騒音

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騒音の単位

騒音レベル

騒音は、人の聴覚の周波数特性で補正したA特性音圧レベルで測定・評価される。
騒音による聴取妨害は、聞きたい音(S)と騒音(N)のレベル差であるS/N比で示す。
この値が0(S=N)でも聞こえるが、+10以上であれば、聞き取りやすくなる。
会話の音声のレベルが55~65dBの時に、騒音レベルが45dB以下(約ー20dB)であれば、十分な了解度が得られる。

$\displaystyle L=20log\frac{S}{N} \ [dB] $

等価騒音レベル

時間によって変動する騒音は、等価騒音レベルによって評価される。
等価騒音レベルとは、計測時間内の騒音レベル(A特性音圧レベル)のエネルギーを時間で平均にしたものである。

人間と騒音

低周波数域の騒音に対する人の感度は低い。(振動と逆)
1日の曝露騒音として等価騒音レベルが85dB未満であれば、永久性の聴力障害はほとんど起こらない。
大きい騒音による一時的な聴力低下を、一過性いき値上昇(TTS)という。いき値は聞こええる音の限界値。安静により回復する。
騒音性の難聴(C5ディップ)は、4000Hz付近の低下(30dB以上)からはじまる。
騒音性難聴は、内耳の蝸牛(かぎゅう)にある有毛細胞(音の振動を脳に伝える)が損傷することが原因である。
騒音によって、末梢血管の収縮、血圧の上昇、胃の働きの抑制、内分泌系への影響が起きる。
超音波は、強いレベルの場合には耳鳴り、頭痛、吐き気等の身体影響を生じさせる。
住民の騒音苦情の大半は、聴取妨害と心理的影響である。
騒音による健康影響は、年齢や生活習慣、生活・活動環境などによる複合的なもので、個人差が大きい。
環境騒音に関する基準は、住民の心理的影響や聴取妨害、睡眠妨害等を参考に決められる。
一般環境騒音に係る環境基準は、地域類型別及び道路に面しない地区と道路に面する地区に区分し決められている。

騒音の種類

暗騒音

ある騒音環境下で、対象とする特定の音以外の音の総称。(周波数の高低ではない)
対象騒音が暗騒音より10dB以上大きい場合は、測定音を対象騒音と判断して暗騒音除去の必要はない。
騒音・振動を測定するには、暗騒音・暗振動が小さい時間帯に実施することが望ましい。

広帯域騒音

広い周波数領域の成分を含む騒音のこと。

伝搬音

空気伝搬音

隔壁隙間など空気の振動で伝わる騒音。
低減するためには、窓・壁・床等を遮音する必要がある。

固体伝搬音

ダクト管路など構造物の振動などで伝わる騒音。
振動源の発生振動低減や防振対策が重要である。
寝た場合に骨伝導で感知される固体伝搬音についても確認するため、立位・座位・仰臥位(ぎょうがい)で評価する。

遮音

遮音とは、などで音を遮断して、透過する音のエネルギーを小さくすることである。
一般に室内の騒音は40dB以下に抑えるのが望ましい。
騒音、振動対策の基本は、発生源での対策であり、建築構造体に伝わってしまうと、遮断することが難しくなる。従って、上階の音を防ぐには、上階の床に吸音材を張るのが効果的である。
外部騒音が同じ場合、コンサートホール・オペラハウスより、録音スタジオの方が高い遮音性能が求められる。
建築物の壁や床に隙間が生じたり、扉のゴムパッキンの劣化などで遮音性能が低下することがある。

遮音の指標

  • NC値:室内の騒音を数値で表したもの。値は小さいほど静かな環境となる。
  • D値:遮音性能の等級。値が高いほど遮音性能が優れている。周波数によって異なる時は、最も小さい等級をとる。
  • Lr値:床への衝撃音の大きさを表す数値。値が小さいほど遮音性能が優れている。

吸音

透過損失

遮音性能を示す数値で、大きいほど防音性能が高い。
透過損失とは、入射音から透過音を引いたもので、単位は[dB]である。
透過損失をエネルギーで表すと、R=10log(I0/I3)(I0:入射音エネルギー、I3:透過音エネルギー)となる。
壁の質量が大きいほど、透過損失は大きくなる。(遮音性能が大きい)
複数の異なる部材で構成される壁の透過損失は、最も透過損失の小さい部材の値を用いる。

吸音率

音が物体に入射すると、物体に反射されるもの、物体に吸収されるもの、物体を透過するものに分かれる。
吸音率とは、入射した音のエネルギーに対する反射されてこない音のエネルギーの比率を表す。
入射音I0、反射I1、吸収I2、透過I3のとき
反射率=I1/I0=(I0-I2-I3)/I0
吸音率=1-反射率
吸音率は0~1の値となり、開放された窓の吸音率は反射されないので1となる。

吸音力

材料が音を吸収する能力。
吸音力は吸音率×面積で表され、単位は[m2]である。

音源室と受音室の音圧レべル

ビル管試験では以下の式は問題文に提示されている。

$\displaystyle L_1-L_2=TL+10log\frac{A_2}{S_w} \ [dB] $

$L_1$:音源室の音圧レベル [$dB$]
$L_2$:受音室の音圧レベル [$dB$]
$TL$:隔壁の音響透過損失 [$dB$]
$A_2$:受音室の等価吸音面積(吸音力) [$m^2$]
$S_w$:音の透過する隔壁の面積 [$m^2$]

遮音の方法

遮音性能は、質量が大きいほど良くなる。
吸音材は必ずしも遮音性能が良いとは限らない。
隔壁を介する2室間の遮音性能は、受音室の吸音力が大きいほど高くなる。
合わせガラスは、単層ガラスより遮音性能が高い。
コンクリートブロックは、一体打ちコンクリート壁(平らな部分と立ち上がり部分を1回で組み上げる工法)より遮音性は悪い。
複層壁は、共鳴によって遮音性が悪くなる場合がある。

床衝撃音

床衝撃音の測定は、JISに定められている方法により測定する。
一般に学校よりもホテルの方が高い遮音性能が求められる。

軽量床衝撃音

軽量床衝撃音は、食器を落としたりした音で、高周波領域に主な成分を含む。
軽量床衝撃音は重量床衝撃音と比べて、衝撃源が硬いことが多く、床仕上げ材の弾性が大きく影響する。
軽量床衝撃音は、床仕上げ材を柔らかくして弾性を向上することで軽減できる。

重量床衝撃音

重量床衝撃音は、人が床上で飛び跳ねたりした音で、低周波領域に主な成分を含む。
重量床衝撃音の対策として、床躯体構造の質量増加、曲げ剛性の増加などがある。
カーペットや畳などを敷くことで、重量床衝撃音の軽減はできない

音に関する現象

マスキング効果

一つの音で、他の音が遮へいされて聞こえなくなる現象。
マスキング量は、マスクされる音の最小可聴値(聞き取れる最小の音圧レベル)の音圧レベル上昇量で示される。
一般に低い周波数よりも高い周波数において大きい。

コインシデンス効果

音の入射波の板に平行な成分と、板の屈曲波の位相が一致し共振状態となり、透過損失が減少する。
ガラス・壁体の遮音の低下をもたらす。

拡散音場

空間の音のエネルギーが一様に分布し、音があらゆる方向に伝搬している状態のこと。
この状態を作る残響室は、吸音材料の吸音率や遮音材料の透過損失の測定に用いられる。(無響室の反対)



Ver.1.2.1

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