電気回路の測定

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回路の測定方法と法則

測定器の種類

偏位法

測定量を指針の振れの大きさに変えて、その指示から測定量を知る方法。
可動コイル形直流計などの一般のアナログ計器、及びデジタル計器も偏位法を使っている。
計測するときに測定対象からエネルギーを奪って誤差が生じる場合がある。(内部抵抗など)

零位法

測定量と同種類で大きさを調整できる既知量を別に用意し、既知量を測定量に平衡させて、そのときの既知量の大きさから測定量を知る方法。
ホイートストンブリッジによる抵抗の測定、直流電位差計など。

デジタル測定器

測定値を直流電圧に変換し、AーD変換して表示する。
アナログは連続量(正確な値)の測定で、デジタルは離散量(近似値)を測定する。
AーD変換器には、逐次比較形(比較器で大小比較を何度も繰り返して変換するもの。ノイズの影響を受けやすい)や、二重積分形(積分回路による入力電圧による充電と基準電圧による放電時間を使用して変換するもの。ノイズの影響が小さい)などがある。
周波数は、パルス列に変換してパルス数を計測する。
入力抵抗が高いので流れる電流が小さく、測定する回路に影響を与えにくい。
デジタル化したデータなので、ほかの計測システムに直接接続できる。
測定時に手動でレンジを設定するのではなく、測定器が内部で自動的に最適なレンジを選択するオートレンジ機能が搭載されている。

測定器に用いる法則

ゼーベック効果

2つの異なる金属をつなげて閉回路を作り、接合部分を高温と低温にすると電流が流れる現象。
このとき発生する起電力を熱起電力という。
熱電対による温度計測に使用する。
温度計測側の温度の高い接点を温接点(測温接点)といい、もう一方の温度の低い接点を冷接点(基準接点)という。一定温度に保つため氷点(0℃)を利用することが多い。

ペルチェ効果

2つの異なる金属をつなげて閉回路を作り、直流電流を流すと接合部分で吸熱と放熱が起こる現象。
電流の方向を変えると、吸熱と放熱が逆になる。
ゼーベック効果と混同しやすいが、ペルチェ効果は電子冷却・加熱に使用する。

ホール効果

電流の流れに直角に磁界をかけると、電流と磁界に直角な方向にホール電圧(ホール電界)が生じる現象。
ホール素子は、p形半導体またはn形半導体を使用してこの現象を利用したものである。
磁場の検出・測定等に利用される。
半導体の多数キャリア(p形は+、N形はー)がローレンツ力によってフレミングの左手の法則の力の方向に移動する。p形とn形では多数キャリアの正負が異なるので、移動する電荷の正負が異なり、電界の方向(電圧の方向)は逆になる。

N型半導体
P型半導体

ホール電圧は電子のクーロン力(F=eE)とローレンツ力(F=Bev)が釣り合うことから求める。
eE=Bevより、E=Bv
電流を電子で表すと、電子の電気量e、単位体積あたりの個数n、速度v、断面積Sのとき
I=envS
面積Sは、半導体の厚さdとすると、電極間は電界の距離d’なので、S=dd’より、
I=envdd’
電界の強さE、電界の距離d’のとき、E=V/d’よりホール電圧Vは、
V=Ed’=Bvd’=B(I/endd’)d’=BI/end

圧電効果(ピエゾ効果)

強誘電体(水晶など)に圧力や張力を加えると、その強さに比例して電圧が生じる現象。
逆に電圧を変化させることで、強誘電体が比例して伸縮する。
圧力によって生じる電圧で点火スイッチに用いたり、電圧を変えると伸縮が生じることを利用してスピーカとして使われている。
超音波の発生や検出センサにも利用される。

圧抵抗効果(ピエゾ抵抗効果)

