低圧回路の施設

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主な電技解釈の規定

漏電遮断器の施設(電技解釈第36条)

金属製外箱を有する使用電圧が60Vを超える低圧の機械器具に接続する電路には、電路に地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること。ただし、次のいずれかに該当する場合はこの限りでない。

  • 機械器具に簡易接触防護措置を施す場合。
  • 乾燥した場所に施設する場合。機械器具の対地電圧が150V以下の場合においては、水気のある場所以外の場所に施設する場合。
  • 機械器具に施されたC種接地工事又はD種接地工事の接地抵抗値が3Ω以下の場合。
  • 電気用品安全法の適用を受ける2重絶縁構造の機械器具を施設する場合。
  • 機械器具内に電気用品安全法の適用を受ける漏電遮断器を取り付け、かつ、電源引出部が損傷を受けるおそれがないように施設する場合。

住宅の屋内電路の対地電圧の制限(電技解釈第143条)

住宅の屋内電路の対地電圧は150V以下であること。
定格消費電力が2kW以上の電気機械器具に電気を供給する屋内配線で、対地電圧が300V以下のときは以下の条件で施設できる。

  • 使用電圧は300V以下であること。
  • 人が容易に触れるおそれがないように施設すること。
  • 屋内配線と直接接続すること。(コンセントを使用しない)
  • 電気を供給する電路には開閉器及び過電流遮断器を施設すること。
  • 電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること。
  • 簡易接触防護措置を施すこと。

電動機の過電圧保護(電技解釈第153条)

屋内に施設する電動機には、電動機が焼損するおそれがある過電流を生じた場合に自動的にこれを阻止し、又はこれを警報する装置を設けること。ただし、次のいずれかに該当する場合はこの限りでない。

  • 電動機を運転中、常時、取扱者が監視できる位置に施設する場合。
  • 電動機の構造上又は負荷の性質上、その電動機の巻線に当該電動機を焼損する過電流を生じるおそれがない場合。
  • 電動機が単相のものであって、その電源側電路に施設する過電流遮断器の定格電流が15A(配線用遮断器で20A)以下の場合。
  • 電動機の出力が0.2kW以下の場合。

許容電流

許容電流は、電流による発熱により、電線の絶縁物が著しい劣化をきたさないようにするための限界の電流値である。
電線の材料と太さによって使用時の許容電流が決められている。
許容電流は、絶縁体の種類(絶縁被覆の許容温度)、電線の布設方法(熱拡散の状態)、周囲温度(絶縁被覆の温度が低いと電流は多く流すことができる)によって変化する。

  • 常時許容電流:電線・ケーブルに性能の低下を与えずに連続して流せる電流。
    一般的に使用される許容電流値。
  • 短時間許容電流:送電路の切替などで、数時間内に限って常時許容電流を超えて流せる電流。
  • 瞬時許容電流:短絡時に遮断器が遮断するまでの間流せる電流。

許容電流計算

電線の管工事の場合、温度によって流れる電流値は減少するので、工事後の許容電流は以下の関係となる。
管工事後の許容電流=電線の許容電流×許容電流補正係数×電流減少係数
※7捨8入

電線の許容電流

例として600Vビニル絶縁電線(IV線)の許容電流(基底温度30℃)は以下のように決められている。(電技解釈第146条)

許容電流補正係数

周囲温度によって決まる補正係数。
計算式には最低温度があることに注意する。

電流減少係数

電線を電線管に収めて使用する場合、熱の放散が悪くなるため、同一管内に収める電線数に応じた電流減少係数を乗じた値まで許容電流は減少する。
同一管内の電線数には、中性線・接地線・制御回路用の電線は含めない。(三相3線式なら電線数3、単相2線式と単相3線式は電線数2となる)
同一管内の電線数と電流減少係数は以下となる。(電技解釈第146条)

  • 3本以下:0.70
  • 4本:0.63
  • 5または6本:0.56
  • 7~15本:0.49

分岐回路

分岐回路とは、幹線から分岐して、過電流遮断器から負荷に至るまでの回路のこと。
通常の低圧回路では、15AまたはB20A分岐回路が使用され、回路容量は1500VA(コンセント10個以下)である。
10Aを超える大型電気機械器具は専用の分岐回路を設ける。
※「B20A」とは配線用遮断器で保護する回路、「20A」とは配線用遮断器以外(ヒューズ)で保護する回路。
分岐回路の遮断器定格電流と電線の太さ、接続できるコンセントの定格電流は以下のように規定されている。(電技解釈第149条)

分岐回路数

分岐回路数は、一般回路数(面積によって決まるコンセントや照明の回路)と専用回路数(1kW以上の大型機器の回路)と予備回路(2~4回路)を合わせた数となる。

配線用遮断器(MCCB)の設置

幹線の定格電流IBと分岐回路の許容電流IWから、配線用遮断器(MCCB)設置距離が決められている。
基本的には3m以下の距離に設置する。(電技解釈第149条)

内線規程では、分岐回路の負荷容量は、その分岐回路を保護する過電流遮断器の定格電流の80%を越えてはいけないと定めている。

幹線

幹線の許容電流

設置する電動機の定格電流(IM)、電動機以外の定格電流(IH)から、幹線の許容電流IWを求める。(電技解釈第148条)

