接地

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接地の種類

接地は、電気設備機器や電路と大地を電気的に接続し、感電・漏電災害・機器の損傷などを防止するものである。

保護接地(機器接地)

感電や漏電火災を防ぐ目的で、電気機器・外箱などから施す接地で、大地を経由して変圧器の中性線に漏電電流が流れる。
接地の種類は電圧によって区分され、接地抵抗値も規定されている。(電技解釈第17条)

  • A種接地:特別高圧・高圧で、接地抵抗10Ω以下
  • C種接地:低圧300V超で、接地抵抗10Ω以下
  • D種接地:低圧300V以下で、接地抵抗100Ω以下

但し、C種・D種接地抵抗は、0.5秒以内に電路を遮断する装置がある場合は500Ω以下でよい。
計器用変成器の二次側には、高圧でD種接地、特別高圧でA種接地を行う。

系統接地(B種接地)

特別高圧・高圧電路と低圧電路とを結合する変圧器の低圧側中性点に施す接地。(中性点接地)
低圧側が300V以下の場合で、Δ結線などで中性線接地が難しい場合は、低圧側の任意の1端子を接地する。
B種接地線には、常に回路の対地静電容量による漏れ電流(lo)が流れており、その上限は変圧器二次側の定格電流の1/2000以下の規定(低圧電線路の絶縁性能)だが、一般的に50mAを上限としてそれ以上を漏電(絶縁破壊)として監視している。

B種接地の目的

  • 高低圧混触時に二次側の電位上昇を抑制し、線路や機器の絶縁性能を軽減する。
  • 低圧側地絡時に接地経路に地絡電流が流れることで、健全相電圧の上昇を抑制する。
  • 接地することで大きな地絡電流が流れるため、地絡継電器・漏電遮断器の確実な動作が行える。

B種接地抵抗値

B種接地の接地抵抗値RBは、高圧側の1線地絡電流Igによって規定される。(電技解釈第17条)
混触した時に低圧電路の電位上昇を150V以下になるようにする。

  • RB<=150/Ig
  • RB<=300/Ig(低圧電路の対地電圧が150V超で、高圧側に2秒以内に自動遮断する装置がある場合)
  • RB<=600/Ig(低圧電路の対地電圧が150V超で、高圧側に1秒以内に自動遮断する装置がある場合)

電線路の地絡電流

絶縁電線路とケーブル電線路の地絡電流を求める。
地絡電流Ig=1+ケーブル以外の計算式+ケーブルの計算式は以下となる。
(電験三種の試験では、以下の公式は問題文に記述有り)

$\displaystyle I_g=1+\frac{\displaystyle\frac{V’L}{3}-100}{150}+\frac{\displaystyle\frac{V’L’}{3}-1}{2} $

$I_g$:1線地絡電流 [$A$]
$V’$:電路の公称電圧(6.6kVなら6kV) [$kV$]
$L$:電路の電線延長 [$km$]
$L’$:電路のケーブル延長 [$km$]

三相3線式(架空電線)が3回線でこう長10kmなら、3本の電線が3回線なので、L=3×3×10=90km
ケーブル(地中電線)が2回線でこう長10kmなら、1本のケーブルが2回線なので、L’=1×2×10=20km
V’は電圧を1.1を割ったもので単位は[kV]、長さの単位は[km]である。
地絡電流Igは、小数点以下切り上げとする。

短絡接地(作業用接地)

停電作業中の安全を確保するために電路に施す接地。
取り付けに先立ち、短絡接地器具の取り付け箇所の無充電を検電器で確認する。
取り付け中は、「短絡接地中」の標識をして注意喚起を図る。
残留電荷による危険を生じるおそれのあるものについては、残留電荷を確実に放電させる。
取り付け時は、接地側金具を接地線に接続してから、電路側金具を電路側に接続する。
取り外し時は、電路側金具を外してから、接地側金具を外す。

短絡接地金具
放電用接地棒

接地工事

接地の構成

接地抵抗

接地電極と大地の間の抵抗。
大部分は大地自身の抵抗であり、接地抵抗計によって測定する。

接地線

  • A種接地:引張強さ1.04kN以上の金属線、直径2.6mm以上の軟銅線。(避雷器は14mm2以上)
  • B種接地:引張強さ2.46kN以上の金属線、直径4mm以上の軟銅線。
  • C種・D種接地:引張強さ0.39kN以上の金属線、直径1.6mm以上の軟銅線。