半導体や金属(ピエゾ抵抗)が機械的応力を受けて変形するとき、電気抵抗が変化する現象。
圧力センサで利用される。

計測器の誤差

誤差には、系統誤差と系統誤差がある。

  • 系統誤差:最初から存在する誤差。要因が明らかなので測定回数によらず一定である。
  • 偶然誤差:測定物の自身や測定条件の変動によるランダムな誤差。測定回数が増えると、正規分布となる。(正規分布は、平均値を中心として±σには68.3%、±2σには95.4%の値が含まれる)

JISの用語定義

  • 器差:測定値の値と真の値の差。
  • 感度:指示量の変化の測定量の変化に対する割合。
  • 分解能:計測できる一番小さな値。(出力に識別可能な変化を生じさせることができる入力の最小値)
  • 確度:指定された条件における誤差限界で表した計測器の精度。
  • 視差:目盛面と視線による角度による誤差。

誤差率

測定値Mと真値Tの誤差である。
ε=(M-T)/T×100[%]

補正率

測定値Mと真値Tの補正割合である。
ε=(T-M)/M×100[%]

許容誤差

最大目盛(レンジ)に対する許容される誤差の%の値。すべての測定値で適用される。
計器の階級によって許容される誤差が決められている。アナログ計測器の許容誤差は、JIS規格で階級指数(0.05~5の間で11級)として機器の精度を規定されている。
階級の数字は、最大目盛に対する許容される誤差の%の値である。最大目盛(レンジ)100Vで階級指数1では、100V時の許容誤差±1%となり、100V±1Vの誤差となる。このとき相対誤差は1.0%である
この値は、最大目盛時に限らず、全測定範囲で共通である。
例:最大目盛100Aで1.0級の電流計の場合、全測定範囲において、1.0A誤差が許容される。
90Vで±1Vのときは、相対誤差は1.1%、50Vで±1Vのときは、相対誤差は2.0%となる。

テスターの内部抵抗

テスターの内部抵抗rを求めたい場合、テスターの電源電圧E、電流計の最大目盛電流Iで零オーム調整(端子同士を接触させる)すると、r=E/Iの回路が成り立ち、内部抵抗rが求まる。

テスターの分類

テスターとは、内部の回路を切り替えることで直流・交流の電流、電圧、抵抗などを調べることができる計測器。
アナログ式とデジタル式がある。

可動コイル形

直流用、電流計・電圧計。平均値を示す。
電磁作用を使用する。
固定された永久磁石の間に可動コイルがあり、指針が付いている。可動コイルの電磁力とばねがつりあう。

可動鉄片形

交流用、電流計・電圧計・抵抗計。実効値を示す。
磁気誘導作用を使用する。
固定コイルの内側に固定鉄片、回転軸に可動鉄片と指針が付いている。
固定コイルに電流が流れると、固定鉄片と可動鉄片が同一方向に磁化され、可動鉄片が反発して、うず巻ばねと釣り合うところで止まる。
周波数が高いと誤差が大きいので、商用周波数で使用する。

整流形

交流用、電圧計・電流計・抵抗計。実効値を示す。
整流器を使用する。
交流をダイオードで直流に変換し、可動コイル形計器で計測した平均値を1.11倍(波形率)して実効値表示する。
周波数特性が良い。平均値を実効値に換算するので、波形がゆがむ(正弦波からひずむ)と誤差が生じる。

振動片形

交流用、周波数計。
振動片と交流の共振を利用する。

電流力計形

直流・交流両用、電流計・電圧計・電力計。実効値を示す。
電流間の力を使用する。
固定コイルと、指示針のついた可動コイルで構成される。
固定コイルは電源と負荷に接続して負荷電流を流し、可動コイルは負荷を通さず電源に直接接続する。固定コイルの電流により磁界が発生し、可動コイルの電流による電磁力が指示針を動作させる。指針の振れ角は負荷電力に比例する。

熱電形

直流・交流両用、電流計・電圧計。実効値を示す。
熱起電力を使用する。
熱線に電流を流し、温度上昇を熱電対で起電力にして、可動コイル形計器で計る。
高周波で使用する。

