送配電線

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送電線の構成

がいし(碍子)

送電線・配電線などの電線と鉄塔・電柱とを絶縁するためのもの。
送電線路の汚損区分と送電電圧に応じて適当な個数を連結する。
高い絶縁能力と大きな強度が必要で、絶縁能力を高くするには直列にして表面漏れ距離(がいし表面の電気を絶縁する距離)を長くし、強度を高くするには並列に連結する。
連結方式によってクレビス形とボールソケット形がある。
絶縁材料として、陶器・ガラス・ポリマ(樹脂)の3種類があるが、軽量性や耐衝撃性などの観点から、最近はポリマの利用が進んでいる。

がいしの種類

  • 懸垂がいし:笠状の磁器絶縁層の上下両側に連結用金具を接着したもので、電線を鉄塔から懸垂して支える。
  • 長幹がいし:棒状磁器の両端に連結用金具を取り付けた形状で、雨洗効果が高く、塩害に対し絶縁性が高い。
  • ピンがいし:金属棒(ピン)の上に傘状の絶縁体磁器を装着したもの。
    6.6kVの高圧配電線用で使用される。
  • 高圧耐張がいし:6.6kVの高圧配電線の引張荷重の加わる引留箇所に、2個連結して使用される。
  • 高圧中実がいし:強度が必要な、6.6kVの高圧配電線用で使用される。

がいしの性能評価

  • フラッシオーバ電圧:絶縁破壊を起こす電圧。
  • 汚損特性:汚損度が上がると性能は低下する。
  • 耐アーク性・油中耐電圧:絶縁油中にがいしを浸して、電圧を加えて強度を試験する。
  • 機械的強度:引張応力の強度。
懸垂がいし
長幹がいし
ピンがいし
高圧耐張がいし
高圧中実がいし

がい管

電線を支え保護するとともに、電線と機器・建物を絶縁し、機器・建物の内部に電線を導く終端接続材料。
磁器、EPゴム、エポキシ樹脂などが使用される。

ストレスコーン

電気的なストレス(負荷)を緩和するためのケーブル処理。
高圧ケーブルの被覆を剥ぎ取ると、端末部の電界分布が切断部に集中して、耐電圧特性が低下する。
この電界分布の集中を緩和するために、絶縁テープで円すい(コーン)状に成形し、膨らみを持たせて角度をなだらかにしてやることにより、電界を分散させる。(電位傾度が緩和される)
成形済みのゴムストレスコーンを付けるものもある。

電線の固定

クランプ

鉄塔で、電線を固定するもの。

ダンパ

電線の振動を防止するため、クランプ箇所などに設ける振動の吸収装置。
トーショナルダンパは、なす形の錘を互いに反対向きにセットし、電線の風による上下振動をねじり振動に変え、振動を防止する。

アーマロッド

電線の振動疲労防止や、アークでの電線溶断防止のために、クランプ付近の電線に同一材質の金属を巻きつけるもの。

相間スペーサ

多導体方式(送電に数本の電線を使用する)で、強風による電線相互の接近・衝突を防止する為、間隔を保持する器具。
コロナ放電の抑制や、ギャロッピングの防止にも効果的である。

スリーブ

多電線相互を接続するための金具。

ジャンパ

鉄塔にがいしで留められている電線間を接続する電線。

相間スペーサ
トーショナルダンパ
アーマロッド

配電線の構成

配電柱の構成

遠心成形により製造された高密度で強度を高めたコンクリート電柱で、柱上変圧器などで高圧線(6600V)の電気を200Vまたは100Vに下げ、低圧線で需要家に配電する。

