場合は変圧器の結線によって一次側とニ次側に位相差が生じる。位相差による誤動作を防止する為、YーΔ・ΔーY結線は変圧器の結線とCTの結線を逆に接続して位相を合わせる。
ブッフホルツ継電器
変圧器の内部故障の検出に使用する。
変圧器本体とコンサベータ(絶縁油の熱による膨張・収縮を空気袋によって吸収する装置)の間に浮子が2個付けられており、浮子の変化によって機械的に動作する。
上の浮子は絶縁劣化によるガスの粒で動く。
下の浮子は巻線の短絡で生じる油流で動く。
圧力の異常上昇を防ぐ為の放圧弁などの放圧装置が付いている。
温度継電器(TR)
変圧器の温度(油温度や巻線温度)が一定値を超えたとき動作する。
ダイヤル温度計や巻線温度指示計で監視する。
その他の監視
選択継電器(SR)
平行2回線の電流または電力潮流の差を検出し、故障が生じた回線を選択する。
電力継電器(PR)
整定値以上または以下の電力を検出する。
制御用継電器として使用される。
周波数継電器(FR)
整定値以上または以下の周波数を検出する。
発電機などの保護として使用される。
逆相継電器(NPR)
逆相電圧または逆相電流を検出する。
電圧検出器(VD)
線路電圧の有無の検出する。
継電器の図記号
計器用変成器
高電圧や高電流を、指示計器や継電器用の電圧・電流に変換する機器の総称。
計器用変圧器(VT)(PT)
高電圧を安全かつ正確に測定するために、変圧器の原理で高電圧を低電圧に変換する。
二次側は110V電圧となり、合計容量が定格負担[VA]以下となるように設置する。
回路に並列に接続する。三相3線式回路にはVTを2台V結線で使用する。(中性線は2台とも接続するので計3線となる)
二次側を短絡してはならない。(一次側は定電圧源なので、二次側に電圧がかかっている状態で抵抗が0となり過電流(I=110/0)が流れ、焼損する)
一次側にヒューズが付いていて、変圧器の絶縁破壊などで電源側への波及事故を防止する。
指示計器は一次側の電圧表示になっている。
計器用変流器(CT)
大電流を安全かつ正確に測定するために、変圧器の原理(巻数比の逆数)で高電流を低電流に変換する。
二次側は5A電流となり、合計容量が定格負担[VA]以下となるように設置する。
回路に直列に接続する。三相3線式回路にはCTを2台使用して、2相分の電流値を計測する。(残りの1相はベクトルの合成で求まる)
回路に直接接続しない、貫通形もある。(一次側の電線をCTの穴に通してクランプメーターのように使用する)
二次側を開放してはならない。電流計交換時は二次側を短絡して行う。(一次側は定電流源なので、二次側に電流が流れている状態で抵抗が∞となり過電圧(V=∞×5)となり、焼損する)
100/5AのCTの場合、一次側が100Aの時二次側は5Aとなる。 指示計器は一次側の電流表示になっている。
- 巻線形:変圧器と同じように、一次側の電線と一次巻線を直列接続する。
- 貫通形:一次側の電線(一本の導体)をクランプメーターのようにCTの穴に通して、一次巻線として使用する。
- ブッシング形:貫通形と同様の形状で、CTの穴に一次側の電線のブッシング導体(絶縁物の管)を取り付けて一次巻線とする。
狭い箇所で使用できるので、特別高圧の閉鎖型変電設備に使用される。
計器用変流器(CT)の選定
負荷電流の1.5倍を目安とする。
電動機回路の場合は始動電流を考慮して、負荷電流の2倍~2.5倍を目安とする。
過電流定数
過電流(事故電流)を測定する用途の場合に考慮する。その定数倍までの電流であれば、計測誤差が10%以内となる倍数を表す。
過電流定数が10の場合、一次電流の10倍までは誤差10%以内となる。
過電流強度
CTの一次側に対して定格電流を超える電流が流れたとき、機械的・電気的に耐えられる限度を定格電流の倍率で表す。(一般的には40倍)
