送配電設備

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送配電設備の構成

架空電線路

電柱(木柱、鉄柱、鉄筋コンクリート柱)や鉄搭などの支持物を用いて電線路を構築するもの。

地中電線路

地面の下にケーブルを用いて電線路を構築するもの。
地中電線路は架空線線路に比べ、景観が良い、外的破損事故が少ないなどの利点があるが、工費が高く、地下設備のため補強などの改造が難しい。
線間距離が小さく、ケーブルを使用するため静電容量が大きくなり、インダクタンスは小さくなる。

直接埋設式

トラフやボックスにケーブルを収めてそのまま埋める方式。
工事費が安く、工期が短い。
外傷を受けやすく、埋設するのでメンテナンスがしにくい。
圧力を受ける場所は1.2m以上、それ以外は0.6m以上の深さに埋設する。(電技解釈第120条)

管路式

管路やマンホールを地中に埋めておき、マンホールからケーブルを入れて接続する方式。
増設や撤去が比較的簡単に行えて、外傷を受けにくい。
他の方式に比べ放熱が悪く、送電容量が制限される。設置したマンホールで接続を行うので敷設工事の自由度に制約が生じる。

暗きょ式

暗きょと呼ばれるコンクリート壁で囲まれた空間を地下に埋設し、その中に電力ケーブルや他の配管などを納める方式。
メンテナンスがしやすい。
工事費が高く、工期が長い。

埋設表示

地中電線路が埋設されている掘削工事での事故防止のため、高圧または特別高圧の地中電線路の管またはトラフの表面に、物件の名称・管理者名・電圧を2mの間隔で表示しなければならない。
ただし、需要場所の構内に施設する高圧地中電線路で、埋設長さが15m以下のものは表示しなくてもよい。(電技解釈第120条)

送電線路

発電所相互間、変電所相互間または発電所と変電所との間の電線路およびこれに付属する開閉所そのほかの電気工作物をいう。
特別高圧(一般に15万〜50万V)の電路設備。
架空電線では、鋼心アルミニウムより線(ACSR)の裸電線を使用し、空気が絶縁体として用いられている。(超高圧送電線の場合、送電線を念入りに絶縁したとしても、接触・接近しただけでも感電してしまうため無意味である)

送電容量

送電容量を決める基本的要因は、電線の許容電流と安定度である。
安定度は、交流によるリアクタンスや静電容量、変圧器の特性の影響などで、送電電力や位相などが時間的に脈動する影響度である。
送電容量を増加させる方法としては、断面積が大きい電線や耐熱性の高い電線を用いることで、電線の許容電流を大きくする方法がある。
超高圧送電線では、送電線の電線本数を2~6本の導体で構成する多導体方式が採用されている。
多導体方式は、表面積が増えるため静電容量が増加しインダクタンスが下がるので、線路リアクタンスも減少して送電容量が2割程度増加する。
また、導体間に接触を防ぐスペーサーを設けるため、コロナ放電を防止できる。

変電所

送配電に適した電圧に変換する施設。
種類として、昇圧用・降圧用変電所、半自動・全自動変電所、自家用・事業用変電所、屋内・屋外変電所などに分類される。
発電所から送配電される変圧の流れは、発電所(50万~27.5万V)→超高圧変電所(15.4万V)→一次変電所(6.6~7.7万V)→二次変電所・中間変電所(3.3~2.2万V)→配電用変電所・配電塔(6600V)→柱上変圧器(100/200V)となる。

変電所の役割

  • 過負荷や事故時に系統の切換えを行う。(電力潮流の調整)
  • 調相設備(低負荷時は分路リアクトルの投入、過負荷時は電力用コンデンサの投入)の開閉により無効電力の調整を行う。
  • 配電線路の電圧調整として、負荷時電圧調整器(LRA)や負荷時タップ切換変圧器(LRT)を使用している。
  • 配電線路の短絡・地絡保護のために、過電流継電器と地絡方向継電器が設けられている。需要家はこれらの継電器と保護協調を取らなければならない。

配電線路

変電所から需要家に至るまでの電線。
電線は安全性が高いように絶縁被覆されている。
高圧配電線路(線間電圧6.6kV系統)の配電線路には、一般的に三相3線式Δ結線の中性点非接地方式が採用されている。
高圧架空配電線の電圧降下対策として、高圧自動電圧調整器(SVR)を線路の途中に設置している。

変換所

周波数や直流交流の変換を行い、電力系統間を接続する施設。

  • 周波数変換所:東日本(50Hz)と西日本(60Hz)の連係。
  • 交直変換所:直流送電において交流直流変換をする。

送配電方式

樹枝状方式(放射式)

配電用変圧器ごとに樹枝状に低圧配電線を引き出す方式。
利点は、構成が簡単で保守運用が容易である。
欠点は、フリッカ(負荷変動による電圧のゆらぎ)が出やすい。負荷の増加に対する融通性に乏しい。信頼性が低い。