接地極

地中に埋設・打込みするもので、一般的に銅や鉄を使用する。
アルミは腐食性が高い金属なので使用しない。
A種又はB種接地の接地線を人が触れる恐れがある場所に施設する場合、以下に従う。

等電位ボンディング

2か所以上の接地極で接地間の電位差が生じ、火花放電や絶縁破壊の発生が無いように、建築物共通の接地極を設けて、各機器から共通接地極へ接地線を並列接続するもの。
電線や通信線は他の建物と接続されており、建物間の接地に電位差が発生するため、直接接続せずに避雷器を介して接続する。

接地の規定

接地工事の省略(機械器具の鉄台及び外箱の接地)

以下の場合は設置工事の省略ができる。(電技解釈第29条)

  • 使用電圧が直流300V又は対地電圧150V以下の機械器具を乾燥した場所に施設する場合。
  • 低圧用の機械器具を乾燥した木製の床、これに類する絶縁性の物の上で取り扱う場合。
  • 低圧、高圧用機械器具でを人が触れるおそれのないように木柱、これに類するものの上に施設する場合。
  • 鉄台又は外箱の周囲に適当な絶縁台を設ける場合。
  • 外箱のない計器用変成器が、ゴム、合成樹脂その他の絶縁物で被覆したものの場合。
  • 2重絶縁の構造の機械器具の場合。
  • 低圧用機械器具の電源側に絶縁変圧器を施設し、負荷側の電路を接地しない場合。
  • 水気のある場所以外の場所に施設する低圧用機械器具に電気を供給する電路に、漏電遮断器(15mA、0.1秒)を施設する場合。

接地工事の特例

  • 金属体-大地の電気抵抗値が10Ω以下の場合は、C種接地工事をしたものとみなす。
  • 金属体-大地の電気抵抗値が100Ω以下の場合は、D種接地工事をしたものとみなす。
  • 大地との間の抵抗値が2Ω以下の建物の鉄骨その他金属体は、A種・B種接地工事の接地極として使用することができる。

非接地方式の電路

変圧器の低圧側の中性点を設置しない電路では、地絡電流の回路が構成されないため、漏電での感電事故は起こらない。但し、非接地の電路が長くなると、対地静電容量が大きくなり充電電流が増加して感電が起きる可能性がある。
D種接地が難しい水中照明などの配線では、絶縁変圧器(B種接地をしていない変圧器)を使用する。

送配電の系統接地方式

非接地方式

接地しない。
高圧6.6kV配電線で使用している。
短絡電流の抑制はできない。

  • インピーダンス:∞
  • 地絡電流:小さい。
  • 通信線への誘導:小さい。
  • 健全相の電位上昇:大きい。
  • 異常電圧:大きい。

直接接地方式

中性点を直接に導体で接地する。
超高圧187kV以上で使用している。
中性点に流れる電流が大きいので電磁誘導障害が大きく、市街地などの下位系統では用いない。

  • インピーダンス:0
  • 地絡電流:非常に大きい。
  • 通信線への誘導:非常に大きい。
  • 健全相の電位上昇:小さい。
  • 異常電圧:小さい。

抵抗接地方式

中性点を抵抗を通して接地する。
特高33kV、22kV、66~154kVで使用している。
地中送電線の特別高圧ケーブルで、中性点抵抗と並列に補償リアクトルを接続する。地中送電線は静電容量が高いため、抵抗接地で地絡電流を制限しても大きな充電電流が加わってしまう。そこで、並列にリアクトルを接続して、充電電流分の低減をはかる。(補償リアクトル接地方式)

  • インピーダンス:100~1000Ω
  • 地絡電流:中程度。
  • 通信線への誘導:中程度。
  • 健全相の電位上昇:中程度。
  • 異常電圧:中程度。

消弧リアクトル接地

中性点をリアクトルを通して接地する。
66~110kVで使用している。
電路と大地の間の静電容量と並列共振するリアクタンスのリアクトルを接続することで、地絡電流を0に近づける。並列共振ωL=1/3ωCが成り立つリアクタンスLを選定する。
地絡電流が非常に小さいため、1線地絡時の地絡アークを自然消滅させて、線路を遮断せずにそのまま電力の供給を継続できる。
設備費が高く調整が難しいのであまり採用されない。

  • インピーダンス:jωL
  • 地絡電流:非常に小さい。
  • 通信線への誘導:非常に小さい。
  • 健全相の電位上昇:大きい。
  • 異常電圧:中程度。