  • 架空地線:架空線(電線)路を、直撃雷から保護する導線。
  • 高圧線:配電用変電所とつながっている高圧電線。(三相3線式の非接地6600V)
  • 低圧動力線:別の柱上変圧器で変圧した動力用200Vの電気が流れている電線。(三相3線式200V)
    中性線は電灯線のものと兼用して使用している。
  • 低圧電灯線:柱上変圧器で変圧した家庭で使用する低圧電線。(単相3線式100/200V)
  • 電灯引込み線(低圧引込線):家庭に低圧電灯線の電気を引き込むための線。
  • 高圧引下げ線:高圧線から柱上変圧器へ接続する線。
  • 低圧引上げ線:柱上変圧器から低圧電灯線へ接続する線。
  • 高圧カットアウト:過電圧から柱上変圧器を保護するためのヒューズと開閉器を合わせた装置。(変圧器の1次側)
  • 低圧カットアウト:過電圧から柱上変圧器を保護するためのヒューズと開閉器を合わせた装置。(変圧器の2次側)ケッチヒューズを使用する場合もある。
  • 柱上変圧器:高圧線6600Vの電気を各家庭で使用する単相3線式100/200Vに変圧する装置。
  • 碍子:高圧用と低圧用があり、電線と電柱を絶縁するもの。
  • ケッチヒューズ:家庭に送るための低圧引込線に異常があった場合、自動的に線路を遮断するための装置。

電柱・支線の構成

  • コンクリート柱:鉄筋とコンクリートを使用した一般的な電柱。
  • 鋼板柱:鋼板を材料にした組み立て式の電柱。山間部や狭あい場所など搬入困難な場所で使用する。
  • 支線:電柱の支えのために張る線。亜鉛めっき鋼より線が使用される。
  • 玉がいし:支線を伝って電流が流れないよう絶縁するもの。
  • アンカ:地面に打ち込んで支線を留める。

送電線の誘導障害

高電圧の送電線に接近した電話線や停止線に過大な電圧が誘起され、通信障害や危険電圧が生じる現象を誘導障害といい、静電誘導と電磁誘導がある。

  • 静電誘導:高電圧の送電線と対象誘電体(電話線・停止回線など)、大地間にそれぞれ静電容量があるため生ずる。
  • 電磁誘導:送電線の発生する磁界と、電話線・停止回線などが鎖交するために発生する。

静電誘導障害電圧

送電線と通信線や人間などの導電体が接近している場合、送電線および導電体と大地間の静電容量によって導電体に電圧が生じる。
静電誘導電圧は送電線の対地電圧に比例する。
通信線の静電誘導電圧Ecと送電線の対地電圧Eeは、以下の関係となる。

$\displaystyle E_c=\frac{C_e}{C_e+C_c}E_e \ [V] $

$E_c$:静電誘導電圧 [$V$]
$E_e$:送電線の対地電圧 [$V$]
$C_e$:送電線と通信線間の静電容量 [$F$]
$C_c$:通信線の対地静電容量 [$F$]

電磁誘導障害電圧

送電線と通信線が接近し並行している場合で、送電線に1線地絡や各相不均衡による零相電流が流れた時に、その磁界の電磁誘導の相互インダクタンスによって通信線に電圧が生じる。
電磁誘導電圧は零相電流に比例する。
通信線の電磁誘導電圧Ecと送電線の零相電流I0は、以下の関係となる。

$\displaystyle \dot{E_c}=jωMl(\dot{I_a}+\dot{I_b}+\dot{I_c})=jωMl3\dot{I_0} \ [V] $

$E_c$:電磁誘導電圧 [$V$]
$M$:相互インダクタンス [$H$]
$l$:長さ [$m$]
$I_0$:零相電流 [$A$]
$3I_0$:1線地絡事故時の地絡電流 [$A$]

誘導障害の対策

  • 距離を離す、電力線と通信線の間に導電率の大きい遮へい線を接地する。(静電誘導対策、電磁誘導対策)
  • 送電線をねん架して誘導電圧のベクトル和を0にして各相の不均衡を解消する。(静電誘導対策、電磁誘導対策)
  • 通信線への通信用避雷器の設置、金属遮へい層付き通信ケーブル(同軸)、光ケーブルを使用する。(電磁誘導対策)
  • 高抵抗接地または非接地で地絡電流を流さない、地絡電流を高速度で遮断する。(電磁誘導対策)

ねん架

三相3線式架空送電線の電線の配列順が一定であると、インダクタンスや静電容量が不平衡になる。(三相全体の位相の和は0だが、線路位置が異なると場所によって力率のずれが生じるため)
このため、線路全長を3等分もしくは整数倍に分割し、ねん架鉄塔でジャンパ線を用いて、各区間の線の入れ替えを行う。
ねん架をおこなうと、各相の線路定数(インダクタンスと静電容量)を平衡させ、中性点の残留電圧を減少させて、付近の通信線への静電誘導・電磁誘導障害を軽減できる。