短絡電流12000AでCTの定格一次電流が200Aだった場合、12000÷200=60なので、過電流強度は60より大きいものを選定する必要がある。
ターン
貫通形で、CTの穴に貫通する電線の巻数を表す。
1本を通す場合は通常の変流比の使用となり、100/5AのCTの場合、一次側が100Aの時二次側は5Aとなる。
例えば2ターン(巻数2)にした場合は、一次側の電流が50Aの時二次側は5Aとなる。
<画像出典:富士電機>
零相変流器(ZCT)
漏電電流(地絡電流)を検出する。
電線をZCTの穴に通して電流の行きと帰りの差を検出する。
変流器の一次側に三相3線を一括して挿入している。3線の電流値が平衡していれば二次側に電流は流れないが、1線でも地絡して平衡が崩れると一次側に電流が流れて電流分の磁力の差が生じ、二次側に電流が流れて漏電を知らせる。
高圧ケーブルのシールド(外装内側の金属遮蔽層)は接地することになっており、高圧ケーブルの漏電電流はシールドを通って接地線に流れる。従って高圧ケーブルをZCTの穴に通しても、ケーブルの電流とシールドの地絡電流が相殺されて0となり、漏電電流を検出できない。高圧ケーブルでは、ZCTに接地線も通して漏電電流が検出できるようにする。
零相電圧検出装置(ZPD)
配電系統において零相電圧を高い精度で監視、検出するための装置。
中性点の対地電圧を零相電圧といい、通常は0Vだが1線が地絡すると三相の平衡が崩れ発生する。
各相のコンデンサと、直列接続した零相電圧検出用コンデンサで構成され、地絡発生時に生じる大きな電圧を分圧して零相電圧に比例した電圧を取り出すものである。
6kV配電系統では中性点が非接地なので、地絡電流が微細で負荷電流との区別が難しく、地絡故障時の線間電圧の変動もほとんどないため、零相電圧を地絡の検出で使用する。
零相電圧
Ea、Eb、Ecを各相の対地電圧とすると、零相電圧V0=(Ea+Eb+Ec)/3が成り立つ。
三相対象の場合、各相の電圧のベクトル和はEa+Eb+Ec=0なので、零相電圧V0=0となる。
仮に三相6600V(一相6600/√3V)の3線中の1線(Ea)が地絡すると、残りの2線の対地電圧(Eb、Ec)は線間電圧の6600Vまで上昇する。
残りの2線の電圧(Eb、Ec)のベクトル和の電圧は6600×cos30°×2=11418Vとなる。
零相電圧V0=(Ea+Eb+Ec)/3より、V0=(Eb+Ec)/3=11418/3=3806V(≒3810V)となる。
電力需給用計器用変成器(PCT)(VCT)
受電設備の断路器電源側に取り付け、電力会社からの受電電力量を計測するために取引用電力量計とセットで設置される。電力会社の財産となる。
試験用開閉器
電力量計を無停電で交換できるように、計器用変成器の二次側配線と電力量計との中間に設ける端子器具。
計器用変成器と電力量計の間に7端子(VTのP1・P2・P3、CTの1S・1L、3S・3L)を7心ケーブルで接続する。(1L・3L・P2は接地する)
計器交換時はCT端子は端子器具内で短絡させて、VT端子は開放し、計器側を切り離して無停電状態で計器を交換できるようにする。
接地形計器用変圧器(GPT)(EVT)
対地・線間電圧・電路中性点間の電圧の計測、三相回路の地絡事故時の零相電圧の検出、出力に使用する計器用変圧器。
非接地高圧配電線で、1線地絡事故を検出する為に配電用変電所などに接続する。
一次側の中性点を接地し、二次側をオープンデルタ結線し、開路部分に制限抵抗を接続して、地絡が起きた場合に制限抵抗間に電圧が生じることで零相電圧を検出する。
試験用端子
計器用変流器、零相変流器、計器用変圧器などの試験や計測を簡易に行うために使用される。
試験用端子を計器用変成器の回路に内蔵しておけば、計器や継電器類を接続したまま試験を行うことができる。
VT用のVTT形端子、CT用のCTT形端子、ZCT用のZTT形端子などに分類される。
Ver1.0.1