線路の計算

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電線の計算

許容引張荷重(T)

許容引張荷重(水平張力T)は、物理的に必要な強さであり、電線(支線)の実際の張力である。
電線(支線)の引張強さは、安全率を考慮した安全上求められる荷重(許容張力)である。(安全率は、強度の余裕係数1以上)
許容引張荷重(水平張力T)=電線(支線)の引張強さ/安全率
許容引張荷重(水平張力T)が求まったら、実際に必要な引張強さは安全率を乗じた値となる。
※架空電線の安全率は硬銅線又は耐熱銅合金線では2.2以上、その他は2.5以上である。

電線のたるみ(D)

電線のたるみDをカテナリー曲線と呼ぶ。
電線の張力に安全率の記述や電線の種類の記述がある場合、水平張力Tは安全率を考慮した許容引張荷重として計算する。
※荷重ωの単位は[N/m]である。長さを乗ずる必要は無い。

$\displaystyle D=\frac{wS^2}{8T} \ [m] $

$D$:電線のたるみ [$m$]
$w$:荷重 [$N/m$]
$S$:支持物間の距離 [$m$]
$T$:張力 [$N$]

電線の荷重(W)

電線に加わる荷重は、垂直荷重(電線と付着した氷雪の荷重)と水平荷重(風圧の荷重)の合成となる。

$\displaystyle W=\sqrt{(w+w_i)^2+{w_w}^2} \ [kg/m] $

$W$:電線の荷重 [$kg/m$]
$w$:自重 [$kg/m$]
$w_i$:氷雪荷重 [$kg/m$]
$w_w$:風圧荷重 [$kg/m$]

電線の長さ(L)

支持物間SのたるみDを考慮した実際の電線の長さLは以下のようになる。

$\displaystyle L=S+\frac{8D^2}{3S} \ [m] $

$L$:電線の長さ [$m$]
$S$:支持物間の距離 [$m$]
$D$:電線のたるみ [$m$]

温度変化による電線の長さ

温度による電線の長さの変化は以下のようになる。

$\displaystyle L_2=L_1(1+αt) \ [m] $

$L_2$:膨張後の電線の長さ [$m$]
$L_1$:膨張前の電線の長さ [$m$]
$α$:膨張係数
$t$:温度差 [$℃$]

温度膨張後のたるみを求める場合は、膨張前の電線の長さL1、たるみD1を求めて、膨張後の電線の長さL2、たるみD2を算出する。

支線の計算

支線の張力計算

架空電線と支線の張力

架空電線と支線の高さが同じ場合は、架空電線の水平張力T=支線の張力P×sinθ(θ:支持物と支線の角度)が成り立つ。
架空電線と支線が支持物に別の高さである場合は、下記のように合算する。
架空電線の水平張力T×架空電線の高さH1=支線の張力P×sinθ×支線の高さH2

$\displaystyle H1×T=H2×Psinθ $

2本の架空電線の角度が異なる場合

2本の架空電線の張力Tのベクトルの和を合成の水平張力として計算する。
合成の水平張力=水平張力Tcosθ+水平張力Tcosθ

$\displaystyle Tcosθ+Tcosθ=Psinθ $

支線の条数計算

支線に必要な線の数を求める。
より線1本の強度(張力)は荷重減少係数を乗じて求める。
より線支線1本の張力=支線の面積(πr2)×素材の引張強さ(kN/m2)×荷重減少係数
必要な張力(引張強さ)=安全率×許容引張荷重(水平張力T)
必要な張力を満たす条数は以下となる。
より線支線1本の張力×条数>=必要な張力
※支線の柱の種類の記述があるときは、種類より安全率を考慮する。安全率は基本2.5以上。木柱・A種鉄筋コンクリート・A種鉄柱は1.5以上である。

風圧荷重

風圧荷重の適用区分

季節・区域によって5種類に分類され、使用する風圧荷重は甲種、乙種、丙種で分かれる。

  • 高温季:甲種。
  • 高温季(人家が多く重なる場所):丙種。
  • 低温季(氷雪多い地方、海岸・最大風圧を生じる区域):甲種または乙種の大きい方。
  • 低温季(氷雪多い地方、上記以外):乙種。
  • 低温季(氷雪少ない地方):丙種。