低圧バンキング方式

同一の特別高圧・高圧幹線に接続されている2台以上の変圧器の二次側を低圧幹線で並列に接続する方法。
利点は、低圧幹線の電圧降下、電力損失を減少できる。
欠点は、1台の変圧器が故障したときに他の変圧器が過負荷となり、高圧ヒューズが連鎖的に切れて全体が停電するカスケーディングを起こすおそれがある。そのため、連系区分ヒューズの動作時間を高圧一次側ヒューズより短くする必要がある。

ループ方式

結合開閉器を設置して配電線をループ上にする方式。
利点は、信頼性が高い。
欠点は、建設費が高い。
無停電切換時(ループ状態になる時)、連系開閉器間の電位差(区分開閉器と連系開閉器の間の負荷が大きい場合も電位差となって現れる)、連系開閉器間の位相差、ループ状態での短絡容量(ループ電流値に耐えられるか)の留意が必要である。

ループ配電線路でのループ運転

ループ配電線路で開閉器が閉じた時のループ運転時の関係は以下となる。

$\displaystyle \dot{I}_a=\dot{I}_A+\dot{I} $

$\displaystyle \dot{I}_b=\dot{I}_B-\dot{I} $

$\displaystyle \dot{Z}_a\dot{I}_a=\dot{Z}_b\dot{I}_b $

スポットネットワーク方式

異なる2回線以上の高圧配電線に接続された変圧器の2次側を並列に接続した低圧配電方式。
利点は、高圧配電線の単一故障時も無停電受電でき、信頼性が極めて高い。
欠点は、ネットワーク母線に事故が発生すると受電不可になる。

障害時の自動機能

  • 無電圧投入特性:高圧側1線が復電し、ネットワーク母線が全停電状態の場合に、ネットワークプロテクタを自動投入する。
  • 差電圧投入特性:高圧側が1線が復電し、ネットワーク母線と差電圧がある場合(別の変圧器から受電している状態)に、逆電流が流れないように調整してネットワークプロテクタを自動投入する。
  • 逆電力遮断特性:高圧側の事故などで、ネットワーク母線から逆電流が流れた場合に、ネットワークプロテクタが開放され自動遮断する。

低圧ネットワーク方式(レギュラーネットワーク方式)

高圧幹線からフィーダを引き出し、各フィーダからネットワーク変圧器とネットワークプロテクタを介して、低圧幹線は格子状に接続して信頼性を高める方式。
負荷側の密度が高い場所で使用される。
利点は、1つのフィーダが故障しても他のフィーダで電気を供給し、無停電を実現できるので信頼性が極めて高い。
欠点は、建設費が非常に高い。

直流送電

直流で送電を行う方式。

直流送電の利点

  • 交流と比較して高価な変換設備が必要だが、安定度が高く送電線路のコスト(導体本数が2条でよい)が小さいので、送電距離が長くなれば経済的である。
  • リアクタンスによる無効電力や誘導損の問題がないので電力損失が少ない。電圧降下・上昇が無い。
    直流間は内部インピーダンスが大きいので、交流系統を直流で連系すると系統のインピーダンスが大きくなり、短絡容量(短絡電流)は減少する。
  • ケーブルによる送電でも静電容量による充電電流がない。充電電流の影響がないので地絡電流が少なく、アークホーンを省くことができる。
  • 電圧の最大値と実効値が等しいので、同実効電圧の交流よりも電圧が小さくなり、交流に比べて絶縁強度(耐電圧値)は小さくできる。絶縁が容易で絶縁距離が少なくてすむ。
  • 異なった周波数の系統間連系ができる。
  • 送電容量を決める場合の安定度の制約がない。

直流送電の欠点

  • 高周波や漏れ電流での大地の電食の対策が必要である。
  • 交流のような零点が無いので、高電圧・大電流の遮断が難しい。
  • 変圧器による昇圧や降圧が簡単にできない。
  • 交流と直流を変換する交直変換所が必要となる。

交直変換装置

交流と直流を変換する装置。

  • 他励式:サイリスタなどのデバイスを利用するもの。変換時に大きな交流系統の電源が必要で、安定化のための調相設備・高調波フィルタが必要となる。
  • 自励式:IGBTなどを利用するもの。交流系統の電源が無くても電力交換を行える。調相設備・高調波フィルタも不要である。

送配電設備の保安機能

送配電事故の復旧

再閉路

送電線が事故により継電器が動作して遮断した場合、一定の無電圧後に自動的に遮断器を再投入すること。
送電線の事故は落雷によるフラッシオーバでのアーク地絡が多く、アークの自然消滅により再投入で異常なく送電を継続できることが多い。
再閉路の時間は、高速(1秒以下)、中速(1~15秒)、低速(1分)である。
東京電力の6.6kV配電線では、事故遮断して1分後に再閉路継電器により自動再閉路される。その後の区分開閉器の時限投入は7秒後となる。下記の時限順送で故障区間を特定し、故障区間以外は約3分で復電する。