系統接地と等価回路

非接地の地絡

絶縁破壊により地絡抵抗Rgより流れる地絡電流Igは、対地静電容量3Cを介して戻る。
1線地絡時の等価回路は、対地電圧Eと地絡抵抗Rgと対地静電容量3Cの直列回路となる。
地絡抵抗Rgを考えない場合は、地絡抵抗Rgの無い回路となる。

    一相等価回路

$\displaystyle I_g=\frac{\displaystyle\frac{V}{\sqrt{3}}}{\sqrt{{R_g}^2+\displaystyle\left(\frac{1}{3ωC}\right)^2}} $

配電側と需要側で対地静電容量が二つある場合

配電線側静電容量3C1+需要側静電容量3C2の並列接続と考える。
地絡抵抗Rgが無視のときの等価回路は以下となる。

$\displaystyle C=3C_1+3C_2 $

$\displaystyle I_g=\frac{E}{X_C}=\frac{\displaystyle\frac{V}{\sqrt{3}}}{\displaystyle\frac{1}{3ω(C_1+C_2)}} $

抵抗接地の地絡

絶縁破壊により地絡抵抗Rgより流れる地絡電流Igは、対地静電容量3Cと接地抵抗RBを介して戻る。
1線地絡時の等価回路は、対地電圧Eと地絡抵抗Rgと、対地静電容量3Cと接地抵抗RBの並列回路を直列接続した回路となる。
地絡抵抗Rgを考えない場合は、地絡抵抗Rgの無い回路となる。

    一相等価回路

$\displaystyle \dot{Z}=R_G+\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{R_B}+j3ωC} $

接地抵抗の電流IBは、分流の式より以下となる。

$\displaystyle \dot{I_B}=\frac{j\displaystyle\frac{1}{3ωC}}{R_B+j\displaystyle\frac{1}{3ωC}}\dot{I_g} $

消弧リアクトル接地の地絡

絶縁破壊により地絡抵抗Rgより流れる地絡電流Igは、対地静電容量3Cと消弧リアクトルLを介して戻る。
1線地絡時の等価回路は、対地電圧Eと地絡抵抗Rgと、対地静電容量3Cと消弧リアクトルLの並列回路を直列接続した回路となる。
地絡抵抗Rgを考えない場合は、地絡抵抗Rgの無い回路となる。
共振状態の場合(3ωC=1/ωL)地絡電流Igは0となり、消弧となる。

    一相等価回路

$\displaystyle \dot{Z}=R_G+\frac{1}{j\left(3ωC-\displaystyle \frac{1}{ωL}\right)} $

B種接地の漏れ電流

B種接地線には、地絡発生時以外でも対地静電容量による漏れ電流が流れている。
接地抵抗RBより戻る漏れ電流IBは、対地静電容量3Cを介する閉回路に流れる。
等価回路は、対地電圧Eと接地抵抗RBと対地静電容量3Cの直列回路となる。

    一相等価回路

$\displaystyle I_B=\frac{\displaystyle\frac{V}{\sqrt{3}}}{\sqrt{{R_B}^2+\displaystyle\left(\frac{1}{3ωC}\right)^2}} $

変圧器の混触によるB種接地への地絡電流

高圧側からの地絡電流Igが二次側の接地抵抗RBより流れ、対地静電容量3Cを介して戻る閉回路となる。

    一相等価回路

$\displaystyle I_g=\frac{\displaystyle\frac{V}{\sqrt{3}}}{\sqrt{{R_B}^2+\displaystyle\left(\frac{1}{3ωC}\right)^2}} $

D種接地の等価回路

人体の抵抗RHは条件や場所によるが、およそ1500~5000Ωである。
感電防止のためD種接地を行うが、D種接地抵抗RDが小さいほど接触電圧Vは小さくなり、感電の危険は小さくなる。
Vは大地と接地点(金属側)の電位差(対地電圧)である。
D種接地抵抗RDが人体の抵抗RHより小さければ、人体側に電流は流れない。
人体抵抗RHがない場合は省略し、RB+RD直列の等価回路とする。

$\displaystyle I_g=\frac{E}{R_B+\displaystyle \frac{R_DR_H}{R_D+R_H}} \ [A] $

$\displaystyle I_H=\frac{R_D}{R_D+R_H}I_g \ [A] $

$I_g$:地絡電流 [$A$]
$I_H$:人体に流れる電流 [$A$]
$E$:対地電圧 [$V$]
$V$:接触電圧 [$V$]
$R_D$:D種接地抵抗 [$Ω$]
$R_B$:B種接地抵抗 [$Ω$]
$R_H$:人体の抵抗 [$Ω$]


Ver1.0.3

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