静電形

直流・交流両用、電圧計。実効値を示す。
静止電荷のクーロン力を利用する。
低電圧では駆動トルクが小さく誤差が大きいので、高電圧で用いる。

誘導形

交流用、電力量計。
渦電流を使用する。
負荷電流と電圧をそれぞれコイルに接続して磁界を発生させ、回転円板に渦電流を作る。その結果円板は回転する。また、円板には永久磁石が付いていて、速度に比例した制動トルクが生じて負荷に比例した速度の回転を維持するようになっている。
電力量計のKを計器定数と呼び、誘導形電力量計では円板の回転数で[rev/kW・h]、電子式計器ではパルス数で[pulse/kW・h]で示す。

$\displaystyle N=KPT \ [rev] $

$\displaystyle K=\frac{3600N}{Pt} \ [rev/kW・h] $

$N$:回転数 [$rev$]
$K$:計器定数
$P$:電力 [$kW$]
$T$:時間 [$h$]

電流・電圧の測定回路

分流器

電流計の測定範囲をm倍に拡大するための抵抗(Rs)で、電流計と並列に接続する。

$\displaystyle R_s=\frac{r_a}{(m-1)} \ [Ω] $

$R_s$:分流器の抵抗 [$Ω$]
$r_a$:内部抵抗 [$Ω$]
$m$:倍率

倍率器

電圧計の測定範囲をm倍に拡大するための抵抗(Rm)で、電圧計と直列に接続する。

$\displaystyle R_m=(m-1)r_v \ [Ω] $

$R_m$:倍率器の抵抗 [$Ω$]
$r_v$:内部抵抗 [$Ω$]
$m$:倍率

電力測定時の電流計・電圧計の位置

電流計×電圧計=電力を測定する場合、電流計、電圧計の内部抵抗を考えたときに、挿入位置によって、どちらが誤差が大きいかを考える。

負荷に対して並列に電圧計、電源側に直列に電流計を接続した場合

負荷の電流値と電流計の値は等しくない。
誤差=(電流計値×電圧計値)-(実際に負荷に流れる電流値×電圧計値)
電圧計の内部抵抗>>負荷抵抗の場合に使用する。

負荷に対して直列に電流計、電源側に並列に電圧計を接続した場合

負荷の電圧値と電圧計の値は等しくない。
誤差=(電流計値×電圧計値)-(電流計値×実際に負荷にかかっている電圧値)
電流計の内部抵抗<<負荷抵抗の場合に使用する。

交流電力の測定

単相電力の測定

三電圧計法

3個の電圧計と既知の抵抗を用いて交流の電力を測定する方法。

$\displaystyle P=\frac{1}{2R}({V_3}^2-{V_1}^2-{V_2}^2) $

三電流計法

3個の電流計と既知の抵抗を用いて交流の電力を測定する方法。

$\displaystyle P=\frac{R}{2}({I_3}^2-{I_1}^2-{I_2}^2) $

三相電力の測定

三相の電力は、各相の電力を3台の電力計を用いて測定し、それぞれの電力を加算すれば求まる。
下記のように中性点を電力計に接続できる場合、三相回路は一相回路として切り出すことができるので、各相を単相電力計で計測して加算することができる。
単相電力計の計測値をWとすれば、平衡三相回路であれば以下が成り立つ。

$\displaystyle P=3W \ [W] $

$\displaystyle Q=\sqrt{3}W \ [var] $

二電力計法

ブロンデルの定理(多相n線式回路の電力は、n-1台の単相電力計を用いて測定でき、各電力計の指示値の和で与えられる)により、単相電力計2台を使用して三相有効電力と三相無効電力を測定する。
負荷の力率によっては、電力計の指針が逆振れする。このときは電力計の極性を反転して接続して、測定した値のWにマイナスを付ける。