風圧荷重の計算式

電線1条・1mあたりの風圧荷重は、以下の式で表される。
単位風圧荷重[N/m]=垂直投影面積(電線の束の外径)[m]×圧力[N/m2 or Pa]
垂直投影面積とは、電線を横から見た場合の単位長さ当たりの面積で、電線の外径に等しい。
※より線(7/3.2mm)の場合は、3.2mmの電線7本の束なので→外径は3.2mm×3と考える。

甲種の風圧荷重計算

風速40m/s以上を想定した風洞実験より、甲種風圧荷重の圧力は980Paとして計算する。
甲種風圧荷重[N/m]=垂直投影面積(電線の束の外径)[m]×圧力(980)[Pa]

乙種の風圧荷重計算

乙種の垂直投影面積は、6mmの氷雪が付着すると仮定し、電線の外径+(6mm×2)とする。
甲種風圧荷重の圧力980Paの1/2を圧力として計算する。
乙種風圧荷重[N/m]=垂直投影面積(電線の外径+(6mm×2))[m]×圧力(980×1/2)[Pa]

丙種の風圧荷重計算

甲種風圧荷重の圧力980Paの1/2を圧力として計算する。
丙種風圧荷重[N/m]=垂直投影面積(電線のの外径)[m]×圧力(980×1/2)[Pa]

線路定数

送電線路の特性を示すもので、抵抗R・作用インダクタンスL・作用静電容量C・漏れコンダクタンスgの4つを等価回路として表している。
電線の幾何学的配置などによって定まる値であって、送電電圧、電流、力率、気象条件などによって線路定数の値が左右されることはなく、常に一定となる。
導線の等価回路として分布定数回路と集中定数回路があるが、中距離送電線路では集中定数回路で表現する。

分布定数回路

抵抗、インダクタンス、静電容量を独立した回路素子として取り扱うことができない回路。
等価回路が均一に分布する表現となる。
周波数が高く素子の値の変化が無視できない回路で使用する。

集中定数回路

抵抗、インダクタンス、静電容量を独立した回路素子として取り扱うことができる回路。
等価回路が1つに集中した表現となる。
周波数が低く素子の値の変化が無視できる回路で使用する。

       π形回路

抵抗(線路定数)

温度が高くなると大きくなる。
交流抵抗値は直流抵抗値より大きい。交流では表皮効果によって電線の表面に近づくほど電流分布が多くなるため。

$\displaystyle R=ρ\frac{l}{A} $

$R$:電線の抵抗 [$Ω$]
$ρ$:抵抗率 [$Ω⋅m$]
$l$:長さ [$m$]
$A$:断面積 [$m^2$]

電線1線当たりの作用インダクタンス

線間距離D(配置)や電線の太さrで決まり、logD/rに比例する。
線間距離が小さい、電線の太さが大きければ、インダクタンスは小さくなる。
電線で大きく、ケーブルで小さい。
三相の線間距離が異なる場合は、等価線間距離3√DaDbDc(3乗根)を使用する。

$\displaystyle L=0.05μ_s+0.4605log\frac{D}{r} \ [mH/km] $

$L$:1線分のインダクタンス [$mH/km$]
$μ_s$:比透磁率
$D$:線間距離 [$m$]
$r$:電線の半径 [$m$]

電線1線当たりの作用静電容量

線間距離D(配置)や電線の太さrで決まり、logD/rに反比例する。
線間距離が小さい、電線の太さが大きければ、静電容量は大きくなる。
電線で小さく、ケーブルで大きい。
三相の線間距離が異なる場合は、等価線間距離3√DaDbDc(3乗根)を使用する。

$\displaystyle C=\frac{0.02413ε_s}{log\displaystyle\frac{D}{r}} \ [μF/km] $

$C$:1線分の静電容量 [$μF/km$]
$ε_s$:比誘電率
$D$:線間距離 [$m$]
$r$:電線の半径 [$m$]

