配線方式

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配線方式の種類

  • 単相2線式:単相100Vを2線で供給する。小規模住宅の電灯やコンセントで使用する。
  • 単相3線式:単相100Vと200Vを3線で供給する。一般的な住宅の電灯やコンセント、ビルなどで使用する。
  • 三相3線式:三相200V(400V)を3線で供給する。低圧では空調機やポンプなどの動力用として使用する。高圧・特別高圧配電線路で使用している。
  • 三相4線式:単相240Vと三相415Vを4線で供給する。使用電力の大きいビル・工場などで使用する。
  • 三相4線式(異容量V結線):単相3線式の100Vと200Vの3線に200Vの1線を加えて、単相3線式と三相3線式200Vを同時に供給する。小容量の電灯・動力共用の受電設備や柱上変圧器に用いられることがある。

配電用6kV変圧器の規格(JIS C 4306)では、電圧降下を考慮して二次側の定格電圧は、100V→105V、200V→210V、400V→420V(50Hz)・440V(60Hz)としている。

線間電圧と対地電圧

線間電圧は、電線と電線の間の電圧である。
対地電圧は、接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧(線間電圧)をいう。
住宅の屋内電路の対地電圧は、基本的に150V以下であることが規定されている。(電技解釈第143条)
変圧器の二次側をB種接地で大地と結び、接地された変圧器の二次側から電源を供給する形が一般的である。
B種接地線には、変圧器の一次側と絶縁がとれていれば、二次側回路が漏電などで大地との間にループが形成されない限り電流は流れない。(実際には、回路の対地静電容量による僅かな漏れ電流が流れている)

単相2線式

低圧配電線に使用され、中性線と電圧線(100V)で構成される。
中性線はB種接地される。
負荷電力:P=VIcosθ[W](線路インダクタンスが無視できる場合cosθ=1)
・単相2線式(線間電圧100V、対地電圧100V)

単相3線式

低圧配電線に使用され、中性線と電圧線(100V)2本で構成される。外側の2本で200Vを取り出す。
中性線はB種接地される。
RーNーT(N:中性線)と考えると電位はR(100V)>N(0V)>T(ー100V)となる。従って電流はR→N、N→Tに流れ、負荷が均衡であれば中性線Nの電流は打ち消しあって0となる。(Nの電位が0Vとなるので同電位で電流は流れない)
負荷が均衡なら200V電源の中性線Nを消した2線の等価回路に変換できる。
配電容量が等しければ、単相2線式よりも電流は1/2でよいので、電線銅量が少なく済み、銅損も少ない。
1線当たりの送電能力は、単相2線式の133%となる。(単相2線式の1線当たりの送電能力はVIcosθ/2、単相3線式の1線当たりの送電能力は負荷が2つで、2VIcosθ/3となるため、4/3≒133%増となる)
負荷電力:P=2VIcosθ[W](線路インダクタンスが無視できる場合cosθ=1)
・単相3線式(線間電圧200V、対地電圧100V)

三相3線式

動力用低圧配電線に使用され、電圧線(200Vまたは400V)3本で構成される。
電源側の配線記号として一般的にR、S、Tが使用される。(負荷側はU、V、W)
低圧電路では、中性線または任意の1端子を接地する。
高圧配電系統では、三相3線式Δ結線の中性点非接地方式が採用されている。1線事故時の地絡電流は数~数十アンペア程度なので負荷電流と区別が難しい。配電用変電所の引出口には地絡検出のため、接地形計器用変圧器地絡方向継電器が設置されている。
単相回路の3つの組み合わせで、本来は三相4線だが、中性線は電流が流れない(3つの交流は位相が120°ずれているので、瞬時値の和は0となる)ので省略できる。
電線の総重量は単相2線式の3/4となる。
同じ出力を得る場合、電圧が同じなら単相2線式より少ない電流で済む。
1線当たりの送電能力は、単相2線式の115%となる。(単相2線式の1線当たりの送電能力はVIcosθ/2、三相3線式の1線当たりの送電能力は√3VIcosθ/3となるため、2√3/3となる)
負荷電力:P=√3VIcosθ[W](線路インダクタンスが無視できる場合cosθ=1)
・三相3線式Δ結線(線間電圧200V、対地電圧200V)

・三相3線式V結線(線間電圧200V、対地電圧200V)

三相4線式

Y結線の三相4線式で1線を中性線(電流は流れない)として接地する配電方式。
中性線と電圧線3本で構成される。
中性線と他の電線の間の相電圧(対地電圧)は240V、線間電圧は415Vとなる。
規模の大きなビルで採用され、電圧格上げによる供給力増加や電力損失の軽減ができる。
・三相4線式(線間電圧415V、対地電圧240V)

三相4線式(異容量V結線)

容量の異なる2台の単相変圧器をV接続し、単相3線式の電灯と三相3線式の動力を共用する方式。
変圧器の設置が簡素化できるため、柱上変圧器などで使用されている。
異容量V結線」参照。