  • 三相再閉路:2回線送電で片側1回線に事故があった場合、相に関係なく1回線を一括遮断する。
  • 単相再閉路:1回線送電で事故があった場合、事故相のみを遮断する。
  • 多相再閉路:2回線送電で片側1回線に事故があった場合、事故相のみを遮断する。

主保護動作(事故区間の切り離し)に失敗した場合に備え、少し時間をおいてバックアップで事故除去を行う後備保護装置が用意されている。

時限順送

高圧配電線路に複数の自動区分開閉器を設置して、事故時に故障区間を切り離す方式。

  1. 配電用変電所の遮断器が遮断し、区分開閉器が開放される。
  2. 配電用変電所の遮断器が投入され、変電所側の区分開閉器から順番に時限投入していく。
  3. 故障区間の区分開閉器が投入されると、再度配電用変電所の遮断器が遮断される。(区分開閉器の動作時限が7秒で、22秒で遮断した場合は、変電所から3個目の区分開閉器の先が故障区間となる)
  4. 故障区間確定後は、配電用変電所の遮断器が投入され、変電所側の区分開閉器から順番に投入していくが、故障区間の区分開閉器はロックされ投入されない。

電力供給の安定化

電力供給の分類

電力の安定供給のため、供給量や使用頻度を基準に、ベース供給力・ミドル供給力・ピーク供給力の3つに分類している。

  • ベース供給力:継続的な稼働が可能で、発電単価が安く、安定した供給が見込めるもの。原子力発電、石炭火力発電など。
  • ミドル供給力:負荷電力の中間部分を担い、電力需要によって運転や停止が可能なもの。ガス火力発電など。
  • ピーク供給力:ベース・ミドル供給でも不足する場合や事故などの緊急時に、予備電源として稼働させるもの。石油火力発電、揚水水力発電など。

電力融通

電力事業者同士で電力を送電または受電することをいい、供給コストを安くする為の経済融通と、事故時などの緊急時に行う応援融通がある。
東日本と西日本では周波数が異なるため、東西間は周波数変換設備が必要となるが、現在は新信濃変電所、佐久間周波数変換所、東清水変電所、飛騨変換所の4箇所がある。
本州ー北海道間、本州ー四国間では、交流による充電電流を無くすため、海底ケーブルを使用した直流送電を行っている。

周波数調整

負荷の変動によって、発電機の回転速度が変動して周波数も変化する。電力系統では、標準周波数(50Hz、60Hz)からのずれを戻すために周波数調整を行っている。

  • GF(ガバナフリー)運転:数十秒~数分以下の早い周期の負荷変動を調整する。
    調速機を使用し、周波数が上昇すると出力を減らし、低下すると出力を増やす。
  • LFC(負荷周波数制御)運転:30分程度のやや長い変動を調整する。
    周波数調整用の発電所で負荷変動を見て周波数自動調整の運転を行う。
  • EDC(経済負荷配分制御):周期の長い変動を調整する。
    LFC運転と組み合わせて、より経済的な発電所の出力配分の制御を行う。

ブラックアウト

突発的に大電源(大発電所など)が停止すると、需給のバランスが崩れ周波数低下が発生する。
一定以上の周波数が低下すると、発電機が自らの機器保護等のために自動的に系統から解列していく。
これにより連鎖的に周波数が低下していき、最終的に全発電機が停止して大停電に至る現象。
ブラックアウトを回避するためには、発電機の周波数低下リレーが動作する前に、高速で発電力を増加させるか、負荷を遮断させる必要がある。

地中電線路の故障検出

地中電線路は埋設されているため、故障点の探査は測定器を使用した故障点測定法で検出しなければならない。
ケーブル故障は地絡事故と断線事故があるが、大半は地絡事故である。

マーレーループ法

地絡事故で使用する。(断線事故の場合は、回路が形成されないので使用できない)
ホイートストンブリッジ回路を作って故障点までの抵抗を求め、ケーブル全体の長さから故障点を算出する。
絶縁破壊を起こしているケーブルと、並行しているケーブルの導体同士を接続して、ブリッジの平衡条件を求める。故障点の地絡抵抗が低いほど正確となる。
ケーブル長L、マーレーループ装置の接続点から故障点までの距離x、全目盛を1000、平衡したときの目盛をaとすると、平衡式は以下となる。
(1000-a)x=a(2L-x)

静電容量法

断線事故で使用する。
健全線と故障線のケーブルの静電容量の違いを求め、ケーブル全体の長さから故障点を算出する。

パルスレーダー法

地絡・断線事故で使用する。
故障線の端からパルス電圧を送り、反射して戻る時間を測定する。
ケーブルの電圧伝播速度から故障点を算出する。


Ver1.0.7

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