漏れコンダクタンス

漏れ抵抗の逆数。
値が小さいので通常無視される。

送電線のπ型回路の計算問題

下記のような送電線路のπ形回路で、作用インダクタンスと作用静電容量がZL、ZC1、ZC2の各インピーダンスで表される場合。以下の一相回路として考える。

      π形回路

C1の回路とLC2直列回路(緑の部分)の並列回路となり、送電端の電流Iは以下の関係となる。

$\displaystyle \dot{I}=\dot{I_1}+\dot{I_2}\ [A] $

送電端相電圧Es、受電端相電圧Erは、LC2直列回路(緑の部分)の分圧の式より以下の関係となる。

$\displaystyle \dot{E_r}=\frac{\dot{Z_{C2}}}{\dot{Z_L}+\dot{Z_{C2}}}\dot{E_s}\ [V] $

回路全体のインピーダンスZは、C1とLC2直列回路(緑の部分)の並列回路より以下となる。

$\displaystyle \frac{1}{\dot{Z}}=\frac{1}{{\dot{Z_{C1}}}}+\frac{1}{(\dot{Z_L}+\dot{Z_{C2}})}\ [S] $

$\displaystyle \dot{Z}=\frac{{\dot{Z_{C1}}×(\dot{Z_L}+\dot{Z_{C2}})}}{\dot{Z_{C1}}+(\dot{Z_L}+\dot{Z_{C2}})}\ [Ω] $

送電端の電流Iはオームの法則より以下となる。

$\displaystyle \dot{I}=\frac{\dot{E_s}}{\dot{Z}}\ [A] $

電力用ケーブルの特性

ケーブルの作用静電容量

ケーブルの1線当たりの静電容量。
3芯ケーブルの線間静電容量Cmと対地静電容量Csを考える。
回路を変形し、線間静電容量Cmの回路をΔーY変換すると、1線ではコンデンサCsと3Cmの並列接続となる。

$\displaystyle C=C_s+3C_m \ [F] $

$C$:ケーブル1線の静電容量 [$F$]
$C_s$:対地静電容量 [$F$]
$C_m$:線間静電容量 [$F$]

ケーブルの充電電流

ケーブル内部の静電容量によって、無負荷状態でも流れる電流。

$\displaystyle I_C=\frac{E}{X_C}=\frac{\displaystyle\frac{V}{\sqrt{3}}}{\displaystyle\frac{1}{2πfC}} \ [A] $

$I_C$:ケーブル1線の充電電流 [$A$]
$E$:相電圧 [$V$]
$V$:線電圧 [$V$]
$C$:ケーブル1線の静電容量 [$F$]

ケーブルの充電容量

無負荷時の充電電流による無効電力。
無負荷なので、有効電力は無く皮相電力と同じとなる。

$\displaystyle Q=\sqrt{3}VI_C \ [var][VA] $

$Q$:ケーブル1線の無効電力 [$var$]
$V$:線電圧 [$V$]
$I_C$:ケーブル1線の充電電流 [$A$]

ケーブルの許容温度

導体温度が絶縁体の許容温度を超えない上限の温度。
許容温度を上げるには、以下の方法がある。
導体サイズを大きくして電力損失を低減する。
耐熱性の大きな材料(架橋ポリエチレン)や、誘電正接の小さな絶縁物を使って耐熱化を図る。
ケーブルを冷水などで冷却して発生熱を除去する。

ケーブルの誘電体損

ケーブルに交流電圧を印加した時の絶縁体内部での熱エネルギーの損失。
電圧と電流の位相差θの場合、誘電正接δ=90°ーθとなる。

$\displaystyle W=\sqrt{3}VI_Ctanδ \ [W] $

$W$:ケーブル1線の誘電体損 [$W$]
$V$:線電圧 [$V$]
$I_C$:ケーブル1線の充電電流 [$A$]
$tanδ$:誘電正接

電路の絶縁性能

低圧電線路の絶縁性能

低圧電線路中絶縁部分の電線と大地の間及び電線の線心相互間の絶縁抵抗は、使用電圧に対する漏えい電流が最大供給電流の1/2000を超えないようにしなければならない。(電技第22条)