設備不平衡

三相電源から単相を取る場合

通常三相はR相、S相、T相になっており、単相を取るにはR-S、S-T、T-Rのいずれかで取ることができる。
△ーY結線の二次側中性点を接地した電源系統では、中性線を敷設して三相4線の給電方式にして、三相のうちの1相と中性線との間を単相電源として使用することがある。このとき取出す電圧は対地電圧となり、変圧器二次側電圧の1/√3となるので注意が必要である。
各相の負荷バランスが悪いと各相の電圧・電流が不平衡となり、逆相電圧や逆相電流の発生により電動機や継電器などの動作に影響を与える。
負荷バランスなどへの考慮が必要な場合は、スコット結線などの変圧器を使用する。
但し、低圧動力プラン契約している場合、動力プランの電気料金は電灯プランよりも安価なため、電力会社では動力電源から電灯電源を得ることは禁止されている。

単相3線式の設備不平衡

単相3線式配電方式において、単相100Vの負荷が平衡していれば、中性線電流は相殺して0となる。
負荷が不平衡であれば、中性線に電流が流れ電圧降下が発生し、負荷電圧が不平衡になり相電流が大きくなって分電盤内の遮断器がトリップすることがある。また、電位差により中性線に流れる電流は損失となる。
負荷のバランスを補正するためには、バランサを負荷の末端に設置する。
中性線が断線すると、200V負荷は変わらないが、100V負荷は直列接続された200Vの負荷回路となり、負荷の比と同じ比の電圧がそれぞれに加わる。(容量はS=V2/Zで逆になる)

バランサ

100V負荷の不平衡を是正するため、負荷の末端に巻数比が1:1の単巻変圧器を設置して端子電圧比を一定にする。
同じ巻数の変圧器は、一次側と二次側の電圧・電流の大きさが必ず同じ値となるように動作するため、不平衡の場合、電位差によって中性線への電流が0になるようにバランサ側に電流が流れ、バランサの両端の電圧が等しくなる。

設備不平衡率の規定

低圧受電の単相3線式における中性線と、各電圧側電線間の負荷は、平衡させるように定められている。
内線規程では設備不平衡率を40%以下にするように決められている。
設備不平衡率=(中性線と各電圧側電線間に接続される負荷設備容量の差)/(総負荷設備容量の÷2)

高圧受電の設備不平衡

単相変圧器と三相変圧器の混在する受変電設備において、各相に接続される単相変圧器がバランス良く接続されるように定められている。
高圧受電の三相3線式における不平衡負荷の限度は、高圧受電設備規程では設備不平衡率を30%以下にするように決められている。
但し、以下の場合は、設備不平衡率がクリアされているとみなされる。
・100kVA以下の単相変圧器の場合。
・単相変圧器の最大と最小の差が100kVA以下の場合。

設備不平衡率の計算

設備不平衡率=(各線間に接続される単相変圧器総容量の最大ー最小の差)/(総変圧器容量÷3)
下図の場合を考える。

各線間の単相変圧器総容量は、RーS間:150kVA、SーT間:100kVA、RーT間:80+100=180kVA
各線間に接続される単相変圧器総容量の最大-最小の差=180ー100=80kVA
総変圧器容量=500+150+100+80+100=930kVA
設備不平衡率=(80/(930÷3))×100≒25.8%

三相交流電流(電圧)不平衡

三相交流電源に単相負荷を接続する場合、接続する線の偏りによって三相の交流電流(電圧)が不平衡となる場合がある。
不平衡率[%]は以下の式より求める。電圧も同様の式で求まる。

不平衡率 $\displaystyle \frac{I_2}{I_1}×100 \ [\%] $

正相電流 $\displaystyle I_1=\sqrt{\frac{1}{6}({I_r}^2+{I_s}^2+{I_t}^2)+\frac{2}{\sqrt{3}}\sqrt{I(I-I_r)(I-I_s)(I-I_t)}} $

逆相電流 $\displaystyle I_2=\sqrt{\frac{1}{6}({I_r}^2+{I_s}^2+{I_t}^2)-\frac{2}{\sqrt{3}}\sqrt{I(I-I_r)(I-I_s)(I-I_t)}} $

 $\displaystyle I=\frac{I_r+I_s+I_t}{2} $

正相電流と逆相電流

平衡三相交流の場合、各相の電圧や電流の大きさが等しく、位相差が120°の交流として表すことができる。
不平衡の三相交流は、各相の電圧や電流の大きさが異なり、位相差も異なってしまうので、不平衡三相交流を表す方法として、零相・正相・逆相という3つの成分に分解し、その合成として表現する。(対称座標法)

  • 零相電流:各相で同じ大きさで、同じ位相の電流成分。(平衡三相交流では0となる)
  • 正相電流:各相が同じ大きさで、相順が正方向R→S→T(時計回り)の成分。
  • 逆相電流:各相が同じ大きさで、相順が逆方向R→T→S(反時計回り)の成分。(平衡三相交流では0となる)

Ver1.0.2

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