電線の現象

コロナ放電

電気エネルギーの一部が音・光・熱などに形を変えて現れ、電力損失となる現象。
電線の電圧が、電線表面の電界強度(交流電位の最大値が1気圧気温20℃で、30kV/cm)を超えると、電線周囲の空気絶縁が破れコロナ放電が生じる。
コロナ放電が発生する最小電圧をコロナ臨界電圧という。コロナ臨界電圧は、気圧が低くなるほど、絶対湿度が高くなるほど低下するため、雨・雪・霧の天候で発生しやすい。
高調波成分が含まれるため、電波障害や通信障害が生じる。
電力損失だけでなく、導体の腐食や電線の振動(コロナ振動)なども生じる。
細い電線や、線の多いより線ほど発生しやすいので、スペーサを付けて電線間隔を大きくしたり、導体の等価半径を大きくする多導体化が対策として有効である。
単導体より多導体のほうが、電線表面の電位傾度が低下する為、コロナ臨界電圧が上がり、発生しにくくなる。

表皮効果

導体に直流を流した場合、電流は導体を均等に流れるが、交流は導体の表面を流れること。
交流の場合は磁束が変化する為、電流を妨げる向きに誘導電流(渦電流)が中心部分に流れて元の電流の抵抗となる。(電磁誘導と誘導起電力)
表皮効果の影響は導電率、透磁率、周波数が高いほど顕著になる。
合計の断面積で考えると、単導体より多導体のほうが、表皮効果は小さくなる。

近接効果

並行した導体に、電流が同じ方向に流れれば吸引力が働き、逆方向に流れれば反発力が働く。(平行導体間の電磁力)
いずれも導体内の電流に偏りが生じて電流密度が不均一になり、導体の抵抗は増加する。

水トリー

架橋ポリエチレン絶縁体に侵入した水によって、中心からトリー状(木の枝)の欠陥が発生して絶縁寿命を低下させるCVケーブルの劣化現象。ボイドや異物を起点に樹状に広がる。
絶縁破壊、電圧低下が発生する。
できる場所によって界面水トリー(外部半導電層、内部半導電層)、ボウタイ状水トリー(絶縁体)がある。
乾式架橋の使用や、テープ巻き製造ではなく絶縁層と内・外半導電層の三層を同時に押出す製造方法(EーEタイプ)の採用で防止する

塩害

がいし表面に塩分やじんあいが付着して、雨などの湿気で溶解して導電性を帯びると漏れ電流が増加する。これにより部分放電を生じると表面の絶縁破壊やフラッシオーバを起こす。
可聴雑音や電波障害の原因にもなる。
がいし塩害による地絡事故は、雷による地絡事故に比べて再閉路に失敗する場合が多い。

塩害対策

  • 耐塩がいし・長幹がいしの使用。がいしの連結個数を増やす。
  • 沿面距離(表面漏れ距離)を伸ばす。
  • 活性洗浄、はっ水物質(シリコンコンパウンド)の塗布。
  • 隠ぺい化や屋内化。

スリートジャンプ

電線に付着した氷雪が一斉に脱落し、電線が跳ね上がる現象。
短絡や支持物破損を起こす。

スリートジャンプ対策

  • 垂直径間距離、電線のオフセット(電線同士の水平の間隔)を大きくとる。
  • 相間スペーサを付ける。
  • 氷雪ルートを避ける。
  • 径間長(鉄塔間の距離)を長くしすぎない。

ギャロッピング

電線に扁平状の氷雪が付着し、風の揚力で電線が自動振動して相間短絡を起こすこと。
風速10~20m/sで起こりやすい。
電線の断面積が大きいほど起こりやすく、単導体よりも多導体に発生しやすい。

ギャロッピング対策

  • 電線がたるみすぎないようにする。
  • 相間スペーサを付ける。
  • 氷雪ルートを避ける。
  • 径間長(鉄塔間の距離)を長くしすぎない。
  • 大電流を流してジュール熱で氷雪を溶かす。
  • 氷雪の付着しにくい電線を使う。