絶縁抵抗値の計算

  • 最大供給電流
    変圧器低圧側の定格電流のこと。
    変圧器の容量と線間電圧より求めることができる。(単相3線式の電圧は中性線との電圧の2倍であることに注意する)
  • 1線当たりの漏えい電流
    漏えい電流<=最大供給電流/2000
    (3線同時なら3倍した値になる)
    低圧の電路において絶縁抵抗測定が困難な場合においては、当該電路の使用電圧が加わった状態における漏えい電流が1mA以下であることと規定されている。(電技解釈第14条)
  • 1線当たりの絶縁抵抗値
    絶縁抵抗値>=対地電圧/漏えい電流
    上記の漏えい電流1mA以下を満たすように絶縁抵抗値が決められている。(電技第58条)
    300V以下(対地電圧150V以下):0.1MΩ以上。(=100V/0.001A)
    300V以下(対地電圧150V超え):0.2MΩ以上。(=200V/0.001A)
    300V超え600V以下:0.4MΩ以上。(=400V/0.001A)

高圧又は特別高圧の電路の絶縁性能

高圧及び特別高圧は、以下の電路の種類に応じ、電路-大地間に連続して10分間の試験電圧を印加して耐えられるかを試験すること。
ただし、電線にケーブルを使用する交流の電路で、試験電圧の2倍の直流電圧に10分間耐えるものについてはこの限りではない。(電技解釈第15条)

絶縁耐力試験の試験電圧

  • 7000V以下の電路:最大使用電圧の1.5倍。(最低500V)
  • 7000V~15000Vの中性点接地式電路:最大使用電圧の0.92倍。
  • 7000V~60000Vの電路:最大使用電圧の1.25倍。(最低10500V)

最大使用電圧

最大使用電圧は、通常使用状態の電路に加わる最大の線間電圧である。(電技解釈第1条)

  • 公称電圧1000V超の場合:公称電圧×1.15/1.1
  • 公称電圧1000V以下の場合:公称電圧×1.15

高圧電路の絶縁耐力試験

$\displaystyle \dot{Y}=\frac{1}{\dot{Z}}=j\left(3ωC-\frac{1}{ωL}\right) $

(1線の対地静電容量がCの場合)

各要素の計算は以下のように行う。

  1. 試験電圧(V)
    使用電圧6600Vの場合、電圧は1000V超なので、最大使用電圧は、6600×1.15/1.1=6900V
    7000V以下の電路では、試験電圧(交流)は最大使用電圧の1.5倍なので、V=6900×1.5=10350V
  2. 静電容量(C’)
    試験は単相交流で3線同時に行うので、1線の対地静電容量の3線の並列接続と考える。
    (1線のみ試験する時は3倍しない。3線分の静電容量が与えられている時も3倍しない)
    C’=3×1線の対地静電容量×ケーブルの長さ
  3. 充電電流(IC)
    IC=試験電圧/静電容量のリアクタンス=V/XC=2πfC’V
  4. 補償リアクトル電流(IL)
    補償リアクトルがある場合。(試験の電源容量削減のため補償リアクトルを設置する場合)
    IL=試験電圧/補償リアクトルのリアクタンス=V/XL=V/2πfL
  5. 試験電流(I)
    I=充電電流-補償リアクトル電流(無い時は0)=IC-IL
  6. 試験回路のインピーダンス(Z)
    補償リアクトルは変圧器に並列接続である。
    LC並列回路なので、アドミタンスは1/Z=2πfC’-(1/2πfL)
  7. 試験容量(S)
    試験用変圧器に必要な容量。
    単相皮相電力なので、S=試験電圧×試験電流=VI=V2/Z
    ※試験用変圧器の容量は、必要な試験容量Sより大きくなければならない。
    ※試験用変圧器の一次側にある発電機に必要な容量も、損失が無視できる場合は変圧器の一次側と二次側で容量は変わらないので、試験用変圧器の容量と同じである。

Ver1.0.1

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