$\displaystyle P=W_1+W_2 \ [W] $

$\displaystyle Q=\sqrt{3}(W_2-W_1) \ [var] $

三相の電力Pをベクトル計算で表すと以下となり、平衡三相回路で各相電流のベクトル和が0の場合、2箇所の電力から合計の電力が求まることがわかる。
電力計W1は電圧Vacと電流Iaに接続されている。
電力計W2は電圧Vbcと電流Ibに接続されている。

$ \begin{align} P&=\dot{V_a}×\dot{I_a}+\dot{V_b}×\dot{I_b}+\dot{V_c}×\dot{I_c}\\ &=(\dot{V_c}+\dot{V_{ac}})×\dot{I_a}+(\dot{V_c}+\dot{V_{bc}})×\dot{I_b}+\dot{V_c}×\dot{I_c}\\ &=\dot{V_{ac}}×\dot{I_a}+\dot{V_{bc}}×\dot{I_b}+\dot{V_c}×(\dot{I_a}+\dot{I_b}+\dot{I_c})\\ &=\dot{V_{ac}}×\dot{I_a}+\dot{V_{bc}}×\dot{I_b} \end{align} $

$\displaystyle \dot{I_a}+\dot{I_b}+\dot{I_c}=0 $

三相回路の単相電力計での電力計測

三相の電力計測で、単相電力計を2線間の電圧と1線の電流に接続した場合に計測される電力値は、電圧と電流の位相差を考える必要がある。
aーbーcの三相において、電力計の接続が電圧計がaーb線間、電流計がa線に接続されている場合、
電力計の値は、W=Vab×Ia×cosφ(φはVabとIaの位相差)となる。
今、負荷の力率cosθ=1(負荷が抵抗のみ)の場合、相電圧Eaと相電流Iaに位相差θは0となり、線電圧Vabと線電流Iaの位相差φはベクトル図のように30°となる。
電力計の値は、W=Vab×Ia×cos(π/6)
三相電力の公式より力率1の三相電力は、P=√3×線電圧×線電流×力率=√3×Vab×Ia×1
上記の2式より三相電力P=√3×Vab×Ia×1=√3×W×2/√3=2Wとなる。

負荷力率(位相差)を考慮した電力計測

上記の「三相回路の単相電力計での電力計測」では負荷の力率cosθ=1で位相差0だが、負荷の位相差θがある場合は、電力計の位相差φは負荷の位相差θを考える必要がある。
aーbーcの三相において、電力計の接続が電圧計がbーc線間、電流計がa線に接続されている場合は、
電力計の値は、W=Vbc×Ia×cosφ(φはVbcとIaの位相差)となる。
ベクトル図を作成し位相差φを求める。

  • 各相電圧Ea、Eb、Ecの位相差はそれぞれ120°である。
  • 相電圧Eaに対する相電流Iaの位相差θは負荷の力率θなので、一相回路より求めることができる。
  • VbcはEbとーEcの合成ベクトルより、相電圧Ebとの位相差は30°である。
  • VbcとIaの位相差φは、ベクトル図よりφ=120°ー30°ーθとなる。(φ=90°ーθより、cosφ=sinθ)

絶縁抵抗の測定

屋内配線や機器などの絶縁抵抗を測定する。

絶縁抵抗の規定

100V、200V、400Vで漏えい電流が上限値の1mAになるように規定されている。
低圧電線路の絶縁性能」参照。

  • 300V以下(対地電圧150V以下):0.1MΩ以上
  • 300V以下(対地電圧150V超え):0.2MΩ以上
  • 300V超え600V以下:0.4MΩ以上

