抵抗加熱
抵抗を有する導体に電流を流し、ジュール熱によって加熱する。
電熱用抵抗発熱体
発熱体の材料は、最高使用温度や抵抗率から判断する。
- 最高使用温度:カーボン・タングステン>炭化ケイ素>鉄・クロム合金・ニッケル
- 抵抗率(20℃):炭化ケイ素>鉄・クロム合金・ニッケル>カーボン・タングステン
直接式抵抗炉(黒鉛化炉)
被加熱物(炭素製品など)に直接電流を流して加熱する。
急速加熱が可能で効率も良い。
間接式抵抗炉(塩浴炉、タンマン炉)
断熱壁で囲んだ炉の中の抵抗器に電流を流し、放射や対流で間接的に被加熱物を加熱する。
塩浴炉
被加熱物を塩で満たされた炉の中で加熱する。
タンマン炉
タンマン管と呼ばれる黒鉛管の中で、被加熱物を加熱する。
浸炭炉
高温の炉内に炭素成分を含む浸炭用ガスを流し、低炭素鋼の表層から炭素を浸透させて表面のみを硬化する浸炭処理を行う。
誘導加熱
金属を溶解させる誘導炉やIHヒーターの原理で、導電物質に対する加熱方式。
金属の炉(被加熱物)にコイル(導体)を巻きつけ、そこに交流電源(交番磁界)を流すと電磁誘導によって金属の炉に渦電流が流れる。
金属の抵抗と渦電流によってジュール熱が発生し、炉は高温になる。
透磁率が高い、抵抗率が高いものほど加熱しやすい。
周波数によって加熱深さを調整できる。交番磁界は表皮効果で表面に集まるので、周波数が高いほど表面が加熱されやすい。
商用周波電源を使用するものを低周波誘導加熱、高周波電源を使用するものを高周波誘導加熱という。
電流浸透深さ
渦電流は表面から内部へ行くほど指数関数的に減少する。
渦電流が表面の強さの1/e(36.8%)に減少する深さを電流浸透深さδと呼び、誘導加熱の指標として用いられる。
周波数・透磁率が大きく、抵抗率が小さいほど電流は導体表面に流れる。
$\displaystyle δ=\sqrt{\frac{2ρ}{2πfμ}} \ [m] $
$δ$:電流浸透深さ [$m$]
$ρ$:被加熱物の抵抗率 [$Ω・m$]
$μ$:被加熱物の透磁率 [$H/m$]
$f$:電流の周波数 [$Hz$]
誘電加熱
電子レンジなどの誘電体(絶縁体)物質の内部加熱の原理。
誘電体に交流電源による交番電界を加えると、内部の電気双極子(水の分子などプラスとマイナスの電荷の偏りがある有極性分子)が電界の方向に向きをそろえようとして同相の電流が生じる。
高周波の交番電界では、電界の反転に追従するように激しい運動が起きるため、摩擦(誘電損)によって発熱する。
発熱量は周波数、誘電体損失係数に比例するので、誘電体損失係数が小さいと加熱しにくい。
被加熱物の温度上昇に要する時間は、照射するマイクロ波電力で決定される。そのため、温度調節が容易である。
周りは加熱しないので加熱作業環境は良い。予熱が不要なので熱効率が高い。
食品の殺菌などで使用する場合、通常の加熱殺菌に比べ、低い温度で殺菌できる。
周波数が高くなると内部まで加熱しにくくなる。
周波数1MHz~200MHzを高周波誘電過熱、UHF帯をマイクロ波加熱と呼ぶ。電子レンジは2.45GHzのマイクロ波加熱である。
損失係数が小さい被加熱物を加熱する場合は、周波数が低いマイクロ波加熱を利用する。
誘電体損失係数
比誘電率×誘電正接で表され、誘電体が吸収するマイクロ波電力の程度で、誘電体固有の値である。
アーク加熱
アーク(放電)で熱を発生させる。
商用周波数の三相交流をそのまま用いる交流アーク炉と、直流に整流して用いる直流アーク炉とがある。直流を利用すると、フリッカや電極消耗を少なくできる。
製鋼用アーク炉はアーク加熱の代表的な例であり、3本の黒鉛電極を使い三相交流アークで熱を発生させ、鉄くず、還元鉄を溶解して鋼を作る。
直接式アーク炉(エルー炉)
被加熱物に直接アークを発生させ、加熱する。
間接式アーク炉(揺動式アーク炉)
専用の電極でアークを発生させ、放射や対流で間接的に被加熱物を加熱する。
エアトンの式
アーク放電の電圧電流特性を表した実験式。
アーク電圧はアーク電流に負の相関(逆相関)を示す。
アーク電流が増加すると電圧が下がるので、アーク炉の安定化のために電極と直列にリアクトルを入れている。
赤外加熱
赤外線(熱線)の放射を使用する加熱方法。
赤外放射は、物質に吸収されると、ほとんど熱エネルギーに変換される。
波長の長さで、近赤外線と遠赤外線(4μm以上)があるが、近赤外線の方が温度が高く放射エネルギーは大きい。
産業分野では2.5~30μm程度の波長を利用している。
遠赤外線は、空気と金属以外の加熱に向いている。セラミックヒーターなどで使用する。
近赤外線は、赤外線通信や赤外電球、ハロゲンヒーターなどで使用する。
電子ビーム加熱
真空容器中で高速に加速した電子ビームを被加熱物に照射して運動エネルギーで加熱する。
107~108[W/cm2]の高エネルギー密度が得られ、加熱効率が高い。
局所的な加熱ができるので、溶接や切断など微細加工に用いられる。
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