自動制御の種類
シーケンス制御
あらかじめ定められた手順や判断によって、制御の各段階を順に進めていく制御。
外乱があまり無い、電磁リレーを用いた有接点リレーシーケンスなどが該当する。
フィードバック制御
制御量の値を目標値と比較して一致させるように、訂正動作を繰り返す制御。
フィードフォワード制御
目標値に影響を及ぼす外乱を事前に予測して、外乱影響を加味して修正動作を行う制御。
外乱の影響が発生してから訂正動作を行うフィードバック制御の欠点を補うため、フィードバック制御と併用して用いられる。
フィードバック制御の分類
制御対象による分類
自動調整
電圧、回転速度などの機械的値を一定に保つ。
プロセス制御
温度、圧力など物理量を一定に保つ。
外乱に対する抑制効果を重視し、過渡特性(入力が急激に変化したときの出力の変化)は重視しない。
サーボ機構
工作機械などで、物体の位置や方位などの測定値で目標値が変化する。
過渡特性(入力が急激に変化したときの出力の変化)を重視する。
目標値による分類
定値制御
目標値が一定である。
追値制御
目標値が変化する。
- 追従制御:目標値が任意に時間変化する。
- 比率制御:目標値が一定の比率で変化する。
- プログラム制御:目標値がプログラムに従って変化する。
制御動作による分類
ONーOFF制御(二位置動作)
オン、オフの繰り返しで制御量を調節する。
オンとオフの差であるすきま間を設定する。すきま間を狭くすると変化幅は狭くなるが、開閉回数が多くなり、装置の寿命が短くなる。
サーモスタットを利用した温度制御、ボールタップの浮力による液面制御などがある。
比例制御
操作量をオン・オフの二択ではなく、0~100%の範囲で操作量を連続的に変化させる制御。
制御量と設定値の差(偏差)に比例した操作量で修正を行う。
操作量の制御方法として以下のものがある。
- 位相制御:出力波形の位相角を制御して、連側的に操作量を変化させる。
- サイクル制御:出力サイクルのオン周期とオフ周期の比率を制御して、連側的に操作量を変化させる。
PID制御
プロセス制御の以下の3つを組み合わせたもの。3動作調節計とも言う。
幅広く使用されているフィードバック制御の方法である。
- P(比例)動作:入力信号の目標値までの偏差に比例した出力を出す。
目標値に近づくと操作量も小さくなるので、目標値の少し手前で動作が収束して残留偏差(定常偏差・オフセット)が残ってしまう。 - I(積分)動作:入力信号の偏差の時間積分値に比例した出力を出す。
比例動作の残留偏差(オフセット)を時間的に蓄積して、大きくなったところで操作量を増やして、目標値に近づける。比例動作でのオフセットを無くす。(0にする) - D(微分)動作:入力信号の偏差の微分値(変化速度)に比例した出力を出す。
外部要因で大きな変化が起きた場合に、すばやく目標値に戻す為に、偏差の変化率から操作量を変化させる。過渡特性を改善し、目標値への達成を早くする。

PID制御は、比例要素(P)と積分要素(I)と微分要素(D)を組み合わせたものなので、時間関数として表すと以下となる。(Kp、Ki、Kdは定数でeは偏差である)
$\displaystyle f(t)=K_pe(t)+K_i\int_0^t e(τ)dτ+K_d\frac{de(t)}{dt} $
上記の関数をラプラス変換すると以下となる。
$\displaystyle F(s)=K_p+\frac{K_i}{s}+K_ds $
その他の制御手法
- 最適制御:システムの挙動に関して事前に設定した評価関数で定義し、拘束条件のもとでその評価関数を最適化(最小化または最大化)するような入力によって制御を行う手法。
- 適応制御:制御する対象の変化に応じて、制御パラメータの種類や大きさを自動的に変化させて制御する手法。
フィードバック制御の構成

ブロック線図では、大きく制御器と制御対象に別れ、制御器は以下の構成となる。
- 検出部:温度や圧力などのセンサの物理量を検知と、検知したデータを電気信号に変換し調節部へ送る。
- 調節部:検出部からの信号を受け、設定値になるように操作器に信号を送る。
- 操作部:調節部から信号を受け取り、修正動作をする。
フィードバック制御の流れ
制御対象が外乱を受けた後の制御量の状態を検出部で検出し、比較器で目標値(基準入力)と比較して差が分かる。
比較差から調節部で調節値が決まり、調節部の出力から、実際の操作を行う操作部で操作量が決められ、制御対象に変更が加えられる。
この訂正動作を連続的に行う閉ループの制御方式となる。
フィードバック制御は、外乱の影響を受けた出力値に対して、調整部で訂正処理を行うため、外乱に対する制御が遅れる。
フィードフォワード制御の流れ
外乱が制御量の変化として検出されるのが遅い系(フィードバック制御では間に合わない)で使用される。
外乱を直接、検出部で検出し、即時に調節部で訂正処理を行う。
外乱に対する修正制御が早くできる。
最終的な制御量との比較は行わないので、開ループの制御方式である。
制御系の安定判別
フィードバック制御系において、安定性が最も求められるが、特性評価として定常特性(目標値に近づいた後の安定状態)と過渡特性(目標値までの最初の立ち上がり、目標値に変化があった時の追従までの状態)がある。
過渡特性の評価

- 行過ぎ量:偏差の最大値と目標値の差をパーセントで表したもの。(オーバーシュート)
- 行過ぎ時間:立ち上がりから最大値までの時間。
- 整定時間:許容偏差内(±5%、±2%の範囲に安定)に入るまでの時間。
- 立上がり時間:ステップ応答(最初の立ち上がり)において目標値の10~90%になるまでの時間。
- 遅れ時間:ステップ応答(最初の立ち上がり)において目標値の50%になるまでの時間。
フィードバック制御の安定性
システムの安定性を判定する手段としては以下のようなものがある。
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