絶縁抵抗計(メガー)の使用法

メガーの印加電圧の決定

電路の使用電圧と同等か、それ以上の測定電圧を使用する。
100V→100/125V
200V→250V
400V→500V

メガーの電池チェック

機種によって異なる。
バッテリーチェックボタンや液晶表示するものなどがある。

メガーのゼロチェック

ライン端子(赤色のピン型プローブ)とアース端子(黒色のワニ口クリップ)をショートして、測定ボタンを押して、0MΩの指示を確認する。

メガーの測定箇所

モータの測定ラインが、ブレーカーの二次側か、マグネットスイッチの二次側かを判断する。
漏電(地絡)をチェックする場合は、対地間絶縁抵抗を計測する。(アース端子ー測定ライン間)
三相の場合はアース端子と1線ずつ絶縁抵抗を計測する。
アース端子は塗装などが無い部分で計測する。
短絡をチェックする場合は、線間絶縁抵抗を計測する。負荷(モータなど)を測定ラインから取り外して測定ライン電線間を計測する。(負荷が接続されていると0Ωになってしまう)
また、漏電遮断器は漏電検出の制御電源を左右極間に接続しているため、線間絶縁抵抗が低くなるのでメガーによる計測ではなくテスターを使用する。
コンデンサ、電力ケーブルなど静電容量の大きな電路の測定では、充電電流が大きく、測定開始時は低い抵抗値を示すので、時間をかけて指示が安定したときの値を読み取る。
三相モータでは、三相はYまたはΔ結線で、線間の抵抗は0Ωとなるのが正常である。

メガーの測定方法

  1. ブレーカーをOFF。(検電器にて通電が無いことを確認する)
  2. メガーの印加電圧を選択する。
  3. アース端子(黒色のワニ口クリップ)を接地端子に接続する。
  4. ライン端子(赤色のピン型プローブ)を別の接地端子(金属など)に当て、メガーの測定ボタンを押し、メーターが0を指示することを確認する。(接地端子の正常性を確認する)
  5. ライン端子(赤色のピン型プローブ)を測定するラインに当て、メガーの測定ボタンを押して測定する。ボタン押し続けるか、ボタンを上げることで連続計測でき、安定した値を計る。
  6. ライン端子(赤色のピン型プローブ)を当てたまま測定ボタンを離すと放電される。
    通電マークが消えればOK。

高圧ケーブルの絶縁抵抗測定

高圧対応の絶縁抵抗計には、ガード(G)という保護端子が付いている。
この端子は、ケーブルの絶縁物に接続し、絶縁物表面を流れる漏れ電流による誤差を防ぐために使用する。

接地抵抗の測定

接地電極と大地との間の抵抗を測定する。

接地抵抗計(アーステスター)

測定したい接地極Eと、電圧極P、電流極Cを使用して測定する。
原理は電圧降下法で、計算は測定器内で自動的に行われる。
補助接地極を設置できない狭い場所では、埋設水道管などに接続して簡易測定する。
EーC間は接地抵抗Re+補助極抵抗Rcの電位差なので、中間Pの電位Vを計測して接地抵抗Reのみを求める。

コールラウシュブリッジ法

ホイートストンブリッジ回路を応用したもので、交流電源を用いるのが特徴である。
平衡となるようにしてRxの接地抵抗を求める。
現在はあまり使用されていない。

電圧降下法

構造体接地のような大規模接地体の測定において、接地抵抗計では測定極に電位干渉が生じて測定値に誤差がでる。そのため、電圧降下法により電圧極(P点)と電流極(C点)に干渉のない遠隔距離を設定して測定する。

抵抗・インピーダンスの測定

抵抗測定

テスタによる抵抗測定は、定電流を流したときの電圧降下を計測して、オームの法則より抵抗値を求めている。

2端子測定

定電流を供給する電流源端子と電圧降下を検出する電圧計端子が同じで2端子から構成されている。
測定器の配線の抵抗や接触抵抗が、誤差の原因となる。高精度を必要とせず被測定抵抗が十分に大きければ問題は無い。

4端子測定

定電流を供給する電流源端子2つと電圧降下を検出する電圧計端子2つが独立して、合計4端子から構成されている。
被測定抵抗に接続された電圧計端子は、電圧計の入力インピーダンスが高いため、ほとんど電流が流れず、測定器の配線の抵抗や接触抵抗の影響を受けずに正確に測定することができる。

