湿り空気線図
湿り空気線図(通常の空気)は、空気の各要素の関係を図示したものである。
- 横軸:乾球温度
- 縦軸:絶対湿度・水蒸気分圧
- 右上向き斜線:相対湿度
- 右下向き斜線:湿球温度・比エンタルピー・比容積
それぞれの値の大小の相関関係は以下のようになる。
右上向き斜線(相対湿度)は、横軸と逆相関関係で、縦軸とは相関関係となる。
右下向き斜線(湿球温度・比エンタルピー・比容積)は、横軸、縦軸ともに相関関係となる。
露点温度は、絶対湿度の横直線となり乾球温度で変化しない、縦軸とは相関関係となる。

右下向き斜線の図

空気線図の構成要素
乾球温度
空気の温度。
絶対湿度
乾燥空気(湿り空気ではない)1kgに含まれる水蒸気量。単位は[kg/kg(DA)]である。
日本の空調分野では上記の重量絶対湿度を使用するのが一般的である。
一方、国際的には空気1m3中の水蒸気量である容積絶対湿度[kg/m3]が使われる。
相対湿度
同一温度での、湿り空気の飽和水蒸気圧(最大限含みうる水分量)に対する水蒸気分圧(実際の水分量)の比を百分率で表したもの。
乾球温度が上がると相対湿度は下がる。(逆相関関係)
水蒸気分圧(水蒸気圧)
湿り空気中の水蒸気のもつ圧力。
実際の水分量を意味する。
湿球温度
湿度を求めるために計測する湿球温度計の示す温度。
湿球温度計は、普通の温度計の先端を湿ったガーゼで包んだもので、先端では水が蒸発しているので熱が奪われる。
水が蒸発する分、乾球温度より低い値を示す。
湿球温度と乾球温度より、湿り空気線図上で相対湿度が分かる
比エンタルピー
空気の持っている単位質量あたりの熱量。
乾き空気(DA)1kgあたりのエネルギーで、単位は[kJ/kg(DA)]である。
飽和蒸気の比エンタルピーは、0℃から100℃に達するまでの顕熱+蒸発に必要な潜熱となる。
比容積
質量1kgあたりの体積。単位は[m3/kg]である。
飽和蒸気圧
気液平衡状態(液体と気体が平衡状態で共存する状態)での気体の圧力。
蒸発できる限界の圧力で、外圧(大気圧)が飽和蒸気圧より大きいと蒸発しない。
温度が高いほど飽和蒸気圧も大きくなる。
蒸気圧とは、気液平衡状態以外の蒸気の圧力も含まれるが、飽和蒸気圧を蒸気圧と表現している場合もある。
飽和水蒸気圧(飽和水蒸気量)
飽和水蒸気圧は、空気が限界の水蒸気量を含む飽和状態での水蒸気の圧力を表す。
飽和水蒸気量は、空気が限界の水蒸気量を含む飽和状態での水蒸気の質量を表す。
飽和水蒸気量は、1m3の空間に存在できる水蒸気の質量なので、単位は[g/m3]となる。
飽和水蒸気圧と飽和水蒸気量は同じ変化をする。
温度が高いほど飽和水蒸気圧(飽和水蒸気量)も大きくなる。
飽和圧力
飽和蒸気(水を沸騰させて得られる水蒸気のこと)の圧力。
一般的な水蒸気の圧力と解釈してよい。
露点温度
湿り空気を冷却したとき飽和状態になる温度。(空気を冷却し水滴ができ始める温度)
空気線図では、絶対湿度の横直線が相対湿度100%の線と交わる点の乾球温度である。
ここでの乾球温度と湿球温度は等しくなる。
露点温度は、絶対湿度の横直線となり、乾球温度では変化しない。
沸点温度
飽和蒸気圧=外圧(大気圧)となる温度。
飽和蒸気圧<外圧(大気圧)の時は、沸騰して気体となって外に出ることができない。
飽和蒸気圧>外圧(大気圧)の時は、沸騰して気体となって外に出ることができる。
飽和度
比較湿度ともいう。
同一温度での、絶対湿度(乾いた気体の中の水蒸気量)に対する飽和空気の絶対湿度(水蒸気を飽和させたときに中にある水蒸気量)の比を百分率で表したもの。
通常の湿度条件では、飽和度(比較湿度)と相対湿度はほとんど同じである。
顕熱比
顕熱の変化量の全熱(顕熱+潜熱)の変化量に対する比。
熱水分比
比エンタルピーの変化量の絶対湿度の変化量に対する比。
空気線図の利用
結露温度の求め方
温度20℃で相対湿度60%の空気の露点(結露)温度は12℃である。
①乾球温度20℃で相対湿度60%のグラフの交点を左横にスライドさせる。
②相対湿度100%との交点の乾球温度は12℃となる
湿り空気線図の参照例
- 相対湿度は、露点温度(横直線)と絶対湿度・水蒸気分圧(縦軸)では求められない。
- 比エンタルピーが等しい湿り空気において、温度が高い湿り空気の絶対湿度は、温度が低い湿り空気の絶対湿度より低い。
- 相対湿度が同じ湿り空気では、温度が低い方が、比エンタルピーは低い。
- 絶対湿度が上昇すると、露点温度は上昇する。
- 乾球温度が上昇すると、飽和水蒸気圧は高くなり、相対湿度は低くなる。
- 同じ相対湿度のもとでは、乾球温度と湿球温度の差は、乾球温度が高いほど大きくなる。
空気の混合点
空気A+空気B=混合空気Cのとき、湿り空気線図上で混合点Cを求めるには、A点とB点を直線で結び、それぞれの混合比となる点がC点となる。
混合点は必ず風量の多い状態点に近い位置となる。
空気A(乾球温度22℃、相対湿度50%)、空気B(乾球温度0℃、相対湿度50%)で、空気Aを700[m3/h]、空気Bを300[m3/h]で混合した場合、空気Aと空気Bの点を書き、A点とB点を直線で結び10等分し、風量の多いA点から混合比の逆比3:7となる位置が混合点Cとなる。

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