  • 電動機以外の負荷(IH)>=電動機の負荷(IM)
    IW>=IH+IM
  • 電動機以外の負荷(IH)<電動機の負荷(IM)で電動機の負荷(IM<=50A)
    IW>=IH+1.25IM
  • 電動機以外の負荷(IH)<電動機の負荷(IM)で電動機の負荷(IM>50A)
    IW>=IH+1.1IM

配線用遮断器(MCCB)の選定

幹線に接続する過電流遮断器の動作する定格電流(IB)は、許容電流(IW)以下とするが、起動電流の大きい電動機などが接続される場合には、その起動電流で動作しないように大きめにする必要がある。

  • 電動機などが接続されない場合
    IB<=IW
  • 電動機などが接続される場合
    IB<=3IM+IH または IB<=2.5IW の小さい方
  • 許容電流が100Aを超えるとき、計算した定格電流(IB)が遮断器の定格に一致するものが無いときは、直近上位の定格電流(IB)の遮断器を使用する。

MCCBの選定例

例:分岐回路に電動機以外の負荷IH=5A、電動機負荷IM1=5A、IM2=15Aが接続された幹線を考える。
  IM=5+15=20Aで、IH=5Aなので、IM<=50Aより
  許容電流IW=5+1.25×20=30A
  許容電流30Aなので、IV線の許容電流よりIV単線なら2.0mmを選定する。
  定格電流IB=3×20+5=65A、IB=2.5×30=75Aの小さい方なのでIB=65A
  MCCBの定格電流で65Aを選定する。

電動機(モータ)の電流値の概算

定格出力[kW]より概算の電流値を求めることができる。

  • 概算電流値[A]=定格出力[kW]×4(200Vの場合)
  • 概算電流値[A]=定格出力[kW]×2(400Vの場合)

コンセントの設置

  • 定格電圧:単相100V、単相200V、三相200V
  • 定格電流:15A、20A、30A
  • 使用容量:一般的な事務所で30~40VA/m2
    1か所あたりの想定負荷は150VAで、1分岐回路のコンセント数は8か所以下。

コンセントの種類と形状

単相100Vでは、長い方の穴が接地側極となる。
穴の形として、単相100V(縦穴)、単相200V(横穴)、三相200V(ムンク穴)である。

医療用コンセント

病院などの医療施設に使用されるコンセントで、耐熱性及び耐衝撃性があり、病院電気設備の安全基準に基づいて接地工事を施す必要がある。
使用している電源によって、白(商用電源)、赤(非常電源)、緑(無停電非常電源)で区別される。

その他コンセント

  • 引掛形コンセント(T):引掛型専用のプラグを挿して回転させて固定する。
  • 抜止形コンセント(LK):通常のプラグを挿して回転させると、プラグがロックして容易に抜けなくなる。
  • 防雨コンセント(WP):フードを付けてプラグが濡れないよう防雨対策が施された屋外用コンセント。
引掛形コンセント
抜止形コンセント
防雨コンセント

スイッチの設置

スイッチの配線

片きりスイッチの配線

非接地側に設置する。(スイッチを切ったときに、負荷との接続を接地側の対地電圧0にするため)
片きりのスイッチを接地側に入れると、負荷の非接地側には電圧が来ているため、感電等の事故が起きるおそれがある。

3路スイッチ

1つの照明器具を2カ所のスイッチからON/OFFできるもの。

リモコンスイッチ

電源のON/OFFを遠隔からリモートコントロールするための機器。
おもに始動電流や突入電流がない照明で使用される。
複数のリモコンリレーをグループ制御して複数機器を一括操作したり、スケジュール操作、中央制御装置との連携にも使用される。

  • リモコントランス:主電源AC100Vを、リモコンスイッチの信号電源AC24Vに変換する。
  • リモコンスイッチ(セレクタスイッチ):遠隔に設置してON/OFF操作を行う。AC24Vの信号によって制御する。
  • リモコンリレー(リモコンブレーカ):分電盤内でリモコンスイッチや人感センサーなどの信号に従って、主電源をON/OFFする。操作レバーによる手元開閉操作も可能である。
リモコントランス
リモコンスイッチ
リモコンリレー

フル2線式リモコン方式

リモコンスイッチとリモコンリレー間の信号線を減らすために使用される方式。
リモコンスイッチ、伝送ユニット、リレー制御端末器(T/U)、リモコンリレーから構成される。
リモコンスイッチにアドレス(チャネルとナンバー)を割り振り、分電盤内の伝送ユニット間で2線の信号線を使ってアドレス情報をやりとりする。
アドレスのチャネルはT/Uの番号を意味し、ナンバーはT/Uに接続されたリモコンリレーの番号を意味する。
リモコンスイッチが操作されると、分電盤の伝送ユニットに信号が送られる。
伝送ユニットよりチャネル毎に設置されたT/Uに信号が送られ、T/Uは自分に接続されたナンバーのリモコンリレーを制御する。

伝送ユニット
リレー制御端末器T/U
アドレス設定器

その他のスイッチ

自動点滅器

周囲の明るさによって照明器具の点灯・消灯を自動的に行うことができるスイッチ。

熱線式自動スイッチ

エリア内の熱の変化を検知して作動するスイッチ。
熱の変化なので、同じ位置に留まると検知しなくなる。


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