ケルビンダブルブリッジ

抵抗測定に応用されるブリッジ回路を2重化して、リード線の抵抗や接触抵抗の影響を除去して、数mΩ以下の低抵抗を高精度に測定できるようにしたもの。

インピーダンスの測定

4辺ブリッジ(ホイートストンブリッジ)による測定法

交流4辺ブリッジ回路を使用して、以下のブリッジの平衡条件よりインピーダンスを求める。
検流計が0となるような条件を作ればよいので、電源・電圧計・電流計を用いた場合の誤差が発生しないので精密な測定ができる。

$\displaystyle \dot{Z_1}\dot{Z_4}=\dot{Z_2}\dot{Z_3} $

Z=R+jXの場合、実数部と虚数部が等しくなる。

$\displaystyle R_1R_4=R_2R_3 X_1X_4=X_2X_3 $

変成器ブリッジ測定法

4辺ブリッジのうち2辺を2つの電源で置き換えた回路を半ブリッジという。この2つの電源を変成器の二次巻線により実現したものを変成器ブリッジという。
以下の平衡条件よりインピーダンスを求める。

$\displaystyle \frac{\dot{Z_a}}{\dot{Z_b}}=\frac{\dot{V_a}}{\dot{V_b}}=\frac{N_a}{N_b} $

電気回路の測定器

クランプメーター

回路を切断することなく電流の流れている導体をはさみ込むことにより電流を測定する機器。
電流の流れる電線の周りに発生する磁力線をクランプメーターの変流器の鉄心でひろい、その鉄心に捲いてあるコイルに発生する電流を測定する。
負荷電流を計測する場合:1本を挟む。
漏れ電流を計測する場合:単相2線なら2本、三相なら3本を挟む。接地線1本でも計測できる。
ひずみ波を測定する場合は、波形が歪んでいても正しい値を計測できるRMS対応(高周波成分を含んだ波形を計算式に従って実効値として表示する)のものを使用する。

検流計(ガルバノメーター)

電流の方向と大きさの両方を表示する。(電流計は電流の大きさのみを表示する)
コイルを貫流する電流に応じて、指針が回転して偏向を作り出して円弧を通して測定量を示す。
電流が流れ込む側に針が振れる。

検電器

その部位が電気を帯びているか否かを判別する測定器。
低圧用、高圧・特別高圧用、接触式、非接触式があり、ランプやブザー、風車の回転(高圧・特高)などで状態を確認する。

ペン型
風車型

検相器(相回転計)

三相交流のR、S、T各相を判別するのに使用する測定器。
端子に直接接続して測定する接触式と、電線の被覆の上から使用する非接触式がある。
低圧用では3線に接続して、回転方向が時計回りなら正回転となる。
高圧用では2線毎に接続して、ブザーやランプで2線間が同相か異相かを判定して、正回転か逆回転かを判定する。

低圧用
高圧用

配線チェッカー(ラインチェッカー)

コンセント(機器)が接続されているブレーカを探し出す測定器。
コンセントなどの負荷の配線に発信機を接続して信号を出力し、配電盤のブレーカの負荷側に受信機を接触させると、該当するブレーカで発信機のLEDなどが反応する。
活線状態で測定できる測定器もある。
送信機をブレーカの負荷側に接続して、受信機で配線を追っていくことで漏電箇所を探索できるものもある。

電子電圧計

広い周波数と広い電圧範囲を測ることができる電圧計。
内部に検波回路や増幅器が設けられており、アナログメータのように針と文字盤で構成されている。
入力抵抗が高く、マイクロボルトレベルの極めて微小な電圧を測定できる。

オシロスコープ

電圧の時間変化を波形として観測する計器。
ブラウン管の電子銃から電子ビームを出し蛍光面に衝突させる。この途中で、垂直偏向板に観測する正弦波の電圧、水平偏向板に時間軸に対応したのこぎり波の電圧を加えると、電圧の時間変化を正弦波波形として表示できる。
周期性の無い信号波形も測定できる。
画面上の格子の1マスをdivで表し、縦が垂直感度(電圧)、横が掃引時間(時間)である。