微風振動

架空電線が電線と直角方向に風を受けると、渦を生じて電線が上下に振動すること。
電線の固有周波数と共鳴振動する。
軽い電線で、径間が長く、張力が大きいほど発生しやすい。

微風振動対策

  • トーショナルダンパを電線支持点に取り付ける。
  • 支持点近くをアーマロッドで補強して断線を防ぐ。

サブスパン振動

多導体を使用した超高圧送電線では、スペーサの取り付け間隔をサブスパンと呼ぶ。
風速10m/sを超えると風下側にカルマン渦が発生し、電線に上下の交番力が加わり、これがサブスパンの固有振動数と一致すると共振状態となり振動が発生する。

サブスパン振動対策

  • サブスパン間隔を変えて固有振動数を変える。
  • スペーサの電線支持部に緩衝材を入れる。

送電線の対雷対策

送電線の雷による影響

フラッシオーバ

直撃雷や開閉サージなどで送電線の異常電圧上昇により、送電系統の絶縁(がいしなど)が破壊されること。
事故区間を高速に遮断し、フラッシオーバを消滅させれば絶縁は回復し、架空送電線は通電可能な状態に戻る。(地下送電線は自然に絶縁回復しない)

逆フラッシオーバ

フラッシオーバと逆で、送電線ではなく接地側(鉄塔や架空地線)の雷撃によって鉄塔電位が上昇し、鉄塔や架空地線から送電線へ絶縁破壊が起こること。
鉄塔の接地抵抗を小さくして防止する。

送電線の対雷対策

アークホーン

送電線の雷撃時、鉄塔へのフラッシオーバによるアーク熱により、がいしの熱破壊を起こす。これを防止するため、がいし連の両端に角(ホーン)状の金具を取り付けて、そこにアーク電流を流すことで、がいしから引き離す。
アークホーンでフラッシオーバが発生するとアーク電流が流れ、その続流を保護継電器で検出して遮断する。
アークホーンの上下間の間隔は、がいし連の80%程度である。

送電用避雷装置

アークホーン間に付けられる避雷器で、フラッシオーバ時に発生するアーク電流を避雷器で逃がすことで、確実な送電線の再閉路を実現する。

架空地線(グランドワイヤ)(GW)

鉄塔の頂部に架線する雷防止の遮へい線で、雷の架空電線への直撃を防止する。(直撃雷の保護で、誘導雷ではない)
亜鉛めっき鋼より線、鋼心イ号アルミ合金より線、アルミ覆鋼より線などの裸電線が用いられる。引張強さ5.26kN以上のものか、直径4mm以上の裸硬銅線を使用する。
引張強さに対する安全率は、硬銅線か耐熱銅合金線の場合は安全率2.2、その他の地線なら2.5が必要である。
鉄塔の中心線と頂部と1番上の架線を結んだ線との角度を遮へい角と呼び、この角度が小さいほど遮へい効率がよい。
弱電流電線への誘導障害を軽減する働きもする。
多条化して雷サージを分流することで鉄塔の電位上昇を抑え、逆フラッシオーバーの発生が抑制できる。
接地抵抗が大きいと、逆フラッシオーバが起きることがある。
ケーブルの中に光ファイバを実装した、光ファイバ複合架空地線も使用されている。

埋設地線(カウンタポイズ)

鉄塔を中心に、地表面下0.5mの深さに、30m程度の亜鉛めっき鋼より線を放射状に2~6条敷設するもの。
鉄塔の接地抵抗を低減し、鉄塔や架空地線から電線への逆フラッシオーバを防止する。

不平衡絶縁

2回線送電線路で、2回線同時に雷害事故の発生を防ぐため、両回線の絶縁に差をつける。

格差絶縁

柱上変圧器に対して高圧線側の絶縁レベルを上げ、雷フラッシオーバ(電線から鉄塔への放電)の箇所を柱上変圧器に集中させることで高圧線側への被害を防ぐ。
フラッシオーバの続流は、高圧カットアウト(柱上変圧器の1次側にある開閉器)のヒューズの溶断によって、高圧線と切り離す。


Ver1.0.2

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