アナログ式

リアルタイム性に優れている。
単発や繰り返し頻度の少ない現象に不向きで、測定結果の保存が難しい。

デジタル式

データをメモリに保存できるので、単発現象の測定が容易である。
AーD変換を行うため、再現可能な周波数はサンプリング周波数の1/2以下となる。
エイリアシングに注意する
高速フーリエ変換を用いて周波数分析を行うことができる。

偏向板の電子の動き

偏向板(長さl)の力F、x軸方向の速度uは、運動方程式と加速度と速度の関係式より以下となる。

$\displaystyle F=ma=eE \ [N] $

$\displaystyle u=at=\frac{eE}{m}×\frac{l}{v} \ [m/s] $

$F$:偏向板の力 [$F$]
$m$:質量 [$g$]
$a$:加速度 [$m/s^2$]
$e$:電荷(電子) [$C$]
$E$:電界の強さ [$V/m$]
$l$:偏向板の長さ [$l$]
$u$:x軸方向の速度 [$m/s$]
$v$:速度 [$m/s$]
$t$:時間 [$s$]

リサージュ図形

オシロスコープの垂直偏向板と水平偏向板に同時に正弦波交流を加えると、位相差・周波数・振幅の違いによって様々な図形が表示される。
周波数と振幅の等しく位相が異なる2つの交流が入力された時の、位相差によるリサージュ図形は以下のようになる。

         位相差と図形

オシロスコープの機能

トリガ機能

波形を取り込むタイミングを取る機能。
周期的な入力信号波形を止めて見れるようにするため、トリガを設定することで、そのポイントからの波形を見ることができる。
トリガ電圧は、入力信号がその電圧に達することで水平掃引を開始する電圧レベルをいう。

掃引

掃引(そういん)とは、波形を描画していくことで、オシロスコープの掃引時間とは、表示画面を1回分描画する時間のことである。

サンプリング

  • 実時間サンプリング
    1回の取り込みで波形を構成するすべてのデータを取得する。
    被測定信号が単発信号であっても、繰り返し信号であっても使用可能である。
  • 等価時間サンプリング(サンプリングオシロスコープ)
    1回の取り込みですべてのデータを取得せず、時間をずらしながら数回に分けてデータを取得し、すべてのデータが取得できた時点で組み合わせて波形を再現する。
    AーD変換器のサンプリングレートが2倍に満たない場合でも、何回かに分けて取り込むことで正確にデータ変換できるので、高い周波数で繰り返す波形を観測するのに適している。

事故発生時の測定例

過電流トリップ

  1. 漏電ブレーカー(ELB)トリップの原因が漏電か過電流かを「漏電表示ボタン」の状態で判断する。
    「漏電表示ボタン」が飛び出ていない場合、過電流が原因と判断できる。
  2. ブレーカーを再投入し、各相の電流値をクランプメーターで計測する。
    再投入ですぐにトリップする場合は、短絡の可能性がある。この場合は負荷を切り離して線間絶縁抵抗を計測する。
  3. ブレーカーが発熱している場合は、ブレーカー本体の不具合の可能性がある。
  4. N相(中性線)の電流がかなり流れている場合は、不平衡による過電流と判断できる。
    R相、T相の負荷を入れ替えて平衡化する。
  5. 負荷がモーターの場合、各線間の抵抗をテスターで計測してみる。抵抗値が等しく無い場合はモーターの巻線に異常がある。

漏電トリップ

  1. 漏電ブレーカー(ELB)トリップの原因が漏電か過電流かを「漏電表示ボタン」の状態で判断する。
    「漏電表示ボタン」が飛び出ている場合は、漏電が原因と判断できる。
  2. 各回路の対地間絶縁抵抗を計測する。
    負荷を接続した状態でブレーカーを切り、二次側の各線の端子を計測する。
  3. 絶縁不良の回路を特定して切り離す。

Ver1.0.7

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